ユニークな形状のソールが特徴的なスイスのスポーツブランド「On(オン)」。国内外の大手ブランドがひしめく日本のスポーツシューズ市場に無名のスタートアップブランドとして参入したにも関わらず、たった数年で人気に火がつき、今では広く認知されるまでに成長した。世界のトップアスリートたちが、トライアスロンや陸上競技などで高いパフォーマンスを発揮する本格的なシューズを開発すると同時に、その快適性やデザインからカジュアルシューズとしても支持されている。「On」はなぜ多くの人を惹きつけるのか。プロダクトと企業の魅力について、オン・ジャパン株式会社ヘッドオブマーケティングの亀関宏紀さんにお話を伺った。
ADVERTISING
亀関宏紀さん/オン・ジャパン株式会社 ヘッドオブマーケティング
青山学院大学卒業。アメリカへ留学中にファッションに興味を持ち、株式会社ジュンに入社。以降、語学力を活かし、ゴディバジャパン株式会社や日本フェレロ株式会社、アマゾンジャパン合同会社などの外資系企業にてセールス・マーケティング経験を積む。2019年よりオン・ジャパン株式会社にてマーケティングチームの立ち上げに携わる。
自身の想いとタイミングが合い、「On」に入社
ー 亀関さんが「On」と出会うまでのキャリアについて教えてください。
私は学生時代から国際的な仕事をしたいと思っていました。アメリカに留学した時、日本のファッションや文化が海外では高く評価されていることを知り、卒業後は日本のアパレルの会社に入社しました。その後、2つの外資系企業でマーチャンダイジングとマーケティングを経験し、アマゾンジャパン合同会社でファッションの出品に携わりました。
一方、スポーツの仕事にも興味を持っており、いつかはスポーツシューズやウェア、グッズのブランドに携わりたいと考えていました。「日本でオリンピックが開催される時にはスポーツの産業に携わっていたい」と思っていたところ、オン・ジャパン株式会社の求人を見つけたのです。
ー では、そこで初めて「On」と出会ったのですね。
いえ、実はそれまでに、取引先ブランドの展示会で「On」と出会っていました。ソールユニットのユニークさにインパクトを感じ、「スニーカーとして良い意味で違和感のある、良いデザインのシューズだな」と思っていました。
「ランナーに一番信頼されるブランド」を目指す
ー 入社後、どのようにマーケティングを展開されたのでしょうか。
「On」は、2010年にスイスで創業したブランドで、オン・ジャパンの設立は2015年です。私はマーケティングマネージャーという肩書きで入社しましたが、チームメンバーがひとりもいない状態から始まりました。
お客様が見るもの、触るものがブランドの体験をつくると考え、まずはトレードマーケティング(小売業や卸売業のバイヤーに向けたマーケティング)に注力しました。大手のスポーツショップや地方のランニングショップの陳列棚の装飾、ポスター掲示などでプレミアムな演出やブランディングを進めたのです。その後、2022年4月に東京・原宿にアジア初のフラッグシップ店「On Tokyo」がオープンしました。ブランドの世界観が表現された、アイコンとしての意味もある場所になっています。
ー 最初は直接ユーザーに対して販売するのではなく、卸売りなどで企業向けに展開されたのですね。たった数年で、人気ブランドへと成長されました。
最近は履いてくださっている方を街でも多く見かけるようになり、とても嬉しく思っています。一方で「カジュアルなスニーカーブランド」のイメージだけが強くなってしまわないよう、バランスにも注意しています。昨年あたりからは、日本のトップアスリートと関係性を築くことにも力を入れ始めました。ブランドの持つ価値やメッセージを、いかにローカライズして伝えるかということに挑戦しています。
ー ファッションとして楽しむ一般の方からトップアスリートまで、幅広く履いてもらうことを想定されているのですね。
「On」は、トライアスロンの世界チャンピオン経験者らが創業したブランドです。そのストーリーから、やはり”ランナーに1番信頼されるブランドになりたい”、”トップアスリートに勝負靴として履いてほしい”という想いがあります。それが結果的にブランドを大きなスケールに成長させているのです。アスリートの方々が勝負のシーンで安心して履いていただけるよう、取り組みを進めています。
ー 「On」のシューズづくりで大切にされていることは何ですか。
