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外資ファストファッションブームが長続きしなかった理由を復習する

外資ファストファッションブームが長続きしなかった理由を復習する

繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー
南 充浩

9月21日にフォーエバー21とアメリカンイーグルの再上陸が報道されたわけだが、ここで2009年から始まった外資ファストファッションブームについて振り返ってみたいと思う。

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以前から何度かこの話題をブログで書いているが、振り返って整理しておくことは悪いことではないだろう。

外資ファストファッションブームだが、2008年から始まり、2015年頃にはそのピークが終わっていたといえる。

では、なぜブームが起きたかだが、H&M、フォーエバー21が上陸し、ZARAが出店攻勢をかけたからというのが最大の要因だが、2009年にリーマンショックという経済危機が訪れ、消費者の節約志向が強まったからだといえる。当時は「安いさ」が何よりも注目された。

そして次に考えられることが、日本人特有の舶来コンプレックスである。要するに欧米ブランドには極端に弱いため、欧米から新上陸するブランドは話題となりやすい。

あとは、今は見る影もないファッション雑誌がそれなりにまだ力を残しており、その力による誘導もあった。もしかするとファストファッションブームがファッション雑誌が主導できた最後のファッションブームだったのかもしれない。2010年以降ファッション雑誌は販売部数とその影響力を急速に低下させて2020年代に至る。2010年代後半以降、ウェブが主導したファッションブームはあっても、ファッション雑誌が主導したファッションのブームは無いと当方は見ている。

この3つが相まって2008年以降大きな話題となった。

もちろん、国内企業も98年のユニクロショック以降、低価格化路線を進めていたから、国内外の低価格ブランドが軒並み日本市場に出そろうこととなった。

これによって、一部の物の分かっていないメディアの勘違いも含めて「低価格ブランド=ファストファッション」という間違った見方が出来上がってしまい、今もその弊害は続いている。

低価格の中でもユニクロは企画開始から店頭投入まで1年近く、早くても半年はかかるため「ファスト(速い)」では全くないのだが、いまだにユニクロをファストファッション大手と誤った報道をするメディアも数多く見られる。

しかし、ブームはそれほど長くは続かなかった。

2015年ごろには勢いは確実に落ちてきた。その理由はいくつか考えられる。

1、使用素材と縫製仕様の品質が低すぎた(同じ価格の国内ブランドの方が品質が高かった)

2、欧米的な面白いデザインとはいうものの、日本人がデイリーに着用できるデザインではなかった

3,手脚の寸法が長すぎるなど、商品が日本人の体型に合っていなかった

である。

どれも大きな要因なので順番に見て行く。

まず1だが、これは同等価格の国内ブランドの商品と比較すると相当に酷い物が多かった。「使用素材と縫製仕様のレベルが低い」と表現すると「業界関係者が細かいことを指摘しているだけ」と思われがちだが、本当に「着用レベルで困る」くらいの酷い商品が多々混じっている。

このブログでも以前にも書いたが、当方の知人でZARAのパンツを買ったところ、左右で脚の筒の太さが違っていたという。また別の知人はこれもZARAだが、シャツの身頃の脇が縫製されていない部分があり、穴が開いたままだったという。

外資ファストファッションの中では価格帯は最高のZARAでさえこの品質なのだから、それ未満の価格の外資ファストブランドがどれほど酷いかは理解できるだろう。

それに比べるとユニクロ、しまむら、ジーユーを始めとするハニーズ、アースミュージックなどの国内低価格ブランドの素材・縫製の品質ははるかに上回っている。よほど外国物が好きな人以外の支持は長く続かないのは当たり前である。

次に2だが、デザイン、色・柄とたしかに日本ブランドにはない面白さがあった。だが、多くの日本人には派手すぎる?奇抜すぎる?デザインや色・柄が多いため、デイリーには着用しにくかった。

もちろん、今でも「ユニクロはベーシックすぎる」とか「無印良品は地味すぎる」という指摘はあり、当方もユニクロ商品には飽きているが、だからと言って外資ファストファッションの商品を1週間毎日着用したいとは全く思わない。7割・8割がユニクロで、アクセントとして外資ファスト商品を差し込む程度が理想のバランスである。となると、外資ファストブランドの売れ行きはせいぜいでユニクロの3分の1とか4分の1が限界点ということになる。

そして、2015年ごろにその限界点に到達してしまったといえる。

最後に3だが、これはすぐに理解できるだろう。例えばZARAだが、当方にとってはトップスの袖丈が長すぎるのである。だから当方はZARAを絶対に買わない。

この3点によって当初は物珍しさでブームとなっていた外資ファストファッションブランドだが、2015年にはすっかり沈静化してしまい、その後、日本からの撤退が相次いだ。

ブームだから何回か買ったという人も、やっぱり着る上では不便なことが多いから、そのうちにユニクロなどの国内ブランドに回帰したというのが実態で、一部のイキり業界人が無双と持ち上げていたZARAでさえ、700億円台をピークとしてそれ以降はコロナ前まで売上高と店舗数を減少させ続けて現在に至っている。

価格がほぼ同等でも、品質と使い勝手の良さから考えると、外資ファストファッションの売上高が日本で減少するのは極めて当たり前のことであり、それらを凌駕するほどのブランドステイタスは所詮はファストブランドに過ぎないから持っているはずもない。

ファストファッションに限らず、スーパーでも飲食でも外資が撤退するたびに「日本は見放された」論をメディアでぶち上げる人間が少なからずいて、いつも呆れ果てる。

売上高が低下するのがなぜ「日本が見放された」のか意味がわからない。日本人が見放したから売上高が低下するので因果関係への認識がおかしい。

ウォルマート流では売れないのは、玉出や万代といったローカルスーパーの方が価格が安かったからだし、外資ファストブランドが失速していったのは、価格が同等でも国内ブランドの方が品質が高かったからである。

さて再上陸する2ブランドだが、フォーエバー21は、アダストリアのライセンス生産になるため、品質の問題はクリアできるだろうし、サイズやデザインの問題もクリアできるだろう。

一方、本社直轄での再上陸となるアメリカンイーグルだが、これは推測だが、本社は北米市場の好調を受けて強気になっており、前回の失敗は国内運営を任せた青山商事がヘボだったから、と考えているのではないかと思う。だから、我々が直接やれば上手くできると考えているのではないだろうか。

蓋を開けてみないとわからないが、その考えは恐らくは日本市場では通用しないと思われるのだが、どうなるのか定点観測してみたいと思う。

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