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青文字系雑誌の休刊ラッシュ、M&Aも...ファッションメディアの潮流<2017年>

 今年も出版・メディア業界では創刊や休刊、デジタルメディアの台頭などさまざまな話題が世間をにぎわせました。また、出版不況から脱するM&Aも加速。今年のファッションメディアで最も象徴的だった出来事を総括します。

【2015年版】雑誌からデジタルの時代に?ファッション出版業界の出来事まとめ

青文字系ファッション誌の休刊が相次ぐ

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(左から)「KERA」「Zipper」

 これまでに定期刊行をストップしている「フルーツ(FRUiTS)」や「キューティ(CUTiE)」「セダ(SEDA)」に続き、今年は「ケラ!(KERA)」「ジッパー(Zipper)」などが休刊を発表。現代の読者のニーズや出版業界の変化に伴った決断で、ケラ!はデジタルマガジンに移行しました。ジッパーもメディアのブランド力を活かした新たなビジネスを検討するなど、紙媒体以外の領域で資産を活用する動きが活発化しています。

 ジッパーやケラ!は、いずれも原宿ストリートをメインにした個性的かつ同性受けする"青文字系ファッション"を多く取り上げ、90年代以降のカルチャーを語る上で欠かせない存在となった雑誌。両誌の休刊は「個性派ファッションの終焉か」とも言われました。

 また、ケラ!から派生した「ゴシック&ロリータバイブル(Gothic&Lolita Bible)」も休刊。今年は原宿発ロリータ&パンクブランド「プトマヨ(PUTUMAYO)」が休止を発表したほか、「アルゴンキン(ALGONQUINS)」や「ベイビー、ザ スターズ シャイン ブライト(BABY, THE STARS SHINE BRIGHT)」「イノセントワールド(Innocent World)」といったロリータやゴシック、パンク系のブランドの閉店が相次ぎ、ゴスロリ時代の終わりを感じさせる一年にもなりました。

>>【関連】原宿・新宿から消えた?ロリータは今どこにいるのか

<休刊した雑誌>
2月「Gothic&Lolita Bible
3月「Soup.(※デジタル専売に)」
4月「KERA
8月「NYLON」(米国版)
10月「Samurai ELO
12月「Zipper」「WIRED(日本語版)」

<発行頻度を変更>
11月「GQ JAPAN
2018年3月「FRaU」「おとなスタイル
2018年5月「装苑

デジタルメディアが乱立、媒体整理で閉鎖も

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閉鎖した「SILLY」

 昨年8月発売号で休刊した女子高生向けファッション誌「ランズキ(Ranzuki)」やケラ!などがデジタルに移行。3月に休刊した「スープ(Soup.)」は"デジタル専売"という形で雑誌を継続するなど、今年もあらゆる方法でデジタルを活用する出版社が増えました。小学館が参画した新体制の下、「メリー(MERY)」が再スタートを切ったのが11月下旬。さらに今年は、小嶋陽菜など芸能人による新メディアや、インスタグラムのストーリーズ機能を活用した「ルーテ(lute)」といった新顔のウェブメディアも登場しました。

 海外でも米版「ナイロン(NYLON)」が月刊誌を終了し、デジタルに一本化。コンデナストもLGBTQプラットフォームとして「them」を開設しました。

 出版不況を背景に雑誌からデジタルへの移行が顕著ですが、サイバーエージェントはウェブマガジン「シリー(SILLY)」を閉鎖。「ハニカム(honeyee.com)」では「ファタール(.fatale)」を統合するなど、媒体整理によって終了する媒体も。デジタルメディアが乱立し競争が激化する中で、M&Aやリストラを実施する企業も増えていることから、2018年以降はさらに淘汰されていくかもしれません。

<新たに誕生したデジタルメディア>
3月「日刊Ranzuki」「PeLuLu
5月「SHEROS」「Women's Health
6月「Mastered
8月「lute
9月「She is」「新R25
11月「Harunakojima is」「MERY

<閉鎖したメディア>
2月「SILLY
6月「.fatale(honeyee.comに統合)」

アラフォー女性管理職、シニア富裕層などに向けたニッチな媒体に注目

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(左から)「OWN」「GG」

 アラフォーの女性管理職に向けたビジネスファッション誌「オウン(OWN)」など、明確なターゲットを設定する新雑誌の創刊も目立ちました。その中でも話題になったのは、50代〜60代のシニア富裕層に向けた月刊誌「ジジ(GG)」。「レオン(LEON)」や「マデュロ(MADURO)」で創刊編集長を務めた岸田一郎氏が編集長を務め、ファッションから相続・遺産までを展開するという同誌ならではのコンテンツに注目が集まりました。

