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三景のキルト工場 “国内最大級”の生産体制で異業種にも提供

三景のキルト工場 “国内最大級”の生産体制で異業種にも提供

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 服飾副資材の三景は、栃木県佐野市にキルト加工工場を構えている。「国内最大級」の生産体制を敷き、アパレルを中心に異業種向けにもキルティング加工を提供している。

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 伊藤忠商事グループの一員である同社は、商社だけではなくメーカーとしての機能も充実している。裏地・表地・芯地・ゴム・レーベル・テープなどを北陸で生産し、特に裏地における国内シェアは7割を占める。キルティング加工は裏地の優位性をさらに発揮する狙いで約30年前から開始した。ピーク時は広島、福井、栃木、上海、ベトナムの五つの自社工場でキルティング加工を担い、現在は需要の波もあって栃木キルト工場にこれらを集約、国内外に協力工場のネットワークを構築している。都内中心部から2時間ほどでアクセスできるため、アパレルメーカーのデザイナーや企画担当者との物理的距離も近く、実際に足しげく通うデザイナーも多い。

工場の外観

コード刺繍なども対応

 生産設備はキルトマシン16台、原反刺繍機2台、ラミネートマシン1台、転写プリンター3台、転写プレス機1台。23人のスタッフが働いている。アパレル向けを中心としたキルト工場としては、マシン、人数ともに「国内最大級」の生産能力を備える。コード刺繍や収縮加工、パワーネット加工なども近隣の協力工場で対応できる体制を敷いている。

 豊富なマシンと加工技術が同工場の強みになっている。キルティング加工は最低でも2層の生地をステッチするが、生地や中わた、柄の組み合わせは無限にあり「基本的に定番品という存在はなく、すべてが別注対応になる」からだ。

 たとえば生地はライナー向けのベーシックな裏地や、ウールやデニム、ボアなどアウター向けの表地など選択肢が多岐にわたり、中わたも用途によって機能や量が変わる。柄はシンプルなものから複雑な飛び柄まで、デザインの難易度もそれぞれ異なってくる。

キルトアイテムの需要は高まっている

 使用する素材や実現したい柄、希望のコストなどに合わせて、レギュラーキルトやコンピューターキルト、原反刺繍などのマシンを1カ所で使い分けられることが取引先にとってのメリットになっている。

 特にデザイナーの考案図柄は、実際に加工して凹凸が出ると想定イメージとずれてくるケースも多い。サンプル製作の段階で工場の企画担当者と「スピーディーに相談しながら、最適なマシンや加工を選びなおしたり修正することができる」のがポイントだ。

世代交代と技術継承

 キルティング加工を担うスタッフの平均年齢は45歳で、現場のリーダーも38歳。世代交代と技術継承が進んでおり、工場には若い活力があふれる。

 比較的閑散期にあたる10~2月に積極的にジョブローテーションを実施。一部のマシンの操作を除き、キルティング加工のほぼすべての工程を全員が行えるようにしている。「キルティングは各担当者がお互いの役割を理解して、コミュニケーションを取らないと成り立たない」のが理由だ。

 たとえばキルティング加工は前段階で、搬入された生地のロールを巻き直す作業が必要になる。キルトの柄を正確に出すには、事前に生地のテンションを一定に揃えたり、静電気を取り除く必要があるからだ。こうした作業の意味を実践によってお互いに理解しておくことで、スムーズでミスのない生産体制にむすびつく。

 最も習得が難しいスキルは「マシンの〝調整力〟」という。表地や裏地、不織布、中わたなどの癖を見抜き、安定したステッチで柄をきれいに表現するためには、マシンに生地をどのようにセッティングすればよいのかが問われる。実際に加工するのは機械だが、無限の組み合わせがある生地をどう扱うかはすべて手作業の感性だ。

マシンへの生地のセッティングにテクニックがいる

 一人のスタッフがすべてのマシンを操作できるまでに2年、難易度の高い柄を表現するのに2年、生地のセッティングに1年と、キルティング加工は5年ほどの年月を要するという。

 最近は異業種向けのキルト提案も増えている。寝装(枕カバーやベッドシート)やアウトドア(グランピング施設やテントの室内)でキルト加工のニーズが高まっているからだ。中わたのボリュームが厚くなったりと、アパレル向けとは異なる技術が求められるが、全国的にキルト工場が減少していることもあり、同社が担うケースも多くなってきた。

 異業種向けの協力工場の輪も広がり、最終製品まで生産できる体制も整いつつある。ライフスタイルやアウトドアなど新規分野へ参入するアパレルメーカーも増えており、そうした需要も取り込みながら、「国内のキルティング加工技術をいつまでもつなげていきたい」と考えている。

《チェックポイント》アイデアの宝庫

 工場のショールームには、30年にわたってキルティング加工してきた資産ともいえる3000以上の柄をストック。デザイナーや企画担当者が来ると1日中こもってしまうこともあるほどで、まさにアイデアの宝庫のような場所だ。キルトはどうしても写真ではイメージしにくく、現物を見たいというニーズが強い。考案した図柄を実現させるためのマシンの使い方なども過去のストックからヒントを得ることができるといい、同社のノウハウを蓄積する役割も担っている。

3000を超える柄のストックがある

 コロナ下で差別化するために、キルトの柄にこだわるアパレルメーカーが増えているそうだ。難易度の高い柄の要望に応えるためには何度もサンプル生産を重ねる必要があるが、サンプルごとにマシンの糸をセットし直すだけで1~2時間かかる大変な作業だ。特に2月から3月はサンプル依頼が多く「現場は頭も体もフル稼働状態」が続くが、「チャレンジしたいという企業の気持ちに応えたい」思いが支えている。

《記者メモ》何通りもの個性

 キルトの魅力・だいご味は「変化をつけられること」という。同じ生地を使っても柄の表現によってエレガントにもカジュアルにもなる。

 同工場はオーソドックスなストライプやダイヤ、波などの柄から、幾何学模様、星、ハート、ひょうたんといった個性的な柄、複雑なオリジナルの飛び柄まで、そのバリエーションに驚いた。

 この秋冬は店頭でもキルトジャケットなどが並んでいる姿が目立った印象だが、再生ポリエステルの中わたアウターの需要が高まり、実際に同工場でも受注を増やしていたようだ。

 国内でのキルティング加工の市場規模はピーク時の1割ほどにまで縮小したという見方もあるというが、アイテムの個性を発揮できる加工技術としてこのまま上向いていくことを期待したい。

(藤川友樹)

(繊研新聞本紙22年3月16日付)

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