3DCGは昨今のファッション業界で求められる重要な技術の1つだろう。現在では、ECからメタバース、NFTまでさまざまなサービスの土台となっている技術といっても過言ではない。多くの企業が参入を検討するなかで、3DCGにおけるクオリティやコストの追求は大きな課題となっている。
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そのなかで、株式会社クリーク・アンド・リバー社(以下C&R社)のブランドマーケティング事業を行うグループ会社である株式会社forGIFTが2022年4月に、3DCGサンプル制作サービス「sture(ストゥーラ)」の提供を開始を開始した。これまでファッションに限らず、多くの3DCGを手がけてきた同社が3DCGに参入した経緯や、そこで培われている工夫はどのようなものだろうか。今回は、株式会社forGIFTで代表を務める白井崇文さんにお話を伺った。
ファッション構造をリデザインする
stureは高品質の3DCGデザインを提供することで、アパレル産業のサプライチェーンの改革を目指すサービスだ。「日本のファッション構造をリデザインしたい」という想いで作られたsture(Structure Reformの造語)が具体的に行うことは、コンセプトや要件を明確にするヒアリングと、高品質の3DCGの作成である。
大まかな流れとして、まず3DCGを依頼するアパレル関連企業や商社は、同社とのヒアリングを元に要件、コンセプトを決定する。その後、3DCGモデリング、質感の調整、レンダリングを経て3DCGが納品される。これらの中で、顧客とのヒアリングやコミュニケーションは頻繁に行われ、細かな調整が加えられた上で、要望にあった3DCGが届けられる仕様となっている。
もちろん、3DCGを作成するメリットは、サンプル制作の時間短縮や、経費削減、ささげ業務(ECサイトにおける撮影、採寸、原稿などの商品情報制作)の削減、廃棄の削減など大幅なカットが望める仕様となっており、2020年より国内有数のアパレル企業と取り組んできた実用検証では、製造コストの約20%削減が見込める、という結果も得ているのだという。
白井さんは大学在学中、2007年にプライベートアパレルブランドを立ち上げ、15年以上の事業経営実績を積んだ。また、有名アーティストの衣装や、有名ホテルのタキシードデザインも行ってきた。
白井さんは仕事で工場、OEMと広く関わるなかで、バリューチェーンの違和感を感じており、DXへの思いが強くなっていったとのことだ。それをきっかけに、2017年にグループであるC&R社と、株式会社forGIFTを立ち上げる運びとなった。この背景から、同社にはアニメーションを作れる人材や3DCGデザイナーが多く所属しており、サービスの強みともなっている。
豊富な人材とアパレル経験
stureでは、3DCGの制作において「アパレルのパターンを活かし作成する方法」と「現物の見た目に寄せて作る方法」という2つの大きな方針がある。基本的にはデザイナー/パタンナーとのコミュニケーションの短縮、サンプル制作着数を抑える、ささげ業務を簡略化する、ECに掲載できるといったメリットを考え、前者をオススメしているとのことだ。アプリケーションはCLO等の3DCG CADを用いつつ、質感調整はMaya等のアニメーションで使われるようなソフトを使用している。
質感の調整やレンダリングにおいて、アイテムの質感をリアルに再現するための工夫も行われている。stureでは、ブランドやメーカーサイドがお客様にどんなイメージを伝えたいかという感覚を3DCGデザイナーとの間に立って言語化して仕様を伝えることを重要視している。そうして、生地感や仕上がった洋服をどう見せたいかを明確にし、アパレルデザイナーが考えるデザインの中身(芯地の使い方やミシン糸の番手、運針など)を考慮した上で、リアルの商品との差異を無くしていくために細かい調整を行うのだという。
現在、取引を行っている顧客からは「どのような形で3DCGを社内全体で活用していくのか」という相談が寄せられ、具体的な活用法を一緒に模索するケースが多いそうだ。そこで商流のどの部分で使用するための3DCGなのか、誰に見せるためのものなのか、それを通してどんな世界観を伝えていきたいかなど、マーケティングの要素に紐づくヒアリングも重ねていくことでこの解決に務めているのだという。
stureの強みは大きくは2点ある。まずは、白井さんご自身のアパレルブランド経験、生産経験が豊富なことによって、アパレル特有の感覚を3DCGデザイナーに対して言語化、仕様書が書けるという点だ。
加えて、会社のバックグラウンドとしてゲーム3DCGなどを手がけてきた経験から、2D/3DデザイナーのスタジオがC&R社社内に数多く在籍していることが大きい。この人材によって、量産体制の確保はもちろん、迅速な対応や、経験の豊富さに裏付けられたクオリティも期待できる。
3DCGをどれだけ通常業務に活かせるか
最後に白井さんはstureのサービスについて以下のような期待を語ってくれた。
3DCGを導入することで、会社としてはサステナブルであったり、販管費の削減に直結させることもできます。また可能性としてはデザイナーが考える頭の中の世界観をより鮮明にコンシューマーに伝えることができるなど、アニメやゲームといったエンターテインメント要素との絡みも増えてくると思います。そういったアウトプットする数をより多くしていくことができれば、より世界でも戦える姿を描けると思っております。
今後stureとしては、3DCGの制作だけでなく、toBの展示会、toC向けECなど更に技術で流通をサポートしていくサービスを展開していきたいと考えているという。「単にNFTやメタバースを目指すというわけではなく、通常プロダクトアウトしていく流れを中心におきながら、3DCGを通常業務にどれだけ入り込めるかをサポートしていきたい」とのことだ。
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