「いつか、僕らが作った服が燃え殻になってもクリエイティブは残る。そういうブランドを作りたいと思った」。そう語るのは、2026年秋冬コレクションで本格デビューとなったメンズブランド「アワシーズ(ourshes)」のデザイナーだ。個人に帰属する世界観ではなく、チームでの創造の可能性を広げたいという姿勢から、デザイナーは匿名としている。
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将来的に、デザイナー、MD、パタンナー、ヴィジュアルディレクターなどで構成されるデザインチームでの運営を計画しているが、まずは発起人としてデザイナーが一人で立ち上げた。同氏は、文化服装学院の服装科を卒業後に技術専攻で再度学び直した。その後はパリコレにも参加する某国内ブランド、複数のデザイナーズブランドのデザインアシスタントやパタンナーを経て、独立後は主にフリーランスのパタンナーとして活動。さまざまなブランドでメンズ、ウィメンズの両方を経験する中で、メンズファッションにおける「制限を前提とした遊びや仕立ての理論」に傾倒していったという。
「メンズウェアはスーツを筆頭にアイテムごとのコードが存在する。その前提条件は、ある種の制限でもあるが、その中で如何に意外性を打ち出せるか探求したかった」(アワシーズ デザイナー)



ブランド名は「our(わたしたち)」と「ashes(遺灰)」を掛け合わせた造語。「僕らが作った服が燃え殻、灰になっても、ブランドやそのクリエイティブは残るようなブランドにしようと考えた」との理由から生まれた。「our」と名付ける通り、複数人でのクリエイションで、コレクティブな存在を目指している点も特筆すべきだろう。「ファッションは本当の意味で一人で生み出すことはできないし、現代には既に素晴らしいブランドやデザイナーが数多く存在する。そうであれば、一人の人間の突出した創造性よりも、デザイナーやパタンナー、工場やテキスタイルの技術のように、複数の人間の知恵とアイデアが衝突して生まれるものの可能性を探求することに、意味があるのではと考えた」と説明する。
デザインの根源は「パターンの習作と実験」とし、「人の体は立体であるのに、360度で見たときに形が変わらないのが僕の中ではファッションとして見るとナンセンスな感じがして。一見アンリアルでも袖を通すと体になじむような、人が着た時に完成する意外性のあるパターン、デザインを追求していきたい」と語る。デザインプロセスは、まずはシルエットのアイデアやコレクション全体のムードを煮詰め、そこからトルソーやモデルでのフィッティングと立体的なパターンメイキングを繰り返していく。






コンセプトやデザインテーマは設けないが、プレローンチを経て本格的なデビューとなった2026年秋冬コレクションでは、実際に着用した際の体へのなじみと対照的に、退廃的でディストピアな空気が漂うルックを発表。最初に完成したというデニムパンツは、膝部分のニーパッチを複数枚で構成し、人の動きに合うように立体的にパターンメイキングしながらボリュームのあるシルエットに落とし込んだ。ジャケット類も肩の位置や袖を立体的に仕立て、レザーの硬さの割に体に沿うようなデザインとなっている。
また、構築的なシルエットと併せて、「手作業の匂い」を漂わせる加工もブランドらしさに一役買っている。デニムには顔料を含んだ泥を吹き付け、ベロア生地のセットアップには顔料のコーティング剤を塗り、機械での洗浄時の圧力でクラッキングを生んだ。レザーのライダースジャケットは加工用の油や泥などを施し、仕上げにバーナーで炙ることで意外性のあるシュリンクを発生させた。加工の多くを手作業で行うため、アイテムはほぼ一点物となる。「今の時代は効率やコスパが重視されているが、人がまとうファッションだからこそフィジカルで出来ることに魅力があると信じている。こういう加工は、繊細なニュアンスや、これが"イケてる"という感覚を共有できる日本の工場さんに支えられている」。








価格帯は、キャップが7万7000円、ベロア生地のTシャツが4万9000円、同素材のパンツが7万7000円、デニムが6万9000〜7万5000円、レザーのハーフパンツが14万2000円、ライダースジャケットが26万7000円。
国内での基盤作りの先には、グローバルでの発表も視野に入れる。「パリや世界の舞台でも発信し、自分達のクリエイションを幅広い人達に届けたい。目の前のチャンスは逃さないよう、着実にものづくりを続けていく」。また、チーム体制化は「長い道のり」と見据え、「今はまだ僕が一人で工場の方々と協力して運営しているが、これからは仲間を増やすことも念頭に、ブランドとクリエイションを育てていきたい」と意気込んだ。
最終更新日:
■アワシーズ:インスタグラム
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