 また、"ゴスロリ時代の終わり"とも言われている一方でロリータ系ファッションを扱う「チュール(tulle)」や「メルト(melt)」「ミエル(Miel)」が発売。少数派でも熱烈なファンを取り込んだり、セグメントを絞った雑誌が再び登場しています。

<今年発売された新雑誌>
4月「OWN」「TEEED
6月「GG」「4MEEE magazine
9月「ageha(※小悪魔agehaから名称変更)」
11月「Soup.plus+」「小悪魔ageha(※発行元を変えて復刊)」「tulle

出版・メディア業界でM&Aが加速

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ベクトルグループがOPENERSを買収

 今年は休刊ラッシュに加えて、企業単位でも大きな動きがありました。最も印象的だったのが、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下、CCC)による徳間書店主婦の友社の買収。徳間書店は「ラルム(LARME)」、主婦の友社は「レイ(Ray)」や「ミーナ(mina)」といった人気雑誌を展開しています。CCCグループは両社が持つ編集力や取引先との信頼関係を活用し、同グループの事業と掛け合わせた新しいライフスタイル提案をしていくとのこと。

 また、国内大手PR会社のベクトルグループもメディア事業に注力しており、今年はウェブマガジン「オウプナーズ(OPENERS)」運営会社を買収。さらに米ハーストが「メンズ ヘルス(MEN'S HEALTH)」「ウィメンズ ヘルス(WOMEN'S HEALTH)」などを発行するロダールを獲得し、米出版大手のタイムが米メディア大手のメレディス・コーポレーションに身売りするなど、世界のメディア業界でもM&Aが加速しています。

 このほか、今年は日之出出版とマガジンハウスによる業務提携、ぶんか社と日本産業推進機構(NSSK)による資本業務提携などがありました。海外ではECサイト「ファーフェッチ(Farfetch)」が「ヴォーグ(Vogue)」や「GQ」などを運営するメディア企業 コンデナストとパートナーシップ契約を締結。これに伴い、コンデナスト傘下のファッションサイト「Style.com」がサービスを終了したことも話題になりました。

fashionmedia_20171231_stepdown_ma.jpgサービスが終了した「Style.com」

<主な出来事>
3月:CCCが徳間書店を買収サイバーがR25運営会社を買収
6月:ファーフェッチとコンデナストがパートナーシップ提携
8月:日之出出版がマガジンハウスと業務提携
9月:ベクトルがOPENERSを買収
12月:CCCが主婦の友社を買収

国内外で名物編集長が続々と退任

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ハニカムから去った鈴木哲也元代表兼編集長

 国内では、裏原カルチャーをメインに発信するウェブメディア「ハニカム」創業時から携わってきた鈴木哲也元代表兼編集長が退任。新編集長として元「アイスクリーム(EYESCREAM)」副編集長の武井幸久が引き継いでいます。また、メンズファッション誌「メンズクラブ(MENS CLUB)」などハースト婦人画報社の3誌で編集長を務めた戸賀敬城が同社を退職。現在はナノ・ユニバースのメンズディレクターとして活動しながら、今月にはラグジュアリーに特化した新ブログサイト「LUX-BLO」をスタートさせました。

 海外では、英国版「ヴォーグ(Vogue)」で25年にわたり編集長を務め、アナ・ウィンターとともに同誌の顔として活躍したアレキサンドラ・シュールマンが退任。後任はエドワード・エニンフルで、同誌初の男性編集長となったことも話題になりました。なお、シュールマンは9月からファッションメディア「ビジネス・オブ・ファッション(The Business of Fashion)」に参加しています。このほか、米国版「ヴァニティ・フェア(Vanity Fair)」で編集長を25年務めたグレイドン・カーターが退任しました。

<主な出来事>
4月:鈴木哲也がハニカム元代表兼編集長を退任戸賀敬城がハースト婦人画報社を退社宮坂淑子がDifa編集長に就任
5月:ハニカム新編集長に元EYESCREAMの武井幸久が就任
6月:アレキサンドラ・シュールマンが英国版Vogue編集長を退任
7月:アレキサンドラ・シュールマンがThe Business of Fashionに加入
8月:エドワード・エニンフルが英国版Vogue初の男性編集長に
12月:戸賀敬城が新サイトを開設グレイドン・カーターがVanity Fair編集長を退任