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【16年春夏NYコレクション日記:後編】10年の重みとブランドの原点、劇的な演出、トゥモローランドNYへ

宮田理江

ファッションジャーナリスト

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 マンハッタンを駆け巡るようなショー巡りの中で、時に素敵なサプライズや劇的な演出に出会うことがあります。毎回、必ずと言ってよいほど、来場者をいい意味で驚嘆させてくれるのが、NYで最もアバンギャルドと評される「THOM BROWNE. NEW YORK(トム ブラウン ニューヨーク)」のショーです。今回もその期待を裏切らないシアトリカルな構成で新コレクションを披露してくれました。

【16年春夏NYコレクション日記:前編】カラフルで若々しいムード強まる〜花柄やマルチカラー前面に

■THOM BROWNE. NEW YORK

ショー会場でゲストを待ち構えていたのは「教室」の木組み。スクールガールをイメージソースにした今回のコレクションにふさわしい舞台設定です。次々と教室に入ってきたモデルたちはプリーツスカートとコンパクトジャケットといった「生徒」風の装い。お約束の白シャツとネクタイも忘れていません。白いニーハイソックスには日本の女子高生の面影が感じられました。

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今回は随所に「日本風味」をまぶし込んでいます。白塗りメイクのモデルは歌舞伎役者のよう。服にも和風の絵柄をたくさん写し取っています。日本にはトム・ブラウン氏のファンが多く、ビジネス的にも重要なマーケットとなっています。

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服飾のセオリーを踏み越える挑発的なスタイリングも健在。ジャケットの短い袖の先からは白シャツをはみ出させ、スカートの裾下からもスーパーロング丈のシャツ裾を露出。きちんと感の象徴と言える「制服」にあえて「崩しの美学」を持ち込んでいました。

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>>THOM BROWNE. NEW YORK 2016年春夏コレクション全ルック

■alice + olivia

日本でも人気の高い「alice + olivia(アリス アンド オリビア)」は70年代気分とウエスタン(米国西部)ムードを重ね合わせたようなコレクションを発表しました。布でこしらえた岩と、背の高いサボテンを背景に据えた、西部開拓時代を連想させる雰囲気でのプレゼンテーション(展示会)。勢いの衰えない70sルックを軸に、ボヘミアンと先住民族テイストをミックス。さらに、カウボーイの風情まで加えてアメリカンボーホーを組み上げています。

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マルチカラーの花柄で彩ったショートパンツ・セットアップや、ポンチョライクな羽織り物、エスニック柄のミニワンピースなどが先住民族の装いを継承。一方、カウボーイが好んだひもネクタイや、ベルボトムのビジュー付きデニムなどはウエスタンルックからのインスパイアを示していました。全体に刺繍やフリンジを多用して、装飾的ボヘミアンに仕上げています。

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デザイナーのステイシー・ベンデット氏は臨月でしたが、コレクション終了後の9月22日にに無事、赤ちゃんが誕生したことがフェイスブックで報告されました。

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■J.Crew

母国アメリカへのイメージ回帰が進んだのは、今回のNYで見られた潮流です。「J.Crew(J.クルー)」は伝統的な米国流サマールックを見直しつつ、ブランドの原点とも言えるプレッピーを再解釈してみせました。メンズとウィメンズ合同のプレゼンテーションで発表された春夏コレクションは、全体に一段と若々しくプレイフルに映りました。

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ラインアップに勢いを与えていたのが、カラフルなチェック柄とボーダー。細かいギンガムチェックのシャツには、ウエストに別色のギンガム柄シャツを巻いて、色違いの「柄on柄」ルックに仕上げています。オフショルダーのペザントブラウスもチェック柄でプレッピーライクに演出。色数の多いマドラスチェックも使っています。

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細い横縞のボーダー柄はロング丈ワンピースやたっぷり幅パンツに投入。極太幅ボーダーのカットソー・トップスは伸びやかな風情。薄めトーンの色味が涼やかでクリーン。淡いイエローやグリーン、ブルーがチアフルに装いを彩りました。マルチカラーのストライプ柄マキシ丈スカートはフロアレングスの丈感を生かしています。

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スタイリングの面では、トップスの裾をパンツの正面だけにウエストインする小技を多用。ベルトの余った端を長く垂らす演出も着姿にリラックス感を添えています。

これまでの成長を引っ張ってきたエグゼクティブ・クリエイティブディレクターのJenna Lyons氏はウィメンズのデザイナーとしてSomsack Sikhounmuong氏を既に迎えていて、来季から本格的にデビューさせる予定です。新たな「J.Crew」のお披露目は16-17年秋冬シーズンの話題を集めそうです。

■ALLSAINTS

NY発以外のブランドがNYファッションウィークでお披露目する機会が増えてきています。ソーシャルメディアでの発信に強みを持つ米国での発表はブランドにとって利点が多そうです。日本では、2016年春から日本語Eコマースサイトが立ち上がり、日本初の直営ショップが16年夏をめどにオープンする見込みになっている、英国のプレミアムカジュアルブランド「ALLSAINTS(オールセインツ)」は、マンハッタンの高感度地区ミートパッキングでプレゼンテーションを開きました。ブリティッシュテイストを帯びたハイストリートの提案は日本マーケットでも受け入れやすそうに見えました。

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ウォッシュしたヴィンテージ風デニムでジャケットやスカートを仕立てていますが、裾の切り替えパッチワーク、ポケットの切り方などを工夫して、見飽きないデザインに整えています。得意のレザーを生かしてライダースジャケットやボマージャケットを提案。黒や白のモノトーン系カラーでまとめています。縞模様のストラップで固定する厚底サンダルにもリアルなストリート感が漂います。会場にはクリエイティブディレクターのWill Beedle氏が姿を見せ、顧客に新コレクションを自ら説明していました。

