Mitsuhiro Minami

「定番品」こそ販売期間を決めるべき

南 充浩

繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー

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どんな分野にも「定番品」と呼ばれる商品がある。
洋服にも「定番品」は数多く存在する。
例えば、オックスフォード生地のボタンダウンシャツ、裏毛素材の無地トレーナー、ベーシックなジーンズなどなどだ。

洋服ブランドはこの定番品の扱いを誤る場合が多い。
定番品は流行り廃りが少ないから、長期間売り続けることができる。
買う方も一時の流行に左右されることなく一定の頻度で買いなおす。

定番品がトレンドになった場合のヒット力はすさまじい。
何せ、放っておいても毎年それなりの数量売れる商品がトレンドに浮上すると、相乗効果で爆発的な数量が動く。
定番品だから着る人を選ばないから、ファッションに自信のない人でも似あいやすい。
着る人を選ぶ特殊なトレンド品とはわけが違う。

そんな便利な定番品だが、取り扱い方に失敗しているブランドも多々あるといわれている。
定番品の取り扱いが最も上手いのはユニクロと無印良品だろうと思う。

毎シーズン、決まった定番品が入荷される。
春と秋には無地のトレーナーだし、冬は無地のウールセーターで、シーズンごとにベーシックジーンズが陳列される。

24日の懇親会を一緒に開催したマサ佐藤氏は、さまざまなセレクトショップやSPAブランド、大手通販に関与してきた経験から「売る期間を決めずに定番品を扱うブランドが多すぎる」と指摘する。

マサ佐藤氏のブログでときどき、「定番品」と「継続品」について言及があるが、あれは一言でまとめるとそういうことである。

たしかに定番品は、3年とか5年くらい置いておいても徐々に減っていく。
だから「売る期間」を決めないブランドがあることは理解できるが、それは悪手でしかない。

定番品の取り扱い方が最も上手いと思うユニクロ、無印良品は定番品にも「年度番号」と「シーズン番号」がある。
「〇〇年春」「〇〇年夏」「〇〇年秋」「〇〇年冬」という具合に分けられている。

だから例えば、春に入荷したトレーナーと、秋に入荷したトレーナーは別商品として管理される。
春に入荷したトレーナーは「春夏期間」に売りつくされることが前提となっており、例外的に売れ残った商品は、ユニクロの場合は、徹底値引きされて投げ売られる。無印良品ならアウトレットか旗艦店あたりで投げ売るかどちらである。

だから、ユニクロの場合だと、秋に新しい定番トレーナーが入荷した横で、春の売れ残りの定番トレーナーが安く売られているということになる。
ウルトラライトダウンしかり、ヒートテックしかりである。

マサ佐藤氏は、「いわゆるおしゃれブランドはこの決断ができないことが多い」と指摘している。

「通常の洋服屋」の思考なら「同じ定番品を入荷時期が違うから値段変更することは不味いのではないか」となってしまうからこの決断ができず、いつまでもダラダラと不良在庫の「定番品」を抱え続けてキャッシュフローを悪化させてしまう。
ジーンズチェーン店や地方のブティックの倒産・廃業が多いのはこれも一つの要因といえる。

そして「定番品」の売る期間を決め、秋物の新作トレーナーの隣で、春の売れ残りトレーナーを投げ売ることができるユニクロに負け続けているのである。

マサ佐藤氏が指摘する「定番品をダラダラ売る店」の言い訳は

「同じ商品だから入荷した時期で売値を変えるのは抵抗がある」

というものだが、それこそ視野狭窄でしかない。

定番品だから「同じ商品」といえば同じ商品だが、定番品といえども「新作は新作」なのである。
どういうことかというと、春のトレーナーと秋のトレーナーではカラー展開が一部異なる。
ベーシックな白、紺、グレー、黒は共通するにしても、春ならトレンドカラーの赤を差し込んでいるし、秋は赤を展開せずにマスタードイエローを展開しているということは、どのブランドでもある。

それはすなわち消費者から見れば「別の商品群」ということになる。
どうしても安い物が欲しければ、そういう消費者は売れ残った春物の投げ売り品を買う。

だからユニクロも無印良品も毎シーズン、新商品として「定番品」が入荷するたびに「どこが違うか?」をPOPに書いて説明しているのである。

ミクロの違いでも「素材を少しふんわりさせました」だとか「リブを1センチ長くしました」だとか「素材を軽量にしました」だとかそういう説明をする。

その説明があれば、多くの消費者は「定番品」を継続品ではなく、新入荷品として認識するのである。

これとは逆に「定番品」だから少々作りすぎて積んでおいても大丈夫という考え方だったのが昔のジーンズメーカーであり、昔のワイシャツメーカーだった。

だからどちらも衰退してしまった。

昔のジーンズメーカーでは、少々ジーンズを作りすぎてもノンウォッシュかワンウォッシュでおいておけば、ウォッシュ加工を施すことでその都度新商品に見せられると言われていた。
ワイシャツも同様だ。白無地のワイシャツなら作りすぎてもそのうちに卸せると考えられていた。

たしかに、ジーンズもワイシャツもいつの日か卸せる機会が来ることは、他のファッションアイテムに比べると可能性が高い。

しかし、そのやり方に染まり切ってしまっていたジーンズ業界、ワイシャツ業界は2005年以降の時代の流れに追随することができずに、倒産や廃業が相次いだ。

「定番品だからずっと売ることができる」という考え方は流通小売業だけではなく、卸売りメーカーにとっても悪手だったということになる。

南 充浩

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