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「ネットで服は売れない」を変えたZOZOTOWNの20年

クリエイティブディレクターが語る挑戦の裏話

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初期の「ZOZOTOWN」サイトトップ

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初期の「ZOZOTOWN」サイトトップ

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「ネットで服は売れない」を変えたZOZOTOWNの20年

クリエイティブディレクターが語る挑戦の裏話

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初期の「ZOZOTOWN」サイトトップ

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 2004年12月15日にスタートしたファッションEC「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」。誕生から20年が経ち、今では“日本で約10人に1人が利用する(※)”という、ファッションEC市場では圧倒的な規模を誇るサービスに成長しました。

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 そんなZOZOTOWNは「オンラインで服を買うことが当たり前ではなかった」時代からサービスを展開。一体どのようにして成長してきたのでしょうか? 古くからゾゾタウンに携わるクリエイティブディレクター・デザイナーの大久保真登さんの視点から、革新に挑戦し続けた20年のストーリーを語ってもらいました。

(※)総務省統計局発表による2025年5月1日時点の日本総人口1億2334万人に対し、ZOZOTOWNの年間利用者数1221万人(2025年3月末時点)

■ZOZOTOWNとは?
創業者 前澤友作氏が立ち上げたインターネット上のCD・レコードの輸入販売サイト「エスティエムオンライン(STMonline)」を前身とし、アパレル商材を中心としたEC事業の先駆けとなるインターネット上のセレクトショップ「イープローズ(EPROZE)」の運営を経て、2004年12月に17のセレクトショップと10のブランドショップを集積したファッションショッピングサイトとして誕生。2010年11月にアプリの提供を開始した。ECサービスだけではなく、採寸用ボディースーツ「ゾゾスーツ(ZOZOSUIT)」の開発や「即日配送」の対応といった、従来のECサービスにはない取り組みに挑戦し続けている。現在は9000以上のブランドを取り扱い、年間1200万人以上が利用するファッションECへと成長している。

>>今回お話してくれたのは…


株式会社ZOZO CDO室 本部長/クリエイティブディレクター

大久保真登

Makoto Okubo

 スタートトゥデイ(現ZOZO)に2007年に入社。クリエイティブ全面を監修する。入社後、デザイナーとしてZOZOTOWNのUI/UXや広告プロモーションに携わる。2013年には同社が運営するファッションコーディネートアプリ「WEAR」のクリエイティブディレクターとして事業を立ち上げ。 その後、ZOZOSUITやZOZOMATなど計測ツールのUI/UX設計やコンセプトなどのディレクションや、「niaulab by ZOZO」の事業責任者を務める。 現在はZOZOのサービス全体のブランディングを支える。

「ネットで服は売れない」を一変させた“ZOZO流まちづくり”

 ゾゾタウンが誕生した2004年当時、インターネットで流通する商品は徐々に増えていましたが、こと洋服に関してはブランドごとのサイズ感の違いや、同じS・M・L表記でも実際の寸法が異なるといった問題があり、試着のできないネットでの販売は非常に難しく、「ネットで服は売れない」と言われていました。その固定観念に対して、僕たちは敢えて挑戦したからこそ、第一人者として道を切り拓いてきたと思っています。

 そんな「ZOZOTOWN」ですが、名称の由来はご存知ですか? 「ZOZO」は、「想像(SOZO)」と「創造(SOZO)」の2つの「ZO」からきています。何もないデジタルの空間にただ商品を並べるだけでは、ブランドが大切にしている世界観は伝わりません。リアルな店舗を訪れたときに感じる、そのお店ならではの雰囲気やトーンがありますよね。僕たちは、その感覚をネット上で再現することにこだわりました。

 そこで生まれたのが、「街(タウン)」というコンセプトです。一つひとつのブランドのショップを、まるで本物の街にあるお店のように丁寧に作り込み、街を散策するようにさまざまなショップを巡ることができる。それを「街」に見立て、“想像と創造の行き交う街”として「ZOZOTOWN」と名付けました。

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ZOZOTOWNの初期サイトページ。

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 サービス開始当初は27ショップからスタートしましたが、その一つひとつに異なるデザインを用意し、1店舗ごとに出店までの打ち合わせを重ね、クオリティに妥協せず丁寧にCGで作り込んでいきました。例えば、「ビームス(BEAMS)」さんのショップは、原宿にある実際の店舗の設計図をお借りしてそのまま再現しましたね。自社ショップでは階段をちょっとだけ宙に浮かせたりと、デジタルならではの遊び心を取り入れました。プロのCGクリエイターがヴィジュアルを手掛けたのですが、当時入社したスタッフも「ZOZOTOWNという街が本当にどこかにあるのではないか」と錯覚したほどだったとか。