大きく3つの方針を持っています。まずは機能性です。例えば人気モデルの「クラウドモンスター 2」のように、特許を取得している画期的なテクノロジー、クラウドテックが搭載されており、柔らかな着地と力強い蹴り出しを可能にしています。
次に革新性です。イノベーションをキーワードにしており、他社の取り組みをそのまま真似するようなことは基本的に行いません。サステナビリティには真っ向から向き合うスタンスを持っており、サブスクリプションのサービスや、空気中に排出される炭素化合物を活用した新しい素材「クリーンクラウド」を開発しています。
最後はデザインです。「かっこいいけど足が疲れる」といったことがないよう、デザインとテクノロジーの両立にこだわっています。
ー コミュニティの活用も積極的にされていますよね。
お取り扱い店舗やプレス関係者、一般のお客様などが試し履きイベントに参加してくださっています。履いた時に感じていただける高揚感を大切にしたいです。
また、現在は週に 2〜3回必ず走るようなランコミュニティや、体を動かした後にお茶を飲むようなゆるいコミュニティもあります。「On」をずっと好きでいてくださるファンの方々、そして新たにファンになってくださった方々とのバランスを取りながら運営を続けていきます。
「インクルーシブネス」と「5スピリッツ」
ー 企業としての特徴について教えてください。
「On」は自由度の高い組織です。スイス本社も「日本は何がしたい?」というスタンスで、ブランドの方針やストーリーから大きくブレない範囲であれば、ある程度自由にできる雰囲気があります。まだまだ若い企業ですので、現在は日本に限らずグローバルでも徐々にガイドラインを作っている最中です。
ー 会社はどのような雰囲気ですか。
ウルトラマラソンで何十時間も走るようなスタッフもいますし、スポーツ業界の出身ではないスタッフもいます。終業後や昼休憩などに走りに出る者も多くいますが、トレーニングからダイエットまで目的は様々です。余談ですが、私自身は本格的なランニングは経験がありませんでした。しかし、社員に誘われてなんとなく走るようになった結果、今ではフルマラソンにも出場するようになりました。
私が「On」を好きな理由は、このようなインクルーシブネスです。様々な背景やスタンスのスタッフがいろいろな目的でランニングを楽しみ、「心身のウェルビーイングを大切にするマインド」を持っています。それはブランドのあり方にも現れているのです。
ー ランニングひとつとっても、様々な想いを持ったスタッフがいるのですね。
現在、D&I専門のチームを立ち上げています。とはいっても、男女比の割合など具体的な数値目標を立てるようなものではありません。「いろんな人がいることが当たり前だ」ということをすでに当然のこととしている文化圏と、島国である日本ではまだ理解の浸透度に差があるので、国の事業所ごとにそれぞれのステージに合わせて取り組んでいます。
ほかに、創業当時からの大切な考え方として「5スピリッツ」があります。新しい考え方を追求し、未知の領域に勇気を持って行動しようというエクスプローラースピリッツ。今の自分を誇りにしつつも、より良い自分を目指し、新しい機会や挑戦を続けるアスリートスピリッツ。前向きな行動で周囲に幸せを届けるポジティブスピリッツ。チームワークを大切にし、互いに敬意を持って、最後まで全員で勝利を目指すチームスピリッツ。地球環境を維持するだけでなく、スマートに改善していこうとするサバイバースピリッツ。この5つを行動指針のように大切にしながら働いています。
ー 今後どのような方々と一緒に働いていきたいか教えてください。
先ほどお話したように「On」はまだ若い企業で、さまざまなルールを作っている最中です。ですので、新しいことを積極的に発案できる人、ある程度の自由度の中で「どうするのがみんなにとって良いか」という視点を持って動ける人に向いている会社だと思います。
チームの中にはさまざまな機能があり、ほとんどの窓口には各国の担当スタッフがいます。例えばイベント担当は、グローバルのイベントチームと方向性を確認した上で戦略を決めます。情報共有をしながら自分でミッションを進め、拡大していくことができ、それを楽しめる人に来ていただきたいなと思います。
文:吉田櫻子
撮影:船場拓真
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【NESTBOWL】の過去記事
RANKING TOP 10
アクセスランキング
sacai Men's 2025 SS & Women's 2025 Spring Collection