
DJタイムでステージに上がって踊る高校生たち

DJタイムでステージに上がって踊る高校生たち

2月23日、岡山のライブハウス・クラブ「YEBISU YA PRO」(エビスヤプロ)で、岡山県内の高校生を対象にしたクラブ・DJ体験イベント「C2C(Campus to Club)」を初開催しました。これは、近い将来の地域におけるナイトライフエコノミー推進と、地元の音楽シーンとカルチャーの浸透に資する学びの場を作る取り組みです。今回は、このイベントで見えたことを踏まえ、若い世代に必要なものと、大人が果たすべき役割について私見を書きたいと思います。
楽しさを先に知る
講師は、国内トップDJの一人「TJO」氏。音楽ジャーナリストやラジオパーソナリティーとしても活動する同氏に、クラブミュージックやDJの基礎をレクチャーしてもらいました。BPM(1分間あたりの拍数)や楽曲構成、DJ機材の扱い方、クラブの楽しみ方など、内容は多岐にわたります。

TJO氏によるクラブミュージックの講義
生徒たちは、実際に機材に触れながら曲をつなぐ体験にも挑戦しました。講義後のDJタイムでは、制服姿の高校生たちがMCに歓声で応えながら飛び跳ね、夢中で踊る場面も。フロアは沸き立つような熱気に満ちていました。

本イベントのためのスペシャルDJセットに沸く高校生たち
クラブは、音楽を中心に、その地域の多様な文化を育む装置として機能してきました。しかし、不健全で閉じた場所という先入観を持つ人が少なくありません。加えて、特別な接触機会を持てた人だけが親しむものにもなりやすい。コロナ禍を境に、その傾向はさらに強まったように思います。
また、岡山には国内外のミュージシャンやアーティストから信頼を集めるクラブやライブハウスがありますが、観光資源としての認知や地元での存在感はまだ十分とは言えません。つまり、岡山には評価されているものがあるのに、それらが若い世代にとって身近な選択肢になっていない。シーンや業界を盛り上げようという掛け声だけでは、この状況は変わりません。
私が考えを重ねた末にたどり着いたのが、遠ざけられがちな文化を教育の題材にするという発想でした。クラブに足を運ぶ年齢になる前から、その背景や意義も含めて学べる授業は、それを形にしたものです。こうした学校教育だけでは十分に届きにくい領域こそ、民間や業界が率先して担っていく意味があるのではないでしょうか。
若者を客にしない
若年層を目先のマーケティング対象として見るだけでは、将来のファンも、消費者も、担い手も育ちません。服も音楽も、ごく一部の人たちの趣味になった瞬間に、文化としても産業としても細っていきます。
必要なのは、売ることより先に、多様なインプットや未知の体験に出会える企画を提供すること。楽しかったと記憶に残る時間を一緒につくることです。イベント当日、私が目の当たりにした10代のエネルギーは想像以上でした。熱量は、こちらがあおって生まれるものではありません。心が動けば、それは自ずと立ち上がる。あの日のフロアが、そのことをはっきり示していました。

参加した高校生たちとの記念撮影
「商売」の前に「招待」。それは上から目線で教え込むことでも、価値観を押し付けることでもありません。自分たちが学生だった頃を振り返り、あの時あったらよかったと思える経験を若者に届けることです。
今まいた種が、数年後の裾野を広げ、街の文化や産業を支える土壌を育てていくのではないでしょうか。当誌はこれからも、地域の若者に独自のプログラムを用意していきたいと思います。

山本佑輔(やまもと・ゆうすけ) 04年に創刊した岡山県発のファッション・カルチャー誌『プラグマガジン』編集長。プラグナイトやオカヤマアワードといった地方発のイベントや企画もディレクションしている。24年度グッドデザイン賞で雑誌として史上初めての金賞(経済産業大臣賞)を受賞。通り名はYAMAMON(やまもん)。https://lit.link/yamamon
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