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5年ぶりのランウェイ、ファッション・イースト出身アシュリー・ウィリアムスが描いた人物像とは?

5年ぶりのランウェイ、ファッション・イースト出身アシュリー・ウィリアムスが描いた人物像とは?

 世界都市のファッションウィークのなかで、ロンドンは常に次なる若手デザイナーを輩出することを期待されてきた。25周年を迎えた「ファッション・イースト(FASHION EAST)」は、まさにロンドンの役割を根幹で支えてきた若手育成プラットフォーム。今まで幾度となくロンドンファッションウィークの盛り上がりが欠けても、若手を育てようという連帯感は失われることがなかったのは、キム・ジョーンズ(Kim Jones)、ハウス・オブ・ポーランド(House of Holland)、ガレス・ピュー(Gareth Pugh)、マーティン・ローズ(Martin Rose)を始めとするファッション・イーストの卒業生が輝かしい功績を残してきたからこそでもある。

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FASHION EASTの展示

 世界もファッションも停滞するなかで、ロンドンもまさにいま次なるスターを生み出す準備期間に入ってる。しかし、ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)やクレイグ・グリーン(Craig Green)、マルケス・アルメイダ(Marques Almeida)が「ファッション・イースト」から支援を受けて初期のコレクションを発表する直前の、2010年頃も同じ状況ではあった。現地の友人に「残念だね、いまロンドンファッションウィークはゾンビ状態だよ」と当時言われたことを鮮明に覚えている。その頃はショックだったが、いま思えば、そのくらい若手を育成・送り出すまでに時間がかかるものなのだと理解できる。

Fashion East 2026年春夏

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Fashion East 2026年春夏コレクション

2026 SPRING SUMMERファッションショー

 今年のファッション・イーストの受賞者は、メイヒュー(Mayhew)、ヌバ(Nuba)、ヤツェク・グレバ(Jacek Gleba)の3組。ショー会場ともなった「ICA(The Institute of Contemporary Arts)」の併設スペースでは、ファッション・イーストの25年間の歴史を振り返る展示も開催された。2007年のキム・ジョーンズが自身のブランドを手がけていた頃のキャンペーンや、2011年のシモーン・ロシャのインスタレーション、2013年のクレイグ・グリーンのデビューショーで使われた装飾など貴重な初期コレクションの展示から、壁一面にいままで輩出してきたブランドのルックやバックステージフォトがコラージュ。なかには、いまやブランドを解散しているミーダム・カーチョフ(Meadham Kirchhoff)やアート・スクール(ART SCHOOOL)の写真も掲示してあり、来場者も思い出を語り合う。育成することの辛抱強さを25年間も受け入れているブリティッシュ・ファッション・カウンシルの懐の深さと理解のあるスポンサーに改めて感銘を受ける展示となった。

FASHION EASTの展示

 ファッション・イースト出身者であるアシュリー・ウィリアムス(Ashley Williams)は、「ケアと満足のシステム」をテーマに、5年ぶりにランウェイ形式でのコレクションを発表。2020年頃にはパンデミックの影響で一時的にブランド活動を休止していたが、2022年にファッション・イーストがUGGとの連携プログラム「XLNC」による支援金で復活を遂げた。

Ashley Williams 2026年春夏コレクション

Image by: Ashley Williams

 2026年春夏コレクションの主人公は、地方の町に暮らし「欲しいものではなく、手元にあるものの中に目的を見出す」ような人物像。日々感じるささやかな喜びに満足し、ガーデニングを大切にする。他人からすれば、一見、平凡で単調に見える営みでも、それは誰かへの奉仕になっているのではないだろうかというデザイナーからの愛のある想いから始まった。レントゲン技師、看護師、セメント作業員、そしてトイレットペーパー工場の従業員などーーさまざまなワークウェアが登場するなか、やはり細部にアシュリー・ウィリアムス独特の奇妙さが光る。矯正用のパッド入りベルト、リストバンドのように腕に付けられた花柄のトイレットペーパー、花飾りのついたX線防護メガネ、椅子が固定されたリングなど思わずオーディエンスから笑みがこぼれるポップなアイテムが次々に登場。表面的には明るく可愛らしいユーモアに満ちた世界観。しかし、コレクションノートの最後に残されたアシュリーの問いは、その軽やかさの奥に深い余韻を残した。「真のコミュニティとは、誰に開かれているのか。“ホーム”と呼べる感覚は、本当にその場所を離れなかった者だけに与えられるものなのだろうか」。それはロンドンファッションウィークにも、SNSに充実した毎日をあげなければと焦ってしまう私たち一人ひとりにも投げかけられた、鋭い問いかけだった。

アーティストコーディネーター/ファッションライター

Yoshiko Kurata

1991年生まれ。国内外のファッションデザイナー、フォトグラファー、アーティストなどを幅広い分野で特集・取材。これまでの寄稿媒体に、FASHIONSNAP、GINZA、HOMMEgirls、i-D JAPAN、SPUR、STUDIO VOICE、SSENSE、TOKION、VOGUE JAPANなどがある。2019年3月にはアダチプレス出版による書籍『“複雑なタイトルをここに” 』の共同翻訳・編集を行う。2022年にはDISEL ART GALLERYの展示キュレーションを担当。同年「Gucci Bamboo 1947」にて日本人アーティストniko itoをコーディネーションする。

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