新型コロナの影響で、挙式をはじめ、さまざまなパーティやイベントが激減してしまった。人が集まる場がなくなったことでドレスを着る機会が減り、ドレス業界は大きな打撃を受けている。ドレスを扱う仕事は今どうなっているのか。そして今を乗り越え、未来につなぐ工夫とは?レンタルドレス業を手掛けるドレスピープル代表の本堂氏に話を伺った。
本堂 寛子さん
株式会社ドレスピープル 代表取締役社長
IFIビジネス・スクール後、アパレル企業でアクセサリーバイヤーを経験。その後スタイリスト業を経て、アパレル系IT企業に転職し、ECやWEBサイト運営に携わる。2013年4月、株式会社ドレスピープルを設立。結婚式出席用ドレスをはじめとするレンタルドレス事業を行い、日本のウェディングに「ブライズメイド文化」を普及させた人物でもある。
DRESS PEOPLE:https://dress-people.com/
Instagram:@dress_people
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―レンタルドレスの会社を立ち上げた理由を教えてください。
友人の結婚式に参列した経験がきっかけです。当時私は20代後半で、ちょうど友人の結婚式に行く機会が増えた頃でした。色々な式に行きましたが、オシャレなドレスを着ている参列者が少ないことがいつも気になりました。でも考えてみれば、友人の結婚式に行く年頃である20代半ば〜30代は、まだあまりお給料も高くありませんよね。高価なドレスはなかなか手が出ない上、買ったからといって毎回同じドレスで行くわけにも行かない。自分のオシャレ以外に、ご祝儀もありますし、予算的には大変です。高い割に出番の少ないパーティードレスは、買うよりも毎回レンタルする方がリーズナブルで便利で、そこに需要があるのではないかとビジネスの可能性を感じ、起業しました。
―レンタル事業を始めるには、まずはドレスが必要ですよね。それはどのようにして調達されたのですか。
最初は国内でと思いましたが、いざ探すとなると、結婚式用のフォーマルドレスはあっても、海外ドラマで目にするユニークなデザインのドレスは見つけられませんでした。であれば、いっそのこと海外で調達しようと、大きなトランク持参でニューヨークに飛びました。バイヤー時代の買い付け経験を活かし、とにかく現地に行けば何とかなるだろうという自信はありました(笑)
―ニューヨークでの初買い付けはどうでしたか。
実際ニューヨークへ行ってみると、日本との差が歴然で、一等地にある有名百貨店のワンフロア全部がドレス売り場として成り立っているのを見たときは衝撃でした。ドレス文化が根付いているアメリカは、ここまでスケールが違うのかとショックを受けたと同時に、「よし!日本のドレス文化をもっとオシャレにするぞ!」という、1つの大きな目標ができました。
―ではここで、貴社のレンタルサービスについて教えてください。
当初はネットのみのビジネスで考えておりましたが、思いの他、ご試着ご希望のお客様が多かったので、それができるよう、目黒にサロン用オフィスを借りました。ドレスのみならず、バッグ、ジュエリー、シューズも豊富に揃っているので、全身コーディネートが可能なのもドレスピープルの特徴の一つです。ご試着後、ご指定日にドレス一式をお客様のご自宅へ郵送し、ご着用後、弊社宛にご返送頂くだけのシンプルな流れです。クリーニングも不要です。
―サロンにドレスは常時、何着くらいありますか。
400着です。型数だけで行けば400着ですが、ブライズメイド用に同じ色形のドレスを揃えておく必要があるので、全在庫では1000着程度になります。
―400着とは!すごい数ですよね。ドレスについて、もっと詳しくお聞かせください。
ドレスはインポートと、オリジナルの両方で揃えています。海外のドレスは華やかで、素敵なデザインが多いのですが、その一方で胸元が大きく開いていたり、フィットが違ったりで、必ずしも日本人の体型やニーズに合うとは限りません。私が買い付けをするときは、「日本人でも安心できるデザインでありながら、ユニークでファッション感度の高いもの」を重視して選ぶよう、心掛けています。
とはいえ、海外ものだけでは限界があるので、日本人のニーズに合致するデザインをリサーチし、ドレスピープルでオリジナルのドレスを作っています。中国生産で、全てネットで完結するシステムが整っているのでスムーズです。メーカー探しや素材調達もネット、オーダーから完成後の商品撮影までネットで依頼しています。中国では、欧米のドレス生産のかなりの割合を生産している為、経験豊富でクオリティの高いドレスを生産するメーカーがたくさん存在し、とても満足しています。
―集客はどのように?また、メインの客層についても教えてください。
最初は集客に苦労しましたが、花嫁のサポート役である「ブライズメイド」用のドレスを全面的にアピールすると注目され始め、取材が相次ぎ、そこからお客様が増えました。「ブライズメイド」は欧米では結婚式に欠かせない存在ですが、当時の日本ではまだ殆ど知られていませんでした。このカルチャーを日本にも根付かせようと、あえて同じデザインのドレスを複数用意し、美しいドレスを仲間とお揃いで着ることが素敵であると、根気よく発信し続けました。まだ日本で普及していないカルチャーにフォーカスしたことが、会社としての成長に繋がりました。また、ブライズメイドは、ひとりの花嫁さんに数名つくので、仲間うちで利用された方々が口コミで広げてくださって、どんどん次の集客へ繋がっていきました。一方で、ブライズメイド用のドレスだけでなく、パーティ、イベント、学生プロムなど、さまざまな機会に着用していただけるものも揃えており、現在では10代から50代超と、幅広い年齢層の方々にご利用いただけるようになりました。親子やご家族でのご利用もあります。
