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【トップに聞く 2026】yutori片石貴展社長 最年少上場の「ゆとり社長」が分析する令和の若者ファッション

 2017年に、インスタグラムでの「古着女子」のコミュニティ運営からスタートし「インスタ企業」というワードで話題になったyutori。「ナインティナインティ(9090)」などの若者向けブランドを自社で企画し直接消費者に届けるD2C事業に舵を切り、SNSに重点を置く戦略で躍進を遂げ、2023年12月には東証グロース市場への上場を果たした。ウィメンズブランド「ネンネ(nenme)」や、売上が急成長しているコスメブランド「ミニュム(minum)」など、Z世代の強い支持を集めるブランドを次々と生み出す秘訣とは。YouTubeでの動画の発信や、執筆、歌手活動なども話題を呼んでる片石貴展yutori社長に話を聞いた。

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片石貴展/yutori社長

片石貴展 yutori 代表取締役社長

(かたいし たかのり)1993年神奈川県生まれ。明治大学商学部卒業後、アカツキに入社。新規事業立ち上げなどに従事するなか、2017年に個人の活動としてインスタグラムアカウント「古着女子」をスタート。2018年にアカツキを退社し、yutoriを創業。2023年の上場時は30歳で、国内アパレル最年少IPOとなった。

■yutoriとは
2018年4月創業。主に若者向けのブランドのD2C事業を手掛ける。2020年にZOZOと資本業務提携を締結し、ZOZOグループに加入。2023年3月にグループから独立し、東京証券取引所グロース市場に新規上場。2024年8月に小嶋陽菜がプロデュースするライフスタイルブランド「ハーリップトゥ(Her lip to)」の運営会社heart relationを子会社化。同年10月に伊藤忠商事を通じて「マリテ フランソワ ジルボー(MARITHÉ + FRANCOIS GIRBAUD)」の日本における独占輸入販売権を取得。同年12月に初の海外店舗をマレーシアに出店。2025年4月にヤングカルチャー事業とコスメ事業をそれぞれ新設する子会社に分割継承。同年12月に「ちいかわ」などのキャラクターグッズを企画製造するGPS HOLDINGSをはじめとした3社と資本業務提携を締結した。企業理念は「ハグレモノをツワモノに(TURN STRANGER TO STRONGER)」。

今のマーケットは「強者がより強者になっていく」

──2025年11月に2026年3月期の売上予想を当初の110億円から121億円に上方修正しました。2025年の経営を振り返っていかがでしょう?

 売上が大台である100億円を目指して順調に推移するなど、堅調に成長した1年だったと思います。2024年はheart relationのグループインなどの大きな出来事がありましたが、今年は子会社を作ったり、各事業部を拡大したりと内向きの施策が多く、次のフェーズに向けた地盤を固める年でした。

片石貴展 yutori 代表取締役社長

──一方、成長率の鈍化を受けて、株価は2025年8月に上場以来最高値の5850円(終値ベース)を付けた後、下降トレンドのようです。

 株価は僕らに対する投資家の皆様の期待の表れだと考えているので、ワクワクするようなビジョンと結果を示すことが大切だと思っています。2025年12月19日にアカツキ、GPS HOLDINGS、MNインターファッションとの資本業務提携を発表したときは、翌営業日から株価も上がったので、投資家の皆様にポジティブに捉えていただいたのではないでしょうか。

──経営者として2025年で一番嬉しかったことを教えてください。

 子会社が成長し、役員たちが頼もしくなってきたことですね。少し寂しさが減った、みたいな感覚もあるんですが。

──寂しさが減った、ですか。

 はい。yutoriの中で、社長という立場の人間がもう一人(2025年5月に設立した子会社ワイジーの舩橋誠社長)できたので。彼は僕とはキャラクターが全然違うんですよ。僕がものすごく概念的で、占い師みたいな側面のある人間なのに対して、彼は事業における最適な意思決定を行い、リーダーシップを発揮することで会社を成長させる、実直な性格です。事業はまだこれからですが、日々彼の成長を感じています。

──では、2025年で一番悔しかったことはなんでしょうか。

 悔しかったことは特に思いつきませんが、「疲れたな」とは思いますね。

──日々の業務で疲れた、ということでしょうか。

 ええ。2025年は自分個人の影響力を意図的に強めようとしていたんです。2024年は、いわばメジャーデビュー1年目みたいな感じで世間からの注目度も高かったですし、heart relationの件もあったので、自分が前に出なくても会社の知名度を高められました。ですが、今年は内向きなトピックが多かったので、意図的に注目度を高める必要がありました。ですので、個人のYouTubeを始めたり、色々なメディアに出たりと、対外的な発信活動を強めていたのですが、それにちょっと疲れましたね。

──片石さんのYouTubeは個人的に楽しく拝見しています。今後もこういった活動は継続しますか?

