
近年、ファッション界で注目を集める素材「メリノウール」。日常着としても注目度が高まっており、アウトドアブランドだけでなく、各社から夏用のTシャツが発売されています。「ウール=防寒(冬の素材)」という固定観念を持っている人も多いウール素材が夏用Tシャツにも採用されるようになった背景とは? 長い歴史を持ちながらも、最近になって改めて見直されているメリノウールの魅力について、ウール商品の品質認証や普及を目指す「ザ・ウールマーク・カンパニー」商品開発教育・ライセンス担当マネージャー 西沢智裕さん、ブランド窓口担当 安江滋さんの専門家お二人に解説していただきました。メリノウールの基礎知識から機能性、選び方、洗濯や手入れの注意点、環境負荷が低い素材としての側面まで、徹底的に深掘りします。
尾州産地の織・編・糸染め・整理工場の自社工場をもつ大手メーカーに14年勤務。生地の設計・開発・生産管理・染色工場出向・整理会社との連携強化を行いながら、国内・海外デザイナーやブランドとのコラボレーション業務を経験。現在、国内外の素材調達や商品開発のサポート、教育事業、ウールマークライセンスのサプライヤー窓口を担当。2017年に繊維製品品質管理士(TES)取得。2019年より現職、尾州・一宮在住。
目次
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メリノウールの歴史、基礎知識をチェック
メリノウールは、決して新しい素材ではありません。実は12世紀ごろにはすでに存在し、当時はスペイン王室の門外不出の羊として大切に飼育されていました。メリノ種の羊は王室間の婚姻の際、嫁入り道具として贈られるほど貴重な存在であり、その高品質なウールは長らくスペイン国内で独占されていました。

ザ・ウールマーク・カンパニー安江さん
ヨーロッパ各国の王室同士の交流や贈答を通じて、メリノ種は他国にも広まり、ヨーロッパ全体で飼育されるようになりました。こうした歴史的背景から、メリノウールは「高貴な羊毛」として長く特別視されてきたといえるでしょう。
羊は人類の暮らしとともに、何千年にもわたって品種改良が続けられてきました。現在、世界には3000種類以上の羊が存在しますが、野生種はわずか3〜4種類ほど。ほとんどの羊は、様々な交配や品種改良によって生まれたものです。
その中でも、特に「なめらかで柔らかく細い毛」を採るために特化してきたのがメリノ種。メリノウールは、肌に触れてもチクチクしない柔らかさが最大の特徴で、品種としてのメリノ種も12世紀ごろに確立したとされています。

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メリノウールは、何世紀にもわたる品種改良の成果です。特に細くて柔らかい繊維を持つため、肌ざわりが良く、現代のファッションにおいて最適な素材とされています。

メリノ種の羊
Image by: ザ・ウールマーク・カンパニー
一般のアパレルメーカーでメリノウールが注目され始めたのは、ここ4〜5年ほど。「ウール=冬の素材」とされていましたが、技術革新により繊維の細さが向上。Tシャツやカットソーなど、肌に直接触れるアイテムにも採用されるようになりました。しかし、ウール自体はアウトドア業界を中心にスポーツウエアで広く使われてきた歴史を持ちます。化学繊維の登場によって安価で丈夫な素材が普及し、ウールは一時的に主役の座を譲りましたが、近年では「高機能天然素材」として、再びその価値が見直されています。

ザ・ウールマーク・カンパニー 西沢さん
かつてのスポーツウエアはほとんどがウール製でした。ラグビージャージーやベースボールシャツ、自転車競技のジャージーなど、1950〜60年代以前の古着を見ればその多くがウールで作られていたことが分かります。

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ここ20年間で、採れるメリノウールの平均的な繊維の直径がどんどん細くなってきています。繊維が細くなり肌触りも滑らかで柔らかくなったので、肌に直接触れるTシャツなどにもより使いやすくなりました。
世界最大のメリノウール産地・オーストラリア
現在、メリノウールの生産地として世界で圧倒的な存在感を放っているのがオーストラリア。特に繊維の直径が「19マイクロン以下」の、肌に触れても刺激が少ない高品質なメリノウールの生産量は、オーストラリアが世界シェアの約90%以上を占めています。近年では、オーストラリアで生産されるメリノウールの平均的な繊維の直径がさらに細くなり、肌に直接触れるアイテム用として需要を満たす素材を提供しています。

