Rie Miyata

【16年春夏NYコレクション日記:前編】カラフルで若々しいムード強まる〜花柄やマルチカラー前面に

宮田理江

ファッションジャーナリスト

フォローする:

 今回のNYコレクションはメイン会場がこれまでとは変わった結果、来場者にはプラスとマイナスの両方がもたらされました。プラスだったのは、前回までのメイン会場「リンカーン・センター」がマンハッタンのややアップタウン寄りにあって、ダウンタウンとの行き来が面倒だった悩みが解消されたこと。一方、マイナスは新しい2会場のうち、片方はハドソン川に近い、中心部から外れた位置にあり、交通面で不便なところ。もう片方のミッドタウン中心部の会場は行き来が便利な場所にあり、とても助かりました。メイン会場以外でもあちこちで開催されるので、場所と時間を管理するのが大変で、うっかり会場を間違えてしまった日もありました・・・(幸いショーには間に合いました)。

 NYでもプレゼンテーション(展示会)形式での発表がどんどん増えています。オンタイムで開催されることが多く、時間に間に合わないかと、ひやひやしながら会場まで向かうランウェイショーに比べると、比較的慌てないで会場に向かえるうえ、作品をじっくり確かめられる点でもプレゼンテーションは助かります。ブランドの世界観がしっかり伝わってくる点でも意味が大きいと感じます。今回はおなじみの人気ブランド新作や新デザイナーのデビューなど、序盤の話題をピックアップしました。

■kate spade NEW YORK

凝った会場演出がしやすいのも、プレゼンテーションの長所。「kate spade NEW YORK(ケイト・スペード ニューヨーク)」の会場はフラワーマーケット(花市場)に迷い込んだかのよう。色とりどりの切り花がバケツにたくさん入って、フロアのあちこちに置かれています。前後2列に並んだモデルの周りにもフラワーバケツが並びました。今回もバッグの形が面白く、子犬や蜂、回転木馬、ティーポットなど、愛らしいフォルムのバッグが目を楽しませました。

miyata_ny16ss_01_03.jpg

全体にフラワーモチーフがたくさん取り入れられていますが、抽象化されているので、見映えが甘くなりすぎません。黒と白のコンビネーションと花柄を巧みに交じり合わせていたのも、NYブランドらしい感じです。フラワーコサージュをウエスト脇に配したり、透かしレース模様にも花柄を忍び込ませたりと、花いっぱいのコレクション。マルチカラーのボーダーもポップなイメージを強めていました。

miyata_ny16ss_01_02.jpg

モデルはポニーテールが多く、フレッシュな印象。春が待ち遠しくなるハッピーなムードが会場内にあふれました。会場ではフィンガーフードやベーグル、ドリンクのもてなしがあり、ホッと一息。好きなプチ花束を持って帰れるテイクアウトまであったのは、この日が9月11日だったことと関係があったのかも知れません。デザイナーの想いが感じられます。好きな花を笑顔で選んでいる来場者の姿も会場の空気になじんで見えました。

miyata_ny16ss_01_01.jpg

■Banana Republic

翌12日に新コレクションを発表した「Banana Republic(バナナ・リパブリック)」は前回の2015年2月のNYコレクションに初参加し、今回9月が2度目。クリエイティブディレクターのMarissa Webb(マリッサ・ウェッブ)氏はモロッコのスパイスマーケットで見た色やテクスチャーに着想を得て、細やかなパターンや丁寧な手仕事感を感じさせるプレゼンテーションを披露しました。

miyata_ny16ss_02_02.jpg

デビューコレクションで高い評価を受けたこともあってか、今回はクリエーションにひねりが加わっています。たとえば、マニッシュなスリーピースのスーツルックも提案。ベスト丈を長めにしてフェミニン感がミックスされています。ダブルブレストのスーツや、スリーブレスのトレンチコートも披露。細ストライプのシャツワンピースはオフィスウエアとおしゃれ着のマルチユースに誘います。

miyata_ny16ss_02_01.jpg

巧みなスタイリングがコレクション全体に若々しさを注ぎ込んでいます。真っ赤なパンツスーツはNYらしいパワードレッシングの進化形。アラビア風の模様を、ガウンライクな羽織り物や透かしレースのワイドパンツにあしらい、エキゾチックな気分を寄り添わせました。ショートパンツやジーンズをカジュアルに見せすぎない合わせ方がこなれた着映えに導いています。日本でも幅広い世代に受け入れられそうなコレクションでした。

