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"モードの帝王"イヴ・サンローランを描いた映画3本を見比べ

"モードの帝王"イヴ・サンローランを描いた映画3本を見比べ

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ネットフリックスやアマゾンプライムなど、サブスクリプションによる映画配信サービスが広まったこともあり、映画鑑賞はぐっと身近なものになりました。ファッションにまつわる映画もいろいろ入っていますよね。もう、サブスクリプションで観れるものは全部押さえた!というかたも多いはず。

このジャーナルでは、ブランドなど一つのテーマに対し、関連する映画をあれこれ見比べてご紹介します。サブスクリプションで公開されていない作品もあるかと思いますが、もしも気になったらレンタルショップをのぞいてみるのもまたいいものです。気になっていたけど見逃していたあんな映画やこんな映画…次から次へ止まらなくなるかも!?今回は“モードの帝王”、イヴ・サンローランにスポットをあてた映画を3本ご紹介します!

ディオールのヘッド・デザイナーをつとめた初期の時代から、そのあとに続く兵役による苦難、自身のブランドを立ち上げてからの活躍、数々のアイコニックなスタイルとその背景、恋やスキャンダル…。それぞれの映画が独自の方法で、イヴ・サンローランの生涯について光を当てています。まずはドキュメンタリーからご紹介!

イヴ・サンローラン
L’AMOUR FOU/YVES SAINT LAURENT (2010)

監督:ピエール・トレトン
脚本:ピエール・トレトン、エヴ・ギルー
出演:イヴ・サンローラン、ピエール・ベルジェ
上映時間:103分

(c) 2010 LES FILMS DU LENDEMAIN – LES FILMS DE PIERRE – FRANCE 3 CINÉMA

「ファッションは女性を美しく見せるだけではなく、女性の不安を取り除き、自信と自分を主張する強さを与えるものです」

イヴ・サンローランの生涯を通じたパートナーであったピエール・ベルジェとのインタビュー映像を軸に話が展開します。サンローランがデザイナーを、次いで人生を閉じたという、ふたつの「終わり」から話は始まりを迎えます。サンローランの死後、彼らの豪奢な邸宅からベルジェとサンローランの思い出のつまった美術品の数々がオークションにかけられ、売られていく。思い出を手放したベルジェは果たして一人、何を想うのか…。

ベルジェはサンローランと共有した美術作品や、数々の写真に囲まれ彼との生活の思い出を紡いでいきます。中にはアルジェリア戦争におけるサンローランの兵役時代の痛ましい受難やドラッグ、彼がアルコール依存症に陥った狂乱の日々についても言及。サンローランの悪友、そしてミューズであったベティ・カトルーやルル・ド・ラ・ファレーズらによる回想からもサンローランの類まれな才能、そして苦しみが浮かび上がります。

Dar Es Saada (c) Jacques Dirand

公式ドキュメンタリーというだけあり、撮影では彼らが住んだ邸宅が細部まで映し出されます。服飾のみならず、建築や、ブラクーシやモンドリアンをはじめとした美術作品の豪華さたるや。中でも、マラケシュのマジョレル庭園の中にある別荘「ダル・エス・サダ(Dar Es Saada)」は、エキゾチックな内装から南国の楽園を思わせる庭まで、圧巻のひとこと。インテリアの参考にするには億万長者になってもなおハードルが高いかもしれませんが、夢を見るのはタダ。

近くにある「イヴ・サンローラン マラケシュ美術館」とセットのチケットで庭園を観ることもできるようなので、アフターコロナの旅行先リストに追加するのもアリ…かも?

イヴ・サンローラン マラケシュ美術館(仏語のみ)

この映画はメゾンが認めた公式ドキュメンタリーとなっていますが、実はこの作品の公開よりも前の2007年に、オリヴィエ・メイロー監督によって「セレブレーション(Celebration: Yves Saint Laurent)」というサンローランについてのドキュメンタリー作品がベルリン国際映画祭で初演されています。

ただ、この作品はベルジェから上映を禁止され、彼が2017年に亡くなったことによりようやく上映されるに至ったといういわくつき。こちらは残念ながら今のところ日本での上映は未定となっています。ここでは下記にオフィシャルトレイラーのリンクのみご紹介しますが、ぜひこちらも観てみたいところですね。

イヴ・サンローラン (2014)

監督:ジャリル・レスペール
脚本:マリー=ピエール・ユステ、ジャック・フィエスキ、ジャリル・レスペール主演:ピエール・ニネ
上映時間:106分

(c) WY productions – SND – Cinefrance 1888 – Herodiade – Umedia

次にご紹介するのは、ピエール・ニネがサンローランを演じる「イヴ・サンローラン」。こちらもメゾンが公式に認めた作品で、サンローラン財団から貸し出された5000点にのぼる衣装のほか、コレクション会場や邸宅も実際と同じところを使っているとのこと。そのため、ドキュメンタリーを観た後だと、あ、ここは!という発見もしばしば。ベルジェが主演のニネに対し「まるで本人のよう」と評したことも話題です。

