設立から4年目にもかかわらず、「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」でのアシスタントデザイナー経験や「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」での経験など、長い年月をかけて蓄積された実力と経験に裏付けされた確かな技術とクリエイションで評価をあげ続けているブランドといえば、デザイナー中島輝道の「テルマ(TELMA)」だ。中島の一人体制で運営されたショー開催から1年。2026年春夏コレクションの展示会会場で中島に話を聞いた。
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着実に増えていくファンとアカウント
ファンのみならず、着実にアカウント数も増やしており、百貨店やセレクトショップが中心に国内約20ドアにテルマの服は並んでいる。海外での展開も2025年秋冬コレクションからスタートしたという。
「顧客層は20代後半から60代までと非常に幅広いのですが、ものの価値をしっかりと見てくださる方が多いと感じています」(中島)。




テルマの新プロジェクト始動
アイテムのアップデートも続けている。今シーズンからテルマが提案するのは、残布を用いたニットだ。2023年春夏コレクションで発表された生地を裂いて糸にし、手編みでニットに蘇らせたという。
同アイテムは、生産ロットの問題でどうしても生まれてしまうプリント生地に着目。アップサイクルでありながらよくある「残ったものを使った」「ほっこりした」「おばあちゃんが作った」ような情緒的な訴えでなく、一つの「マテリアル」として展開する予定で、残布をブランド「資源」「資産」として捉え直し、継続的にプロジェクト化していく意向を示した。
「生地を裂いて糸にする工程は、実はとても手間がかかります。生地幅でしか裁断できないので、1m50cmほどの長さで毎回糸を結んでいかなければなりません。そのため、価格はどうしても20万円ほどになってしまいますが、ビジネス的な側面とは別に、こうした取り組みはブランドの軸として今後も続けていきたいと考えています」(中島)。

Image by: FASHIONSNAP
技術を用いた新しい表現
プリント表現においても、新しい挑戦を2026年春夏コレクションでは示している。
テルマが開発した特殊な両面同時プリント技術は、表地と裏地の色が互いに反映し合う独自の表現を可能にしている。通常のプリント工程では実現困難な、複雑な色の重なりと奥行きが生まれる仕組みだ。この技術を活用したアイテムは、光の当たり方によって見え方が変化するという特徴を持つ。「見る角度によって色のニュアンスが変わっていく」という中島の言葉通り、一度見ただけでは把握できない奥行きが魅力となっており、さながら日本画の裏彩色のような味わいが服となって立ち上がる。このアプローチにより、立体感と奥行きのある表現が生まれ、単に「柄と柄」を組み合わせることで新たな表現領域を開拓した。
「これまでは表は柄、裏は色をプリントすることが多かったのですが、今回は表裏ともに柄をプリントするアプローチを取りました。表から柄プリントするだけでなく、裏からも柄プリントを施しています。例えば、裏にピンクをプリントすると、その色が表の緑に影響して複雑な色合いが生まれるのです」(中島)。
Video by FASHIONSNAP
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単なる平面的なデザインではなく、半円や四角などの幾何学的な形を取り入れたパターンメイキングや、熱を与えると柔らかくなり冷えると固まるポリエステルの特徴を活かすために感熱剤を用いたジャケットにも注目したい。中島は「ジャケットが好き」と語りながらも、「真面目に作りすぎたジャケットはどこで着ればいいのかわからない」という現代的な課題を認識しており、その解決方法として、平面でも立体でもないジャケットを製作。「平面っぽくもないし、立体ともまた違う」という新たな次元の製品が、特に海外市場で高い評価を得ているという。

Image by: FASHIONSNAP

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また、伝統的な技法と現代的な感性を融合させる試みとして、「ログウッド」と呼ばれる木のチップを使った天然草木染めにも挑戦したことに、伝統技法をアップデートする姿勢が感じられた。
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