 そうですね。文章にしづらい感覚的なことを発信ができるのが自分の強みだと考えているので、継続しようと思っています。

──事業について伺います。以前から、2030年までにブランド数を70にするという目標を掲げていましたが、変わりはないのでしょうか?

 その目標は修正しました。今のマーケットを見ていると、強者がより強者になっているように感じます。強いブランドはより強くなっている反面、ニューカマーが出てきているかというと、あまりそうは感じていなくて。ティックトック(TikTok)などで人気の若い子たちを見ていても、「この勢いはやばすぎる。負けるかも」みたいな感覚は良くも悪くもありません。なので、今は予算をかけずスピーディーに新しいブランドを作るよりも、一つのブランドに資本を集中させて育てていくことが大事だと考えています。既存ブランドではコスメのミニュムが強烈に伸びており、ブランドのポテンシャルを強く感じていますね。

「ミニュム」イメージヴィジュアル

「ミニュム」イメージヴィジュアル

Image by: yutori

──ミニュムに続くコスメブランドを立ち上げる予定は?

 一旦はミニュムの中で色々試そうと思っています。数あるスキンケアコスメブランドのなかで、ミニュムほどXでの反響がある日本のブランドはあまりないと思っていて。若者の間ではやはり韓国のコスメブランドが強いんですが、この1年でかなり切り込めた感覚があります。

──販売チャネルについて。2025年5月の発表では直営実店舗の売上構成比は40%弱にとどまっていましたが、11月の発表では45%と比率が高まっています。これまではオンラインを軸に成長してきましたが、今後のオフラインの舵取りはどうお考えですか?

 これからは店舗をしっかり出してリアルな経済圏を広げていくことが大事になるので、オフラインの存在感はこれからもっと強まると思います。直近の2026年3月期第2四半期で9店舗を増やしており、今後も加速させるつもりです。

──地方への出店も増えていくのでしょうか。

 そうですね。東名阪が中心ですが、福岡や札幌などにも出していきます。

HUMAN MADEは「比較されること自体が光栄」

──片石さんは2025年11月に発売した著書の中で「10年後までに時価総額1000億円、アパレルトップ5を目指す」と記されています。先日上場して一時は時価総額1000億円を突破したHUMAN MADEは片石さんにとってどのような存在ですか?

 ここ数年で新規上場したアパレル企業として比較していただくことが多いのですが、僕からすると比較されること自体がとても光栄ですね。僕が物心ついたときにはもうTERIYAKI BOYZ(HUMAN MADEのクリエイティブディレクターのNIGO®︎がDJとして在籍していた2004年結成のヒップホップグループ)が活躍していましたし、カニエ・ウェスト(Kanye West)のことを知ったのも、TERIYAKI BOYZの2007年の楽曲「I still love H.E.R. feat.KANYE WEST」がきっかけでした。横浜の田舎から泥臭く這い上がってきた僕らと比べると、HUMAN MADEは「貴族」のような存在だと感じています(笑)。

──アパレルやファッションの領域で、意識している経営者やブランドはありますか?

 ありませんね。アパレル業界に限らず、今まで他社を見て学ぶことは特にありませんでした。ブランドとして昔から好きなのはスタジオジブリくらいです。

──M&Aについて伺います。2024年のheart relationに続き、2025年は熊谷隆志さんが手掛ける「ジーディーシー(GDC)」を運営するGDCも子会社化されましたが、手応えはいかがでしょうか?

 どちらも素晴らしいですね。heart relationはアパレルがしっかり伸びていますし、ビューティにも可能性をかなり感じています。ちょうど今日、ジーディーシーのシャツを着ていますが、やっぱり熊谷さんはすごいなと。公私ともにとてもお世話になっていますが、「この人が作る服を買いたい」と思わせてくれる人だと感じます。

片石貴展 yutori 代表取締役社長


──ジーディーシーのメインターゲットは40代かと思いますが、顧客の年齢層も広がっている実感はありますか?

 これまでのyutoriとは違う年齢層の方にアプローチできています。そういった意味でも、yutoriという会社の器がこの1年でかなり大きくなったと思います。

──今後、yutoriのターゲット年齢層をさらに上に広げる予定は?

