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韓国のZ世代が熱狂する“ランニングコア” トレンドの背景を探る

ランニングクルー

Image by: 9ood8ellow

ランニングクルー

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ランニングクルー

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 スポーツブランドの担当者や、ランニング好きのモデルやインフルエンサーなどから、「今、韓国でランニングカルチャーが盛り上がっている」「韓国のランニングインフルエンサーに影響を受けて走り始めた」と話を聞くケースが増えている。ファッションや音楽において、今や韓国カルチャーの力は絶大だが、実はランニングにおいてもその影響力を発揮している。ソウル在住でランニングを含めた現地の若者カルチャーに詳しいライターのキム・ナヨンさんに、以下寄稿してもらった。

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ランニングはなぜ、再び熱を帯びたのか

 韓国のランニング人口は、1000万人を突破したと言われている。いまやランニングは一過性のブームを超え、ひとつの時代を象徴するカルチャーへと変化している。筆者の周囲を見ても、趣味を尋ねれば「ランニング」と答える人は珍しくない。どのファッションブランドのランニングギアを選ぶか──。そんな会話も、ごく自然な風景になった。こうしたカルチャーは、いつ、どこからきたのか。

 韓国でランニングが“文化”として熱を帯び始めたのは、ここ数年のこと。とりわけ2020年以降、その流れは一気に加速した。コロナ禍で屋内スポーツが制限され、人々はジムを離れ、街や川沿いへと向かった。同時に、お酒を飲んで遊ぶよりも、自分自身を「整える」ことに価値を置くムードが広がった。ウェルネス志向の高まりは、Z世代を中心にランニングへの関心を押し上げる大きな要因となった。

ランニングコミュニティの写真

韓国を拠点とするランニングクルー9ood8ellowのInstagramより

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ランニングコミュニティの写真

韓国を拠点とするランニングクルー9ood8ellowのInstagramより

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 さらに、「#ランニング」「#ランニングクルー」「#漢江ランニング」といったハッシュタグとともに走る姿をSNSに投稿し、共有するカルチャーも定着。ランニングは個人の運動でありながら、可視化され、つながるアクティビティへと進化している。かつてランニングは、中高年層が楽しむ趣味というイメージが強かった。しかし現在では、20〜30代の会社員を中心に、ファッションやデザインに関心の高いクリエイター層までもが積極的に楽しんでいる。

 韓国でランニングが“いま最も勢いのあるアクティビティ”であることは、データからも明らかだ。KREAMが発表した「2025ランニングレポート」によると、2025年の韓国国内の「ランニング」関連検索数は前年比で約3倍に増加。取引額および購入者数も、それぞれ150%以上の伸びを記録したという。その主導権を握っているのは、20〜30代の若い世代だ。20〜30代が全購入者の70%以上を占めていると言い、とりわけ女性の伸長が目立っている。

ファッション欲を満たす「ランニングコア」の新潮流

 最近では、10年以上にわたり韓国のランニング市場をけん引してきた「ナイキ(NIKE)」の勢いに陰りが見える側面もある。ファッションにもランニングにも本気なランナーたちの視線は、より多様なランニングギアブランドへと向かい始めている。

 たとえば、「オン(On)」や「ホカ(HOKA)」といったブランドの存在感は年々高まっている。ファッション業界におけるランニングウェア需要の急増を背景に、消費者はより主体的にブランドを選び、比較するようになった。

ランニングギア
ランニングギア

 かつては機能性が最優先とされていたランニングウェアだが、いまランナーたちが求めているのは、パフォーマンス向上とスタイリングを同時に満たすバランスだ。いわば“ランニングコア(Running+Core)”と呼べる潮流。走るときだけでなく、日常のワードローブとしても成立する点が、その魅力をさらに広げている。

どこで、どのように走るのか 広がる「グループラン」という文化

 韓国のランニングカルチャーを語るうえで欠かせないのが、「グループラン」の存在だ。個人競技であるはずのランニングを、あえて“ともに走る体験”として楽しむランナーが非常に多い。

グループランの様子

韓国を拠点とするランニングクルー9ood8ellowのInstagramより

Image by: 9ood8ellow

グループランの様子

韓国を拠点とするランニングクルー9ood8ellowのInstagramより

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 ソウルの代表的なランニングコースといえば、漢江沿い(汝矣島、盤浦、トゥクソム、漢南大橋周辺)をはじめ、ソウルの森、南山トゥレギル、そして聖水エリアなど。都市のランドスケープそのものがランニングの舞台となり、さまざまなランニングクルーが定期的に街を走っている。

 興味深いのは、ランニングに別のアクティビティを掛け合わせたスタイルが次々と生まれている点だ。一例として、ソウルのランニングショップ「OUT OF ALL」は、ランニング後に一緒にサウナを楽しむマルチアクティビティセッション「SAUNA RUN」を開催した。

 ランニングはもはやタイムや記録を競うだけのものではない。「一緒に走る」という体験そのものに重心が移りつつある。自己管理、ネットワーキング、そしてスタイルの表現。そのすべてを同時に叶えるアクティビティとして進化しているのだ。

