Mugita Shunichi

「モードノオト」木曜日

麥田俊一

ファッションジャーナリスト

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無性に虫の居所が悪いときの伝で、突っ慳貪な言葉で返した私が悪かったのだが、先様も、これに負けじと報復措置をとり、云わずとも良いことまで云ってのけるので、やはりこれにカチンとくるものを覚えたわたしは、またぞろいつもの如く、悪罵の応酬をひとしきり遣り合ったのちには、「上等じゃねぇかぁ...」と言い放つや、コップの中身をコンクリートの床へと打ちまける。ひ弱な雇われマスターを殴る代わりの憤懣の持って行き場が、まだひとくち啜っただけの酒を無駄にする無意味な振る舞いだった。これを暴挙と思ってしまうあたりが、いかにもさもしい限りなのだ。どうでジェントルマン的な形(なり)を装ってはいても、直ぐと浅ましい地金が出てしまう、所詮画餅に過ぎぬのだ。先程の「ヨシオ クボ」のショーが私を少しく苛つかせた。婉曲な遣り方で薮を突きまわるよりも、薮そのものを根こそぎ抜いてしまうほうが性に合っているので、単刀直入に、問題は何なのかを自問してみたのだが、明確な答えは得られない。

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ターコイズブルー、ワインレッド、オレンジ...。多色使いのジャカードや刺繍、ニットやブロケードが、イカットやタペストリーのような民族調のモチーフを彷彿させる。デジタル時代のフォークロアやエスニックのスパイスは、服のデザインだけでなく、メタル使いの垢抜けたアクセサリーにも投影されている。テーラード、アウトドア、スポーツと云った男臭いギア的な要素をベースに、作り手流儀の力業、つまり異種混合の手法で荒々しくも洗練された男の横顔を描出している。チュニックをキーアイテムとした重ね着の妙、左右の均衡を大胆に崩したデザインも作り手の得手の領域だろう。パターンメーキングの工夫で色柄を切り替えて見せる、このブランド特有のイディオムを封印する代わりに、色柄の持つ本来の強さで逞しく押し切ろうとの狙いもわかる。変わろうと云う作り手の意志が伝わらないでもないが、敢えて苦言を呈したいのである。予定調和のショーを続けるには早過ぎる。あらゆる点で劇的な転換を期待したい。たとえば、会場の選択、開催時間から見直しても良いのかも知れない。簡潔。正確。本質を抽出しろ、さもなければ、批評家の嘲笑に晒されろ。物語で刺せ、啓示で叩け、プロットで炸裂させろ。言葉は適切ではないかも知れぬが、激情に駆られたショーを見てみたいのだ。上辺を繕い、生半な報道は作り手を堕落させるのみ。あまつさえ、甘な良心は超過手荷物なのだ。(文責/麥田俊一)

>>yoshio kubo 2016-17年秋冬コレクション

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