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ときめきとコンプレックスを纏う、あののファッション哲学

あの

Image by: FASHIONSNAP

あの

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ときめきとコンプレックスを纏う、あののファッション哲学

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 今をときめくタレントであり、アーティストとして活動の幅を広げるあの。ファッションアイコンの顔も持つ彼女が、ソロアーティストの活動5周年を迎えた節目に、自身のファッションブランド「ヘルブラウ(HELL BLAU)」を立ち上げた。記念すべきファーストコレクションのテーマは「スクール」。無邪気さと強さを内包し、既存の枠に囚われない唯一無二の輝きを放つ彼女が、制服という普遍的なスタイルに込めたものとは。ファッションの原体験やスタイルアイコンであることへの思いを通して、彼女の瞳の奥に広がる深淵を覗き込む。

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コンプレックスを抱く「学校」と自分らしい「服」の融合

──ブランドの立ち上げに至った経緯を教えてください。

 最初は、自分がほしいものを形にしたいと思ったのがきっかけでした。「こういうのが着たい」というアイデアをもとに、いつも僕のスタイリングを担当してくれている神田百実さんにアドバイスをもらいながら、いろんな人に協力をお願いして、みんなで作っていった感じです。最初にブランドをやろうという話が出たのが2年くらい前なので、ようやく発表できました。

──ファーストコレクションのテーマは「スクール」ですが、インスピレーション源は?

 僕はずっと学校が嫌いだったんですけど、ジャージーとかプリーツスカートとか、制服っぽいものは昔から好きで、素直に「着たい」と思うものを集めた結果、スクールアイテムをベースにしたコレクションになりました。ずっと私服で履き続けているルーズソックスを一から作ったり、KUMONのバッグの形が好きなので、それをイメージしたスクールバッグを出したり。コンプレックスを抱く「学校」と、自分らしい「服」を融合したイメージです。

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──コレクションを通して、学校への複雑な思いを昇華させている?

 今、制服を着ることで当時の自分を取り戻している感じですね。学生時代、セーラー服で通学しなきゃいけなかったんですけど、クラスの子に制服を隠されたことがあって。そういう時はジャージーで登校していたんですけど、先生は事情を知らないから「ジャージーで登校するのは禁止だ」って怒ってきたり。そんな記憶も相まって、自分の中に潜在的にある学校へのコンプレックスも含めて、形にしました。

──今回のコレクションで、特にお気に入りのアイテムは?

 全部お気に入りではあるんですけど、足袋のルーズソックスはこだわりました。可愛らしいワンピースに下駄を合わせたりするのが好きなので、そういう時にも履けるように足袋型にして、溜まり方とか膨らみ方も、足が綺麗に見えるように何回もテストしました。ジャケットのセットアップは、パンツとスカートを選べるし、袖のレースも取り外しができるので、男女関係なく、クールに決めたい時も可愛く決めたい時も着られるアイテムで気に入っています。

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ずっと“ハズレの色”を選んできた自分を表現

──ブランド名の「ヘルブラウ」はドイツ語で「水色」を意味するとのことですが、命名の由来は?

 水色は僕にとって、意識しなくても出てくるものというか、心の奥底にある色。僕はこの仕事を始めるまで、自分に色がないと思っていたし、好きな色もなかったんです。周りの友達はみんなピンクを選んでいたけど、僕はしっくりこなかった。でも、グループへの所属をきっかけにこの仕事を始めて、担当カラーが水色になったとき、めちゃくちゃしっくりきたんです。それからは、持ち物も水色ばっかりになって。ずっと好きな色なので、自分自身を表す色として名付けました。

あの
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──9月4日リリースの新曲「ミッドナイト全部大丈夫」の歌詞にも「水色少女どこにもいない」とありますね。

 僕はずっと“ハズレの色”というか、水色がハズレというわけではないけど、「お前はハズレ」と言われる道、みんなが選ばない色を選んで生きてきました。今でこそ、“水色=可愛い”になってきたけど、ハズレの道を選ぶ生き方をしてきたからこそ、歌詞にはそういう自分の思いを色で表現したつもりです。

──水色といえば、あのさんのファッションを起点に「水色界隈」という言葉が生まれたのはご存知ですか?

 「水色界隈」とか、「天使界隈」とか言われていますよね。

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──ご自身のスタイルが一つの“界隈”になっていることを率直にどう感じていますか?

 僕は新しいジャンルを作ろうと思ったわけではなかったけど、自分のファッションをきっかけに界隈が出来ているのは面白いです。昔、僕が水色のジャージーを着て、ルーズソックスを履いて、ヘッドドレスをつけて街を歩いてた頃は、周りにそういう格好をしている子は全然いなくて。「すごい格好だね」とか「あのちゃんだから着られるんだよ」みたいに言われたりもしました。それが今、街にそういう格好をした子がいっぱいいるのは、不思議な感覚です。もちろん、僕のことを真似しているわけじゃない子もいっぱいいるだろうけど。意識していなくても、広がることもあるんだなと。

