


ラグジュアリーブランドの海外支社で働く――。そんな憧れを実際に叶えた、日本人男性・野﨑健太郎さん(ペンネーム)が綴るコラムです。日本人がグローバルで働く上で知っておきたいこと、海外のマーケット動向、キャリアアップしていくためのヒントとは……?これまでたくさんの挑戦と成功を重ねてきた野﨑さんだからこその視点や気づき、エピソードなどを交えながらお届けします!
10月。日本では秋本番。風が涼しくなり、日没の時間が急に早くなったように感じる季節ですね。少し寂しいような、でもおしゃれするには重ね着ができて楽しい季節。常夏でいつも汗ばむ陽気の東南アジアにいると、本当に羨ましい季節だなと思います。
先月は韓国の「軽やかで柔軟なコミュニケーション力」について書きましたが、今月は、「英語」について。海外での仕事や外資系企業では欠かせないコミュニケーションツールである「英語」を、僕なりの視点で掘り下げてみたいと思います。世の中に英語マスターのノウハウ本は山ほどありますので、ここでは“俺流”英語マスター術についてお話します。
「英語をマスター」=ネイティブのように話すことではない
これまで同僚や後輩から「英語をマスターしたい」という話は、耳にタコができるほど聞いてきましたし、相談されてアドバイスもしてきました。しかし残念ながら実際に英語をマスターして、仕事で使っている人をあまり見た事がありません。
日本では、英語が上手な人と、まったく話せない(話さない)人の二極化が目立ちます。これはアジアの中では珍しいのではないかと思います。マレーシアやシンガポール、韓国では、「ある程度話せる人」「最低限意思疎通ができる人」という中間層が厚く存在します。なぜか。日本人が「完璧主義すぎる」こと、「英語学習のゴール設定が高すぎること」が原因ではないかと思います。
まず僕がお勧めしたいのは、日本人の英語マスターのゴール設定を下げることです。「英語をマスターする」=ネイティブスピーカーのように話すことではなく、まずは「使える英語」「通じる英語」を目指すことをお勧めしたいと思います。
先日、ニュース番組を見ていて象徴的だなと思ったのが、自民党総裁選挙の候補者が突然英語で質問をされた場面です。小泉進次郎さんは日本語で答えていて、僕は思わず「あーあ…」と口にしてしまいました。たとえば、適当にトランプさんのマネでもして「I want to make Japan GREAT AGAIN!」くらい言っておけば場が和んだのに、と。
しかし、彼の場合、奥様が英語をネイティブ並みに話す上級者なので、「自分もネイティブみたいに完璧に話せないと英語を話すべきではない」と思い込んでいるのかもしれません。これこそ、日本人が抱える完璧主義の典型例ではないでしょうか。
もちろん、学生で時間もエネルギーもあるならネイティブスピーカーのような英語話者を目指すことは否定しません。でも社会人になって、時間もお金も限られているなら、まずは「通じる英語」「使える英語」をゴール設定にするべきだと思います。
そして大事なのは、とにかく使うこと。「マスターしたら使おう」なんて考えていては、いつまで経っても話せるようになりません。下手でもいい、間違ってもいい、とにかく話す。これが第一歩です。
発音に関しても、“カタカナ英語”で一向に構いません。むしろ日本語訛りの英語は、流暢に話す人よりもチャーミングにさえ感じます。シングリッシュと揶揄されるシンガポール訛り、香港訛りのホングリッシュ、インド訛りのインド英語、アジアの中ではみんな訛りなんか気にせず、ガンガンコミュニケーションして、どんどん仕事を前に進めています。
ChatGPTに、ブリティッシュイングリッシュを話す人口に対して、インド英語、中華系訛り英語を話す人口の比率を聞いてみました。結果は、イギリス英語の話者人口が約6000万人。それに対して、インド+中華系訛りの英語話者人口は、約4億から5億人。アメリカのネイティブスピーカーが、約2.5億ですので、ネイティブスピーカーの方が圧倒的に少数派であることがわかります。
AI、オンライン英語、Duolingo、YouTube
いまは、1日25分のオンライン英語を月額1万円以下で受講できる時代。これを使わない手はありません。1対1ですので、間違いを恐れずに積極的に話して、間違えて、修正して……を繰り返す。きっと、1~2年で劇的に変わります。
「フィリピン訛りになったらどうしよう」と心配する声も聞きますが、英語を「使えるツール」にすることが目的であれば、まったく問題ありません。うちの息子たちも約3年間、オンライン英語をやっていて、長男は小6で英検2級レベル。インド英語やイギリス英語など様々な訛りにも挑戦しています。次男はややシンガポール訛りがありますが、ネイティブスピーカーっぽくも話せますし、なによりも堂々と話すことが身についています。
AIの進化も目覚ましく、外国語の習得との相性が良いと思います。メールやプレゼンのシナリオなど、僕も毎日の業務の中でAIを活用しない日はありません。メールを書いてみて、より自然で分かりやすく修正してもらうことで、自分の文章の弱点が見えてきますので、改善していけば英語での表現力は強化されていくと思います。