―起業から順調に業績を伸ばしていかれたわけですが、1年前から予期せぬコロナ禍が始まって…影響はいかがですか。
大打撃です。挙式はもちろん、パーティ、イベント、学生プロム、コンサート、撮影など、ドレスが必要となる機会が一気に消滅しました。ドレスを着る場は、基本的に人が集まる場所ですから、あらゆる催しが全てなくなったことで、ご利用するお客様がいなくなってしまいました。顧客のみならず、取引先にも影響があり、一番大きな取引先だった中国の会社は規模の縮小を余儀なくされたり、カジュアルウェアの生産に移行したりしています。ファッション業界には、飲食業界のような給付金も出ないので、正直言って、本当に大変な状況です。売上はコロナ前に比べて7割減といったところでしょうか。
―でも、逆に考えると3割のニーズは残っているのですね。
ええ、ゼロにはなっていません。挙式も今年からは少し増えてきましたし、ドレスを着る機会がまったくゼロになってしまうわけではないので、そこに何とか希望を見出して頑張っていかなければと思っています。
―コロナ後に始めた試みについて、教えてください。
コロナ後、新たに力を入れているのは、お客様とネットを介したコミュニケーションで、「ドレスのご試着送付」を始めました。気になるドレスを3着まで選んで頂き、ご試着用にご自宅までお届けしますので、ご来店不要のまま、お好みのドレスを選んでレンタルして頂けます。今後は宅配による試着とレンタルの流れをこれまで以上にシンプルにして、もっとお客様が利用しやすいシステムを作っていきたいと思っているところです。
一方で、来店でのご試着希望のお客様用に、完全予約制で1時間に一組限定でアポイントもお受けしております。1時間あれば、実際に様々なドレスを見ながら、ゆっくりご試着もできますし、他にお客様がいらっしゃらないのでソーシャルディスタンスも守られます。お母さまと娘さんなど、ご家族でいらっしゃる方も多いですね。
―ドレス選びって楽しいから、やはりそうしたニーズは根強く残りますよね。
まさにその通りです。本当に皆さん嬉しそうに試着してくださって。「とても楽しかったです」「理想どおりのものが見つかりました」とお褒めのお言葉を頂くと、私たちも本当に嬉しくて。このようなニーズがある限り、あらゆる知恵を絞ってこの事業を続けていかなければ、という意欲もわいてきます。今のような状況が永遠に続くわけではありませんが、かといって以前と同じように、とはいかないでしょう。だからこそ、ご試着送付の新しい流れを作るなど、その状況に応じたビジネスの方法を模索し、できることからやってみる。そうした姿勢が大切だと考えています。
―アフェリエイトも始められたそうですね。
アフィリエイトは管理が難しいのでは?と思っていましたが、とてもシンプルな仕組みのアプリが見つかったことで、思い切ってやってみることにしました。ドレスピープルのアフィリエイトの仕組みを簡単に説明しますと、まず弊社のサイトに独自のアフィリエイトプログラムを追加し、ご登録頂いた方は、専用のリンクを作成出来ます。専用リンクをSNSやメールに貼っていただき、専用リンク経由で、弊社に注文が入った場合、登録してくださった方に10%程度報酬をお支払いするという流れです。また、実際にドレスピープルのレンタルドレスを着用し、ハッシュタグなどをつけてSNSに投稿していただけるインフルエンサーさんも募集中です。
―登録してくださった方にも、貴社にも双方にメリットがある、と。
弊社にとっては宣伝になりますし、登録してくださった方には報酬が入ります。弊社に限らずファッション業界、そしてそれに付随する仕事をされている方すべてにコロナの影響が及んでいるので、少しでもお互いに協力しながらこの状況を乗り越えていけたらと思い、このアフィリエイトを開始しました。WEBサイトを運営されている方、SNSアカウントをお持ちで積極的に発信されているインフルエンサーの方を募集しています。報酬は微々たるものかもしれませんが、少しでも助けになれば嬉しいです。
―SNSの発信力ってすごいですものね。NESTBOWLも早速登録させていただきますね。
ありがとうございます。思えばドレスピープルが成長できたのも、もとはといえばレンタルドレスをご利用いただいたお客様の口コミでした。これから少しずつ挙式やイベントなどが再開できるようになれば、ドレスを着用できる機会も増えるでしょうし、何より皆さんの「ステキなドレスを着たい!」という想いがいろいろなことを後押ししてくださるのではないかと思っています。またコロナ禍によって、改めて「好みのドレスが着られる日常の幸せ」を再認識することができました。人を幸せに笑顔にできる仕事のやりがいを、これからも追及していきたいです。
数百着もあるドレス、ジュエリー、バッグがプライベートな空間で自由に選べて、それが安価でレンタルできるサービスは、気軽にオシャレをしたい女心を満たしてくれる、パーフェクトなビジネスモデルだと言えよう。
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