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ホスピタリティ業界にイノベーションを 「TRUNK」が仕掛ける日本の観光価値を高める新たな挑戦

市川 裕秀

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ホスピタリティ業界にイノベーションを 「TRUNK」が仕掛ける日本の観光価値を高める新たな挑戦

市川 裕秀

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旅の目的や楽しみ方の幅が広がり、ホテルに求められるニーズも多様化。中でも旅慣れた感度の高い人々は、旅にオリジナリティを求め、特別な体験ができるホテルを探すようになっている。しかし日本のホテルはビジネスホテル、シティホテル、ラグジュアリーホテルなどのカテゴリーが主であり、多様に変化するニーズに応えきれているとは言い難い。そんな中、株式会社TRUNKは、「ホスピタリティ業界にイノベーションを。」をミッションに掲げ、それぞれに唯一無二のコンセプトを持つブティックホテルを運営している。事業立ち上げから携わってきた市川裕秀氏に、TRUNKが提供する価値や今後の展開などについてお話を伺った。

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市川 裕秀さん/株式会社TRUNK 専務取締役 人材開発部部長
大学在学中にオーストラリア・シドニーへ留学。現地のビジネスカレッジを卒業後帰国し、復学。卒業後、ヒルトンホテルに入社。その後株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ(T&G)へ移り、アークフェリーク白金支配人、新店舗立ち上げ、課題店舗の立て直しや支配人育成、人事採用・教育などを手掛け、T&Gの急成長に貢献。現在は、T&Gの100%子会社として2016年に設立された株式会社TRUNKの専務取締役として活躍中。

「人をデザインする」という観点に立ったTRUNKの人材開発

― 市川さんが担う役割についてご紹介いただけますか。

2013年頃、T&Gがホテル事業への進出を決定し、その準備として、マーケットリサーチ、海外視察やコンセプト策定・企画、商品開発などをスタートさせたのが、TRUNKの始まりです。私もホテル事業立ち上げから関わったメンバーのひとりであり、組織としてTRUNK事業部が新設され、のちに株式会社TRUNKとして独立した会社組織になったという経緯です。

私は、渋谷区神宮前に建つTRUNK(HOTEL)のオープン半年前までは、クリエイティブよりのMD(マーチャンダイザー)で、店舗コンセプトや商品の開発などを行っていました。そしてホテル竣工を見届ける前に人材開発部へ。現在は、人材開発部の責任者として、「人をデザインする」という観点から採用・教育全般に携わっています。

― 人材採用に当たり、TRUNKとしてどのようなポリシーをお持ちですか。

当社では、独創・革新・貢献・誠実をコアバリューに掲げています。この部分で原体験として何を持っているのか、理念に共感できるのか、など面接の中でこれまでのキャリアについて聞きながら、確認させていただいています。理念経営を推進しているため、そこは重視していますね。

コンセプチュアルでクリエイティビティが高く、独創的でパーソナライズされたサービスを提供するブティックホテル

― 御社が展開するブティックホテルは、一般の方にはまだ馴染みが少ないのではないかと思います。そもそもブティックホテルとはどういうものなのか、お教えいただけますか。

日本ではまだ認知度が低い「ブティックホテル」ですが、海外ではすでに一つのマーケットとして成り立っているカテゴリーです。アメリカやヨーロッパを起点に、アジアにも続々と誕生しており、全世界にその規模を拡大させています。独自性やクリエイティブ性が高く、唯一無二のホテル体験ができ、チェーン展開をしていない。そして高品質で高価格。既存のラグジュアリーホテルが提供する高品質とはまた違った意味合いを持っているというのが、私たちのブティックホテルの定義です。

最近日本では、「ライフスタイルホテル」という新たなカテゴリーが広がりつつありますが、これはラグジュアリーホテルなどがブランドを分けて、チェーン展開したりしています。しかし、ブティックホテルのサービスはもっと独創的でパーソナライズされたものであり、ライフスタイルホテルとは一線を画すものだと私たちは捉えています。ですから私たちのサービスには、マニュアルファーストという考えはありません。もっとブティックホテル市場へ参入する企業や競合が増えて、マーケットが拡大していけば、一般の方々の認知度も高まり、消費者がホテルを選ぶ際の選択肢が増えることにもなると考えています。

― 現在はTRUNK(HOTEL)とTRUNK(HOUSE)を展開されていますが、その違いはなんでしょうか。

当初は発信力の強い東京に集中的に出店していくドミナント戦略を取っていました。ただ、ご存知の通り、東京の不動産マーケットは激戦区であり、私たちのこだわりを「ゼロイチ」で表現していく場所の巡り合いはなかなか容易ではありませんでした。しかし妥協せず、私たちのクリエイティビティを進化させていく中でいただいたお話が、神楽坂の築70年の元料亭「山路」の活用です。TRUNK(HOUSE)は「山路」をフルリノベーションして誕生した一棟貸し切り型で、さまざまなタイプの客室とレストランや宴会場なども備えるTRUNK(HOTEL)とはコンセプトも提供する価値も異なります。

(C)TRUNK(HOTEL)

(C)TRUNK(HOTEL)

築70年の神楽坂の元料亭をフルリノベーション。アートワークにこだわり、唯一無二のブティックホテルに

― TRUNK(HOUSE)がどのような施設なのか、ご紹介いただけますか。

神楽坂という立地に敬意を払い、その街並みに溶け込んでいる歴史ある外観や看板をそのまま残しました。建物の中も、柱割りなど和室の基礎を残し、畳、庭などあるものを活かしつつ、鉄材を使用し、間仕切りを取り払うなど、耐久性や現代性のある内装に仕上げています。それによって、古き良きものと今、言うなれば“TRUNK流の今と昔”を伝えられるような、メッセージ性のある空間にしたいと考えました。

