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厳しい取り締まりは逆効果?ネットに蔓延する著作権侵害の対処法

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厳しい取り締まりは逆効果。根本的な解決策は、ユーザーが海賊版サイトを利用する前に、より便利で低価格な選択肢を提供することにある。

ネット上での著作権侵害を取り締まる最も有効な手段は、潜在的な顧客に高品質で低価格な代替サービスを提供すること。この結果は、数々の研究で繰り返し実証されてきた。

過去数十年にわたり、エンタメ業界は、違法コンテンツをダウンロードしたユーザーを相手どった大掛かりな訴訟や、悪質なユーザーのネット使用の全面禁止など、ネット上の著作権侵害と徹底抗戦を繰り広げてきた。しかし、これらの対応はことごとく失敗していることが明らかになっている。

このようなユーザーを救いようのない犯罪者のように扱うことは、決して賢い方法とはいえないことも、過去のデータから実証されている。これらのユーザーは、合法のコンテンツを購入する潜在的な顧客であり、正規の方法にさえアクセスできるなら、進んでそれを選択するからだ。

ウェブメディア〈TorrentFreak〉に今年2月に掲載されたデータも、この考えを裏付けている。2018年12月、通信会社〈Vocus Group〉の協賛で、ニュージーランドに住む1000人を対象に実施されたこの調査では、回答者の約半数が、海賊版サイトのコンテンツを閲覧したことがあると答えた。同時に、正規のストリーミングサービスが増えるにつれ、違法コンテンツの閲覧者が減少したことも明らかになった。

しかし、ニュージーランドの消費者のうち11%は、いまだに違法ストリーミングサイトから著作物を入手しており、10%は〈BitTorrent〉などのプラットフォームで不正コンテンツをダウンロードしている。ただ、全く同じコンテンツを、テレビ放送(75%)やNetflixのような正規のストリーミングサービス(55%)で視聴するユーザーが増えつつあることもわかった。

「つまり、消費者による著作権侵害が減っている理由は、そのメリット以上に手間がかかるからに他なりません」と〈Vocus Group NZ〉役員のタリン・ハミルトン(Taryn Hamilton)は述べた。

これまでのエンタメ業界は、違法サイトの利用者が何もかも無料で享受することにしか興味がない、と信じて疑わなかった。しかし実際には、彼らを現状のサービスに不満を抱いている潜在的な消費者とみなすほうがずっと賢明だ、とハミルトンは主張する。より広く利用できるサービスさえあれば、彼らは喜んでコンテンツにお金を払うはずだという。

「この調査は、これまでに多くのネット評論家が直感的に信じてきたことが正しかったことを証明しています。著作権を侵害するのは犯罪者ではなく、目当てのコンテンツが簡単に手に入らない、もしくは金銭的に余裕のないユーザーなんです」

これは単なる評論家たちの勘ではない。世界中の研究が一貫して同じ結果を示している、と主張するのは、アイダホ大学(University of Idaho)の著作権法を専門とするアンマリー・ブライディ(Annemarie Bridy)教授だ。

教授によれば、米国やEU諸国、そして世界中で実施された数々の研究が、ユーザーは正規版さえあれば迷うことなくそちらを選ぶことを示しているという。海賊版コンテンツを不審なサイトからダウンロードするさいのプライバシーや安全面でのリスクを考慮すればなおさらだ。

「現代の〈海賊版サイト〉は、マルウェアや有害なコンテンツの温床であり、ユーザーを危険に晒していることを踏まえれば、これは当然の結果です」とブライディ教授。「コンテンツの不正入手を難しくするより、正規版を入手しやすくするほうがずっと簡単なはず。そうすれば、ユーザーは自ずと合法のコンテンツを選ぶでしょう」

著作権の専門家で、ブログ〈Techdirt〉の共同設立者、マイク・マスニック(Mike Masnick)も、自ら実施した2015年の研究で、同じような結論に至ったと語った。ネット上のフィルタリングなど、より厳しい対策を講じれば、海賊版サイトの利用率はわずかに下がるが、ユーザーが規制の網をくぐり抜ける方法を見つけさえすれば、利用率は再び急上昇するという。

「スウェーデンは著作権侵害を厳しく取り締まる法律を導入しましたが、国内における著作権侵害の比率は、法の制定前と制定後でほぼ変わりませんでした。それどころか、テレビでの著作権侵害の比率は上がっていたんです」とマスニックは訴える。「その比率が下がり始めたのは、それから何年も経って、Netflixが市場に参入してからです」

著作権侵害の最も有効な対策は、厳格なネット規制ではなく、より良いサービスの提供であるという主張は疑いようがない、とマスニックは断言する。

「利便性、価格、選択肢において、業界側は消費者の求めるものを提供できなかった。その結果が著作権侵害なんです。これまでの研究や常識からも、この事実は明らかです」

著作権侵害は、単に悪質なだけではない。インディアナ大学(Indiana University)の研究によれば、著作権侵害は、業界における競争を促す場合もあるという。コンテンツ制作者やケーブルテレビ事業者が、違法サイトへのユーザー流入を防ぐためには、より魅力的で手頃なサービスを提供しなければならない。

「著作権侵害は、独占市場に〈陰の競争〉をもたらしています。この競争の脅威こそが、企業が海賊版サイトには簡単に真似できないような分野を新規開拓する大きな動機になるかもしれません」とインディアナ大学のアンティーノ・キム准教授は、メールで説明する。

「使いやすさ、読み込みの早い連続再生、画質や音質の良さ、多言語での展開、ユーザーひとりひとりの好みに合わせたサービス。これらは、企業が海賊版サイトを出し抜き、差別化を図ることのできる分野の、ほんの数例に過ぎません」

ただ、次々に登場するストリーミングサービス同士の競争は、このサービスの皮肉な面も浮き彫りにしている。2018年に発表されたデータは、市場に参入する放送局やストリーミングサービス(その大半が、課金しないと閲覧できないようコンテンツを隠している)が増えた結果、ユーザーが(目当てのコンテンツにアクセスするには複数のサービスに申し込まなければならないため)複雑さやコストを理由に、再び海賊版サイトへと戻っていってしまう可能性も示唆している。

とはいえ、世界中の研究が繰り返し示してきた結論は変わらない。エンタメ業界がユーザーの著作権侵害を阻止したいと心から願うなら、海賊版サイトを競争相手とみなし、低価格で高品質な代替サービスを提供するしかないのだ。

This article originally appeared on VICE US.

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