複数ショップのコラージュ

CGショップのイメージ。

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街並みのCGヴィジュアル

 2010年頃までサイト上にあったCGの街並み。外観もショップごとにデザインが異なり、眺めるだけでも楽しめる。

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 こうした丁寧な取り組みがあったからこそ、当初はネット販売に懐疑的だったブランドも「自分たちのブランドを深く理解し、大切に扱ってくれる」と感じてご出店いただけたのではないでしょうか。当時、ECサイトといえば簡易的なテンプレートに商品を並べるのが主流で、ここまで世界観の構築にこだわったサービスは他にはなかったと思います。この姿勢が、ブランドさんから洋服を預からせていただく上での大きな信頼に繋がったと考えています。

SNS、ブログ、Q&A......“ファッション好きに向けたリゾート”が誕生

 ZOZOTOWNがファッションECとして軌道に乗ると、僕たちは次なる展開を考え始めました。ファッション好きなユーザーが集まるこの場所を、もっと楽しんでもらえる空間にできないか。当時、ショッピングだけではなく、ファッションにまつわるさまざまなコンテンツを展開していましたが、それらを集約した「ゾゾリゾート(ZOZORESORT)」というサイトに、2007年にリニューアルしました。

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「ZOZORESORT」サイトトップ

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 当時はクローズド型のSNSや著名人によるブログ、ユーザー同士が意見交換できるQ&A、リアルショップのナビゲーション機能などのサービスを、ファッションという切り口で展開していました。当時を知る方は懐かしく感じられるのではないでしょうか。

■ZOZORESORTで展開していたコンテンツ(一部抜粋)
 ・ファッションEC「ZOZOTOWN」
 ・ソーシャルネットワークサービス「ZOZORESIDENCE」
 ・ファッション店舗検索サービス「ZOZONAVI」
 ・著名人のブログ閲覧サービス「ZOZOWALKER」
 ・メッセージサービス「ZOZOARIGATO」
 ・Q&Aサービス「ZOZOQ&A」
 ・情報発信サイト「ZOZOPEOPLE」

 ヴィジュアル面では当時主流だったFlashを駆使してユーザーが触って楽しめる遊び心を随所に散りばめ、非常にインタラクティブな体験を追求しました。リゾートのCGの遠くには、当時海浜幕張にあったZOZOのオフィスビルが描かれていて、16階あたりにカーソルを合わせると会社概要ページに飛ぶ、といった仕掛けも。今でこそ、ナビゲーションはよりスマートで分かりやすいものが主流ですが、当時はこうした遊び心がサービスの世界観を深め、ユーザーに好まれる傾向がありました。時間帯によっても朝から夕方、夜へとヴィジュアルが変化して、ふとしたタイミングに流れ星が流れたり、12月にはサンタクロースが現れたり。ZOZOTOWNのサーバーの時間を読んでいるので、海外からアクセスしても日本時間に合わせてヴィジュアルが表示されるようにするなど、リアルな世界観へのこだわりを徹底していました。

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流れ星をクリックするといいことも......?

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 ZOZORESORTに集まってきてくれたファッション好きなユーザーはみんな、「やさしい」人ばかりでした。一つひとつの投稿に対して肯定的なコメントが見られましたし、考えや好みが違ってもお互いを認め合うような雰囲気をすごく感じました。

 ユーザーだったスタッフがうちに入社してくれたケースも多いです。だからこそ、社員から自社サービスに対しての「もっとこうしたい」という意見は当時からよく上がっていました。このリゾート内にあった「ZOZOARIGATO」というメッセージサービスも新入社員が企画したもので、人・モノへの「ありがとう」の想いを投稿すると、指定した時間にボード上に表示され、投稿1件につき10円が国際NGO団体に寄付される仕組みで、CSR活動の一環でもありました。社内のアイデアがちゃんとサービスになるという、オープンな雰囲気はその頃からありましたね。

 ハイブランドを集積したエリア「ゾゾヴィラ(ZOZOVILLA)」も、実はZOZORESORT時代に生まれたものです。当時、ネットで販売するハイブランドは少なかったのですが、「アンダーカバー(UNDERCOVER)」さんのことが好きな自社スタッフがブランドに対する愛をプレゼンで伝えたことでご出店していただけることになり、それがきっかけで他のブランドも入っていただき、いわゆる“ハイブランドモール”をつくることができました。ZOZOTOWNに「ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)」さんが出店を決めていただいたことを機に、他ブランドの出店が続いた時と同じような流れが生まれたのは、僕たちのブランドに対する理解や想いがあったからこそだと思っています。この姿勢は昔から大事にしています。

