(左から)「HODINKEE Japan」関口優編集長、HODINKEE Inc.ベンジャミン・クライマーCEO
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Media フォーカス

「競合はない」時計愛好家が読んでいるホディンキーが日本へ CEOが説くメディア論

(左から)「HODINKEE Japan」関口優編集長、HODINKEE Inc.ベンジャミン・クライマーCEO
(左から)「HODINKEE Japan」関口優編集長、HODINKEE Inc.ベンジャミン・クライマーCEO
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 時計への情熱を共有する場、「ホディンキー(HODINKEE)」がハースト婦人画報社とタッグを組み日本でスタートを切った。ホディンキーはニューヨーク発のオンラインメディアで、ベンジャミン・クライマー(Benjamin Clymer)CEOが2008年に立ち上げた1本のブログが発端。今では世界の時計愛好家に支持されている。来日したクライマーCEOとホディンキー・ジャパンの関口優編集長に、これまでの専門誌とは何が違うのか、なぜ初の海外版が日本なのか、詳しく話を聞いた。

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ブログからグローバルなウェブメディアへ

ーラグジュアリー時計を中心に、レビューや歴史的背景、最新ニュースなど様々な情報を届けていますが、始まりは個人で立ち上げたブログだったそうですね。

クライマーCEO:はい。初めて書いた記事は祖父からもらった時計に関する内容でした。その後、アインシュタインやガンジーが着用していた時計にまつわるストーリーなど歴史的価値の高い時計について記事を書くようになると、徐々に注目が集まるようになっていきました。

ー初めて記事に書いた時計のモデルは覚えていますか?

クライマーCEO:「オメガ」のスピードマスターです。私にとって時計に対する原点であり、この時計のおかげで今の自分があると感じています。今でも着けているんですよ。

ブログからグローバルなウェブメディアへと成長できた理由をどのように分析していますか。

クライマーCEO:実は戦略的なものがあった訳では無いのです。ただ、時期や運が良かったとは言えるかもしれません。ブログを始めた当時はフェイスブックが数年前に始まったばかりのタイミングで、インターネット環境は今と比べて大きく異なりました。インスタグラムやツイッター、インフルエンサーといったものがまだ無い時代にとにかく実直に取り組んだことが大きかったのではないでしょうか。

ー実直に取り組んだというと?

クライマーCEO:当時、ラグジュアリー時計はあまりポジティブな印象が無く、華美で過剰に富を象徴するものと捉えられていた部分がありました。ラグジュアリー時計をクラフトマンシップや美、作り手の情熱といった角度から捉え直し、情報を発信したことが読者に受け入れられたのだと考えています。

「ホディンキー」本国版より

—どのようにして現在の規模に拡大していったのでしょうか?

クライマーCEO:成長のきっかけとなる2つの時期がありました。1つ目は2012年。私がジャーナリズムの学校を卒業し、そして同年にスティーブン(※Stephen Pulvirent氏)がチームに加入した年です。この変化が大きかったのか、翌年の2013年にはニューヨーク・タイムズで「時計学の神」といった形で取り上げられ、我々の知名度が非常に上がりました。2つ目の転機は、デジタル系のデザインに特化した会社と2015年に合併したこと。アプリやウェブデザインなど、デジタル分野を全て社内で行うことができるようになった点は事業の成長に大きく繋がりました。

—ブログからメディアへと発展する中で、「ホディンキー」にとって変化したことはありましたか?

クライマーCEO:ブログを始めた頃は自分ひとりで写真を撮影し記事を書いていましたが、現在はコンテンツ制作からは一歩身を引いて、能力のあるスタッフたちに現場を任せています。より規模が大きく内容も濃くなりましたが、本質的に変わったことはありません。

—現在のホディンキーの主な読者層を教えてください。

クライマーCEO:平均的な読者層は、クラフトマンシップに高い興味を持つ35歳前後の男性。ニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドン、パリ、ジュネーブといった大都市に暮らし、銀行やコンサルタントなどプロフェッショナルな職業に就いていたり、大学院を卒業している高学歴な人が多い印象です。

ー記事はどれくらいの頻度で配信していますか?

クライマーCEO:週末は多少減りますが、平日は3〜5本程度のオリジナル記事を毎日配信しています。

—記事への流入はSNSなどからが多いのでしょうか。

クライマーCEO:いいえ、「ホディンキー」の公式アプリで記事を読む人と、ウェブサイトを直接訪問する人が中心ですね。

—動画やポッドキャストなども配信していますが、読者に人気のコンテンツを教えてください。

クライマーCEO:例えば、ジョン・メイヤーやエド・シーランといった有名人が寄稿した記事や、ベトナム戦争中に失われた「チューダー」の時計にまつわるエピソードを紹介したものなど、人と時計との関わりを絡めた記事が人気です。

ーストーリー性が読者の心を掴むのでしょうか。

クライマーCEO:まさにそうです。時計にまつわるヒューマンストーリーを発信することはホディンキーの特徴の一つであり、我々が読者に受け入れられている理由だと思います。値段やスペックといった角度でしか書かれなかった時計に対して、我々は独自のアプローチで新しい光を与えたのです。

ーサイト内には読者と編集者、あるいは読者同士が繋がることができるコメント機能を搭載しています。中にはネガティブなコメントもあるのではないでしょうか。

クライマーCEO:サイト全体で年間約10万件のコメントが届くのですが、たとえネガティブなコメントであっても1つの記事を通じて読者から意見を引き出すことができれば、その記事は我々にとっては成功。逆に、読者から全く反応が無い記事は一番の失敗だと捉えています。

ーSNS時代のメディアは、読者の反応や関係性が重要ですね。

クライマーCEO:はい。読者からの意見を取り入れながら、自分たちを高めていくことを常に心がけています。

次のページは>>「ホディンキー」日本版を立ち上げた理由、クライマーCEOが思う時計市場の今

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