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少数派?「シーナウ・バイナウ」の現状を探る

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デザイナーコレクションの世界で、「シーナウ・バイナウ」(見てすぐ買える)が、大きな潮流のように言われたことがありましたが、最近、あまり聞きません。下火になったのでしょうか。その経過や現状、今後のゆくえを小笠原拓郎編集委員がお答えします。

半年待てない?

シーナウ・バイナウをコンセプトにしたファッションショーは、ニューヨーク・コレクションやロンドン・コレクションで見せるブランドを中心に広がりました。インターネットを通じて、世界の主要なコレクションがライブ配信されるようになったことで、これまでバイヤーやメディアに向けて発信していたコレクションの在り方に変化が起こったためです。

16年あたりからBtoB(企業間取引)だけでなく、BtoC(企業対消費者取引)の考え方を軸にしたファッションショーが広がりました。ロンドン・コレクションの「バーバリー」のような老舗ブランドからニューヨークの若手ブランドまで「シーナウ・バイナウ」のショーを行い、ショーの後にすぐショップでその商品を発売する仕組みを作りました。「客はショーを見た後、半年もその商品を買うのを待つだけのモチベーションを維持できない」という発想がありました。

この「シーナウ・バイナウ」の考え方が広がるにつれ、同じコレクションの中でオンシーズンのショーと半年後の商品のショーが混在するようになりました。ただし、パリ・コレクションには、このシーナウ・バイナウのショーはほとんど広がりませんでした。一部のラグジュアリーブランドは、「ラグジュアリーブランドの製品を作るのには時間がかかる。シーナウ・バイナウの手法はラグジュアリーにはそぐわない」というコメントを発表しました。

しかし、製品の生産サイクルは同じ半年スパンなので、ラグジュアリーだからといってこの手法を取れないわけではありません。実際には、ショーの評価を経てのオーダーの関係で、在庫リスクの問題があったと思われます。

今は少数派に

インターネット配信の影響で始まったシーナウ・バイナウのファッションショーは一時期、20近くのブランドに広がりました。しかし、現在、この手法でコレクションを発表しているブランドは「トミー・ヒルフィガー」や「ラルフローレン」などわずかです。結局、ハイファッションのカテゴリーのブランドビジネスにおいて、シーナウ・バイナウの手法は定着しませんでした。その要因は見せる時期と売る時期がコレクションスケジュールと合わなかったためです。

例えば、もうすぐの9月のニューヨーク・コレクションで19年秋冬を発表する場合、この秋冬のメインコレクションを9月まで店頭に並べることはできません。秋冬のプレコレクションを6月から店頭に並べたとしても、メインコレクションは実質2カ月しか販売時期がありません。春夏シーズンも同じです。11月から5カ月間、プレコレクションを販売して3月からメインコレクションを店頭展開することになります。メインコレクションを売る時期が短すぎるため、店頭での消化率が上がらないという問題がありました。

新たな模索始まる

もちろん、ブランドによって、インターネットでのショーのライブ配信とECでの販売実績は異なります。顧客とネットビジネスの親和性が高いブランドでは、シーナウ・バイナウを継続することも可能でしょう。ただし、その場合でもショーの時期はネックになります。今のコレクションサイクルとは別の時期にショーをする方がベターです。

現在、ニューヨークでは、「アレキサンダー・ワン」を中心とするいくつかのブランドが6月と12月にショーをするようになりました。ニューヨーク・コレクションの9月と2月というサイクルとは別の時期です。この6月と12月にショーをして、そのままシーナウ・バイナウ形式で販売するというサイクルならば、見せる時期と売る時期はぴたりと重なります。この時期のショーならば、シーナウ・バイナウの手法にフィットします。

今後、店頭とECの販売シェアも大きく変わっていきそうです。そして、ファッションを巡るメディアの配信の仕方も大きく変わっていく可能性もあります。その状況次第では、一度は下火になったシーナウ・バイナウのショーの在り方も再考される可能性も秘めています。

6月に行われたアレキサンダー・ワンのコレクションから(大原広和写す)

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