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Image by: 東京エディション虎ノ門

フューチュラ、カウズ、藤原ヒロシが語る「東京が生むクリエイティブの源泉」

対話から見えた、街が与えるインスピレーション

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 アーティストのフューチュラ(FUTURA)の70歳の誕生日を記念し、ゲストに現代アーティストのカウズ(KAWS)と藤原ヒロシを迎えた特別トークイベント「FUTURA in Conversation with Hiroshi Fujiwara and KAWS」が東京エディション虎ノ門で開催された。

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 1955年ニューヨーク生まれのフューチュラは、1970年代にグラフィティがアートギャラリーと交差し始めた黎明期において、文字表現が主流だったグラフィティに抽象表現を持ち込んだ先駆者の一人として知られている。ストリートの衝動を美術館へと持ち込む姿勢は、カウズら次世代のアーティストにも受け継がれた。グラフィティを抽象へと昇華したフューチュラ、玩具や象徴的モチーフで具象表現を刷新したカウズ、そして音楽やストリート、ラグジュアリーをつなぐ存在として幅広く影響を与えてきた藤原ヒロシ。彼ら三者の関係は単なる個人的な親交を超え、文化の交差点として相互に作用していると言えるだろう。

 同イベントでは、モデレーターに「ベドウィン アンド ザ ハートブレイカーズ(BEDWIN & THE HEARTBREAKERS)」の渡辺真史を迎え、「日本とのつながり」をテーマに三者がそれぞれの視点から語り合った。話題は東京の魅力や自身の日本との関わり、そしてなぜ東京が今も世界のクリエイティブを惹きつけるのかへと広がった。

フューチュラ初の東京、そして戻ってくる理由

 フューチュラが初めて来日したのは1975年。来日時は知人もおらず、富士山のような典型的なイメージしか持っていなかったというが、実際の東京は「非常にモダンで清潔、素晴らしい場所」だったと振り返る。次の来日は1983年で、映画『ワイルド・スタイル』のツアーでのこと。DJやブレイクダンス、ラップ、グラフィティなど、ニューヨーク発のムーブメントの熱を日本に伝えるための旅であり、そこで藤原ヒロシと出会ったのだという。藤原は「彼は覚えていないかもしれないが」と前置きしつつ、「当時のクラブ『ピテカントロプス』でオープニングDJを務め、多くの人で賑わう中、後にフューチュラと六本木のクラブへ行った記憶がある」と語った。

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 それ以来、フューチュラは30回以上日本を訪れている。彼にとって東京は「大きなインスピレーション源」であり、「素晴らしい友人たちにも恵まれた自分の一番のお気に入りの場所」。だからこそ、70歳の誕生日をここで祝いたかったと明かした。

「次世代が、違う面白いものを見つけてくれたら」

 トークは東京のカルチャーと世代間の変化へと移った。藤原は「これからの東京に期待すること」を問われると、自身が感じるジェネレーションギャップについて触れた。大学の講義で映画『007』についての話を取り上げようとしたところ、観たことがある学生が一人もいなかったというエピソードを紹介し、「昔のカルチャーに興味が向かなくなっているのかもしれない」と語る。しかし藤原はそれを否定的には捉えていない。

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「僕はフューチュラやブライアンとは年代が違っていても、なんとなく同じものを観ていたり、共通言語があるような気がしています。でも、新しい世代はそうではない。しかし、それは決してネガティブなことだとは思っていません。僕らとは全く違うジェネレーションが、僕らでは理解できない違うことをやって、それがかっこよければそれでいい。昔のことを気にせず、全く違う場所で新しい面白いものを見つけてくれたら東京はもっとおもしろくなるんじゃないですかね」(藤原ヒロシ)。

 カウズも「若い世代の中で新しいサークルや歴史が生まれているはずだ」と期待を寄せ、「その動きは日本に留まらず国際的なムーブメントへと広がるかもしれない」と述べた。

なぜ東京は今もなお重要なのか

 イベントの中心テーマ「なぜ東京は今もなお重要なのか(Why Tokyo Still Matters?)」に対し、3人はそれぞれの立場から答えた。

 フューチュラは「東京は常にエネルギーを再活性化させてくれる場所」と語り、アメリカ人と比べて、日本人の勤勉さや新しいものを追求する姿勢など、日本独特の文化的な環境を指摘した。来るたびに新たな発見があり、その発見が彼にとっての東京のイメージをつくっているという。「カオティックでありながらコントロールされ、いつも平穏を感じられる街だ」とコメントした。

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 カウズは「東京には他の都市にはない、言葉にするのが難しい特別な“感性”(sensibility)が存在し、空港に降り立った瞬間からそれを感じることができる」と話す。「多くの観光客が訪れるようになっても、伝統を重んじ、構造化された文化が根付くこの街の本質は変わらないだろう」と見解を述べた。

 一方、東京を拠点とする藤原は、両名とは異なる視点から東京の魅力を語る。

「仕事で海外へ行くことが多いのですが、出かける度に必ずホームシックになります。絶対にすぐ東京に帰りたくなるんです。海外の街を歩いていても、もちろんその街のいいところはありますが、『東京だったらこうなのに』と比較してしまう。僕にとっては、何より仕事がやりやすく、時間を有効に使えるのが東京の良さです」(藤原ヒロシ)。

若い世代が持つ、かつてなかったアドバンテージ

 参加者から「今の若い世代には、昔より多くの機会があるか」という質問が寄せられた。フューチュラは「若い世代は、我々が持っていなかった大きなアドバンテージを持っている」と語り、その利点を最大限に活用してほしいとエールを送った。

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「現代はあらゆる情報がオープンになり、即座に繋がることができるため、明らかに昔より多くの機会があります。インターネットがなかった時代、人と繋がるためには実際に旅をして会う必要がありました。しかし今は、アイデアやイメージ、思考を瞬時に共有し、より多くの人々と繋がることが可能です。世界はより小さく、人々の距離は近くなったと言えるでしょう。ダイレクトメッセージ一つで、誰かにコンタクトし、新たな機会に繋がる可能性がある時代だと思います」(フューチュラ)。

楽しむことを忘れずに

 イベントの最後、フューチュラは「100歳まで生きるつもりだ。それが若いみんなへのインスピレーションになれば」と力強く宣言。また、20年ほど前、日本の病院でMRI検査を受けた際に、医師から「あなたはとても若い脳を持っていますね」と言われたエピソードをユーモアたっぷりに披露。その言葉を胸に、若々しい心と頭脳で創作を続けてきたという。そして、映画「戦場にかける橋」の一節「Be happy in your work(汝の仕事に幸せであれ)」という言葉を引用し、「仕事を楽しむことが大切です。私は自分のやっていることを楽しみ、そこに心と幸せを注いでいます」と締めくくった。

 伝説的な世代が語る東京の魅力と未来への視線は、この街がこれからもクリエイティブなインスピレーションの源泉であり続けることを強く示していた。

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