AIによる同時翻訳アプリが普及する未来も近いでしょう。それでも僕は、自分の言葉でコミュニケーションできた方がいいと考えています。友達と話すときにAIフィルターを通すより、下手でも自分の英語で話した方が個性的で、人とのつながりは強化されるのではないでしょうか。
私の家族は、Duolingoの有料会員です。僕はイタリア語とインドネシア語を、長男は中国語を学習しています。次男は遊びでチェスや音楽をやったりしています。別にペラペラになる必要はなく、新しい言葉を知ること自体が思考を広げてくれます。SNSで時間を浪費するなら、Duolingoをやった方がいいと思います。
ヨーロッパの言語は英語と似た単語も多く、点と点が繋がる瞬間に知的興奮を覚えることもあります。また日本語には当てはまらない言葉にぶつかることで、その文化に興味が湧いたりするのも面白いです。
YouTubeやNetflixなどの動画アプリにも秀逸な学習教材が溢れています。私は主にリスニング力を鍛えるために、毎朝ジョギングしながらオーストラリアのニュースを聞いています。日本にいた頃は「SUITS」や「刑事モース」などのTVドラマシリーズを見て、耳を鍛えていました。内容も面白く作りこまれているので、勉強というより、楽しみながら観ることができました。
「英語界隈」とは距離を置くこと
個人的にお勧めできないのが、SNSにある「英語界隈」に参加することです。インプレッション稼ぎのために、どうでもいいような細かいことを、いかにも自分やネイティブが正しいかのように大袈裟に表現しています。また、TOEICの点数の自慢など、時間の無駄としかいいようのないことをやりあっています。ひとりで勉強していると不安になるかもしれませんが、他人と比べるのではなく、昨日の自分と比べて進化することこそが一番大切です。
SNSなどで時間やエネルギーを浪費しないようにご注意ください。無料で手に入る情報は玉石混交です。原点に返って、本屋さんで自分に合う教材を探すことも忘れずにしましょう。
最後に
ゴール目標の設定を下げ、オンライン英語やAIの活用など、英語をマスターする道筋が見えてきたら、最後に必要なのは「英語を使うこと」です。
僕のおすすめは、勤務先から「遠くに住むこと」です。「は?」と思うかもしれませんが、電車で勤務先まで1時間くらいかかる場所に住むことで、強制的に毎日片道1時間の学習時間が生まれます。遠くに住めば、家賃も安く済みますので、参考書やオンライン英語にお金をまわすこともできます。
思い切って、各路線の始発駅に住むこともいいでしょう。毎朝必ず座って通勤できますので、安定的に勉強時間が確保できます。家が遠いと、残業や飲み会を強制されても「僕、家が遠いので」と言って断りやすくなり、自分の時間を確保しやすくなります。山が好きなら高尾山周辺、海が好きなら逗子や平塚、上総一ノ宮もよいかもしれません。その場所が観光地なら、外国人旅行者もたくさんいますから、道に困っていたら英語で話しかけて教えてあげたり、ボランティアで観光案内すれば人の役にも立ちながら、自分の英語学習にもなり、一石二鳥です。
僕は、若い頃に鎌倉に住んでいましたが、海外からの出張者を案内するととても喜ばれました。その縁で彼らとはいまでも友人関係が続いています。英語を使う機会は、自分の工夫次第でいくらでも作れます。
英語を話す、英語をマスターするという覚悟を決め、取り組み、自分のキャリアにレバレッジをかけていってほしいと思います。
さらにもう一歩踏み込んで言うなら、実は英語を話せるかどうかは、それほど重要ではありません。英語を流暢に話すよりも、明るく前向きにコミュニケーションを取ること、そして仕事に対してプロフェッショナルであることの方が、ずっと重要だからです。細かいミスを気にする必要はありません。伝わらなければ言い直せばよいのです。天才でネイティブスピーカーのイーロンマスクでさえ、結構どもったり詰まったりしながら話しています。僕らはもっと気楽に堂々と話せばいいのです。
■著者プロフィール
野﨑健太郎
大学卒業後はモデルとして活動し、国内外のショーや広告などに出演。28歳のとき、大手量販店で販売のアルバイトを始める。その後、いくつかのラグジュアリーブランドでのストア、オフィス勤務を経て、2021年12月より某ブランドのシンガポール支社に勤務。趣味は高校時代から続けているサーフィン。
■ペンネームへ込めた想い
野﨑健太郎はペンネームで、尊敬する祖父の名前です。祖父は明治生まれで、西郷隆盛を思わせるような大きな体と味海苔をおでこに張り付けたような太い眉の持ち主でした。東京・五反田を拠点に京浜工業地帯で鉄を拾って歩き回り、町工場を営んでいた祖父。信条は「上天丼を食べたいなら、人の倍働け!」でした。残念ながら50代で亡くなり、直接会うことは叶いませんでしたが、この言葉は親戚を通じて私の耳に届き、私の心に深く刻まれています。祖父のハードワーク魂が自分に宿ることをこのペンネームに込めました。
最終更新日:
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