Mitsuhiro Minami

「トレンド品は安く ベーシック品を高品質高価格で」という考え

南 充浩

繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー

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 先日、某メンズアパレルの方が「トレンドアイテムを高く販売するというこれまでの手法は見直す時期に来ているのかもしれない」とおっしゃった。
このアパレルの売り先は百貨店やファッションビルが多く、商品の価格は全般的に中級より上である。

なぜそんな意見が出たのかというと、H&Mやしまむら、フォーエバー21といったあたりの低価格トレンドブランドが広まったので、これまでのような高価格帯でトレンドアイテムを販売することが困難になりつつあるためだ。

そこで「トレンドアイテムは安めに、ベーシックアイテムは高品質である程度高価格」という価格戦略を構想する。

一理ある考え方だが、これはペガサスクラブが提唱したチェーンストア理論の一端と同じ考え方である。
ついでに彼に「ペガサスクラブの理論を当てはめたのですか?」と尋ねると、ペガサスクラブを知らないとのこと。
偶然にも同じ結論に至ったというわけである。


大学を卒業してすぐに入社した低価格衣料品チェーン店がペガサスクラブの会員で、新入社員研修の教科書としてペガサスクラブの本を支給された。
一通りは研修で講義を受け、本も読んだが、当時はそれほど興味がなくうろ覚えのまま現在に至っている。
先日、読み直してみようと本を探したが、どうやら捨ててしまったらしく、見つからずじまいであった。


もう少しちゃんと読んでおけば良かったと後悔してみても後の祭りである。


さて、「トレンド品はある程度安めに、ベーシック品を高品質高価格で」という考えは理にかなっている。
トレンド品の着用期間は短い。
だいたい着用期間は1年~3年程度だろう。
現在、大流行しているレディースの花柄パンツなんて来年の春にも穿けるかどうかは怪しい。
物性的に問題が無いとしても、来春にはすっかり流行が終わっている可能性がある。
そんな状況で、今春購入した花柄パンツを穿いたら、「いかにも昨年物を穿いていますよ」と見えてしまう。

となると、それほど素材や縫製や染色堅牢度などの物性にこだわって高価格にする必要はなく、ほどほどの品質でほどほどの価格に抑えれば良い。

極端な言い方をすれば、1年間使用出来ればそれで十分といえる。

一方、ベーシックアイテムはできれば長期間着用したい。
毎年、黒の無地のセーターを買い直すのもアホらしい。
極端なシルエットや丈のトレンド変化が起きなければ10年間くらいは耐久してもらいたい。
ステイタス性の高いブランド品ならなおさらそう思う。

国内ブランドの店頭を15年くらい見ていると、これが逆だったブランドがかなりあったように感じる。
トレンド品が割高で、ベーシック品が割安という価格体系だ。

製造する側からすると、小ロットで販売期間が短いトレンド品は繁忙期に受注が重なるので工賃が高くなっても不思議ではないし、販売期間が長いためにある程度の製造を閑散期に回すことが可能なベーシック品は工賃が低くなるのも頷ける。

トレンドの花柄パンツは繁忙期にも関わらずドンドン受注が入る。このため工賃が高くなる。
一方、ベーシックなブルージーンズは緊急での製造がないために、閑散期にのんびりと製造ができる。だから工賃は安くできる。

ひどく単純に図式化するとこういうことになる。

けれども消費者心理に則って考えると、1年くらいしか使えないであろうトレンド品が高いとちょっと買いづらい。
一方、「一生物」に近いベーシックアイテムなら少々高くとも購入する。とくにステイタス性の高いブランドは。


このメンズアパレルの構想は有意義なのでぜひとも実現してもらいたいものである。

南 充浩

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