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教員からファッションPR、ブランド設立へ――NEAT西野大士を動かし続けるファッションへの情熱

教員からファッションPR、ブランド設立へ――NEAT西野大士を動かし続けるファッションへの情熱

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コロナの影響によってさまざまなファッションブランドの店舗がクローズするという悲しいニュースが多い中、9月にある人気ブランドの店舗がオープンを迎え話題となった。西野大士氏が手掛けるパンツ専業ブランドの「NEAT(ニート)」の国内初となる「NEAT HOUSE(ニートハウス)」だ。ファッション業界でも異色の経歴を持つ西野氏に、ファッション業界を目指したきっかけや、「NEAT HOUSE」についてインタビューを行った。

西野 大士さん
淡路島出身。ブルックスブラザーズのPRを経て、PR会社「株式会社にしのや」を2017年に設立。ファッションを共通言語に複数社のPR活動のサポートやパンツ専業ブランド「NEAT」を展開する。2020年9月には国内初となる直営店「NEAT HOUSE」を東京・神宮前にオープン。

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―西野さんは淡路島で教員をされていたそうですね。

小さい頃は母の出身地の大阪で過ごし、小学校から父の出身地の淡路島に移って高校まで淡路島で生活していました。もともと学校の先生になりたくて、香川の大学に通い教員免許を取って、淡路島に戻ってからは2年間小学校の教員として働いていました。大学時代、真面目だったので、どうせならいっぱい免許を取っておこうって思って。小学校の教員免許以外にも幼稚園から高校までいろいろな教科を取って、大学4年間で230単位くらいは取りましたね(笑)。

―そんな淡路島の小学校の先生がずっとファッションへの情熱を抱えていた。その原点とは?

僕の原点は古着ですね。キムタク主演のビューティフル・ライフ(笑)。靴はワンスター履いて、全身古着を着ているみたいな。当時、僕は高1で、よく『BOON』とかを買って読んでいましたね。高校にもファッション好きな人が多くて、その頃からファッションは身近で馴染みがありました。大学生の頃も古着屋さんでアルバイトしていました。

―安定している教員職から、なぜファッションの世界へ移ろうと決意したのですか?

小学校の先生って、基本的に毎日ジャージなんですよね。でも僕は洋服がすごく好きで、淡路島の実家通いだから金銭的にも余裕があって、給料が入ると洋服ばっかり買っていた。けど、好きな洋服が着られるのは土日だけだったんですよね。「毎日好きな服を着たい」って思ったら、やっぱりファッションの仕事がしたいと強く思うようになって、それで憧れていたブルックスブラザーズに応募し、入社したんです。

―安定した職業だからこそ周りからの反対もあったのでは?

母は泣きましたね(笑)。最初のブルックスブラザーズも契約社員での入社でしたから、不安を持っていたと思います。僕は大阪梅田店に入社したのですが、どうしてもPRになりたくて。母には「東京に行ってPRになりたい。3年間やって駄目なら戻って教員をやる」って話して説得しました。

―実際にファッションの世界に入ってみてどうでした?

大阪梅田店に勤務して2年が経った頃、なかなか当時は大阪の店舗に本社の方が来るということは少なかったですが、店長が僕のことをずっと押してくれていたんです。それでちょうどその頃、前任のPRの方が辞めて空きの出たタイミングに、本社の方が面接に来てくれて。当時よく店舗主体のイベントをやっていて、僕はその店舗販促を担当していたので、そこでの評価もしてくださって、念願叶いPRとして東京に行くことになったんです。母との約束も叶えられて、そこからはファッション業界で働く僕を応援してくれるようになりました。それがちょうど26歳の頃です。

―販売員からPRへ。大変だったことは?

当時のブルックスブラザーズはリースもほとんどない状態で、PR予算もなかったのでタイアップも出来ていなかったんです。何から手をつけたらいいかわからない中、仕方ないので雑誌の編集者やスタイリストの方など、ファッション業界の関係者とコミュニケーションを取るために、ひたすら飲みに出かけて(笑)。週5は飲みに出かけていたと思いますよ。すると、どんどん人から人へと繋がっていって、徐々にリースも増えていきました。それで会社に認めてもらい、「好きなようにやっていいよ」と言ってもらえて、そこからいろいろなタイアップなど実現することができました。

―そこからPRマネージャーまでのぼりつめた訳ですが、独立のきっかけについて教えてください。

PRマネージャーとして勤めていた頃、日本と本国の資本バランスが変わっていき、本国ベースの会社になったんです。ディレクタークラスの人材はほぼ総入れ替えになって、会社として大きな変革期を迎えましたが、僕はそこが合わず辞めることを決断しました。今でもブルックスブラザーズにいたかもしれないと思うくらいブランドのことが好きでしたが、僕自身にとっても大きな転機になりました。当時辞めるときにいくつかオファーをいただいたりして、転職も考えていたんですけど、きっとこれからも会社員でやっていく以上はきっと同じようなジレンマが起きるだろうと思って、独立を考えるようになりフリーのPR会社を始めました。そして、PR会社としての展開もしつつ、趣味から始めたのがパンツブランドの「NEAT」です。

―ブランドの設立、しかもパンツ専業のブランド「NEAT」誕生のきっかけとは?