 今のところ、ジーディーシーくらいが上限かなと思っています。

──これからもM&Aは続けるのでしょうか。

 予定としてお伝えすることは難しいですが、続けたいという気持ちはあります。M&Aをするブランドのポイントはスターが運営していること。そのスターの星のかけらみたいなものが、ブランドの隅々まで浸透していて、人もモノも輝いている。そんな存在感のあるブランドですね。

──マレーシアと台湾で展開している海外事業の進捗はいかがでしょうか。

 台湾が手応えありますね。ナインティナインティを3店舗展開していますが、ちゃんとPL(損益計算書)に反映できるレベルの売上があります。

──yutoriのブランドで片石さんご自身がよく着用されるものはありますか?

 自社商品かどうかはあまり意識はしていませんが、よく着るのは「パム(PAMM)」、ナインティナインティ、「センチメーター(CENTIMETER)」あたりですかね。ヤンキーっぽいアイテムも着ますよ。

「パム」のヴィジュアル

のんを起用した「パム」のヴィジュアル

Image by: yutori

上場企業として古着ビジネスは難しい

──サステナビリティについてはどのようにお考えですか?

 モノを作って売っている以上、サステナブルという文脈をビジネスに入れることは、ある種の自己矛盾をはらんでいると思っていて。僕らがまず取り組むべきサステナビリティは、作ったものを全部を売り切ることだと考えています。ゴミも出ないし、儲かるし、お客さんにも届く。それとは別に、学生時代にアルバイトをしていた子どもの貧困の解決を目的とするNPOへ服の寄付をしています。そこの子どもたちがyutoriの服を着たことをきっかけに、ファッションに興味を持ってくれたりすると嬉しいですね。

──以前、「日本の古着屋を韓国や台湾に出店する」というプロジェクトについてお話されていました。

 あ、それはもうやめました(笑)。

片石貴展 yutori 代表取締役社長

──そうなんですね(笑)。祖業は「古着女子」でしたが、もう古着ビジネスは手掛けないのでしょうか。

 やはり古着は難しいですね。会社として求められている成長の角度を考えると、事業規模を年間で数十億円という単位で伸ばし続ける必要があります。そうなると、コスメのような、よりレバレッジの効くものにならざるを得ない。上場企業としての責任がありますから。

──片石さん個人としては今も古着を?

 大好きです。今年だけで1000万円分くらいは買っているはずです。古着屋で買うだけでなくメルカリも使いますし、「VCM VINTAGE MARKET」のようなイベントにも行っていますね。古着屋だと、同い年のホリケン君(堀内健太氏)がオーナーを務める渋谷の「リールー(Lee Loo)」や、原宿の「ジレ(gilet)」などによく行っています。最近、原宿のキャットストリートあたりの古着屋を周ったんですが、以前は3万円くらいだったモヘアのカーディガンが、10万円以上になっていました。こうなるともう、古着より新品の方が安いですよね。

──以前と比べるとヴィンテージ古着の多くはかなり高騰してしまいましたが、今後もその傾向は続くのでしょうか。

 お金の価値が相対的に下がっていく中で、ヴィンテージの価値は絶対に上がり続けると思っています。お金は刷ることができるけど、ヴィンテージは複製できないですから。でも、投資的な視点で見ているわけではありません。古着は何より「着られる」のがいい。着られるって、素敵じゃないですか。

──古着のなかでも特に、1970年代のファッションがお好きだそうですね。その理由は?

 僕が高校生の頃は雑誌「チョキチョキ(CHOKi CHOKi)」の全盛期で、ロン毛にチュニックを着て、「リーバイス(Levi’s®)」の「517」や「684」などのフレアデニムを穿き、ビルケンシュトックのサボを合わせる、というような70年代っぽいスタイルが流行っていたんです。その影響もあると思いますし、それに加えて、70年代は思想的なところも好きですね。

──思想的、というと?

 僕はビジネスをしていくうえで、「敵と戦うことを通して自分が大きくなっていく」というより「自分たちが好きなことを好きな人と楽しんでできる領域を増やしていく」というような感覚を大事にしているんですが、歴史を勉強していると自分のその考え方がヒッピーと近いことに気づいたんです。

現在の若者文化の発信地は渋谷のミヤシタパーク

──yutoriは2019年から本社を東京・下北沢に構えていますが、古着ブームが落ち着いたことで下北沢のファッション発信地としてのパワーが以前より落ちたのでは、という声も聞きます。現在、若者文化の発信地はどこだとお考えですか?

 渋谷じゃないですかね。ミヤシタパーク(MIYASHITA PARK)あたり。ティックトックの若い子たちって、ずっとミヤシタパークにいますし。僕らの時代でいう原宿のローソン前みたいな、インプレッションが集まる場所に人は集まるんだと思います。メインストリームは渋谷で、下北沢はもうちょっとサブカル寄りなのかなという感じがします。

──ご自身のファッションの感性はどのようにアップデートされているのでしょう。街を歩くことは?