ザ・ウールマーク・カンパニー 西沢さん
オーストラリアは広大な土地と温暖な気候が、羊の飼育に適しているとされています。
メリノウールとウールの違い
「ウール」と一口に言っても、実は羊の品種によってその特徴や用途は大きく異なります。世界には約3000種以上の羊が存在しますが、洋服業界でウール素材として特に重宝されているのは「メリノ種」や「コリデール種」など、一部の品種です。

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世界の羊の大半は食肉用として飼育されており、これらの羊から刈り取られるウールは繊維が太くてメリノウールより硬めで、柔らかさよりも弾力性に富むものが多いです。
繊維が太いウールは秋冬向けの厚手衣料や、カーペット・インテリア素材として使われることが多く、Tシャツやインナーなど肌に直接触れるアイテムにはあまり向いていないといえるでしょう。

世界には約3000種以上の羊が存在する
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メリノウールとは?その特徴
メリノウールは、「メリノ種」という羊から採れる高品質なウールのこと。最大の特徴は、繊維が非常に細く、なめらかな肌ざわりを持つ点です。

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具体的には、メリノウールの直径は11〜20マイクロン。一般的なコットンが約10~20マイクロンなので、天然繊維の中でも非常に細い部類に入ることが分かると思います。
🧵繊維の直径
メリノウール:11〜20マイクロン
日本人の髪の毛:約70〜80マイクロン
一般的なコットン:約10~20マイクロン

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メリノウールと一般的なウールの違い
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メリノウールの機能性|温度調節と消臭のメカニズムを徹底解説
メリノウールの最大の魅力は、その多機能性にあります。1枚で「吸湿発熱」と「ドライ機能」の両方を兼ね備え、寒い時は暖かく、暑い時は涼しく感じるという不思議な特性を持っています。

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例えるなら、ユニクロ(UNIQLO)の「ヒートテック」と「エアリズム」が持っている機能を、天然素材の一種類の繊維でまかなえるイメージ、と言うと一番分かりやすいかもしれません。
温度調節機能|寒い時は暖かく、暑い時は涼しい
メリノウールの温度調節機能は、繊維の吸湿性と構造に秘密があります。
吸湿発熱効果

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メリノウールは繊維1本1本が多くの水分を吸収できます。体から発せられる汗や水蒸気を吸う時に、熱が発生します。これを「吸着熱」と呼びます。メリノウールは吸着熱機能に優れているので、他繊維よりも大量の熱を発することができます。生地が薄いとこの熱は拡散して感じにくいのですが、生地に厚みがあると熱が保持され、非常に暖かく感じるのです。

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これはヒートテックに代表されるような「吸湿発熱素材」と呼ばれる機能と同じです。
実は、吸着熱はウールに限らず、どの繊維にもある性質です。水分を吸えば必ず熱は出ます。ただ、ウールは繊維単体でたくさん水分を吸い、たくさん熱を出せるのが魅力といえます。
ドライ機能(気化冷却効果)

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ウールは吸収した水分を繊維内部に保持するため、汗で濡れてもドライ感が常に維持されます。また吸収した水分を外気へ放出する際、「気化熱」によって繊維と衣服内の余分な熱も同時に放出します。生地が薄い場合は、この気化熱が涼しさとして感じられるのです。これはエアリズムに代表されるような「ドライ機能」「クール素材」と非常に似た機能です。

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ウールは「羊」という生物の身体を守る目的で作られた繊維なので、必要な時は水分を取り入れ、不要な時は吐き出す、といった「生きているような調整力」があります。これはコットンやポリエステルなどの他の繊維には無い機能です。
化学繊維の一つ「ポリエステル」は石油で出来ているので、水分は吸えません。植物は水を吸いますが、水を排出するのはあまり得意ではない。これはコットンの性質そのままです。動物は体調に応じて水を蓄えたり手放したりしていますが、ウールも同じように水分を使って体温を調節してくれるのです。

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消臭・防臭性、汗の臭いを抑える科学的メカニズム
メリノウールは優れた消臭・防臭性も大きな特徴です。これは単なるイメージではなく、科学的な2つの根拠に基づいています。
タンパク質が臭い分子を吸着
ウール繊維の内部には「ケラチン」と呼ばれるタンパク質が豊富に含まれています。このケラチンは、汗や皮脂などに含まれるアンモニアや酢酸といった臭いの元となる分子を吸着する性質を持っています。そのため、汗をかいたときでも、臭い分子がウール繊維の中に取り込まれ、外に放出されにくくなるのです。これにより、着用中に不快な臭いが発生しにくく、長時間快適に過ごすことができます。また、コットンやポリエステルなどの他の繊維と比べても、ウールはこの「臭い分子の吸着力」が非常に高いのが特徴です。