まず注目したいのが、ニネによる繊細で儚く今にも壊れそうなサンローランの表現です。神経質にメガネの位置を直す仕草は、こちらまで緊張がうつってしまうほど。喋り方もささやくような口調で、そよ風のよう。彼のインタビューの動画を見たところ、線こそ細いものの機敏で、しっかりと喋る青年という感じだったことから、演技力の高さのほどが伺えます。

時にすれ違いながらもお互いを必要とし、絆を深め、生涯を共にする様がベルジェの目線で描かれるラブストーリー。若き日にクリスチャン・ディオールのコレクションで成功をおさめ、どんどん多忙になっていくサンローラン。のしかかるプレッシャーからドラッグに手を出したり、愛人にのめり込んだりと自堕落な生活に溺れ、ボロボロになっていきます。そんなほとんど壊れかけたような状態でのぞんだコレクションのシーン。絆について、そしてクリエイションについて考えさせられる名シーンです。

全体的にすっきりとまとまっていて、フランス映画としては比較的観やすい作品だといえます。サウンドトラックはイブラヒム・マーロフによるオリジナルのものが使われ、エンディングで流れる曲の切なさが印象的。ぜひタイトルロールまで画面を消さずに観てくださいね。

SAINT LAURENT/サンローラン (2014)

監督・脚本:ベルトラン・ボネロ
主演:ギャスパー・ウリエル
上映時間:151分

(c) 2014 MANDARIN CINEMA – EUROPACORP – ORANGE STUDIO – ARTE FRANCE CINEMA – SCOPE PICTURES / CAROLE BETHUEL

最後にご紹介するのはギャスパー・ウリエルがサンローランを演じる「サンローラン」。ギャスパー・ウリエルは今年1月にスキー中の事故で他界してしまったことでも話題となりました。彼の演じるサンローランはニネよりもどこか猟奇的な雰囲気。前述のレスペール版の作品同様2014年に公開され、タイトルも似ているのでちょっとややこしいですね。こちらはメゾンには認められていないものの、そのぶん(?)好き勝手に作ることができたのかな、と感じる内容になっています。

アルコール、ドラッグ、愛人がサンローランの人生に大きく食い込む狂乱の60-70年代を中心にストーリーが展開。まるでモンドリアンの絵画のような画面のカットや、色彩も含め派手な演出が多く、描かれる年代も前後が錯そうし、カオスな空気感を一層強いものにしています。ショッキングなシーンも多く、特に愛犬家にはこたえるシーンが出てくるので注意が必要です。

脇を固める俳優に、老年になったサンローランをヘルムート・バーガーが、ベルジェ役にはジェレミー・レニエ、ルル・ド・ラ・ファレーズ役にレア・セドゥ、愛人であるジャック・ド・バシェール役にはルイ・ガレルなど、豪華な顔ぶれ。

バシェールの妖し過ぎる風貌のほかツッコミどころも満載ながら、時代と連動したファッションのめまぐるしい変化、若き日のクリエイティビティの爆発と老いたあとの静けさの対比など、凝った構成になっています。物語は時系列が入り組んでいるのでながら見は厳禁。シーンが変わるたびに年代が表記されるので、5月革命に沸いたフランスの当時の情勢とファッションがどのように連動し、あるいは切り離されているのかも伺い知ることができます。

アンディ・ウォーホルがサンローランにあてた手紙の朗読とともにサイケデリックな色彩が画面にあふれ、サンローランの邸宅のコレクションルームも、ドキュメンタリーで映し出されていた本物より、なんだかこってり風味の味付けで登場。使われている音楽はマリア・カラスなどサンローランが実際に愛した曲からヴェルヴェット・アンダーグラウンド、オリジナルの曲など幅広く使われています。観る人を選ぶ、けれども刺さる人には刺さる内容といえます。

(c) 2014 MANDARIN CINEMA – EUROPACORP – ORANGE STUDIO – ARTE FRANCE CINEMA – SCOPE PICTURES / CAROLE BETHUEL

あなたならどれを観る?全部一気見?それとも…

3つの作品とも全く違った魅力、そして発見があります。どの作品にも共通して美しい服、人物、建築がこれでもかというほど出てくるので、どれを観ても眼福なのは間違いありません!家から出るのがおっくうな日は、映画鑑賞でテンションを上げてみてはいかがでしょうか。

文/ミカタ エリ

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