
東京ファッションウィーク「Rakuten Fashion Week TOKYO 2026 S/S」の関連イベントとして招致し、今年3月に続く3回目の開催となったトラノイ・トーキョー。今回は前回の約170ブランドから大幅に数を増やし、約250ブランドが参加した。国立代々木競技場・第一体育館を埋め尽くす膨大なブランドの中から、FASHIONSNAP編集記者の琴線に触れたブランドをピックアップして紹介する。
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トラノイ・トーキョーとは?

トラノイ・トーキョーの会場の様子
Image by: FASHIONSNAP
「TRANOÏ(トラノイ)」は、パリ・ファッションウィークが公式に認める唯一の合同展示会。世界を目指すデザイナーとバイヤーを繋ぐことを目的に、1998年にパリで創設された。昨年9月には、「東京をアジアのファッションハブへ」という目標を掲げ、アジア地域初進出となるトラノイ・トーキョーを開催。中国や韓国といったアジアはもちろん、アフリカや中東など幅広い地域からブランドが集まる業界注目のイベントだ。
目次
ヴィクター ハート(Victor-Hart™️)
まずは、アフリカのクリエイティブ産業支援プロジェクト「カネックス(CANEX)」のブースで一際多くの来場者に囲まれていた、「ヴィクター ハート(Victor-Hart™️)」をピックアップ。



Image by: Courtesy of Victor Hart
同ブランドは、ガーナ出身のデザイナー ヴィクター・ハート(Victor Hart)が2021年に設立。ガーナの伝統文化とイタリアのクラフトマンシップ、ユニフォームのミニマルさを融合させた作風が特徴だ。ミリタリーウェアに着想を得たというシャープな仕立ては、映画「ブレードランナー」のレプリカントを想起させるフューチャリスティックなムードが漂う。直線と曲線を巧みに同居させた、アンドロジナスなフォルムのアイテムが揃う。
デザイナーのハートは、彫刻家からファッションデザイナーに転身した異色の経歴の持ち主。ファッションデザインを「布を用いた彫刻」と捉え、3次元的なシルエットを追求しているという。鋭いラインを描くスクエアショルダーや、ウエストの強いシェイプなど、その趣向が随所に見て取れた。特に目を惹いたのは、ガーナの伝統衣装をベースにデザインしたラップワンピース。裏側に配したベルトで生地が固定される仕様で、一枚布をシンプルに巻き付けた元来の姿とは異なるモダンな印象が際立っていた。




Image by: FASHIONSNAP
また、全てのアイテムに、デザイナーが「シーズンレスでタイムレスで、最も実験的な素材」と考えるデニムを採用。ジャカード織りとフロッキープリントを組み合わせ、カモフラやケミカルウォッシュを思わせる柄を表現した生地など、無地以外にも表情豊かなバリエーションを揃えた。生地はいずれもイタリアの工場で製作したオリジナルで、デニム特有のテクスチャーを活かしたソリッドな面と、生地を統一することで生まれるミニマルなムードが、ブランドの未来的なデザインと好相性だった。
レイト フォー ワーク(LATE FOR WORK)









Image by: ©Launchmetrics Spotlight
同じくカネックスのブースで見つけた、モロッコ・メクネス出身の若手ユセフ・ドリッシ(Youssef Drissi)による「レイト フォー ワーク(LATE FOR WORK)」。カサブランカのファッションスクール Casa Moda Academyを卒業し、2018年にアフリカのファッションクリエイターが対象の「FIMA(Festival International de la Mode en Afrique)Young Designers award」で大賞を受賞。ブランドをスタートさせた。パリでのトラノイへの参加や、カネックスのプログラムを通じてギャラリー・ラファイエットでポップアップを開催。今年はファッション・トラスト・アラビア(FTA)※のファイナリストに選出されるなど、じわじわと頭角を表している。
※中東およびアフリカ北部のアラブ人デザイナーを支援するために設立されたファッションプライズ
ドリッシは、「曖昧になりつつも、服装の上でも未だTPOとして区別される、オフィスと日常の境界を揺さぶり、仕事と人生というつまらない二項対立を破壊したい」と語る。ジャケットやシャツ、スラックスを基本としたワークウェアのコードを、ドッキングやレイヤード、大胆かつ不均衡なカッティングといった自由な視点で解体し、再構築したアイテムが揃う。
また、繊維産業が盛んなモロッコで育ったことから、「世の中に素晴らしい生地が有り余っている」と考え、コレクションの大部分をデッドストック生地で構成。プレーンなテキスタイルから、鮮やかなパターン柄、キャッチーなグラフィックまで、バリエーション豊かに組み合わせている。
インサイドアウトなディテールのジャケットやパンツ、「オフィスでは隠すべき」ランジェリーをドッキングさせたアイテムなどユニークなムードを兼ね備えたアイテムは、デスク仕事に遊び心を加えてくれそうだ。



