
クリス・ヴァン・アッシュ
「フレッドペリー(FRED PERRY)」とクリス・ヴァン・アッシュ(Kris Van Assche)によるコラボレーション「FRED PERRY x KRIS VAN ASSCHE」が登場。2月20日に、FRED PERRY SHOP東京・大阪・名古屋および公式オンラインストアで発売となる。
伝説の英国人テニスプレイヤー、フレデリック・ジョン・ペリーによって1952年に設立されたフレッドペリー。月桂樹のエンブレムを配した鹿子素材のポロシャツは、テニス界にはじまり、1960年代にはモッズムーブメントの台頭とともにサブカルチャーのアイコンとしてその地位を確立。2008年に「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」とのコラボレーションを発表して以降は、「クレイグ・グリーン(CRAIG GREEN)」、「チャールズ ジェフリー ラバーボーイ(CHARLES JEFFREY LOVERBOY)」、「ケイスリー・ヘイフォード(Casely-Hayford)」など、気鋭デザイナーとの協業コレクションを数多く送り出してきた。
新たに白羽の矢が立ったクリス・ヴァン・アッシュは、「ディオール オム(DIOR HOMME)」で11年間、「ベルルッティ(BERLUTI)」で3年間クリエイティブディレクターを務めた、いわばラグジュアリーファッション界の寵児であり、研ぎ澄まされたテーラリングの美意識を武器に、メンズファッションの世界で新たな人物像を作り出したスターデザイナーだ。2015年に自身のブランド「クリスヴァンアッシュ(KRISVANASSCHE)」を休止、2021年にベルルッティを去ってからは、中国のスポーツウェアブランド「アンタゼロ(ANTAZERO)」や、ベルギーのライフスタイルブランド「セラックス(SERAX)」とのコラボはあったものの、長らく表舞台から離れていた。
久々にグローバルファッションマーケットへの復帰となったのが、今回の「FRED PERRY x KRIS VAN ASSCHE」。制作にあたり、ユースカルチャーにおけるユニフォームの再定義と、その現代的なアップデートを目指したという。フレッドペリーが培ってきたクラシカルな要素を基盤に、伝統と革新のバランスを意識しながら、独自の視点で再構築したコレクションの発売に先駆け、クリエイションの背景やヴィジョンについてクリスに聞いた。

──フレッドペリーとのコラボレーションのコンセプトを教えてください。
私が普段から関心を寄せるのは、相反する二つの要素がもたらす緊張と共鳴。特にフォーマルとカジュアルという要素が、個々のアイデンティティや社会的な規律、サブカルチャーと結びついたときに生まれる相関関係に強く惹かれます。テーラードジャケットとボタンダウンシャツ、トラックスーツとポロシャツ。これまで私はラグジュアリーファッションの世界に身を置く中で、ユースカルチャーのエネルギーを取り入れることに注力してきましたが、今回のコラボではその逆のアプローチに挑戦しました。言うなれば、若者のユニフォームを前進させるということです。
見慣れたフレッドペリーのアイテムを解体し、見つめ直し、再構築することで、スポーツウェアとエレガントなフォーマルウェアの境界線を取り払うということ。ポロシャツはボタンダウンシャツへ、ピンストライプのトラックスーツはテーラードジャケットへと変化するのです。フレッドペリーのシャツにネクタイを合わせるというのも、同様のコンセプトのもとに取り入れたスタイリングです。

──画一的なイメージに結びつきがちなユニフォームに着目する理由はなんですか?
まずユニフォームという概念が好きですね。これまで在籍してきたブランドにおいても、ユニフォームをテーマにしたコレクションを度々手掛けてきました。ワークウェア、学校の制服、軍服、そしてフォーマルなシーンのドレスコード。ことサブカルチャーの文脈では、特定の文脈に所属していることを示すコードになります。自分たちとそうでないものを区別するためのツールであるユニフォームと向き合うことで、既存の枠組みの持つ権威を和らげ、伝統や格式に儚さと若々しさをもたらします。そういったルールがあるからこそ、私はそれを打ち破ることが好きなのです。
今回のコレクションでは、メンズ、ウィメンズという区別も取り払いました。ジェンダーに関係なく、同じコードを使い、同じ音楽を聴き、同じ感情を共有する。その共同体で取り入れられる服は、ある種のユニフォームとして機能していると考えています。
その一方で、ユニフォームはある一定の年齢を超えると、よりパーソナルな思い出と繋がるツールにもなります。強さや、クールなグループの一員であることを示すと同時に、他者との関わり合いに影響を与えるものです。例えばプロムや初めてのデートで着る服がそれにあたります。フワラーモチーフのバッジには、そんなロマンティックなメッセージを込めています。

