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"リアルユーズドデニム"を生み出す「尾道デニムプロジェクト」とは?責任者にインタビュー

"リアルユーズドデニム"を生み出す「尾道デニムプロジェクト」とは?責任者にインタビュー

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広島県尾道市は、風光明媚な瀬戸内の歴史ある港町。尾道駅から程近い商店街の一角に、連日、客足の絶えないデニムショップがあります。そここそが「尾道デニムプロジェクト」の拠点。店内に並ぶのは、尾道に暮らし働く人々(=プロジェクト参加者)が毎日穿き込むことによって出来上がった“リアルユーズドデニム”です。
元々、地元の特産品として知られるデニム。尾道で暮らし働く人たちに1年間穿き込まれることで刻みこまれた唯一無二の価値と、尾道の街の魅力を同時に発信することを目的に、2013年にスタートした世界初の取り組みが「尾道デニムプロジェクト」です。

綿吉 杏(わたよし きょう)さん
株式会社ディスカバーリンクせとうち「尾道デニムプロジェクト」責任者
広島県広島市出身。大学時代に町おこしに関する活動を始め、2017年 株式会社ディスカバーリンクせとうちに新卒入社。2年前に「尾道デニムプロジェクト」の責任者に就任。販売業務に加え、ユーズドデニム作成、企画や商品開発などプロジェクトのすべてに携わる。

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―「尾道デニムプロジェクト」始動のきっかけや目的などを教えてください

弊社(株式会社ディスカバーリンクせとうち)では観光事業や衣料OEM事業などを進行しており、「尾道デニムプロジェクト」はその内のひとつです。我々のミッションは、瀬戸内エリアの魅力を再発見し、町に事業と雇用を創出することです。2021年で9年目を迎える尾道デニムプロジェクトは、2013年1月、生産量日本一を誇るデニムの生産地、備後(びんご)地区[※1]で作られるデニムの魅力と、尾道の街の魅力の発信を目的に始まりました。備後地区で作られたデニムを一年間、尾道で働く人たちに実際に穿き込んでもらうことで“リアルユーズドデニム”に育てる取り組みです。こうして出来上がったユーズドデニムは尾道市内の「尾道デニムショップ」で販売しています。一般的なブランドのように単純に利益の追求が目的ではなく、この活動によって地域の産業全体が活気づき、町全体が元気になることを目指しています。町のみんなと一緒になって取り組むことで、一企業の小さな枠を抜け出して、地域に暮らすみんなのプロジェクトになるのです。

※1 現在の広島県東部に位置する尾道市や福山市を中心とした瀬戸内海に面するエリア

―地元の人々に協力してもらう“参加型”というところが実にユニークですね。

尾道デニムの参加者には、漁師、大工、農家、繊維業、住職、保育士…など、20代から70代まで幅広い世代のさまざまな職種の方々がご協力してくださっています。まず「仕事着として一年間着用してください」と、2本の新品のデニムをお渡しします。ワークパンツとして穿き込むことで、加工では決して出せない、味わい深い風合いや色落ち感など、一本一本に物語と個性を宿すリアルユーズドデニムに仕上がります。

photo-Tetsuya Ito/by courtesy of DISCOVERLINK Setouchi

photo-Tetsuya Ito/by courtesy of DISCOVERLINK Setouchi

―プロジェクトのプロセスすべてが「尾道デニム」の価値となるのですね。どのようにしてプロジェクト参加者を募るのですか?