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「100%直営での展開」「商品、内装、音楽など、消費者との接点となる場所はすべて自社でイメージや制作をコントロールしている」というブランド姿勢が日本でどのようなかたちになるのかは、関心を集めそうです。

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■Theory

ミートパッキング地区というのは、名前が示す通り、もともとは精肉工場が集まっていた辺りで、おしゃれとはほぼ無縁だったエリア。でも、2000年を過ぎた頃から開発が進み、今ではNY指折りのホットな地区に変貌。有力ブランドのショップやオフィスも集まっていて、「Theory(セオリー)」のオフィスが入っているビルもここにあります。16年春夏シーズンの新作プレゼンテーションはこのビルの屋上で催されました。

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展示会形式が増えてきたNYでも、屋外のシチュエーションは滅多にありません。しかも、ここは摩天楼のミッドタウンから離れたロケーションだけに、周りのビルに邪魔されないで夕焼けを眺められる絶景スポット。時刻もトワイライト(夕暮れ時)とあって、振る舞われたワインを味わいながらほろ酔い心地でコレクションを見るという体験に、ショー巡りの緊張がひととき、ほぐれました。

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天井のない解放感も手伝って、モデルの表情も割とリラックスして見えました。洗練されたスーツで知られていますが、今回はパンツスーツにクロップト丈を加え、色も淡いペールトーンを披露。トップスには優美なペプラムをあしらって動きを出しています。オフィス以外にも映えそうなスラウチな風情をプラス。オフショルダーのブラウスや、ドット柄のワンピースも見せました。ややくつろいだムードを帯びた装いは、かしこまらない屋上ラウンジの演出と素敵にマッチしていました。

■GIVENCHY

NYコレクションの期間はモード関係者が大挙して押し寄せるので、新作の発表以外にも様々なファッションイベントが催されます。有力ブランドが新たな旗艦店をオープンするのも、この時期が多くなっています。今回もフランスの老舗メゾン「GIVENCHY(ジバンシィ)」が8月28日、NY屈指のブランドストリート、マディソン街に旗艦店をオープンし、それに合わせる形で初のNYでのランウェイショーが実現しました。リカルド・ティッシ氏が監修した、世界で唯一のストアコンセプトで設計された店舗です。

miyata_ny16ss02_06_01.jpg(c)GIVENCHY

吹き抜けのメインフロアとメザニン(中2階)から成る謙虚なムードの店内は過度な装飾を控え、まるで「ジバンシィ」をキュレートする専用アートギャラリーのよう。白と黒の組み合わせが映える内装にもブランドのDNAが息づいています。シグネチャーのゴールドカウンターが店舗の中央に置かれ、そのたたずまいは威厳すら感じさせます。

1階に当たるメインフロアでは靴とバッグが充実したラインアップで迎えてくれます。一般的なショップにありがちなバッグの壁面棚はありません。すべてのバッグが見渡せるように配置されていて、ゆったりした気分で見て回れます。自然光が降り注ぐメザニンはメンズの売り場。実際のアパートメントを改造して1960年代のバスルームを表現。プライベートな空間というイメージを濃くしています。

オープン後にあらためて足を運んだときは、1人客のほかに、ショッピングを楽しんでいるカップルを数組見かけました。早くもアップタウンの新名所となりつつあるようで、性別を越えた人気の高さがうかがえました。

>>GIVENCHY 2016年春夏コレクション

■TOMORROWLAND ニューヨーク1号店

日本からもセレクトショップがNY進出を果たしました。「トゥモローランド(TOMORROWLAND)」は今回のNYコレクション期間中に、初のNY店舗となる「TOMORROWLAND New York Boutique」をオープンしました。場所はマンハッタンのSOHO(ソーホー)地区にあるブルーム通り沿い。ブランドショップが集まるSOHOの一角です。

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ショップ内は約300平方メートルという広々とした空間。建物がNYの歴史的建造物になっているそうで、高い天井が心地よい雰囲気。オープニングは大盛況となり、大勢が集まりましたが、天井が高いおかげで、くつろいで過ごせました。建物の持ち味を生かして、手を入れすぎていないところがかえってNYらしさを生んでいます。

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このショップで取り扱うアイテムはオリジナルブランドが中心となるそう。「TOMORROWLAND」のメンズとウィメンズ両方のコレクションを軸に、日本からの提案をNYで発信していくことになります。欧米にもセレクトショップはありますが、日本ではこの業態が特別な厚みを持っているだけに、NYでの成功にも期待が掛かります。

今回のNYコレクションを通じて感じたのは、「10年」という時間の重みです。アレキサンダー・ワン、フィリップ・リムの両氏がコレクションデビューを飾って10年の節目となりました。今やグローバルモードを引っ張る2人はNYコレクションの存在価値までも引き上げた感があります。しかし、その半面、2人の「次」を担う新鋭の出現も望まれるところ。一方、NY進出を果たした「Givenchy」のリカルド・ティッシ氏も10周年を迎えました。彼らが変えたファッション界がこの先の10年でさらにどう変わっていくのか。目先のトレンドから少し距離を置き、クリエーションの原点に立ち返る動きが相次いだ今回のNYはその方向性を示していたようにも感じました。(文・写真:ファッションジャーナリスト 宮田理江

【16年春夏NYコレクション日記:前編】カラフルで若々しいムード強まる〜花柄やマルチカラー前面に

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