■Osklen

ブラジル発の環境コンシャスなブランド「Osklen(オスクレン)」は、アマゾンとのかかわりの深さで特別な存在です。デザイナーのOskar Metsavaht(オスカル・メツァヴァト)氏は実際にアマゾン地域を繰り返し訪れ、この地域の大自然や文化に敬意を払っています。今回のコレクションでは、湿地帯に暮らす先住民族のASHANINKA(アシャニンカ)の伝統的な生活スタイルにインスピレーションを受けています。

miyata_ny16ss_03_01.jpg

1枚の広い布に穴を開け、そこに頭を通して、かぶるように着る、アシャニンカ族の貫頭衣。メツァヴァト氏はそこから着想を得て、ゆったりした直線的フォルムのワンピースを打ち出しました。生成り系のオフホワイトも彼らのシンプルな暮らしぶりに通じています。服を織り上げた生地もシルク、リネン、オーガンザなどの天然素材を使用。再生生地も積極的に取り入れています。

miyata_ny16ss_03_02.jpg

マンハッタンのミートパッキング地区で催されたプレゼンテーションでは、ステージ上にモデルが4列に並んで、手間から1列ずつ消えていく構成。動きが単調になりがちなランウェイショーに比べ、展示会形式ではこういった大勢のモデルを同時に動かしてのドラマティックな演出が可能になるので、「オスクレン」のようにメッセージ性の強いブランドの発表に向いていると感じました。

miyata_ny16ss_03_03.jpg

布をさらりと巻き付けたようなワンピースが自然体のエレガンスを漂わせます。作務衣(さむえ)のような半端丈パンツや、ラグマットのような1枚布ウエアにも、あえて作為を加えすぎない意識がうかがえます。透かしレース模様にトライバル柄を写し込み、主張しすぎないエスニックを薫らせています。

miyata_ny16ss_03_04.jpg

世界で最も有名なファッションジャーナリストとされるスージー・メンケス氏も会場でデザイナーに取材をしていて、地球環境や多様性がモード界でも関心を集めていることを証明していました。

miyata_ny16ss_03_05.jpg

>>Osklen 2016年春夏コレクション全ルック

■Zac Posen for Brooks Brothers

NYコレクションでは毎回、数人のデビューコレクションが発表されます。今回のNYで最も関心を集めたデビューのひとつに、「Brooks Brothers(ブルックスブラザーズ)」のウィメンズがあります。ファーストコレクションのクリエイティブディレクターに起用されたのは、自らの名前を冠したブランドでNYに参加し続けているZac Posen(ザック・ポーゼン)氏。ファッションオーディション番組『プロジェクト・ランウェイ』の審査員も務める、NY屈指の実力派です。

miyata_ny16ss_04_01.jpg

デビューコレクション発表の会場に選ばれたのは、マンハッタンで五番街と並んでブランドショップが軒を連ねるマディソン街にある「Brooks Brothers」のフラッグシップ・ストアの2階。アメリカンクラシックの伝統を凝縮した空間だけに、お披露目にふさわしい雰囲気で、会場にはポーゼン氏の姿も見えました。モデルがずらりと並んで出迎えるプレゼンテーション形式で、来場者はフィンガーフードやドリンクでもてなされながら、優雅な気分で作品を間近に見ることができました。

miyata_ny16ss_04_02.jpg

正統派プレッピー色が強かった「Brooks Brothers」ですが、新コレクションは赤を多用して、若々しくフェミニンなムードを濃くしました。これまでなかなか見なかった柄物も登場。米国東海岸のアメリカンクラシック感は継承しつつも、高級別荘地のハンプトンでくつろぐようなイメージのリラクシングな装いを提案しています。真っ赤なワンピースはザックらしいウルトラフェミニンな風情。すがすがしい着姿のシャツドレスやマルチボーターのロング丈ワンピースもフレッシュに映りました。

miyata_ny16ss_04_03.jpg

スーツを得意とするブランドにふさわしく、ダブルブレストのパンツスーツも用意されています。ブランドのヘリテージであるボクシーなテイラーリングを生かしながら、これまでの「Brooks Brothers」になかったような、色や柄を織り交ぜて若い世代にも響くチャーミングな新トラッドルックに仕上げました。バケツハットに象徴される、どこかレトロなムードも随所に写し込まれていて、ビジネス的な成功も予感させる船出となりました。

■Moncler

ランウエイショーや展示会以外にも、NYコレクションの期間中には様々なファッション関連イベントが催されます。美術展覧会や各種パーティー、ショップオープンなどが立て込んで、ジャーナリストやバイヤーはスケジュールに追われる日々。モード関係者が集まるこの時期を狙って開催されるイベントには質の高い企画が多く、貴重な体験となります。

miyata_ny16ss_05_01.jpg

ダウンウエアの憧れブランド「Moncler(モンクレール)」が主催した『Art for Love』展も優れた写真展でした。しばしばファッションショーも開かれる、NY公共図書館を会場にお披露目パーティーが開かれたこの写真展には32人の写真家が協力。この企画はエイズ治療を支援する役目も担っています。「Moncler」は2月のNYコレクションで毎回、スペクタクルなショーを披露していますが、今回は9月にもこういう形で参加して、存在感を高めました。アートやチャリティーの意識が高い点もNYコレクションの特質です。

miyata_ny16ss_05_02.jpg

これまでにも増して日程前半には勢いが感じられただけに、後半にも期待が掛かります。(文・写真:ファッションジャーナリスト 宮田理江

記事のタグ

最新の関連記事

おすすめ記事

Realtime

現在の人気記事

    次の記事を探す

    Ranking Top 10

    アクセスランキング