ウール繊維の断面図
Image by: ザ・ウールマーク・カンパニー

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簡単に言えば、動物から採れたウール繊維の中には、タンパク質が豊富に含まれており、そのタンパク質が汗などの臭い分子を吸着し、臭いを抑えるというメカニズムです。ウールのタンパク質構造が、天然の消臭フィルターの役割を果たしています。
水をはじく表面
撥水性の高い表面がドライに保つため、バクテリア(菌)が繁殖しにくい環境を作ります。

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実は、体から出る汗自体は無臭だと言われています。汗臭くなる要因は、皮膚表面に存在するバクテリアが、汗に含まれる有機物や皮脂などを分解するから。バクテリアは水分の多いところで繁殖し、汗を「食べる」過程で臭いが発生します。
ウールは他の繊維よりも表面に水分が残りにくい上に、汗をよく吸収するので皮膚表面もドライに保ちます。結果、衣服内に余分な水分が残りにくいので、バクテリアの繁殖を抑え、結果的に防臭効果が高まります。
こうしたメリノウールの防臭性は、生活の中でも実感されています。例えば、2022年に行われた「無洗百人」プロジェクトでは、100人が100日間、メリノウール100%のTシャツを洗わずに着続けるという実験が実施されました。参加者は1日12時間以上Tシャツを着用し、限界を感じたら脱落できるルールでしたが、実際に「最初の30日間は全く臭いも無くストレスフリーで生活することができた」というコメントも寄せられています。このような体験談からも、メリノウールの高い防臭効果が日常生活の中で十分に発揮されていることがうかがえます。

「洗わなくても良い服を作り、マイクロプラスティック問題に挑みたい」という思いから始まった「無洗百人」
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メリノウールTシャツ、基本の洗濯方法
メリノウールは高機能な天然素材ですが、正しい洗濯方法を知っておくことで、より長く快適に着用できます。ここでは、メリノウールTシャツや衣類の洗い方・お手入れ方法について解説します。
一番オーソドックス|洗濯機
メリノウールを洗濯する際は冬物でも夏物でも「おしゃれ着洗い」や「ドライコース」など、優しく回転するコースを選びましょう。

ザ・ウールマーク・カンパニー安江さん
一般的な強い回転のコースは、縮みや形崩れの原因になるため避けてくださいね。
◆洗濯機で洗う際のポイント
- 手洗い(おしゃれ着洗い)モードを選択する。 ※洗濯機によってモードの名称は異なります。
- 中性洗剤を使用する。
- 必ずネットに入れる。
- 数着まとめて洗濯する場合、色移りを防ぐため色の濃いものと薄いものは分けて洗濯する。

ネットに衣類を入れる際、余った部分は必ず縛るようにしましょう。余ったまま洗濯してしまうと、ネットの中でこすれて毛玉になったり、生地がよれたりする原因となります。これは手洗いの際も同様です。
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最も安心|手洗い
メリノウールは手洗いが最も生地に優しく、長持ちさせるコツです。ぬるま湯に中性洗剤を溶かし、優しく押し洗いしましょう。
正しい手洗いの手順




①洗濯おけにぬるま湯と中性洗剤を入れて、よく混ぜます。
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洗濯機OKのウール|ウォッシャブルウール加工品や混紡ウール
「ウォッシャブルウール」と表示がある商品は、一般的な洗濯機コースでも洗えるように加工されています。また、合成繊維(ポリエステルなど)と混紡されているウール商品は、洗濯機で普通に洗えることが多いですが、洗濯表示を必ず確認しましょう。
乾燥方法の注意点
メリノウールは乾燥機の高温で縮みやすいため、自然乾燥が基本。乾燥機はNGです。また、形崩れを防ぐために陰干し&平干し推奨です。

ザ・ウールマーク・カンパニー西沢さん
ウールは繊維の性質上、乾いた状態でもぬれた状態でも強度があり、意外と丈夫です。ただし、摩擦や高温には弱いので、優しく洗って自然乾燥を心がけましょう。

メリノウールと混紡ウールの洗濯・乾燥方法早見表
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品質の証し、ウールマーク・ロゴの意味
「メリノウール」という名称はメリの種の羊から採取されるウール名であり商標ではありませんが、「ウールマーク」はウール商品の品質を保証する国際的な認証マークとして現在では世界中で広く使用されています。