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当時の「ZOZOVILLA」のページ。

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 2010年には「『街』から『人』へ」をテーマに、それまでZOZOTOWNのシンボルだった「街」のヴィジュアルをなくすことでサイトを大きくリニューアルしました。2006年にカジュアルブランドを集積した「ゾゾタワー(ZOZOTOWER)」を作ったのですが、独立した“タワー”という設計だったのでZOZOTOWNトップから検索すると表示されず、世界観へのこだわりと利便性の両立に迷ったことも。その後、最終的には横断してアイテムが見つけられるように大きく刷新したのが2010年のリニューアルです。当時はTwitterをはじめとするSNSが急速に普及し、「バズる」という言葉が生まれるなど、世の中の関心が企業やブランドから「個人の発信」へと移り始めていました。新しいサイトでは、個人のコーディネートやレビューが目立つようにレイアウトを変更したほか、ユーザー一人ひとりの「声」が見えるデザインへと刷新するなど、主役が「街」から「人」に変わったことで、お客さまが他のユーザーの着こなしを参考にしたり共感したりしながら、新しい服と出会えるような体験を目指しました。

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2010年リニューアル後のサイトページ。

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0円セールからZOZOTOWN改善計画まで、数々の「ナナメウエ」の企画で実現したかったこと

 ZOZOTOWNではこの20年、常に「ソウゾウのナナメウエ」をいくような挑戦的な企画を大切にしてきました。

 例えば、サプライズで実施した「0円セール」。これは10周年のときに、社員からアイデアを募集する企画で生まれたものです。「0円で売る」というキーワードが世の中に与えるインパクトもありながら、10周年という機に“お客さまへ何か還元できないか”という想いをカタチにした企画です。事前告知なしで突然始まったため、社内でも「バグではないか」と騒ぎになったほどです(笑)。

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「0円セール」では約2万点、総額2億円相当の商品が“こっそり”0円で販売されていた。

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 2012年には「ZOZOTOWN改善計画」と題し、サイトでお客さまから直接ご意見を募集して、その進捗を公開しながら機能改善を進めたこともありました。サイズ検索や商品画像拡大といった機能は、実際にこの企画を通して実装されたものです。今ではなかなか実現が難しい企画ですが、お客さまと一緒にサービスを作っていくところは、懐の深い会社だなと改めて思います。

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「ZOZOTOWN改善計画」の特設ページ。各意見には「賛成」「反対」のアンケート機能も。

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 僕たちが挑戦する上で大切にしているのは、どこもやっていないことを、スピード感を持っていち早くやること。大きく言うなら、リアルとネットの垣根をなくして、ショッピングをもっと便利にすること。「ユーザーファースト」こそが、僕たちがずっと追求してきたテーマです。

 期間限定で、お客さまが送料を決められる「送料自由」も、お客さまの声に耳を傾ける企画でした。ほかにも、現在も提供している「ツケ払い」や「買い替え割」といった開始当時としてはユニークで話題を集めた決済方法など、さまざまな挑戦をしました。

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 2017年に試験導入した「送料自由」

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 「洋服を買ったときの、あの高揚感のまますぐに着たい」というお客さまの気持ちに応えるために、「即日配送」もいち早く導入しました。これは物流拠点「ZOZOBASE」を持っているからこそだと思います。

 その商品配送の際に使っている通称「ZOZO箱」は、僕たちにとってお客さまとの大事なコミュニケーションツールです。「スター・ウォーズ」とコラボして箱がマスクになったり、コロナ禍で花火大会が中止になった時期に箱で花火の雰囲気を楽しめるようにしたり、「花火大会といえば焼きそば」という考えでカップ焼きそばを同梱したり......箱そのもので遊べるような工夫もしてきました。

黒いZOZO箱

通常の「ZOZO箱」。ZOZO本社オフィス敷地内には“ブロンズ製ZOZO箱”のモニュメントを設置するなど、サービスの象徴となっている。

花火デザインのZOZO箱

コロナ禍に採用した、2020年夏の限定配送箱「花火箱」。箱を開くと花火のヴィジュアルが広がるとともに、音が鳴る仕様になっている。2022年の「JPM POPクリエイティブ・アワード」では金賞を受賞した。

 ちなみにみなさんはZOZOTOWNのキャラクター「箱猫マックス」を知っていますか? SNSで「ZOZOの箱にうちの猫が入ってる」という投稿をよく見かけたことがきっかけで、社内のデザイナーが考えたものなんです。余談ですが、絵が上手なスタッフが多いので、このキャラクターを描くときは緩いタッチにするためにわざと利き手と逆で描いたりするんですよ。

