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復活か、終焉か、ファッションビル「ビブレ」の可能性

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 さる5月11日、岡山ビブレが閉館した。すでにビブレは都市型SCとしてのブランド力、発信機能も失ってしまった。営業面でも若者しか集客できないため、親会社のイオンとしても売り上げ効率の悪い館は、さっさと見切りをつける考えのようだ。

 でも、筆者にとってビブレは公私に渡り、お世話になった。1980年代の半ば頃だったと思う、同じマイカルグループの中でスポーツクラブの「エグザス」が産声を上げた。

 伊勢丹や西武がライフスタイルで打ち出した「ヘルシー」。それは米国から上陸したフィットネスブームよって、より具体的な「シェイプアップ」「ウエルネス」という概念に昇華した。それにファッションのエッセンスを加えたのがエグザスだった。

 エグザスは原宿ビブレ21をはじめ、マイカルの主要施設にリーシングシングされた。ちょうどマガジンハウスがターザンを創刊し、バブル経済が到来すると、エグザスも大幅な資金投下を行い、プロモーションに力を入れた。

 企業はリクルーティングのために法人会員になり、個人はステイタスの象徴として会員権を購入。それが原資となって別の施設が建設され、会員獲得にためにプロモーションに注力する。こうしてスポーツクラブはブランド化していった。

 外国人モデルの中からイメージにどんぴしゃなタイプを起用し、スタイリストに命じお洒落なレオタードやフィットネスシューズを着用させて、スタジオ撮影。それが終わると、クラブに移動してジャグジーバスの入浴シーンを撮影する。

 施設というハード、インストラクターやプログラムというソフトが充実し、まさに「スポーツコミュニケーション」がビジネスになった。その直中で仕事ができたのは、今でもいい思い出である。

 一方、プライベートでは、ビブレでよくショッピングをした。ちょうど、原宿ビブレがオープンしたのが1984年で、DCブームが翳りを見せ始めた頃。どのブランドも似たり寄ったりで面白くなくなり、かといってビームスのようなアメカジ志向でもない。その空白を埋めてくれたのが、何を隠そうビブレだった。

 その話をマイカルの販促担当者にすると、「ニチイから衣料品の開発に力を入れていた。ビブレには値ごろ感のあるPBも投入している」との答えが返ってきた。手前味噌ながらDCファンの感性をある程度、惹き付けてくれたのだから、ビブレのマーケティング力は秀逸だったのだと思う。

 服だけでなく、生活雑貨も都会的なものが多かった。いつもなら、わざわざ合羽橋まで出かけて探すテーブルウエアも、ビブレにはちょうど良いものがあった。さらにマンションのインテリアとのコーディネートを考え、ソファまでここで調達した。

 海外出張用のキャリーケースも当初、レンタルで済ませていたが、帰国後に返しにいく貧乏くささが嫌でしょうがなかった。そこで、カメラ店に返却しにいった足で、原宿ビブレでフランス製の「Superior」を見つけ、即買いした。

 今、振り返ると、ビブレの真骨頂は都会生活者をターゲットにするマインド型編集の上手さだった。売場から常に新しい情報を発信することで、エージの枠を超えてファッションリーダーをつかんできたと言える。

 ところが、バブル崩壊以降は勢いを無くし、マイカルの破綻でイオンの傘下に入ると、良いようにされている。ダイヤモンドシティ(現イオンモール)でのリーシングでは、「郊外でも若者を惹き付けた」と、イオンは語る。

 でも、それはイオン側に「ビブレは都市型SCでなくてもいい」との抗弁材料を与えてしまったことになる。岡山ビブレの受け皿はこの秋、向い側に開業するイオンモールで十分に果たせるという理屈にしても、そうだ。

 そんなことを考えている時、「天神ビブレ」のリリースを見た。ビブレは1982年に開業した「天神VIVRE21」、今の天神ビブレがルーツなのだ。だが、この1号店もかつての勢いは無く、パルコの進出、JR博多シティの開業で、苦戦が続いている。

 何せ、1階南側入口すぐ脇に地元店の「ダブルハート」を展開させていたくらいだ。それほどNBから期待されない館に落ちていた。そんな状況から脱却すべく、「初夏リニューアル」と題して、4月末に6店舗の新店、13店の改装を行っている。

 ダブルハートはファッション誌に登場する「旬のブランド」のECが主力。そのため、バッティングの問題から、ビブレ店は他ブランドによる品揃えにしていた。でも、それでは売上げが取れなかったのか、この2月に撤退している。

 代わって今回のリニューアルでは後地に「ロキシーストアー」がリーシングされた。あと「パープル&イエロー」「ボナジョルナータ」の2店が登場。他にはコスメ業態の「ABCコスメストアー」がオープンしている。

 2階にはセクシーをテーマに「VG」「プディング」「バニティフェイス」「クラブ」がオープン。メンズでは「ホライゾン」「シュリセル」が新たに導入されたが、大半は売れ筋に陳腐化して、ロイヤルティを無くした名ばかりブランドだ。

 リニューアルと言っても、やはりファッションテナントは小粒で、他の商業施設と堂々と対峙できるようなパワーを取り戻すまでにはいっていない。

 おまけにイオン傘下ゆえに狭い売場にも関わらず、「スポーツオーソリティー」が導入されている。逆に数字が取れるハンジローやGUはそのままなのだから、営業サイドのジレンマが窺い知れる。コンセプトなんてあって無いようなものだ。

 もはやお客は好きなブランドがあれば購入するという感じで、ビブレの発信力に何の期待もないだろう。欲しいブランドの購入はスマホで十分にいける中、リアル店を抱える都市型SCはどうあるべきかを、根本から考え直さなければならないと思う。

 試着しないと買う気にならない。販売スタッフとの会話やコーディネートを楽しむ。ショッピングの感動を味わいたいなど、実店舗で保守的な買い方をするのは、むしろアダルトの方だ。だからいっそのこと、そのゾーンにシフトしてはどうだろうか。

 レディスを中心にメンズも含めコンサバ、コンテンポラリー、モードといったテイストで区切り、マインド編集する。また、テストマーケティング的なショップも導入してみる。かつて渋谷109がヤングで失敗したケースの大人版だ。

 地方では厳しいから、集客力をもつ大都市に限る。売上げ的にはペイしないなら、流行の「ショールーミング」を導入してみる。ECによるストック配送でも、購買時点が実店舗ならデベロッパーは、部率をもらえる契約にすればいい。

 原価率を20%程度まで圧縮した服に、出店コストや物流費を含めた利益を載せて、都市部のビルインで売ったところで、もうファッションリーダーは飛びつかない。特に大人の洋服好きは、全国津々浦々で同質化したファッションに辟易している。

 だからこそ、もう一度、専門店系アパレルやクリエーターを中心にした上質なブランド編集に回帰し、ショールーミングというリスクヘッジを施して、新しい都市型SCのビジネスを創造してはどうだろうか。

 立地は一等地ながら、じり貧のファッションビルが復活するには、付け焼き刃的な対策では無理である。ゼロからコンセプトやマーケットを見直す時期に来ていると思う。

釼 英雄

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