Mitsuhiro Minami

繊維製品のリサイクルは経済的に見合わない

南 充浩

繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー

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先日、久しぶりにバッタ屋のショーイチに取材に伺った。

ショーイチの山本昌一社長に1年半ぶりくらいにインタビューしたのだが、その中で、「エコやサスティナブルが言われいてるが、現時点では衣料品についてもっとも有効的な手段はバッタ屋や古着やリサイクルショップである」という話になった。

ショーイチ社長のインタビューは後日、

https://www.style-picks.com/

に掲載するのでそちらを見てもらいたい。

その理由は分解したり再生したりすることは「経済的に見合わない」からだそうで、2016年12月の産経新聞の記事にも次の一節がある。

https://www.sankei.com/life/news/161221/lif1612210019-n1.html

30年近く前から研究を続ける京都工芸繊維大の木村照夫名誉教授(リサイクル工学)は「容器包装などと違って、繊維リサイクルは経済的に見合わないためリサイクル率が低い。今後は繊維をもっと大量に活用できる商品を開発したい」と話す。

とある。

「繊維リサイクルは経済的に見合わないためリサイクル率が低い」のが現状で、これはよほどの技術革新がないとおいそれとは繊維リサイクルは進まないということである。

エコ、リサイクルという最近の盛り上がりのように感じるが、実は当方が記者になった20年前から紡績や合繊メーカーでは盛んにリサイクルが研究されていた。

しかし、そのいずれも現在までほとんど存続しておらず、その理由は「経済的に見合わない」ためである。

例えば、当方が駆け出しの記者だったころだから、98~2000年くらいのことである。当時は、ペットボトルをリサイクルしたポリエステルを衣料品に使用できないかという取り組みが盛んだった。

ゴミになったペットボトルを溶かして再生ポリエステルにして、それを衣料品の生地として使うのである。

当時はTシャツメーカーやワーキングユニフォームメーカーがこれに参加していた。しかし、なかなか普及せず、気が付けば20年が経過して、今ではそんな名称すら聞かなくなってしまっている。完全に立ち消えてはいないのかもしれないが、ほとんど表舞台では見かけない。

要するに廃れたということになる。

理由は簡単である。「経済的に見合わない」からだ。

ペットボトルの再生ポリエステルの欠点は当時2つあった。

1、リサイクルする費用が高い

2、出来上がったポリエステルは硬くて品質が良くない

である。

リサイクル費用が上乗せされるため、再生ポリエステルの価格は高くならざるを得ない。高くて品質が良いならまだ普及した可能性もあるが、品質が良くないというのは致命的である。

高くて品質が悪い物をわざわざ買いたい人はいない。

硬くて高いTシャツをわざわざ買いたい人なんてよほどの変態だろう。

だから結局は普及しなかった。

古着や在庫を集めた染め直しプロジェクトも同様だ。

京都市だったと思うが、古着を大規模に集めてそれを染色しなおして、販売しようという試みが6年前くらいにあった。しかし、今は恐らくは続いていない。

理由は「経済的に見合わない」からだろう。

これが「大切にしている洋服を染め直します」という有料サービスなら話は変わる。なぜなら、何千円か払ってでも染め直してもらいたいからだ。

例えば、バーバリーのベージュのトレンチコートが薄汚れてきた。クリーニングでも落とせなくなってくる、と、捨てるか染め直すかのどちらかである。

高かったし、初任給で買った思い出の品だからあと何年間か着たいという要望なら、黒や紺に染め直すという手段がある。ただし、何千円かはかかる。

それでも何千円かで思い出が守れるなら喜んで支払う人は少なくないだろう。

福井プレスがやっている「染め直し屋」はそういう有料サービスである。

http://somenaosiya.jp/

しかし、古着を集めてのリサイクルはそうはいかない。実際に集められた古着を見たが、ブランド物もあればジャスコやイズミヤで1000円くらいで売られていた服もある。

じゃあ、このジャスコで買った1000円の古着を染め直したからと言って、5000円で買う人がどれほど存在するだろう。1000円のジャスコの古着を染め直して900円で販売することは、染め直し工賃が生じるために不可能なのである。これをやると染め直し屋が倒産してしまう。

だから結局はこのプロジェクトもあまり聞かなくなった。

比較的低価格の染め直し品を販売できているのは今のところ無印良品の「re muji」だけだろう。これは無印良品の古着を集めて紺色に染め直して2900円で販売するというやり方で、紺だけなので大量に安く染めることができる。結局は「経済的に見合った」サービスしか残れないということである。

「経済的」とはちょっと違うかもしれないが、こんな例もある。これも20年くらい前のことで、その当時、何年間か土に埋めておくと分解されて土に戻るという繊維が開発された。生分解性繊維というやつである。

けっこう、いろいろな紡績や合繊メーカーが取り組み、一部ブランドでもこの手の繊維が生地として使われた。しかし、今はほとんど聞かない。

これも何かしらの不都合があったのではないかと思っている。

その不都合の1つの理由になると思われるのが、「一定の年月が経つと分解されてしまう」ことではないかと思う。

以前に付き合いのあった生地工場の工場長がこんなことを笑い話で話してくれた。2013年頃のことだ。

「生分解性繊維で織った生地が在庫として10年くらい積まれていたが、先日、整理しに行ったら、おがくずみたいに崩れてボロボロになっていて、それをスコップで運んでようやく廃棄した」

と。

この工場長によると、その生地は破綻する前のカネボウが開発したトウモロコシ成分で作られた繊維「ラクトロン」を使っていたのだそうで、長い間生地を積んでおくと、分解しておがくずみたいになってしまうということで、確かに生分解性は正しく発揮されたが、これが在庫としての生地や衣料品だと目も当てられないことになる。カネボウが経営破綻したこともあるのだろうが、結局のところ、いつのまにかラクトロンも消えたのは、こういう不都合があり、使用がなくなったのではないかとも思う。

「エコ」だ、「サスティナブル」だとイシキタカク叫ぶことは構わないが、実際のところ「経済的」「物理的」に見合わないと普及はしない。そして、現時点では「よほどの技術革新がないと経済的・物理的にクリアすることは難しい」という意見もある。もちろん、研究を続けることは重要だが、一足飛びに実現できるほどこの世界は都合よくないし技術も進歩しない。

研究は進めつつも、地に足の着いた議論をする必要があり、そして衣料品への最も有効な手段は、現時点ではバッタ屋・古着やなどんいよる再販売しかないというのが現実といえる。

南 充浩

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