ファッションブランドの販売職の転職活動において、給与のほかに重要となってくる条件とは、その企業の福利厚生の内容、そして年間の休日数や時短勤務の有無である。特に女性にとっては、妊娠や出産などのライフイベントに応じたバックアップの有無は大きいだろう。エーバルーンコンサルティングの五十野氏に、外資系ラグジュアリーブランド8社のヒアリング結果を元にした比較事例や、チェックポイントについて伺った。
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五十野 正人さん エーバルーンコンサルティング株式会社 シニアヴァイスプレジデント
大阪府出身。大学卒業後、セレクトショップにて販売、外資系ラグジュアリーブランドにてマネジメント職を経験。2011年にエーバルーンコンサルティング入社。大阪オフィスに在籍し、自らのネットワークを活かし、マネジメントからストアオペレーションまで全国のショップ系求人を担当する。
公式HP:https://www.aballoon.co.jp/
― 最初に、「福利厚生」の定義について改めて伺えますか。
福利厚生は、まず法律によって企業に実施が義務づけられているものとして、健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険など。加えて、企業が任意で導入する福利厚生として通勤手当、住宅手当、時短勤務制度、慶弔休暇、財形貯蓄制度などがあります。
ここでは、企業が任意で提示する福利厚生のほか、休日の取得状況や時短勤務などについても項目別に詳細を見ていきましょう。
項目別の比較検討
①社員割引
― まずは社内割引について伺えますか。
自社商品の社員割引としては30〜40%という割引率が多いです。企業によっては海外の店舗でも割引が効くので、ラグジュアリーブランドのスタッフが海外によく行く理由の一つにもなっています。
アウトレット商品でも同じ値引き率なのでかなり安く買うことができ、海外のアウトレットに各国の同ブランドのスタッフが集まる現象が起きることも(笑)。ただ、総額に制限があったり、人気商品などは買えないこともあります。
通常の社販のほか、特別社販というのもあります。ブランドで働くスタッフにおいて最大の福利厚生とも言われているのがこの特別社販。ファミリーセールのほか旧品を70〜90%OFF、場合によっては95%OFF(!)と破格で購入できるブランドもあります。
②時短勤務
― 産休、育休後の時短勤務期間も気になります。こちらも企業によってだいぶ異なりますね。
8社全てにおいてお子様が最低でも3歳になるまでは時短勤務を認めています。10歳になるまで時短勤務を続けられる企業も3社ありますね。7年の差はかなり大きいですよね。
女性が多い業界なので、このサポートを目的のひとつとして転職を希望するかたも多くいらっしゃいます。子育てをしながら仕事を続ける方にとって、この項目は大きなポイントになります。
企業としても、スタッフのかたに長く働いてほしい。そのため、働き続けるモチベーションを維持してもらうにあたってこの条件が良い効果を生むと考えられています。
③残業代
― 残業代についてはどうなっていますか。
8社全ての企業で残業代を支給しているとされています。ただ、B社やF社のようにみなし残業代が年収に組み込まれている企業もあるので、そこは転職における企業選びにおいてあらかじめチェックしておきたいポイントです。
みなし残業のあるところはやはり求人として人気が低くなる傾向にありますね。
④年間休日数
― 年間休日数についても見ていきましょう。
114日~125日と、多少の幅はありますが年間休日数120日前後の会社がほとんどを占めています。多いところと少ないところで比較した場合、1か月で見ると約1日の差になります。
公休日に有給を足したトータルとしては年間130日ほどの休日になる計算。少なくとも120日はどこのブランドも超えているようです。
⑤長期休暇
― 年間休日数についてはあまり差がないということですね。販売職は長期休暇をまとめてとるのは難しいという印象がありますがこの辺りはどうでしょう。
長期休暇の呼び方はブランドによって異なり、夏季休暇、冬季休暇であったり、リフレッシュ休暇、あるいは有給消化という形で夏休み、冬休みを取るところもあります。有給消化率は、50%以上などと定められているところもあり、超過勤務にならないような配慮がされています。
有給休暇と長期休暇を組み合わせだいたい1週間程度はどこの企業も取得できるようです。そういった長期休暇が年に2回とれるところもありますね。連続1週間の休みを年2回とれるところもあり、長期休暇としては一番の好条件です。連続で取得すれば公休も合わせると実質月半分以上休めることになりますよね。
かたや夏季、冬季休暇として3日しか連続してとれない企業もあり、前述した条件と比べると約5倍の差と、かなりの幅が出ます。
⑥拘束時間と労働時間
― 拘束時間と労働時間については、あまり差はないものと思っていましたがそうでもないようですね。
「1時間のランチタイムに30分の休憩時間」として、「9時間の拘束時間、7.5時間の勤務時間」という条件が一般的です。拘束時間が長いところでは「9.15時間の拘束時間、7時間45分勤務」となっています。
時給換算で考えたときに条件が良いのは「8.5時間の拘束時間、7時間勤務」です。時間そのものだけ見ても拘束時間の長いところと比べ年間60時間もの差になるので、ここも大きなポイントになります。
⑦ユニークな福利厚生
― 他にはなにか変わった福利厚生のサービスはありますか?
福利厚生プログラムというのがあり、メニューの中からさまざまなサービスが選べるものを採用しているところが多いです。契約している宿泊施設の割引やスポーツクラブの割引などが一般的。
特殊な福利厚生としては禁煙補助サポートや、ボランティア休暇など、ブランドの特色にもなり得るようなユニークなものも見られます。
― クリスマスパーティーで商品がもらえるところもあるとか。
クリスマスプレゼントとして、スタッフ全員がそのブランドのバッグがもらえたりすることもあります。景気によって内容が左右されるようで、売上が伸びなかった年はブランドのキャンドルなどになったりと、その時々で差があるとも言われています(笑)。
企業選びにおけるチェックポイント
― ブランドによって勤務時間に差があるという情報など、実際に調べてみないとなかなか分からない情報ですね。五十野さんは今まで見てきた項目の中で、企業選びにおいて特にポイントとなるのはどれだと考えますか?
年収について考えた時に一番重要なのは残業代だと言えます。残業代の有無で年収は50~60万ほども変わるので、この点については事前に調べておくことが重要です。それに対し、休日数、長期休暇に関しては企業による大きな差は見られません。
育休後の時短勤務可能期間もまた大きなチェックポイントです。フルタイムに戻ったあと、家庭との両立ができずに離職をしてしまう話をよく聞きます。
契約社員に変更し、ずっと時短勤務で働かれている方もいますが、正社員ほどの条件では勤務が出来ないのが現状。少しでも長く正社員のままで時短勤務が出来る企業を選ぶことをお勧めします。
【エーバルーンコンサルティング主催イベント@大阪 開催】
この度、関西におけるファッション業界の販売員・店長のかたを対象にしたイベント”B Balloon” 第4弾を開催致します。
皆さまとの再会を祝して楽しい交流の機会となれば幸いです。
【日時】2022年11月22日(火)19:30~受付/20:00~START/22:30 CLOSE予定
【定員】60名
【場所】梅田(参加希望の方には追ってご連絡いたします)
【会費】なし※名刺をご持参ください
※軽食やドリンクもご用意いたします
ご参加希望の方は、件名に『11/22参加希望』とご記載頂き、氏名・電話番号・ブランド名をご記入のうえ11月15日までに、こちらまでご連絡をお願いします。
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文:ミカタ エリ
撮影:WACOH
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