──長らくラグジュアリーファッションの世界に身を置いてきましたが、今回のコレクションはどんな違いがありますか?
これまで手掛けてきたブランドと比べ、ずっとコンパクトなコレクションで、13点のアイテムにメッセージを凝縮する必要がありました。全体のイメージからディテールに至るまで細心の注意を払いながら、ストーリーを構成するというのは非常に新鮮な経験でした。
──数あるスポーツカジュアルブランドの中で、フレッドペリーが特別だと思う理由は?
幼い頃から慣れ親しんだブランドということもあり、フレッドペリーは私にとって直感的に理解できる視覚言語でした。スポーツウェアでありながらエレガントで、規律に則っていながら反逆的でもある。アントワープ王立芸術アカデミーの学生だった頃は、ヴィンテージショップで購入した細身のスーツに、フレッドペリーのポロシャツとネクタイを合わせて着ていたんです。
これまで在籍してきたブランドにおいても、コレクション制作のムードボードの中で、フレッドペリーを着た人のイメージを度々用いてきました。ディオール オムであれ、私自身のブランドであれ、スポーツやユースカルチャー、サブカルチャーは私のクリエイションにおいて非常に重要なインスピレーション源であり、フレッドペリーがまさにそれを体現していたのです。そういった意味で、今回のコラボはある意味、フルサークル(=様々な場所を経て、元にいた場所に戻ること)だと言えるでしょう。私に多大なインスピレーションを与えてくれたブランドに、今度は私がインスピレーションをもたらせたら。揺るぎないアイデンティティやコードが確立されているということが、フレッドペリーが特別な理由であり、私がこのブランドに魅了される理由です。
──コレクションを制作するにあたり、フレッドペリーの歴史やアーカイヴに触れる機会も多かったかと思います。特に印象的なストーリーやアイテムはありましたか?
アーカイヴで過去のプロダクトをリサーチする時間は、まさに天国にいるようでした。慣れ親しんだブランドではありましたが、私が見たこともないような一面に触れることができ、感銘を受けたのです。具体的にはフラワーモチーフのニットなど、アーカイヴを基にしたアイテムを、今回のコレクションに取り入れています。

それ以上に感動したのは、創業者であるフレデリック・ジョン・ペリーの人生です。彼は労働階級の出身であり、20世紀初頭のイギリスでテニスはブルジョワ階級のスポーツでした。そんな中、圧倒的な実力に加え、彼が戦略的に取り入れたのがファッションというツールだった。自身の身だしなみを通して自己表現し、上流階級に溶け込んでいったのです。彼と衣服との関係性を通して、ファッションの影響力を改めて実感し、大いにインスパイアされました。
──装いを通して自身のアイデンティティを表現した彼の時代と比べ、SNSが発展した現代では他者に影響されやすい傾向にあります。人々の装いをどう見ていますか?
情報過多、コミュニケーション過多の時代においては、どれだけ自己を表現しようとしても、結果的に類似してしまうことは避けられないことでしょう。だからこそ、SNSのアルゴリズムをも超越するような、個性を表現しようとする人が出てきて欲しいと願っています。
──クリエイションと向き合う上で、最もインスピレーションを受けるものは?
私がこよなく愛するのが、古い時代の美しさです。これは決して、懐古主義であるとか、昔は良い時代だったと美化しているわけではありません。古い時代の装いから思い描くのは、ドレスアップするために努力するということ。特別なオケージョンのために、とびきりおしゃれをする。昨今ではあまり見られないことですが、私はこの姿勢が美しいと思う。だからこそ、テーラリングが好きなのかもしれません。
ドレスコードが崩壊しつつある現代において、それを過去のものとして忘れ去るのではなく、現代に合った形で書き換えたいと強く思っています。スーツがこの世から消えることはないでしょう。時代によって少しずつスタイルを変えていくのです。それはスポーツウェアにおいても同じで、機能性だけでなく、洗練されたものへと形を変えて受け継がれていく。伝統的なテーラリングとスポーツウェア、そのいずれにおいても否定するのではなく、現代にふさわしい形に仕立ていきたいと考えています。