ザ・ウールマーク・カンパニー西沢さん
ウール商品を選ぶ際の信頼の証しとして、多くの消費者やメーカーに支持されています。
ウールマークの商標を管理し、認証を与えることができるのは、世界で唯一「ザ・ウールマーク・カンパニー」だけ。同社は1964年に創業。オーストラリアに本拠地を置き、グローバルにウール商品の品質認証支援と普及活動を行っています。つまり、ウールマークは、ザ・ウールマーク・カンパニーによる厳格な審査を経て認められた“本物のウール商品”であることの証明です。

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「ウールマーク品質基準」を設定し、検査自体は専門の第三者機関が担当しています。その基準で合格したものに対してウールマークの商標の使用を許可しています。
ウールマークの種類と意義
ウールマークは、ウール商品の完成品に対して与えられる品質認証マークです。ウールマーク品質基準のチェック項目は10項目。ウールの混率や、耐久性、洗濯耐性、色あせのしにくさなど、厳しい品質チェックが実施されます。
ウールマークの種類(新毛使用率による3段階)

それぞれのウールマークの意味
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ウールマーク品質基準の主な検査項目
- ウールの混率(含有量)
- 耐光堅牢度(色あせのしにくさ)
- 耐久性(摩耗や引っ張りへの強さ)
- 洗濯試験(縮みや形崩れの有無)
- ピリング(毛玉のできにくさ)
- 風合い・肌ざわり
など。その他、製品によって品質検査の内容も変化。
ウールマークは世界中で認知されているため、海外商品を選ぶ際にも品質の目安になります。また、ウールマークのある商品は、長く愛用できるだけでなく、洗濯や日常使いでも安心して使えるというメリットがあります。

ザ・ウールマーク・カンパニー西沢さん
ウール商品を選ぶ際は、ぜひウールマークの有無をチェックしてみてください。
メリノウールTシャツの種類と選び方|特徴・メリット・デメリット比較
「メリノウールTシャツ」と一口に言っても、実は大きく3つのタイプに分かれます。それぞれの特徴やメリット・デメリットを知ることで、自分にぴったりの1枚を選ぶことができます。
メリノウール100%のTシャツ
🧶特徴
- 天然素材の中でも特に繊維が細く、肌ざわりがとてもなめらか
- 吸放湿性・防臭性・調湿性など、ウール本来の機能を最大限に発揮
🙆♀️メリット
- 汗をかいても臭いが気になりにくい
- 夏は涼しく冬は暖かい、オールシーズン快適
- 静電気が起きにくく、肌トラブルも少ない
🙅♀️デメリット
- 強度は化学繊維に比べてやや劣る
- 高価(化学繊維の2~3倍になることも)
- 洗濯時は優しいコースや手洗い推奨
👕こんな人におすすめ
- 肌ざわりや着心地を最優先したい方
- リラックスウエアや普段着として使いたい方
- 天然素材志向、敏感肌の方

ザ・ウールマーク・カンパニー西沢さん
家でゆったり過ごすなら、やっぱりメリノウール100%の着心地は格別。毎日洗濯しなくても臭いが気にならないし、敏感肌でもチクチクしないのがうれしいです。
メリノウール混紡Tシャツ
🧶特徴
- ウールの快適さと化学繊維の丈夫さを両立
- 洗濯機で気軽に洗えるものが多い
🙆♀️メリット
- 耐久性が高く、形崩れしにくい
- 洗濯の手間が少なく、日常使いしやすい
- 価格も100%ウールより抑えめ
🙅♀️デメリット
- 防臭性や調温性など、ウール本来の機能はやや低下
- 肌ざわりも100%ウールほどのなめらかさはない場合がある
👕こんな人におすすめ
- アウトドアや軽い運動、旅行などアクティブなシーンで使いたい方
- 洗濯のしやすさや耐久性を重視する方
- コストパフォーマンスを求める方

ザ・ウールマーク・カンパニー西沢さん
アウトドアや旅行で使うなら混紡タイプが便利。洗濯機でガシガシ洗えるし、丈夫で長持ちします。僕のおすすめは、メリノウール50〜70%+ポリエステルくらいの混紡率です。
化学繊維(ポリエステルなど)Tシャツ
🧶特徴
- 速乾性や耐久性に優れる
🙆♀️メリット
- 価格が安い
- 洗濯や乾燥機にも強く、ガシガシ使える
- 強度が高く、形崩れしにくい
🙅♀️デメリット
- 汗や皮脂の臭いが残りやすい
- 静電気が起きやすく、肌ざわりも天然素材に劣る
- 吸湿性や調温性が低い
👕こんな人におすすめ
- スポーツやハードなアウトドアで使いたい方
- コスト重視でたくさん着回したい方
- 洗濯やお手入れの手軽さを最優先したい方