イラスト

オリジナルキャラクターの「箱猫マックス」。ZOZOが配信するLINEスタンプのモチーフにもなっている。

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 ZOZOTOWNを運営するのはファッション好き。元々利用ユーザーだった社員も多く、ユーザー目線のファッション好きが、ファッション好きのための改善に日々取り組んでいます。こんなふうに、僕たちは「ユーザーファースト」を何よりも大切にしながら、リアルとネットの距離を縮めて、もっと便利で楽しい体験を届ける。そのための挑戦を、これからも続けていきます。

リアルとネットの距離を近づけた2つの挑戦──「ZOZOSUIT」と「似合うラボ」

 ここまで数々の「ソウゾウのナナメウエ」の挑戦を振り返りましたが、特に大きかったと言える2つの挑戦があります。一つは、採寸用ボディスーツ「ゾゾスーツ(ZOZOSUIT)」です。これはみなさんの記憶にも新しいのではないでしょうか。

ゾゾスーツ
ゾゾスーツ

2018年以降に配送した「ZOZOSUIT」。

Image by: ZOZO

 「サイズを知るにはお店に行くしかない」という“サイズの壁”をどうにかしたい。そんな想いから生まれたのが、ZOZOSUITです。ここで得た技術やノウハウは、肌の色がわかる「ゾゾグラス(ZOZOGLASS)」や、足のサイズがわかる「ゾゾマット(ZOZOMAT)」といったテクノロジーにもしっかり受け継がれています。

 そしてもう一つの大きな挑戦となったのは、少しZOZOTOWN外の話になりますが、2022年に始めた「niaulab by ZOZO(似合うラボ)」です。これは、お客さまが服を探す際の新たな検索軸を見つけるために立ち上げたプロジェクトで、「体型」や「悩み」「好み」といったデータをどう収集するかを議論する中で実際にリアルな場でもデータを取る必要があるという結論に至りました。

内観
内観
外観

niaulab by ZOZOの店内。

Image by: ZOZO

 似合うラボではお客さま一人ひとりに対して、AIとプロのスタイリストによるコーディネート提案から、プロによるヘアメイクと写真撮影までをセットにした、“超パーソナルスタイリング体験”を提供しました。ずっとオンラインのサービスにこだわってきた僕たちが常設の実店舗をオープンすることは大きな挑戦でしたが、プロのスタイリストの方々の知見や感性とすり合わせながらお客さまと対話し、「似合うとは何か」を言語化していくプロセスは、とても大きな発見の連続でした。この挑戦で得られたデータは、今後のAIを活用したサービス開発へと繋がっています。

AI時代は「ファッションのことならZOZO」に進化へ

 この20年を振り返ると、僕たちの挑戦はいつも「リアルでできることを、どうやってオンラインで実現するか」というテーマだったと思います。そして、それを支えてきたのは、やっぱり「ファッションが好き」という社員みんなの熱い想いです。その想いがサービスににじみ出て、ブランドさんやお客さまにも伝わったからこそ、今もたくさんの人に選んでもらえているんだと信じています。

 僕たちが試行錯誤して取り組んだUIの工夫、例えば「左に商品画像、右に購入ボタン」というレイアウトは、今ではたくさんのファッションECサイトでも取り入れられています。僕たちの試みが“業界の当たり前”のひとつとして広がったことで、世の中の人がネットで服を買いやすくなる一助になったのかもしれません。ファッションのネットショッピングの環境づくりに、わずかながらでも貢献できていたら嬉しいですね。

 そして今、僕たちは次のステージを見据えています。それは、「ファッションを“買う”ならZOZO」から、「ファッションの“こと”ならZOZO」に進化することです。

 これからは、AIのような技術も使って、お客さま一人ひとりが自分に似合う服ともっと出会いやすくなるような、新しい買い物体験を作っていきます。それと同時に、最近発表したマッチングアプリ「ゾゾマッチ(ZOZOマッチ)」やフェスイベント「ゾゾフェス(ZOZOFES)」のような、服を買うことの周りにある楽しさを提供していきたいです。

 これからも、ファッションを愛するすべての人にとって、なくてはならない存在であり続けたい。20年で積み重ねてきた信頼とチャレンジ精神を胸に、これからも皆さんの「ソウゾウのナナメウエ」をいくサービスを届けていくことをお約束します。

大久保氏のインタビューカット

大久保真登氏

Image by: FASHIONSNAP

最終更新日:

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