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テキスタイルの欧州輸出に回復の兆し

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減少が続いていた欧州向けのテキスタイル輸出に、回復の兆しが出てきた。日本繊維輸出組合によると、18年上期(1~6月)の繊維品輸出は、前年同期比13%増。ファッション分野に目を向けると、この数シーズン、商社から産地の小さな機業場まで、欧州展に出展する日本企業に明るさが見える。「日本の技術力や企画力の高さが認知されてきた」(エージェント)ことは確かで、新規、固定客ともに集客が安定してきた。一方で、納期対応の弱さも浸透し、対策が急務だ。

(橋口侑佳=東京編集部素材担当)

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継続は力なり

欧州向けの繊維品輸出は、16年が前年比5%減、17年が4%減と苦戦していたが、今年に入り2ケタ増で推移している。18年上期は、主力のイタリアが1億302万1000ドル(前年同期比22%増)、ドイツが8232万7000ドル(19%増)、フランスが6036万6000ドル(6%増)となった。

好調の要因は欧州経済の復調も背景にあるが、ファッションテキスタイルにおいては、欧州展への出展や個別訪問の積み重ねが、確実に力になっている。輸出を伸ばしている企業に共通するのは、世界を基準に自社の強みを見いだし、それを明確に打ち出していること。欧州ブランドの生地調達網が広がり、「日本ならでは」「自社ならでは」の価値が、ますます重要だ。対象顧客の趣向やニーズをくみつつ、培った技術やノウハウを生かした差別化生地に「期待が高まっている」(東レインターナショナルなど)。

エコ素材に関心

新たな追い風も吹く。一つは、サステイナビリティー(持続可能性)の流れだ。素材では、環境に配慮した原料や製造方法に関心が高い。日本は他国に比べ、エコロジー素材が豊富で、「生地開発にもたけている」(デザイナー)。7月に開かれた伊ミラノウニカ(MU)19~20年秋冬でも、エコ素材を「目がけて来る」(伊藤忠商事北陸支店)客は多く、東レでは人工皮革「ウルトラスエード」で、リサイクルや植物由来のポリエステルを使ったタイプが支持された。リサイクル合繊は、合繊メーカーや商社で、アウトドアやスポーツアパレルを中心にグローバルな販売実績がある。原糸のバリエーションも増えており、ファッション分野でも広がり始めている。

ミラノウニカ19~20年秋冬の日本パビリオンは例年より活気があった(マルコ・ベルトリ写す)

旭化成のキュプラ繊維「ベンベルグ」、三菱ケミカルのトリアセテート繊維「ソアロン」は昨年、持続可能な原料、製造方法の繊維として環境認証を取得し、国内外でブランディングに力を入れている。それぞれ、世界で唯一生産するオンリーワン素材としても知られ、MUでも呼び水になった。

日本ならではのストック機能は、ここでも武器になりそうだ。コンバーターのサンウェルでは、「まだ何を使っていいかわからないという」ブランドに、1メートルから気軽に購入できる利便性が受けた。

欧州展の早期開催も、拡販を後押ししそうだ。欧州ブランドが生地選定を早める傾向に応じ、プルミエール・ヴィジョン(PV)パリは本展の2カ月前にプレ展のブロッサムPVを設け、MUは本展を2カ月繰り上げた。立地で不利な日本企業にとって、生地サンプルの納期に「余裕が生まれる」(齋栄織物、前田源商店)うえ、展示会終了後も「追加提案」(瀧定名古屋)する時間があり、受注につながる可能性が高まる。展示会で得た評価を反映し「コレクションが修正できる」(八木通商)ため、次の提案の精度が上がる。また、継続的な取り組みにもつながりやすい。

ブロッサムPVに初出展し、「最高だった」とはエイガールズ。バイヤーの滞在時間は30分から1時間と9月展に比べて長く、「こういうものがやりたいんだけど作れないか」といった具体的な相談も含め、様々な話ができたという。

盤石な供給体制を

一方、納期対応では、他国に後れを取っている。ストック販売で優位に立つが、バイオーダーでは、生産リードタイムの長さが影を落とす。産地の生産規模の縮小や人手不足を背景とした、様々な工程のボトルネックが主因だ。最近は欧州大手ブランドの素材調達担当者を取材すると、必ず納期が話題になり、警戒感もうかがえる。

サンプルの納期に余裕は生まれたが、量産発注の時期は変わらず、むしろ「厳しくなっている」という指摘もある。展示会に出しても、生産のスペース不足を理由に「自信を持って推せない」という声も出てきた。北陸のある機業場は昨年から、ダウンアウター向けの高付加価値品が売れているが、「スペースがあればもっと伸びた」と悔やむ。

来年初めのEU(欧州連合)とのEPA(経済連携協定)発効を控え、さらなる量的拡大が期待される。輸出拡大の流れを本物にするために、盤石な供給体制を整えたい。

(繊研新聞本紙8月27日付けから)

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