 全く歩かないです。怖いので(笑)。日本全国で様々なファッションがありますが、そのピラミッドのてっぺんがyutoriの社員たちだと思っているんです。社内に日本のファッションのベスト盤が揃っているよう感じですね。なので、社内にいれば十分アップデートできるかな、と。僕の仕事は時代を読むことと、新しい才能を見つけることなので、そのための基礎教養として、社内で情報収集しています。

 とはいえ、これまでずっと、オシャレな人に囲まれていて、ファッションの価値がわからなくなっていたみたいなんです。それが、この1年でファッションが持つ力を再認識したんですよ。

──何がきっかけで再認識したのですか?

 YouTubeで政治に関わったときです※。政治のフィールドにいる人たちの魅力って、ファッションでもっと上手く表現できるのにな、と感じることがあって。ファッションとは縁遠い世界に触れたことで、改めてファッションの力を感じました。洋服や髪型など、外見を整えることが、なりたい自分に近づく一番簡単な方法だと思うんです。人間は期待に応えたいとプログラミングされているから、外側が変われば内面も追いついていく。そういう観点でもファッションにすごく希望を持ちました。

※2025年の参議院選挙時に自身のYouTubeチャンネルで国民民主党の玉木雄一郎氏やチームみらいの安野たかひろ氏らとの対談を公開している

2026年は「新しい星をつくる」

──著書に、ファッションは「現在の流行に『古(いにしえ)のもの』を掛け合わせることが鍵」と記されています。今後も過去のリバイバルが続くとお考えですか?

 そうですね。新しいファッションが生まれていたのは、2015年くらいまでだと思っています。僕が「古着女子」を立ち上げた2017年頃も、1990年代っぽいスタイルが人気でしたし。SNSのレコメンデーションによって、一般の子がカルチャー的な知識を手軽に得られるようになると、どうしても教科書的なファッションにならざるを得ない。2000年代のギャル男や森ガールのような新しいファッションは、もう生まれないのかもしれません

「ヨークシン(Yorkshin)」

2024年10月に始動したyutoriのギャル男ブランド「ヨークシン(Yorkshin)」

Image by: yutori

──ファッションの大きなムーブメントはもう起きない、ということでしょうか。

 みんながみんな同じものを着るという状況になりづらいと思います。そういう意味では、yutoriの多ブランド戦略は時代の見立てを間違っていなかったという自負はありますね。

片石貴展 yutori 代表取締役社長

──「古着女子」を立ち上げた頃と今を比べて、若者のファッションはどう変わりましたか?

 ファッション偏差値の平均がかなり上がっていますね。ファッション偏差値って、アクセスする情報の量と質で作られるんだな、と感じました。昔は年上の人のほうが、お金と時間があって情報処理能力も高いからファッション偏差値が高かった。でも、今は誰でも情報にアクセスできる。僕が中学生の頃は、周りで古着を着ている友達なんていませんでした。ファッション雑誌を読んで、古着屋を調べて、店員さんと仲良くなって、音楽とかを教えてもらう、みたいなことをしていると冷笑されていましたから。「イタい」って。ある程度の年齢で「自分の好きなことが分からない」という人がいるのは、中高生の時のそういった冷笑に負けちゃうからだと思うんです。学校という狭い箱の中で、何かを強烈に好きでいると浮いてしまう。外野の声を気にしないくらい夢中になれた子が、結果的に好きなことで生きていけるんじゃないかなと。うちの社員にも、強烈に好きなものがあったけれど周りと分かり合えず、入社してようやく同志に巡り会えた、というような子が多いですね。まさに、ハグレモノがツワモノになれた、って感じです。

──最後に、2026年の展望や目標についてお聞かせください。

 冒頭で「強者がより強者になっていく」とお話ししましたが、強い星が強い引力を生むなと感じていて。2026年は、新しい星を作りたいと思っています。それは新しいブランドかもしれないし、新しい事業かもしれません。これまでのyutoriとは違う、新しい事業を作りに自分自身の時間と意識を使いたいと思っています。

FASHIONSNAP 記者

山田耕史

Koji Yamada

1980年神戸市生まれ。関西学院大学社会学部、エスモードインターナショナルパリ校卒。ファッション企画会社、ファッション系ITベンチャーを経て、フリーランスとして活動した後、FASHIONSNAPに参加。ファッションを歴史、文化、経済、世界情勢などの視点から分析し、知的好奇心を刺激する記事を執筆することが目標。3児の父。

最終更新日:

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