
Image by: FASHIONSNAP(Koji Hirano)

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「リュウノスケオカザキ(RYUNOSUKEOKAZAKI)」が4年ぶり3度目のショーで発表した「005」コレクションは、柄物や造形のアプローチに新たな要素や挑戦が見られ、「プレタポルテへの接近」という声が多かった。これまでで最もウェアラブルなルックが登場したことは、筆者も含め素直に心が躍った人も少なくないだろう。
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一貫して祈りをテーマとしてきた岡﨑は今回、「私たちが暮らしの折々で胸中に抱く『感情』さえも『祈り』になるのではいか」と思案。同時に、岡﨑は衣服に対する人間の欲望にも興味を持ったという。花や植物、動物の肌を模倣し、人工的にプリントしたテキスタイルを、「自然を写し取り、まとうことで近づきたいと願った人々の感情がとても生々しく感じた」と説明する。


プリントという人工的な要素が加わったコレクションは、神聖さや畏怖、呪術性といったリュウノスケオカザキのコレクションを取り巻く空気感に、「人間臭さ」をにじませた。グラフィックとして改造された花のモチーフは、どこかグロテスクなムードすらあるが、スカルプチュアルなドレスが持つ構造的な美しさと、絶妙なバランスで調和。岡﨑自身も、最初は「誰がこんな生地を使うんだ」とネガティブに感じた柄を敢えて採用したそうで、手が素材に慣れ、造形が生まれるうちに愛着が湧いていったのだというから面白い。

テキスタイルは、レオパードやパイソンといったプリント柄も登場したほか、毛皮を思わせる起毛素材も取り入れた。岡﨑のドレスは造形の印象よりも随分と軽く、モデルが歩くたびに弾むのが特徴。これらのテキスタイルが揺れる様は、今まで以上に生物的な力を宿していた。




花柄やアニマルモチーフが自然界への憧憬を表象した一方で、古くは民族や身分を識別し、区分するために用いられていたストライプやチェックといったパターンが差し込まれていたのも印象深い。プリミティブなエネルギーと規範的な機能美が、生物が持つ多層的な魅力を示していた。


模倣と創造の探求はレッグウェアにも踏襲。チェックやパイソンなどの服を着た時の折れ目や歪みを残したまま拡大し、タイツに複写。「模倣を模倣する」という実験的なアプローチは、足元に躍動感を与えていた。


岡﨑の人間の感情への興味は、マテリアルにも波及。画面越しに見る争いに対し、悲しみと同時に他人事に感じてしまうことや、物理的な距離による無力さまで、「どの感情も心の底から感じるリアルなもの」と捉えた。模倣への欲望と感情的な人間らしさへの探究から、リアルとフェイクのレザーを組み合わせた、初のオリジナルシューズを製作。今季の世界観を落とし込み、花弁を思わせるアッパーの造形が特徴的なデザインに仕上げた。
鉄器や祭祀に用いられる神具を彷彿とさせるオブジェやヘッドピース、ネックレスといったアクセサリーは、岡﨑と同窓である東京藝術大学生のアーティスト辻一徹とのコラボレーションによるもの。


そして、以前から岡﨑が「プレタポルテに挑戦していきたい」と語っていた通り、いくつかのルックで明確に日常的な衣服に寄り添う姿勢が見られた。チューブの本数を極限まで減らしたポロシャツやTシャツ、ワイシャツ、タイドレスを披露し、トップスとボトムスのコーディネートも提案した。
同時に、前回のコレクションで初めて登場したアシンメトリーな造形は、より自由な筆跡で、ダイナミズムのギアをあげたようにも見えた。


岡﨑はデザイン画を描かず、製作は手の経験に委ねられている。彼にとっての「プレタポルテへの挑戦」は、既製服ならではの制約を自らの「手」にインストールしたとき、そこに生まれる予測不可能なものを見てみたいという純粋なクリエイションへの意欲なのだろう。この過渡期を目撃し、体感できたことは、見る側の概念も豊かに更新してくれた。確実に自らの表現技法を拡張した岡﨑が、さらに直感を研ぎ澄ませた先に何が見えるのか、楽しみで仕方がない。

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