「ナイキ(NIKE)」は、2025年までの目標として、自社が所有及び運営する施設での炭素排出を65%削減すること、消費財廃棄物の約10倍の量をリサイクルまたは寄付すること、環境に配慮した材料を全主要製品材料の50%に引き上げることなどを具体的な目標として掲げている。この目標を達成することで、50万トンの温室効果ガスを削減する見込みだ。
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これらの目標は、消費者の目に見える変化としても現れており、近年では「ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト ネイチャー」(3万8,500円)などの再生素材を用いたシューズなどが目につく。このシューズは、ブランド史上最もサステナビリティ志向の高いシューズと位置付けられ、再生素材が重量比50%の割合で使用された。現在、「ナイキ」の炭素排出の70%は素材に由来するもので、その素材研究やイノベーションに重点的な投資が行われている。特に再生ポリエステルにおいては、年間およそ10億本のプラスチックボトルを再生するほどだ。サプライチェーンのパートナーと協力することで、アルファフライのようなトップランナーが使用するラインにおいても、サステナビリティのために機能性に妥協しなくてもいい状態になった。
現在、気候変動は、地球全体において避けられない重要な課題だ。12日に閉幕したCOP26では、参加197カ国によって成果文書の「グラスゴー気候協定」が採択された。協定では、世界の平均気温の上昇を産業革命前から1.5度に抑える努力を追求すると明記された。一方で、石炭火力発電については、「段階的に廃止」という文言が、インドや中国による反対意見から、「段階的に削減」という弱い表現へ変更された。これに関して、地球の平均気温が今世紀末までに2.4度上昇するという試算もある中、今回のCOP26で採択された取り組みでは不十分だという声もある。
国家による気候変動への取り組みが難航する中、「ナイキ」はサステナビリティへの取り組みをビジネスの観点から段階的に再考している。「ナイキ」の主要なサプライヤーの一部では、もうすでに気候変動による影響が出ており、全社を通じた共通の対策が必要とされているためだ。サプライヤーとは、干ばつや電力不足といった問題を考察した上で、持続可能なビジネスを生み出す方法を模索している。その過程では、パートナーとの情報共有の機会を積極的に設けるなど、全体としての取り組みが重点的に行われている。これらの取り組みの中で、現在「ナイキ」はカーボンニュートラルと資源循環の実現、そしてそれに向けた計画の実行を通じ、業界トップに立つことを目指している。
「ナイキ」は、世界数十カ国に100万人を超える労働者やサプライチェーンを持ち、また、生産パートナーの多くがそれ自体で大企業であり、上場企業だ。業界外でも、ユニリーバやスターバックス、マイクロソフトなどの世界を動かす大企業とつながりを持つ。様々な業界で、気候変動の影響を抑えようとする大きな波の高まりがあるなか、その分野のリーダーとして「ナイキ」は変化を生み出そうとしている。世界を股に掛けた全社的な取り組みを通じて、ビジネス慣行そのものを地球に優しいものにする。その先に、サステナビリティに関するゴールとして業界トップに立つ、それが「ナイキ」が目指す未来のようだ。
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