

ファッション専門学校の入学者数の減少に下げ止まり感が出てきたということを少し前にご紹介した。
18歳人口は少子化の影響で減少傾向が続くが、一服感も出てきているほか、ファッション専門学校への進学者数も減るだけ減り尽くした感があって、下げ止まり感が出てきている。
これはこれで喜ばしいことだが、引用した繊研新聞の記事の中で気になる箇所が2つあった。
一つ目は
「増えた」と回答したのは13校で、「大きく増えた」と答えたのは2校。大阪文化服装学院は、装苑賞ほか国内の主要3コンテストで1位を獲得するなどの実績を評価され、クリエイション系2学科の志願者が大きく伸長。名古屋ファッションは「全国規模のコンテストでの入選や就職の実績、時代性に沿った教育内容、立地や施設の良さなどの効果的な販促で、47%増と大幅に増加した」と答えた。
という箇所。
もう一つは
全般に4年制学科は好調で、目的意識の高い層は獲得できている半面、志望度の低い〝ライト層〟の取り込みに苦戦。ドレスメーカー学院は「ここ数年、減少傾向だったファッションビジネス科の募集停止の影響か、入学者が減少した」。
という点である。
この2箇所に共通しているのは、
1、クリエイション系(デザインやパターン)強化が成功
2、ファッションビジネス系は廃止傾向・人数減少傾向
という点である。
専門学校を集客ビジネスとして捉えるのであれば、入学者数が増えていることこそが顧客の満足度の高さに表れているわけだから、何の問題も無い。むしろ、各校ともに追随すべきだといえる。
一方、未成年の学生の人生の進路に大きな影響を与える教育だと考えるなら、この2つの傾向は現在の衣料品業界にはあまり則していないのではないかと思えてならない。
最近では4年制大学や短大を卒業してから改めてファッション専門学校に入学する生徒も珍しくはなくなった。また一度勤務を経験してから再度入学する生徒も珍しくなくなった。とはいえ、この「成人組」の生徒は依然として多数派ではない。
多くの専門学校進学者は高校卒業後すぐ、もしくは1年くらいのブランクを経て入学してくる。
そんな彼らも「わざわざ」志願してファッション専門学校に入学してくるくらいだから、それなりに衣料品やファッションについて興味があることは当然である。
高校を卒業したばかりの生徒を何年間か専門学校で教えたことがあるが、衣料品やファッションに興味が強いので、デザインとかテイストとかディテールとかそういう授業には興味を示す場合が多い。一方、ファッションビジネス系は計数管理的な内容が多いから、あまり興味を示さない。
自分の過去を振り返ってみても、高校を卒業した直後に経済に興味があったかというと全く無かった。それが理由で大学卒業前の就職活動では、金融関係の企業をすべて受けなかったほどである。
だから、クリエイション強化で生徒が集まり、ファッションビジネス系は減少・廃止になるという流れは、生徒の希望に沿えばそうなる。
だが、就職という観点で考えると、それは厳しい進路だといえる。
クリエイション系の学生の多くは、アパレル企業の企画職(デザイン、パターンなど)に就きたいと考えている。しかし、現状で企画職の求人募集はそれほど多くない。
大手企業であっても求人募集の大半は販売員だし、今なら営業やらEC担当やらである。
そのため、就職でのミスマッチが起こりやすい。概してクリエイション系の学生が希望通りの職業を続けようとするなら、独立してブランドを設立するほかなくなる。
ブランドを設立すると、クリエイションも大事だが、ビジネスも大事だ。営業・販売・経理が分かっていないと会社は存続できない。
作るばかりで、売る人とカネ勘定する人がいなければ法人は続かない。
そうなるとファッションビジネス部門の教育も本来は必要不可欠になるのだが、ファッションビジネス系は人気が無く廃止されている学校すらある。
学びなおすことに年齢は関係ないから、独立してみて改めて学ぶという人もいるし、そういう事例も見たり聞いたりする。
だが「転ばぬ先の杖」ではないが、あらかじめ事前に知っておくということは意外に重要ではないかというのが個人的な意見である。
ファッションビジネス部門が縮小されたり廃止されたりという現在の流れは、入学者募集ビジネスとしては正しいのかもしれないが、未成年の学生の進路を難しくさせてしまうという要素も強いと感じられる。
とはいえ、今のご時世で、興味の無い学生に強制的に望まぬ学科を学ばせることは不可能に近い。
クリエイションが分かっていて、なおかつビジネス系もある程度はわかっているというのが、理想像ではあるのだが、この理想像の実現は難しい。
それ以上に「効果あり」とされている学校も、今のままの姿勢で良いのかという疑問も感じる。学生たちが希望したとはいえ、クリエイションに偏重した科目だけを強化することが、学生たちの将来に全面的に役立つとも思えない。入学者数の減少に底打ち感が出てきたとはいえ、ファッション専門学校の運営は厳しさを増していると感じられてならない。
最終更新日:
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