「コントロール可能な達成」への欲求がモチベーションに

 韓国のランニングカルチャーをより深く理解するために、ランニングをひとつのライフスタイルとして体現する人物に話を聞いた。韓国でランニング関連のイベントを主催し、自らもランニングを楽しむ、ウェブマガジン「Oncuration」のディレクター Park Sungjo氏だ。同氏は韓国国内のランニング市場のリアルについて、こう分析する。

Park Sungjo氏

Park Sungjo氏

韓国でランニングがひとつのカルチャーとして定着したのは、社会的環境と産業構造が重なり合った結果だと考えています。パンデミックをきっかけに屋外での個人運動が増えたことが出発点ではありますが、その後も広がり続けた理由は、『コントロール可能な達成』への欲求にあるのではないでしょうか。不確実性の高い社会において、ランニングは努力と結果が比較的明確に結びつく数少ない活動です。それが心理的な安定感をもたらしている側面は大きいと思います。
グループランの様子

韓国を拠点とするランニングクルー9ood8ellowのInstagramより

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さらに、韓国特有の“記録を共有する文化”も影響しています。距離やペース、心拍数といったデータはSNS上でコンテンツへと容易に変換され、ランニングは単なる運動を超えて、個人ブランディングの一部となりました。同時にクルー文化の形成によって、ランニングは孤独なスポーツではなく、都市のなかで関係性を築くプラットフォームへと拡張しています。
グループランの様子

韓国を拠点とするランニングクルー9ood8ellowのInstagramより

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もうひとつ重要なのは、ファッションやライフスタイル産業の介入です。ランニングシューズや機能性ウェアが日常化するなかで、ランニングは「競技」ではなく「アイデンティティの表現手段」として再解釈されています。近年のマラソン大会も、単なるレースというよりはブランド体験を伴うフェスティバルに近い存在へと変化しました。その過程で、ランニングはひとつの産業エコシステムを形成しつつあります。結果として、韓国におけるランニングは、達成、関係性、コンテンツ、そして嗜好が交差する文化的プラットフォームとして機能しています。ただし今後は、量的成長の先にどのような価値や方向性を選択するのか──。それが産業の次のフェーズを左右する鍵になるでしょう。(Park Sungjo氏)

ソウルのランニングカルチャーを体感できる3つのショップ

 韓国の若者にとって、ランニングは「走る」だけのアクティビティではなく、ギア選び、コミュニティ、イベント参加までを含めた体験として広がりを見せている。現地でその熱量を体感するなら、コミュニティやプログラムを通じてシーンをけん引するランニングショップを訪ねるのが近道だ。中でも、代表的な3店舗を紹介する。

Good Runner Company

Good Runner Companyの店舗
Good Runner Companyの店舗
Good Runner Companyの店舗
Good Runner Companyの店舗
Good Runner Companyの店舗
Good Runner Companyの店舗

Good Runner Companyの外観

 2015年のオープン以来、ランナー向けのプログラムやイベントを企画し、カルチャーを育んできた存在。店内では、オンやホカをはじめ、「ディストリクトビジョン(District Vision)」や「サティスファイ(Satisfy)」といった気鋭ブランドも取り扱う。シューズコーナーには、スタッフが実走した上で書いたレビューが商品ごとに添えられているのが特徴。スタッフ全員がランナーであることも相まって、店全体に前向きなエネルギーが漂う。

所在地:ソウル特別市鍾路区北村路56
インスタグラム

ONYOURMARK

ONYOURMARK店内
ONYOURMARK店内
ONYOURMARK店内
ONYOURMARK店内
ONYOURMARK店内

ONYOURMARKの外観

 「新たなスタート」を意味する名の通り、都市・トラック・トレイルといった環境別にアイテムを提案する全3フロア構成。2階には新宿のランニングセレクトショップ「ダウンビートランニング(Downbeat Running)」とのコラボレーションスペースも展開する。地下フロアでは海外ブランドを幅広く揃え、ランニング×ファッションの“現在地”を俯瞰できる。

所在地:ソウル特別市鍾路区紫霞門路6キル14
インスタグラム

MAB SEOUL

MAB SEOULの店内
MAB SEOULの店内
MAB SEOULの店内
MAB SEOULの店内
MAB SEOULの店内
MAB SEOULの店内

MAB SEOULの外観

 多くのランナーが行き交う蚕院漢江公園からほど近い「マブ ソウル(MAB SEOUL)」は、「Me and beyond(私とその先)」をスローガンに掲げ、ランナーやハイカー、サイクリストなど、さまざまなスポーツを楽しむ人々のためのプレミアムセレクトショップ。ランナーに合わせたトレーニングプログラム「マブラン」や、初フルマラソン完走をサポートする「マチョップル」など、ビギナーから上級者まで参加できるセッションを通じて、ランニングカルチャーとコミュニティを継続的に育んでいる。

所在地:ソウル特別市江南区島山大路1キル62
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最終更新日:

ライター

キム・ナヨン

Kim Nayoung

1995年生まれ。韓国を拠点に、ファッション、カルチャー、アート分野における特集およびインタビュー記事を執筆している。これまでの寄稿媒体に「Dazed」「i-D Korea」「GINZA」「WWDJAPAN」などがある。

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