何か作りたいって思ったときに、パンツって大事だなって思って、まず自分用に作り始めたのが「NEAT」誕生のきっかけです。ブルックスブラザーズの時は毎日スーツを着ていたんですが、スーツのスラックスだとニューバランスやビルケンとか、いわゆるカジュアルなシューズには合わなくて。だからそういう靴にも合うパンツを作りたいと思ったのが始まりでした。最初はパタンナーさんを紹介してもらって作り始めて、自分で作ったパンツを履いていたら、周りから「俺のも作って」と声をかけてもらうようになって。段々「これ展示会やったら売れるんじゃない?」という声も出てきて。最初は「展示会??」っていう感じだったけど、とりあえず周りの後押しもあって2015年に初めて展示会をやったんです。バイヤーさんはまったくブランドのこと知らないから個人オーダーだけでしたがが。(笑)

―そんな「NEAT」も今や取り扱い店舗数が多いですよね。

今は日本に35店と、韓国に直営店、卸で香港と台湾にあります。韓国の直営店ができた経緯はおもしろくて、会社のinfo宛に韓国人の男の子から「とにかくNEATが好きで、NEATのお店がやりたいんだ」というメールが届いて、当時まだ日本にもお店がなかったし、「え?なんで?」ってすごく不思議だったんですけど、とりあえず企画書つくってみてよっていったら企画書が届いた。企画書の内容はともかく情熱がものすごくて、彼の熱烈なオファーで日本より先に韓国に直営店をオープンすることになったんです。

―すごいストーリーですね。西野さんのキャリアも、外資PRからブランド立ち上げというユニークな経歴ですよね。この「NEAT HOUSE」のオープンのきっかけは?

今年の9月16日に「NEAT HOUSE」はオープンしました。やっぱりPRという、人にものを伝えていく仕事を突き詰めていくと、最終的に自分が本当にいいと思えるものを伝えていきたいと思うようになって。そうなると自分のブランドや自分の店というのが夢になっていくんですよね。そういう想いから、運にも人にも恵まれオープンすることができました。完全受注型のオーダーサロンで、生地も世界中から仕入れた100種類以上の生地、新しいものからデッドストックまでさまざま揃えています。生地を選んでもらってパターンを決め、40日ほどでお渡し出来ます。他では取り扱っていない型から、店頭にはないサイズまで、1日5組のみのアポイント制ですが、来ていただいたお客様にはすごく喜んでもらっていますね。

―ファンには最高の空間ですよね。こだわったポイントは?

アポイント制なので、住所も東京・神宮前というところまでしか明かしていなくて、アポイントいただいた方のみにリマインダーでお知らせしています。立地はいいけどひと目につかない場所というのがこだわりです。あとは、僕たちは卸があっての僕らという思いがあるので、そことの区別をすることはすごく大切にしていて。既製品の販売はここではせずにオーダーにこだわり、だからこそ人数も限定しているんです。

―最後に、今後の展開について教えてください。

ここを旗艦店として、店舗展開も考えています。来年には淡路島にお店をオープンしたいと考えていて、地元の活性化にも繋がっていけばいいなと思っています。まずは曜日限定とかで挑戦してみて、再来年に本格的にオープンとか、いろいろ考察しています。それ以外の国内での展開はあんまり考えていなくて、他は海外(アジア)での出店を考えています。

あとはこの「NEAT HOUSE」で、いろいろなイベントをやりたいですね。例えば、お客様に自分のNEATのパンツを持ってきてもらって、それにペンキを塗るようなイベントだったり、ここでただ買うだけじゃなくて、持っているものでなにかできるようなことをやりたいんですよね。

ブランド設立からわずか5年で多くのファンをつくり成長を遂げている「NEAT」。その原点にあるのは純粋なファッションへの情熱と、共感を生むものづくりだと、西野さんは話す。“本当のファッション好き”が作る自分が本当に欲しいと思う製品は、これからも多くのファッション好きを唸らせることだろう。

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