──ファッションへの情熱に加え、あなたのソーシャルメディアでの投稿を見ていると花への強い情熱を見ることができます。花に惹かれる理由はなんですか?
私のファッションは贅沢さではなく、「注意を払うこと」にあります。醜い世界において、ファッションや花は意志的な行為です。花とファッションは似ています。どちらも生きるために不可欠ではない。でも、日常を美しくするために必要な存在です。
私が好むファッションは、決して他を圧倒するような絢爛さのあるものではなく、細部に至るまで注意深く意識が向けられたものです。身にまとうものを選ぶという行為と、花を手に取るという行為はいずれも意識的なものです。これまでに発表してきたコレクションにおいても、花は非常に重要なモチーフであり、クリス・ヴァン・アッシュの2シーズン目にあたる2006年春夏コレクションから継続的に向き合ってきました。ファッションと花が持つ共通項、それはいずれも生きる上で不可欠ではないということ。その上で、日々の生活をより良いものにするために欠かせないということです。
今回のコレクションでも制作したフラワーモチーフのバッジは、私にとってシグネチャーのようなもの。ディオール オムの2015-16年秋冬、そして日本人アーティストの亀井徹さんとのコラボで制作した2017年春夏コレクションでも登場しました。ラペルに花を挿すというのは、先ほども挙げた古い時代の美しさの象徴であり、フラワーモチーフは、それを今日の装いの文化に合わせてアップデートさせた私なりの表現です。

──好きな花はなんですか?
一番好きなのはチューリップ。ですが最近は、様々な種類の花を、対照的に、意外性のある組み合わせで取り入れるのが気分です。
──ラグジュアリーメゾンのクリエイティブディレクター時代と比べ、ライフスタイルは変わりましたか?
2023年に出版した書籍『Kris Van Assche – 55 Collections』を完成させた後、20年近く続いたジェットコースターから降りたような安堵感がありました。今は小さな規模で、より精緻な注意力が求められるようなプロジェクトにシフトしています。私がパリでショーを開催していたときに比べ、デザイナー交代が熾烈になり、コレクションサイクルがさらに複雑になりつつある昨今ですが、私が今共感するのはヴィジョンが明確であること。セラックスと制作したフラワーベースや、パリのダウンタウンギャラリーのために制作したブロンズの器、そして今回のフレッドペリーとのコラボがまさにそれにあたります。強いアイデンティティを持っていて、揺るぎない視点を持ったブランドとの仕事が、今の自分の感覚に合っているのです。

クリス・ヴァン・アッシュ
interview, text: Shunsuke Okabe
イベント:Launch Party at FRED PERRY SHOP TOKYO
コラボレーションアイテムの発売に合わせ、「フレッドペリーショップ東京」でローンチパーティーを開催。当日はクリス・ヴァン・アッシュ本人に加え、スタイリスト/ファッションディレクターとして活動するTEPPEI、お笑いトリオ「四千頭身」のメンバーとして活動する傍ら、自身のブランド「ヒロキツヅキ(HIROKI TSUZUKI)」 を手掛ける都築拓紀を迎えたトークセッションを行う。ドリンクやフードの提供もあり、誰でも参加することができる。入場無料。

※どなたでもご入場いただけます
※アルコール提供に際し、IDチェックを行わせて頂く場合があります
※来場者多数の場合は入場制限させて頂く可能性があります
最終更新日:
PAST ARTICLES
【インタビュー・対談】の過去記事
RELATED ARTICLE
関連記事
RANKING TOP 10
アクセスランキング

COMME des GARÇONS HOMME PLUS 2026 Spring Summer
