ザ・ウールマーク・カンパニー西沢さん
とにかく安くて丈夫。スポーツや作業用には化繊Tシャツが最強といえるでしょう。ただ、汗の臭いが気になる人は注意したい素材です。
✅着用シーンで選ぶ
リラックス重視ならメリノウール100%、アクティブな用途や洗濯のしやすさ重視なら混紡、コストや耐久性重視なら化繊がおすすめです。
✅肌ざわりや機能性をチェック
敏感肌の方や快適さを求める方は、繊維の直径(マイクロン数)や混率も確認しましょう。
✅価格と耐久性のバランス
長く愛用したいなら、多少高くても100%ウールや高品質な混紡を選ぶのも◎。

ザ・ウールマーク・カンパニー西沢さん
迷ったら、まずは自分のライフスタイルや使うシーンをイメージしてみて用途に合ったメリノウール素材のTシャツを選ぶことで、満足度がぐっと上がります!

各素材のメリットとデメリット
Image by: FASHIONSNAP
サステナビリティの観点からも優れたメリノウール
近年、環境問題やサステナビリティ(持続可能性)への関心が高まる中、メリノウールは自然由来の環境負荷が低い繊維として注目されています。
動物を殺さずに得られる再生可能な繊維
メリノウールは、羊の毛を刈り取ることで得られる繊維です。羊は毛刈りをしても命を落とすことはなく、8ヶ月〜1年ほどで再び毛が生えそろいます。このため、メリノウールは「動物を殺さずに繰り返し採取できる再生可能な天然素材」として、エシカル(倫理的な)な観点からも高く評価されています。
高い生分解性で自然に還る
メリノウールは生分解性に優れており、土や海に還る繊維です。2022年に日本毛織株式会社(ニッケ)が神戸市立栽培漁業センターと共同で行った海水中での生分解性実験では、ウール混紡Tシャツのウール部分は150日間でほとんどが分解され、自然に還ることが確認されました。一方、ポリエステル部分やポリエステル100%のTシャツは分解されず、海中に残り続ける結果となりました。

実際の海洋中と同じ条件(海水温度9.7~24.6℃、塩分濃度3.3%)で実験は行われた
Image by: 日本毛織株式会社(ニッケ)

左)ポリエステル100%のTシャツ。右)ウール交撚糸「ニッケ アクシオ」を使ったTシャツ

左)ウール部分はほとんどが生分解され、ポリエステル長繊維の部分だけが生分解されずガーゼ状に。右)ポリエステル100%のTシャツは、まったく生分解が認められなかった

ザ・ウールマーク・カンパニー西沢さん
「生分解」とは、バクテリアなどの微生物によって、繊維が水や二酸化炭素などに分解されて自然に還ることを指します。ウールと同じ天然繊維のコットンも分解されますが、ウールはさらに生分解性が高いという実験結果もあります。
メリノウールの未来、続く技術革新とサステナビリティへの課題
メリノウールは繊維が非常に細く、肌ざわりの良い高品質な天然素材としてすでに知られています。特にオーストラリア産のメリノウールは、今でも年を追うごとに繊維の細さが向上しており、今後はさらに細く、より快適なウール商品が手に入る可能性が高まっています。またメリノウールと他素材との混紡など、様々な技術革新も進んでいます。現在のウール製品は素材や機能性、価格のバリエーションが豊富で、色々なものを適正価格で試しやすくなっています。

ザ・ウールマーク・カンパニー安江さん
動物由来なので劇的な変化はありませんが、確実に繊維は細くなっています。今後はより高品質なメリノウールが一般的になるでしょう。
一方で、メリノウールの生産現場は大きな課題にも直面しています。気候変動の影響で、オーストラリアなど主要な産地では干ばつや洪水が頻発し、羊の飼育が難しくなっています。 また、ウール価格の下落や牧場経営の多角化により、羊から牛や作物への転換が進み、牧羊離れが増加。 その結果、世界的にウールの生産量は減少傾向にあり、ウール繊維自体が危機的な状況に陥りつつあります。

ザ・ウールマーク・カンパニー安江さん
このままでは、今のように高品質なウールが手に入らなくなるかもしれません。ウールの良さを知って使い続けてもらうことが、持続可能な生産を支えるカギです。
メリノウールの未来を守るためには、気候変動への対応や持続可能な牧羊の推進といった生産現場での取り組みはもちろん、ウールの価値を正しく伝え、消費者がその魅力を理解して選び続けることが欠かせません。サステナブルなファッションやエシカル消費が広がる今だからこそ、メリノウールの持つ本当の価値を再認識し、次の世代へとつなげていくことが大切です。
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