KADOKAWAの角川歴彦会長
東京五輪・パラリンピックをめぐる汚職事件で東京地検特捜部は9月14日、大会組織委員会理事だった高橋治之容疑者(78歳)に約6900万円の賄賂を渡したとして、大手出版社KADOKAWAの角川歴彦(つぐひこ)容疑者(79歳)を贈賄容疑で逮捕した。
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KADOKAWA側の逮捕者は元専務らに続き3人目。なお高橋治之容疑者はAOKIホールディングスの贈収賄に続き再逮捕されている。紳士服チェーンのAOKIホールディングスの贈収賄と違って今回は上場している(東証プライム上場)出版大手KADOKAWAという点が大きく違う。同社の2022年3月決算を見てみると:
・売上高:2212億800万円(前年比+5.4%)
・営業利益:185億1900万円(同+35.9%)
・経常利益:202億1300万円(同+40.7%)
・親会社株主に帰属する当期純利益:140億7800万円(同+46.9%)
という素晴らしい業績である。いわゆる大手3社(講談社、小学館、集英社)を凌ぐパフォーマンスでさえあるが、しかし出版界ではKADOKAWAを一流の出版社という捉え方は少ない。従来型の出版社ではなく、いわゆる総合エンターテインメント企業という捉え方が一般的だ。
角川書店(現KADOKAWA)に勤務していたある編集者はFacebookで今回の贈賄事件についてこう述べている。「私は角川に約10年ほど在籍した。出版社とは程遠い経営方針。エンターテインメント企業等という会社買収を次から次へと行い、根っからの出版人をダメにした愚かな会社だ。このままいけば角川春樹(1993年麻薬取締法違反などで逮捕)、角川歴彦と兄弟ともに犯罪者となる前代未聞の出版社になることだろう。今更、こんな会社に恨みもないが、起こるべくして起きたと感じる。心ある元社員も多々いることだろうな。やっとこの会社のことが忘れられる日が来たかな」。
こういう引用は邪道かもしれないが、内部にいた人間だからその発言には重みがある。AOKIだって洋服を売ることで人々の生活に貢献している。しかし出版社には本や雑誌やアニメやゲームソフトを販売して人々に楽しみや喜びを与える以上のことが求められているのではないか。それは出版文化というものの特殊性だと思う。スポンサー契約を獲得して仕事を増やすのはいいが、そのためにみなし公務員である大会組織委員会の理事に金品を送るなどはもってのほかだろう。
クライアントへの饗応や権力にすり寄って業容拡大するという事が日常化すれば、遵法精神が鈍るのは時間の問題なのかもしれない。もちろん遵法精神堅持は当たり前のことで、それに加えて権力におもねらない、社会正義の担い手であるという意識が出版社には求められるのではないか。出版社がますますエンターテインメント産業に傾斜していく中、今回のKADOKAWA五輪汚職事件がひとつの警鐘になればと願うばかりだ。
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