──あのさんはデビュー当初から、ご自身のスタイルを真似するファン“あのギャ”が沢山いましたよね。

 自分自身、服だけじゃなく性格とか全部がコンプレックスというか、生きづらさの塊だったので、当時はあまり理解できませんでした。今でこそ少し喋れるようになったけど、当時は全く喋れないのに、急にカメラを向けられて一生懸命喋ってた結果、挙動不審だったし。それが“キャラ”とか言われて、その“キャラ”を真似する子が出てきたり。自分の生きづらさが真似されるという現象が、すごく不思議でした。「憧れ」って言ってもらえて嬉しい反面、「憧れるような存在じゃないのに」「(憧れるなら)代わってほしい」って思うくらい、その時は自分のことが嫌でした。

──当時、日々のファッションスタイルはどういう基準で選んでいたのでしょうか。

 感覚でしかないんですよね。「こうしたらこう見える」とかはあんまりなくて。水色が好きで、ダボっとしたシルエットが好きで、ルーズソックスも好きで。ただ好きなものを組み合わせてコーディネートしていたので、「誰かがこう着ていたから」とか「何をどうしたら可愛く見えるか」とかの意識はなかったです。

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ファッションの原体験は「ときめき」

──洋服は、昔から好きだったんですか?

 子どもの頃は、お兄ちゃんのお下がりばかり着ていたし、あんまり興味がなかったんですけど、小学校3〜4年生くらいのとき、買い物に行った時に見かけた水色のジャケットを初めて「可愛い、欲しい」と思ったんです。自分から欲しいと思った服は初めてで、それを買ってもらったことをきっかけに、服が好きになったし、自分で服を選ぶようになりました。そういえば、そのときも友達が僕と同じジャケットを真似して着ていましたね。

──その時に初めて“着たい服”に出会った?

 服を見て「ときめく」という感覚が初めてでした。

──ファッションにおいて、映画やアニメなどのコンテンツから影響を受けることはありますか?

 うーん......。アイドルを始めたのをきっかけにステージ衣装を着るようになったので、衣装の影響はあるかな。でも、アニメとか映画から影響を受けることは、ほとんどなかったです。雑誌も全く読んでいなくて、今でも雑誌名やブランド名には詳しくないですね。

 可愛いと感じた服があっても、ブランドとかデザイナーとかの情報にそこまで興味がなくて。音楽も同じで、「この曲が好き」だからといって「このアーティストをもっと知りたい」とまでは、なかなか至らないんです。だから、ヘルブラウの服も、可愛いと思ってもらえるアイテムがあったらぜひ身につけてみてほしいし、ハードルを低く考えてほしいなって思います。「ヘルブラウが好き」って思わなくていいし、お気に入りのものが一つでもあったらいいなって。

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誰かにとっての“お守り”や“武器”になる服を届けたい

──作詞作曲含め、自身で楽曲制作を行うあのさんですが、服作りと通ずる点は?

 音楽とファッション、どちらからもインスパイアされるし、繋がっている感じがします。楽曲を作る時は、曲の主人公をイメージして、その主人公がどんな服を着ているのか想像しますし、MVやステージに立つ時の衣装は、楽曲のメッセージを伝えるのに必要不可欠です。そういう意味でも、僕にとって服と音楽は切り離せないものですね。あと、洋服は気分によって着るものが変わるけど、僕のアーティストスタイルも、それと似ているかも。僕の曲には、ロックも、アイドルソングっぽいものも、オルタナも全部あるし、作る時の気分によって出来上がるものも大きく変わります。

──ヘルブラウのターゲットも、普段の楽曲制作におけるターゲットと共通する部分はあるのでしょうか。

 楽曲を作る時は、誰かのために作っている感覚はあまりないです。その先にいる誰かを意識するというよりは、自分が音楽を必要としているだけ、というか。でもその結果、僕が作った音楽が誰かにとっての“お守り”や“武器”として、生きづらい世の中を生きていけるきっかけや、支えになったらいいなと思っています。

 ヘルブラウにかける思いも、それと同じです。この前、ファンの子から「あのちゃんと同じ髪型にしたら、すごくパワーがみなぎってきて調子がいい」とメッセージをもらったんですけど、手に取ってもらうきっかけも、それと同じ感覚で「あのちゃんとお揃いだから」でも、洋服が好きだからでも、何でも良くて。着る人にパワーを与えられるような服を届けていきたいです。

あの

最終更新日:

■あの
2020年9月、ano名義でソロアーティストとしてのキャリアをスタート。2022年4月、トイズファクトリーからメジャーデビューを果たした。音楽活動に留まらず、タレントや女優、モデルとマルチに活動している。独自のファッションセンスから、若者のファッションアイコンとしても支持を集める。

■ヘルブラウ(HELL BLAU)
公式サイト公式X公式インスタグラム

■「呪いをかけて、まぼろしをといて。」

あの

リリース日:2025年9月4日(木)
収録内容:1. KILL LOVE(作詞:あの 作曲:あの 編曲:Yuzuru Kusugo)/ 2. ミッドナイト全部大丈夫(作詞:あの 作曲:あの 編曲:UCARY & THE VALENTINE)

テーラードジャケット(3万8500円)、プリーツスカート(2万2000円)/ヘルブラウ
※ルーズソックス、スクールバッグ、ジャージ、スカート、ネックレス、レッグウォーマー、ニット帽は冬頃発売予定。

photographer: Kaho Okazaki, styling: Momomi Kanda, hair&makeup: URI │ text&edit: Miki Harigae(FASHIONSNAP), direction: Mina Jokoji (FASHIONSNAP),

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