Image by: FASHIONSNAP
ラクシー(Raxxy)
ポップで遊び心のあるアイテムが並ぶアジアブランドのブースで目を惹いた、数学者でデザイナーのウィリアム・シェン(William Shen)が手掛ける中国のダウンウェアブランド「ラクシー(Raxxy)」。2018年に上海とミラノを拠点に設立した同ブランドは、中国の伝統と現代的なファッション性、オートクチュールの細やかな手仕事を融合させた、革新的なダウンジャケットを提案している。



Image by: RAXXY
ラクシーの最大の特徴は、小さなダウンのブロックでボディの表面を埋め尽くした彫刻的な造形。無数のパーツにダウンを詰めて一つずつ縫い付けることで、ポコポコとしたユニークなフォルムを表現している。アーガイルやハウンドトゥースといったクラシックな柄が、さながら「レゴ(LEGO®)」のような愛らしい表情に生まれ変わるのが印象的。また、中国の工芸品である竹編みに着想し、ダウンブロック同士を編み込んだモデルもインパクトがあった。いずれも職人の手仕事の賜物であり、一着が完成するまでに約40時間を要するものもあるという。




Image by: FASHIONSNAP
グローバルでも評価を得つつあり、2023年にはミラノコレクションの公式スケジュールでショーを開催したほか、同年に「モンクレール(MONCLER)」とのコラボレーションコレクションを発表。バーナ・ボーイ(Burna Boy)やクリス・ブラウン(Chris Brown)といったセレブリティが愛用したことも話題となり、イギリスの高級百貨店 ハロッズ(Harrods)をはじめとするヨーロッパのラグジュアリーストアで取り扱われている。
タン・ツォンチェン(TANGTSUNGCHIEN)

タン・ツォンチェン2026年春夏コレクションより
Image by: ©Launchmetrics Spotlight
台湾ブースで発見した「タン・ツォンチェン(TANGTSUNGCHIEN)」は、デザイナーの唐宗謙(タン・ツォン・チェン/Tang Tsung-Chien)が2022年にスタート。タンはエコール・デュ・プレ(École Duperré)や、「サンローラン(SAINT LAURENT)」の創設者でもあるピエール・ベルジェ(Pierre Berge)によって設立されたファッション教育機関 Institut Français de la Mode (IFM)でテキスタイルとファッションデザインを専攻。「ロエベ(LOEWE)」のインターンではニットウェアを学び、「ザラ ホーム(Zara Home)」でテキスタイルデザイナーとして勤務した後、自身のブランドを立ち上げた。
ファッションを「布が感情をかたちづくる建築」と捉え、編みや刺繍、パッチワークを組み合わせた独自のテキスタイルを応用。どこかインテリアファブリックのような、生活になじむテキスタイルが多用されているのが、タンらしいアプローチだ。また、コレクションの残布をかぎ針編みで仕上げたバッグを中心とする雑貨のセカンドライン「ttc_goods」も展開している。
2026年春夏コレクションは、「Soft Armors(繊細さと強さの共鳴)」をテーマにデザイン。内面に潜む感情や記憶をそっと包み込むように、サテン、レース、しわ加工を施したアセテートといった柔らかさを感じさせる素材を用いながら、鎧のような構築的なフォルムと融合。複雑でさまざまな衝突が起こる社会と対峙し、衣服を「静かなる防御」と捉え、思索や創作を保護するような詩的な感性を落とし込んだという。
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