外資系ラグジュアリーブランドのリテールマネージャーとして、店舗の採用をマネジメントしているF氏に「面接の際何を重視しているか」、「店長とスタッフとでチェックポイントに違いはあるのか」など、面接官側からのリアルな意見を伺った。
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F氏プロフィール
外資系ブランドにおいて販売を経験後、別のファッションブランドにリテールの担当として入社。現在は外資系ラグジュアリーブランドにてリテールマネージャーとして活躍している。
“いいこと”を言うのは簡単。具体的な経験談ができるかどうか
― 面接の際、候補者の選定で重要視していることはありますか?
面接には決まった面接の型は持ち込まず、実際にその方にお目にかかってどんな話をするのかが重要だと考えています。 履歴書にはもちろん目を通しますが、過去の経験、キャリアよりその人の将来性や人間性を聞く時間のほうを長くとるようにしてますね。
そして、話を聞く際ですが、自分のキャリアを良く言われても鵜呑みにはしないようにしています。長く勤めていると、わかったようなことを言うスキルというのは自然と身についてくるもの。でもいざ採用してみて実際にやってみるとできない、なんてことが良くあるんです。
ですから、「実際に何をやったか、今話したスキルに関する具体的なエピソードはどのようなものだったのか?」というのをよく聞くようにしていますね。具体的なことが説明できない場合、評論家然としていいことを言っているだけ、というイメージを持ってしまいます。
― 今まで面接をしてきたなかで良くも悪くも衝撃的に記憶に残るような人はいますか?
意外と「この人すごいな!」という強烈なインパクトを面接で受けたことは少ないですね。限られた面接時間のなかでそのようなインパクトを残すのは難しいということかもしれません。
その中で、つい最近私が面接をしたセールススタッフのかたには感心しました。責任感が高く、顧客をたくさん持っていて、クオリティーの高いサービスを提供できる。能力が高いぶんチームワークの部分はどうだろうと思い、「チームにセールスの売上の低い人がいたらどうするか」という質問をしました。
すると、自分の接客している場面を動画で撮影して説明する、一緒にロールプレイをしてみて問題を一緒に解決するといった具体的な内容が返ってきました。パフォーマンスが高いだけでなく人格が優れている。即採用を決めました。
一方で驚かされたのは、サンダルで面接にきた人(笑)。落としました。
― 面接をして次の面接官にパスをするとき、フィードバックとしてチェックシートを使ったり、項目別に点数をつけたりしますか?
中途採用の際には、チェックシートは使ったことがありません。面接時に話す内容も決められていないですね。かなりフレキシブル。ですから、「面接官との相性」というのはかなり効いてくるかもしれないですね。例えば犬派の面接官と犬の話で盛り上がるなど、趣味の話題が一致したりすると印象が良くなることも大いにあり得ます(笑)。
ただ、新卒の面接をするときはそういうチェックシートを使ったりもします。新卒の場合、面接は3対3だったりするので、絶対評価だと面接官によって評価がブレてしまうことも。そのようなブレを防ぐために、評価軸を定める意味でチェックシートを使用します。
一方、中途採用の場合は基本的には1対1で、面接の行程そのものは多くなります。一日で営業、店長、など、様々なスタッフと次々に面接を重ねます。そのなかで評価が分かれることも出てくることはありますが、最終的な決定権は上長にかかっているので、判断はそこに委ねられます。とはいえ、社内で信用されている人が好評価を出せばそちらに全体の評価がなびいていったりと、現場はかなりエモーショナルな側面があると言えます。
店舗を一つのチームとして捉え、バランスを見て採用する
― 店長とセールススタッフ。それぞれの採用で見るところのポイントはありますか?
一つのチームといった形で店舗を捉えています。サッカーのチームで例えると、店長を採用するときは監督を、スタッフはプレイヤーとして採用するイメージです。
監督は、フィールドでスタッフがプレイヤーとしてパフォーマンスを発揮できる環境を作るのが仕事。ですから、店長を採用するときは、いいプレイヤーかどうかではなく、いい監督かどうかという目線で採用をします。
一方セールススタッフを採用する時は、どのポジションにどういうプレイヤーが必要かを念頭に置いたうえで、その人がどういう性質のプレイヤーなのかを見ます。
その店舗の店長のスタッフマネジメント能力が高く、少々クセのあるスタッフでもハンドリングできると判断すれば、クセがあっても販売力の高い人に出会ったら採用を検討します。逆にまだチームが新しかったりでチームワークが不安定であれば、そういった冒険は控えます。
必要な求人の要素は採用ごとに異なる。まずは自分の人間性、将来性を知ってもらう
― 面接を行う際に、経歴以外に必ずチェックするポイントはありますか?
必ず見るポイントや必ず聞く質問というものは決まっていません。人間性、将来性という部分を見ることが重要だと考えています。
その代わり、面接の際はまず最初に「目的」を設定します。今必要な求人は、どの場所のどのポジションで、どんな人が必要なのか。今必要な求人というものを明確にして、そこに合うかどうかを見るようにしています。
最初にそのような視点を明確にしないと、「いい人だから採用」「気に入らないから不採用」などと、その場での判断になってしまう。
新しく人を採用するならば、より良い店舗にしたいですよね。例えば課題を抱えている店舗であれば、それを解決するような人を選びたい。今あるチームをさらに良くするために必要なピースとして当てはまるかどうかで選びます。
具体的に過去の採用例を挙げてみます。ある店舗の採用にあたり、その店の店長は販売力の高いベテランスタッフを望んでいましたが、そういったスタッフは既に多く揃っていた。そこでお店の課題を細かく割り出していき、最終的にその店に必要なスタッフはジュニア層であるという判断に至りました。
当時の店長を「信じてくれ」と説得し、ラグジュアリーは未経験のジュニア層のスタッフを採用しました。それから一年以上経ちましたが、この店舗で現在お客様からのフィードバックで一番多くお褒めの言葉を頂いているのは、まさにこの時採用したスタッフ。
彼女の接客は、多少拙くても一生懸命で、高額ではないアイテムについても親身になって対応する。何かミスをしてしまったらまずは即座に謝って、気持ちを改めて対応するというとても真摯なもの。お客様は常に、期待をもってお店に入ってきます。その期待に応えるのは、必ずしもベテランスタッフのソツのない接客ではなく、たどたどしくても丁寧で一生懸命な姿勢だったりするのです。
例えその面接に他ブランドの凄腕トップセールスが来ても採用しなかったと思います。なぜならそのピースは既に充実しているから。
店舗ではさまざまなことが起きます。そういったことの全てに対しうまく対応できるのがお店。そのためにはスタッフのバランスがとれている必要があります。決まったチェックポイントを作るのではなく採用の目的を軸として、状況に応じて何がチームのためにベストなのかを総合的に判断するよう心掛けています。
― ありがとうございました。
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