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地方ファッションの隠れた名店 -vol.1- 広島市「レフ.」と大阪市「ヴェリスタ」

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繊研新聞では19年4月8日付から「新名店100選」を週1~3回掲載中です。中小規模専門店取材チームが選考した独自取材記事のため、繊研新聞本紙・電子版のみでの公開となっていますが、今回は当連載記事のダイジェストを紹介します。

セレクトショップは都心の有名店だけではない。特に地方では、実店舗で「買い物する喜び」を提供して根強い顧客を育てるファッション個店が注目されている。良い店の基準である「提案力」「接客力」に加え、年齢や性別を超え、わざわざ足を運びたくなる「思いや嗜好(しこう)を体現した空間」が選ばれる理由だ。商品の持つ背景や価値を丁寧に伝え、実店舗が本来得意とする服・雑貨・インテリア・飲食まで生活全般に落とし込む〝一覧性〟の高さで、客が参加するコミュニティーを形成している。

新名店連載1回目 レフ.(広島市) ゆっくり変わり続ける 街の繁栄とともに成長

「お客様に〝変わった〟と感じさせないスピードで変わり続ける。常に顧客の半歩先を行かなければだめ」とは、広島市袋町を拠点に複数の専門店を運営するエヌの中本健吾CEO(最高経営責任者)。中本さんと言えば、今やのみの市「ザ・トランクマーケット」の仕掛け人という印象が強いが、セレクトショップ「レフ.」などの専門店を運営し、創業以来、毎年増収を達成している。常に新手を打ち、挑戦する姿勢が支持されている。(友森克樹)

挑戦続けて業容を拡大

創業は94年、広島県呉市に店を開いた。5年後には目標だった広島市に進出し、店舗を増やしてきた。

「5年に1度くらいのペースで、新たなことに挑戦したくなる性分」と中本さん。経営が順調だった07年には「社員やお客様に対して何か新しいことを見せなくては」と、フランチャイズ(FC)業務をスタートした。「ソフ.」を皮切りに、FCや販売代行で次々と店を開いた。

広島市は人口約120万人の中国地方最大の都市でありながら、「ファッションブランドの旗艦店が少ないと感じていた」ことが背景にある。「この状況を変えることができればビジネスチャンスになる」と誘致を進めた。当時、「自社運営のセレクトショップとFC・販売代行でのブランドオンリーショップの二つを会社の柱にできたことは大きかった」と振り返る。

FCや販売代行での出店が続いたため、13年に「所信表明の意味を込め」、自社編集のレフ.を開いた。「クリエイティブな生協」がコンセプトで、衣食住の分野でこだわりを感じられる、国内外の日用品や道具、衣類を販売する。

中本健吾エヌCEO。飽くなき探究心が会社の変化を支える

大事になる「街の役に立つ」こと

創業時と比べると、現在は「消費者の求める物の質が上がり、ハードルは高くなっている。よりユニークなアイデアも必要になった。服を売る難しさは増したが、ファッションが衰えたという感覚はない」という。「時代やお客様の変化に応じて変わってこられたことが大きい。顧客からは〝変わらないね〟と言われるんですが、実は少しずつ変えているんです」。これこそが成長の秘訣だ。

中本さんの探究心も同社の変化を支える。「衣食住で気になる店」には必ず足を運び、「長年続く店」があれば長続きの理由を探る。人気の秘訣を他店から学び、自店に生かしている。

これからの個店専門店に求められる要素を「街の役に立つこと」だと中本さんは考える。広島市の中心市街地を盛り上げるために始めたザ・トランクマーケットを機に、複数のファッション店を誘致してきた。ライバルの出店で客の奪い合いも起きるはずだが、「街が衰退し、消滅すれば、我々も商売ができなくなる。結局は自分たちのためでもあるんです」。

18年秋にはレフ.を増床リニューアルオープンした。既存部分で月に1回「ここでしか実現できない催事」を実施。予想外のブランド同士がタッグを組んだ期間限定店などを開いている。服の購入手段が増え、単に物を入手するだけならどこでも買える時代。常に挑戦し、新しい提案をし続ける同社だからこそ、ファンの心をつかんで離さない。

■所在地=広島県広島市中区袋町8の18

18年10月、かつての売り場を「レフ.01」、隣に開設した新たな売り場を「レフ.02」として、売り場合計330平方メートルに拡大した

新名店連載3回目 ヴェリスタ(大阪市) 生活の基礎となる存在に 商品力と人間力を磨く

大阪市北区のレディスとメンズのセレクトショップ、ヴェリスタは来店客の人生が一番高まるために必要となる服を売ることを使命とする。感動を与え、ワクワクさせる服しか扱わない。さらに人の能力、スキルを付加して満足や感動を完結させる。感動の追求がプロという信念がある。(津田茂樹)

最初に発想される店

鵜飼英隆代表は、顧客の生活の基礎となり、服を選ぶ時、最初に発想される店となりたいと考える。そのために大手飲食チェーン企業での顧客満足の定義「QSC+V」理論を行動指針に掲げる。クオリティー、サービス、クレンリネス、バリューの頭文字からなるこの理論をファッション小売りで方針とするのは珍しい。

開業は08年。ヤエカ、オーラリー、フィルメランジェなど国内外ブランドのほか、オリジナル、オーダーも扱う。一見客が見込めない住宅地にあり、切り抜かれたようなウィンドーと入り口の真っ白な壁が強い印象を放つ。売り場は変則的な台形で約21平方メートル。これまで売り上げを落としたことはない。

19年3月期はオリジナル比率を高め、売り上げを抑え、利益を大きく伸ばした。オリジナルは通常の価格設定を度外視した高い原価率となっている。感性的にとがった部分に焦点を当てたデザイン。ブランド不問で、店の価値観に共感できる人たちが利益を支える。

オリジナルは職人との直接交渉。工場を介さないのは利益面ではなく、間に人を狭むと伝言ゲームとなり、自分たちのエッセンスが変質するのを防ぐためだ。

「客の満足を測ることは永遠の課題だが、金額や回数だけでなく、どんな思いで買ってくれたかに心を置く」と鵜飼代表

顧客満足が存在価値

鵜飼代表はリサイクル業からの参入だ。異業種だったので、什器や服のきれいな見せ方は他店に劣る。ならば洋服屋の自分でなく、人としての自分を見てもらえるようにしてきた。スタッフにもその姿勢を求める。それぞれの特性を重視し、自分のスキルで対応できない場合は、対応ができるスタッフをアピールして紹介する。かつて自分がスキル不足であったことの反省でもあるが、結果的に強いチームになった。

ブランドをランク分類している。Aランクは接客がなければ伝えにくい商品、Cは低価で売りやすいもの。Bはその中間。黙っていても売れる人気ブランドはランクに入れない。それを仮にZランクとする。Zランクの10万円とAランクの3万円では評価はAが上。Zはヴェリスタでなくても売れるからだ。レジでの精算時に、提案して売れたのかを入力している。金額ではなく、誰にどのような状態で売ったかを見るためだ。

毎月、CSR(企業の社会的責任)として企業活動の評価を数値化し、チェックしている。その意味も店内に浸透させている。

客の満足の達成を不変の店の存在価値として、商品力、人間力、そして環境を進化させるあらゆる手段を模索し続ける。

■大阪市北区浮田1の4の22

通行客が見込めない住宅地の中で異彩を放つ

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