― クリエイティブへのこだわりについて、お聞かせください。

各スペースのアートワークにはこだわっています。たとえば玄関を入ったところに飾ってある茶道具は、現代美術家であるトム・サックスの作品で、競売により数百万円で落札したものです。また新進気鋭の浮世絵作家に依頼し、浴室の一面に大胆な構図の浮世絵を描いていただきました。家具もヨーロッパなどから取り寄せた一点ものです。

ミニスナックをイメージしたディスコ風のカラオケルームも設けました。狭い空間ですがバーカウンターもあり、赤色の照明でキラキラ光るミラーボールが場末感を醸し出していて、ダイニングやリビング、ベッドルームなどとは異なる世界観が表現されているのも面白味や遊び心があると思います。

また、プライベートバトラー、プライベートシェフといったサービススタッフが付いて、24時間1組のお客様に尽くすというのもクリエイティブの一つの形ではないかと思っています。カラオケルームではサービススタッフが盛り上げ役となって、タンバリンを振ったりもするんですよ。

(C)TRUNK(HOUSE)

― 8割以上が海外のお客さまだと伺いました。海外からの問い合わせが殺到している背景には何があるのでしょうか。

ありがたいことに海外の媒体に取り上げていただく機会が多く、『Architectural Digest(アメリカのデザイン誌)』『Condé Nast Traveler(アメリカ、イギリスの旅行専門誌)』『Departures(アメリカン・エキスプレス プレミアム会員向け会報誌)』『Wallpaper*(イギリスのデザイン&ライフスタイル誌)』『Jetsetter(アメリカの富裕層向け旅行サイト)』『International Design Awards(アメリカのデザインアワード)』など、多くのアワードを受賞したことも大きかったと思います。OTAへの登録は控えているため、口コミや何かのきっかけでTRUNK(HOUSE)を知って興味を持ってくださったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

※OTAとは、Online Travel Agentの略称。オンライン上の旅行代理店のこと。

― 一般的なスーパーラグジュアリーホテルとは一線を画すラグジュアリーの追求が、ラグジュアリーブランドから評価され、イベント開催もされているそうですね。

多種多様な内容で実績があり、例えばアルマーニ様からお話をいただいた際は、家具の展示会を行いました。ミラノのブランドであるアルマーニの作品が、和風建築にどう調和するのか、どのような化学反応を表現するのかを知っていただく場として、TRUNK(HOUSE)が選ばれたと聞いています。他には、フランスのシャンパンブランドであるヴーヴ・クリコ様、ドン ペリニヨンの5代目醸造最高責任者リシャール・ジョフロワによる日本酒ブランド「IWA5」様のイベントなどでもご利用いただきました。

2023年に富ヶ谷、2027年には道玄坂、神戸への出店が決定

― 3店舗目として、今年開業を予定されているTRUNK(HOTEL)YOYOGIPARKは、どのようなコンセプトを掲げているのですか。

TRUNK(HOTEL)は、神宮前という立地から街や人に開放されたデザイン、コンテンツが特徴ですが、TRUNK(HOTEL)YOYOGIPARKは、エクスクルーシブに基本宿泊者しか入館できないホテルとしてオープンする予定です。その意味では、神宮前とは真逆のラインだともいえます。宿泊者にとってどれだけ居心地のいい場所になるかを追求することをテーマとし、街に開き、一般の方もご利用いただける場所は、1階に併設するイタリアンレストランだけになります。プールとバーを設置したルーフトップからは、代々木公園が一望できますし、より贅沢な時間を過ごしていただけるのではないかと考えています。

― 今後の出店プランについて、お聞かせいただけますか。

今後も積極的な出店を目指し、ML(マスターリース)、MC(マネジメントコントラクト)、M&Aなどのスキームを用いながら、ブティックホテルの市場を広げていきたいと考えています。ターゲットは東京、東京以外の都市圏、リゾート圏。具体的には、2027年に渋谷区道玄坂、神戸への出店が決定しています。それに合わせて人材採用も進めていく予定です。「日本を代表するホテル業界のリーディングカンパニーとなり、日本の観光価値を高める」という私たちのヴィジョンに共感し、おもしろい仕事がしたい、自分のやりたいことをやりたいという意志を持った方と、ぜひ一緒に仕事がしたいですね。

私たちの理念やコンセプトを共有できるクリエイターと協業していきたい

― これまでどんなクリエイターとコラボレーションしてきたか、その事例と、今後どのようなコラボレーションをやっていきたいかについて伺えますか。

TRUNK(HOUSE)では、作務衣はYohji Yamamoto様、サンダルはsuicoke様とのコラボレーションを採用しました。TRUNK(HOTEL)のアートワークの一つの例として、滋賀県甲賀市にあるアートセンター&福祉施設であるやまなみ工房に所属するアーティストが手掛けるアウトサイダー・アートを採用しています。また、これから世に出ようとしているデザイナーや、今後フューチャーされるであろう若手クリエイターの方々と私たちがコラボすることで、何らかの後押しができればとも考えています。前提となるのは、私たちの理念やコンセプトに共感していただくこと。そのうえで相手の方のストーリーを伺います。私たちの理念やコンセプトに共感いただけるかどうか、共感いただけるならそれをどういう視点で作品に取り入れていくのか。TRUNKのストーリーとの親和性の高い方と、ぜひコラボレーションさせていただきたいですね。

文:カソウスキ
撮影:Takuma Funaba

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