ADVERTISING

「旬」のマストレンドを取り入れるメリットとデメリット

繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー
南 充浩

早いもので、2020年代に入ってもう6年目になろうとしていて、2030年代が近づいている。

この5年間、マストレンドはほとんど変わっていないように見えるが、今秋冬物は久しぶりに新しさを感じさせる商品が登場しつつあると感じる。

それが好きか嫌いかは別として、今秋冬に特に若い女性に多く見られるのが、丈の短いダウンジャケット類(中綿入りジャケットも含む)である。

通常のダウンジャケット類、特にブルゾン型の着丈はベルトの少し下あたり、お尻が隠れるかどうか、くらいの長さに設定されている、。

しかし、今秋冬に増えたショート丈のダウンブルゾン類の着丈はもっと短く、ベルトの上あたりまでしかない。

要するに尻は丸出しである。

そして、アダストリアの通販サイトなどを見ていると、若い男性向けブランドにもショート丈ダウンブルゾン類は波及し始めている。

このショート丈ブルゾン類が若者の間でマストレンド化しつつある理由は

1、パンツ類はオーバーサイズが継続しており、コンパクトなトップスにすることでAラインになる
2、オーバーサイズのパンツ類の股上が深くなっている

という2点にあると考えられる。

2015年にオーバーサイズが復活してから、上下ともにオーバーサイズという着こなしが主流になった。

上もダボダボ、下もダボダボという着こなしは新鮮ではあるが、体型が良くないとバランスがとりにくいし、スタイルは悪く見える。

バランスがとりやすいのは、ダボダボパンツにタイトなトップスを合わせてAラインを作ることである。それを実践したのが、若い女性に多く見られるようになったY2Kと呼ばれるヘソ出しスタイルといえる。

それの秋冬向けバージョンが、着丈の短いダウンブルゾン類だといえる。

また、股上の深いハイウエストのパンツが増えたことも着丈の短いトップスの拡散を後押ししたといえる。

股上が深いから、トップスをタックインしない場合、着丈を短めにする方がバランスはとりやすい。タックインすれば話は別だが。

そんなわけで、着丈の短いダウンブルゾン類が今秋冬、若者マストレンド化しつつあるといえる。

それが顕著にわかるのが、先日のこの記事である。

ユニクロの「キッズアウター」を大人が着るのがトレンドに、流行のワケは?

トレンドアイテムとして浮上しているのは、キッズカテゴリーの「パフテックウォッシャブルパーカ」。「キッズダウン」として話題を呼んでいる、ユニクロが去年ダウンに代わる素材として打ち出した高機能中綿「パフテック」を採用したモデルだ。デザインは大人用のダウン、パフテックアウターと異なるオリジナル仕様で、横キルトでスッキリしたデザインが特徴。男女兼用でブルー、ブラック、ブラウン、グリーン、ネイビー、パープルのカラー展開で、100〜160サイズを用意している。価格は3990円。
ムーブメントの始まりは、11月頃にインフルエンサーが「キッズダウン」を着用した画像や動画をSNSに投稿したこと。現在SNSには男女問わず同アウターを取り入れたスタイリングが目立つ。

とのことである。

子供服の150センチ、160センチサイズを成人女性が着ることは今回に限らず昔からよくあった現象である。

日本人の女性の平均身長からすると150、160センチなら成人女性も着用できる場合が多い。昔から成人女性がこのサイズの子供服をわざわざ買う理由として

1、成人向け商品には無いデザインや色柄がある
2、成人向け商品よりも価格が安い場合が多い

という2点があった。

特に百貨店向けブランドでは2の理由が顕著に挙げられていた。

例えば、ラルフローレンなどの百貨店ブランドだと、成人向け商品よりも子供向け商品の方が定価の時点で2~3割安い場合が多かったので、成人女性が百貨店ブランドの子供向け商品を買う例が少なからずあった。

今回のユニクロのキッズブルゾンにしても、成人向けに比べてだいたい3000円くらい安い。

値段もさることながらやはり、理由はAラインを作るためである。以下にそれが説明されている。

昨今は特にトップス、アウターにおいてコンパクトなサイズ感が好まれるので、その延長では」と語った。シルエットの変遷を紐解くと、2010年代半ばから世界のファッションシーンでビッグシルエットが爆発的な流行を見せたが、ここ数年は収束。オーバーシルエットの“覇権”が長かった反動もあってか、近年では体型に合わせたジャストフィットもしくはタイトめなシルエットのスタイリングが好まれる傾向にある。また、SNSの普及で“映え”への意識が強まった結果、足が長く見える短丈トップスが好まれるようになったという見方もある。
 「キッズダウン」を取り入れたスタイリングを見ると、丈は腰より上で、フィット感も“ピチピチ”。合わせているパンツはボリューム感のあるワイドなものが多い。

恐らく、来年秋冬はショート丈防寒ブルゾン類の提案は各ブランドからさらに増えることになるだろう。

こういう新しいマストレンドはファッションの醍醐味の一つだということは当方にも異論は無い。

ただ、最近の揺り戻し傾向を見ていると、こういう「旬」のトレンドは過ぎ去ってみると、一般的に「黒歴史」として長期間封印されがちである。旬が過ぎ去ると、「どうしてあの時はあんなトレンドに熱狂したのだろう?」と言う具合になってしまう。

それよりも、オーソドックスなデザインはトレンド熱狂時にはほとんど目立たないので、高評価されることは少ない。しかし一方で、減点されることも少ない。その結果、長期間着用できるというメリットもあるし、トラディショナルで落ち着いた雰囲気があると評価されやすいメリットもある。

そう考えると「旬」のトレンドに乗っかるのは得策ではないと思えて仕方が無い。特に中高年は旬のトレンドよりも定番的な商品を使い続ける方が、最終的には周囲から高評価を得られるのではないかと思っている。

最終更新日:

ADVERTISING

現在の人気記事

NEWS LETTERニュースレター

人気のお買いモノ記事

公式SNSアカウント