地元の方へ地道にお声掛けし参加者を募りました。プロジェクト開始時には270名の方が集まり、540本の尾道デニムが完成しました。現在でも約100名の方に参加いただいており、デニムの製作本数は累計で800本以上です。私の所感ではありますが、尾道の人たちは地元愛がとても強く、みんなが町のことを考えていて、町とちゃんと関わって生活している。町全体に一体感がある感じがします。このプロジェクトが9年も続けられているのは、楽しんでくれている町の方々の存在が大きいですね。

―プロジェクト参加者が穿き込むデニムのつくりや販売価格などについて教えてください

参加者の方には備後地区産のオリジナルデニム『PJ001』と、広島出身のデニム界の巨匠、林 芳亨(はやし よしゆき)氏のブランド「RESOLUTE(リゾルト)」のデニム『710』と『711』を穿き込んでいただいています。『PJ001』はプロジェクトを進行する中で、働く人にとって動きやすい腰周りのパターン、スタイリッシュなシルエット、ハードな使用にも耐える強度など、デニムの基本要素を徹底的に追求しました。完成したユーズドデニムは、色落ち具合や生地の状態、ストーリー性などで7段階のランク付けをします。プライスは2万6800円〜4万8000円(ともに税抜)となります。ダメージがあるから価値が下がるというわけではなく、そのダメージが加わった背景を”ストーリー”という価値とみなします。

photo-Tetsuya Ito/by courtesy of DISCOVERLINK Setouchi

photo-Tetsuya Ito/by courtesy of DISCOVERLINK Setouchi

―デニムを育てるための一年間、プロジェクト参加者と責任者である綿吉さんの関わり合い方について教えてください

作成中のデニムは洗い専門工場での洗濯のために毎週、参加者さんを訪問してデニムの回収・配布という交換作業を繰り返します。このように交換作業をすることで、デニムの経年変化を目で見て確認できますし、参加者さんがデニムを穿いてどのような過ごし方をしているかを具体的に知ることもできます。これを1年間怠らずに続けていくことが、クオリティの高いデニムを育てる上でも、より楽しいプロジェクトにしていく上でも、欠かすことのできない大切なプロセスになります。

―「尾道デニム」は、年間の生産数が固定されているということですね

尾道デニムの生産量は多くても年間200本です。サイズもバラつきがあるため常に十分な在庫を揃えることはできません。ただ、そういった面をマイナスと捉えるのではなく、時間をかけて作り上げた希少性の高いユーズドデニムだからこそ、大量生産では表現できないかっこよさがあり、新たな市場価値が生み出せていると考えています。

―「尾道デニム」をECでは展開しない理由もそのあたりにあるのでしょうか?

対面販売にこだわるのは、一本一本、表情がまったく違う風合いをネットでお伝えできないということと、実際に尾道に足を運んでいただきたいという、プロジェクト本来の目的のためでもあります。尾道デニムは、尾道でどのように過ごしてきたかというストーリーが経年変化という形で表れていて、それを生の言葉でお伝えできることが魅力です。そういった穿き込んだ方の“デニム物語”を直接お伝えしたいですし、サイズも個性もバラバラな中からお客様が求めるデニムが見つかるかどうかは、ショップで試していただくほかないのです。ちなみに…「尾道デニム」は店頭のみの販売ですが、プロジェクト参加者の声から生まれた、ワークパンツとしての機能性を重視したモデルもいくつかあり、それらのデニム(新品)は店頭、ECサイトで販売しています。自分で育てたデニムを委託販売ができるシステム「尾道デニムプロジェクト参加権」というものもあります。ただ買い物をするというだけでなはなく、自分が大切に穿き込んだものが異なる土地の誰かへ引き継がれていく喜びを、どなたでも楽しんでいただけると思います。こうして尾道から世界へデニムの輪が広がっていくことを願っています。

―対面販売だからこそ生まれた、お客様とのエピソードをいくつか教えていただけませんか

数あるデニムの中から自分だけの一本を選ぶポイントはお客様によって様々です。「新境地でがんばりたい」からと、自分の仕事に誇りを持ち尾道の現場でバシバシ働く大工さんのデニムを選ぶ方もいました。また、あるお客様は、何本か迷っている中にヤギを飼っている漁師さんのデニムがあったので、余談でヤギのことをお伝えしたら、実はそのお客様は北海道で牧場を経営されている方で、ヤギという共通点にご縁を感じられ、それが購入の決め手となったこともありました。過ごした時間や思いの部分で、育ててきた人・これから育てる人がリンクした結果ではないでしょうか。そして「尾道デニム」が生み出す可能性を実感したのは、東京で広告関係のお仕事をされている方が来店され、柑橘農家さんのユーズドデニムを購入されたときです。穿き手だった農家さんに報告したところ、その方の大ファンだったことが判明。そこでご縁ができて、一緒に仕事ができたらいいねとお話しになられたと聞いています。「これまで尾道デニムやってきてよかった!」と、とても嬉しそうな参加者さんを見て、私も本当に嬉しくなりました。

―綿吉さん始めスタッフがプロジェクト参加者のことを知らなければ、こういったエピソード自体、生まれていませんよね。普段の何気ない会話が価値のあるコミュニケーションを生み出しているのですね

生産から経年変化の様子、それがお客様へ受け継がれていくまでのプロセスに携わることが出来るのはとても楽しく、このプロジェクトならではのやりがいを感じます。より多くの方に「尾道デニム」と尾道の街の魅力を知っていただくため、「ONOMICHI DENIM CARAVAN(尾道デニムキャラバン)」と称した展示販売イベントを全国各地で開催しています。コロナの状況が落ち着いたら、そのあたりの活動も徐々に再開したいと考えています。

―「尾道デニムプロジェクト」の今後の展開がますます楽しみです。最後に、御社の新たな取り組み「REKROW(リクロー)」についてお聞かせください

弊社の衣料OEM事業部は広島県福山市に所在しています。ここは、ワークウエアの量産など、いわゆる厚物の生地を用いた服作りを得意とするエリアです。私たちはここで地元の繊維関連会社や工場と連携して、企業やブランドからのさまざまなオーダーに応じながら、事業を展開してきました。この衣料OEMと「尾道デニムプロジェクト」のふたつの事業に着想を得て発足したのが、「REKROW(リクロー)」です。第一弾として、地元の造船会社の船づくりを担うスタッフが3年間着込んだ約1,800着のユニフォームを回収し、新たな製品へと再生するプランが進行中です。役目を終えたワークウエアをそのまま古着として販売するのではなく、パーツを切り取って、新しい商品に生まれ変わらせるアップサイクルの仕組み(着用→消耗→回収→商品化)を作り出すことが、このプロジェクトのミッションです。

―今注目のサーキュラー・エコノミー(循環型経済)ですね

戦後、備後地区は繊維産地として名を馳せましたが、90年代以降、それまで地元の下請け工場が受注してきた仕事が海外の工場に移り、激減しました。現場の技術を未来につなぐため、弊社は「REKROW」が雇用創出や教育にも繋がる、持続可能なものづくりのプラットフォームになることを目指しています。「REKROW」で回収した衣料を解体してパーツ化する工程では、手作業で糸をほどくなど集中力を要する作業が多いのですが、地元の福祉施設に依頼しています。また、弊社では未来の縫製技術者の育成を目的としたスクール、「HITOTOIT(ヒトトイト)」を隣町の福山市で運営しています。今後、本スクールの現役生や卒業生の雇用に結びつく事業としても成り立たせたいと考えています。

―「REKROW」の今後は?

自社開発はもとより、他社との共同開発や国内外で活躍するクリエイターとコラボレートして「REKROW」の魅力を高めていくことが、本プロジェクトの使命です。2021年秋頃を目処に、第一弾のオリジナルの商品とマテリアルの販売開始を目指しています。

尾道デニムプロジェクトは尾道の街の方々と日々成長しているプロジェクトであると実感しています。デニムというアイテムを通して人と人との繋がりが生まれ、このプロジェクトを通して街に対する想い、ものへ対する愛情も強く生まれていると思います。参加者さんの中には完成したデニムを見て今年1年頑張ったなぁと感じることもあるそうです。尾道デニムを通して、観光だけでは味わえない、尾道で暮らす人々の生活を感じていただくことができたらと思います。

ONOMICHI DENIM SHOP
尾道デニムショップ
〒722-0045 広島県尾道市久保1-2-23
営業時間 11:00 – 19:00  
定休日 水曜日
TEL 0848-37-0398

text:下村葉月

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