販売職から本社勤務へキャリアチェンジを果たしブランドの第一線で活躍する方々に話を聞きながら、仕事への姿勢を学ぶ「本社の壁」企画。 今回話を聞くのは、ライフスタイルブランド「Cebalasi」のディレクターを務める廣瀬規子さん。母親として子育てに奮闘する傍ら、シルク素材のナイトウェアなどお家時間に“気分が上がる”商品を生み出している。そんな廣瀬さんは20代後半からファッション業界に飛び込み、ラグジュアリーブランドで販売職を経験。当時関わったお客様とは20年以上経った今なお繋がっており、それは販売職だからこそのご縁だとか。「販売は“人間力”を磨ける仕事」と断言する廣瀬さんに、販売職の醍醐味を聞いた。
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廣瀬規子さん
ジョルジオアルマーニジャパンに入社し販売職を経験。退職後はタレントのスタイリストとして活動する傍ら、大人の女性のためのWebマガジン「Nstyle」を立ち上げ自ら編集長に。結婚と出産を機に、現在はライフスタイルブランド「Cebalasi」のディレクターとして気分が上がる商品を作り出している。
Instagram:@noriko_style
YOUTUBE:@Nstylenet
キャッシャー希望から採用面接官のプッシュで販売職に! 販売職では肉体的な辛さと声かけタイミングで苦戦
― 販売職に就いたきっかけを教えてください?
20代後半のときに人生の転機を迎え、そのときにたまたま新聞の求人欄でジョルジオアルマーニジャパンの販売職とキャッシャーの求人を見つけました。昔から洋服には興味があったので、キャッシャーに履歴書を送ってエントリーしてみたんです。でも後日採用面接の中で、面接官に「あなたは絶対に販売職の方が向いているから販売職だったらぜひうちに来てください」と言っていただいて(笑)。面接官に推される形で「ARMANI COLLEZIONI」の店舗に配属されました。
― ファッション業界は未経験でしたが原点にはファッションに対するパッションが強かったのでしょうか?
ファッションへの想いは強かったと思います。高校生のときも“*Oliveっ子”だったので友人とバッグを自作してみたりと、今振り返るとずっとファッションが好きでしたね。 *Olive 女性向けファッション雑誌
― 未経験で販売職に就いてみて大変だったことはありますか?
販売職時代のつながりは20年たった今も。お客様とずっと繋がっていられることが販売職の醍醐味
― お客様へのサービスとして心掛けていたことはありますか?
また来店したいと思ってもらえるような空間作りと、またあの人に会いたいと思ってもらえるような接客を意識していました。例えばご夫婦やカップルで来店されるお客様は、一方が服を選んでいる間、もう片方の方は暇になってしまう。そういう方には飲み物を積極的にお勧めしたりお話をしたりする。そうすることで、手持無沙汰にならずに心地よくいていただけるので、買い物している方も安心して商品を見ていられる。ただお買い物のお手伝いをするだけでなく、空間や雰囲気作りも意識していました。
― お客様との関係で印象に残っていることはありますか?
2、3ヶ月に1回ほどの頻度で来店していただいていた女性のお客様が印象に残っています。接客の際にたくさん会話を重ねていたわけではないのですが、ある時ご自身が編集長として携わっている雑誌を持って来てくださったんです。主にホテル業界の方向けの雑誌で『編集後記』の所に私の事に付いて触れてくださっていて、それだけでも嬉しくて印象的だったのですが、最近インスタライブをしているときに当時の話をしていたら、「これは私のことじゃないかなと思いながら拝見していました」と、その方からDMが送られてきたんです!接客していた当時から20年ほど経っていたのですが、その間も私のことを気にかけてくださっていたことが本当に嬉しくて。こうやってお客様とずっと繋がっていられることは、販売職の醍醐味だと改めて感じました。
販売職を退職後はWEBマガジンやライフスタイルブランドを立ち上げ!
― 販売職をやめてからの活動をお聞きしていいですか?
1つのブランドの服だけではなく、トータルで素敵な女性になるお手伝いをしたくて、販売職の後はパーソナルスタイリストになろうと決めて起業しました。一時期はタレントさんのスタイリストとして仕事をさせていただいていたときもあったのですが、原点としてはパーソナルスタイリストとして関わった人をトータルでプロデュースしたい思いが心の中にずっとあったんです。特に女性はホルモンバランスによって浮き沈みがあるので、沈んだときに自らを上げて前向きに取り組めるようなきっかけ作りがしたくて、大人の女性のためのライフスタイルWebマガジン「Nstyle」を立ち上げました。
― 現在は「Nstyle」以外にも活動をされているんですよね?
お客様に気分を上げていただくきっかけになるようにライフスタイルブランド「Cebalasi」を立ち上げています。主にナイトウェアなど自宅で過ごしているときに「気分が上がる」ものや、ワンマイルウェアとしても使えて飽きが来ない心地良い商品をオンライン販売しています。もちろん外注してご協力頂いているスタッフはおりますが、ディレクターとしてデザインや販売経路の確保、販売戦略もすべて一人で行っていて、昨年は合同ではありますが、新宿伊勢丹さんでポップアップを出展させていただきました。
― 「気分が上がる」要素をどのように詰め込んでいるのでしょうか?
「Cebalasi」ではシルク素材のパジャマを取り扱っています。シルク100%で作ると最初は見た目の華やかさに気分が上がるんですけど、1回でも洗濯するとシワが目立って気分が下がっちゃう。でも、数パーセントだけでもポリウレタンを入れるとシワになりにくいことを発見してからは、洗濯機で洗濯ができる「楽なパジャマ」を作ったんです。それが好評いただいて、より気分が上がる商品になりました。
販売職は「人間力」を磨ける仕事
― もっと情報を発信するためにYouTubeも始めるとか?
こうやって取材などでお話をする機会はいただくのですが、不器用でうっかりな部分もたくさんあります。そんな私でも「一生懸命やって楽しく生きていますよ」というメッセージを乗せつつ、「この人でもできるなら私もできるかな」とやる気になっていただければと思っています。私の日常や娘のお弁当をどうやって作っているのか、今後は観光系が復活してくると思うので旅に関することなど生活にまつわる情報を皆さんと共有していきたいです。そういうことを通じて生きていく楽しさを発信したいなって。週1回のペースでアップしていきたいと思っていますが、何せ不器用なもので(笑)。できるだけ自分のペースで頑張ります。
― 現在はさまざまなことをされていますが、販売で得た経験や知識で現在に活かされていることはありますか?
元販売職であったことから、店舗に伺い販売員の方に接客のアドバイスやお話をさせて頂くことがあります。その時もお伝えをするようにしているのですが、販売職はお客様と対峙する最前線ではあるものの、販売員の声が社内で反映されるのは難しく華やかな本社の仕事と現場には壁があるように感じました。でも自分がやめてからお客様視点で販売の方と接していると、すごく魅力的なお仕事だと感じるんです。実際、販売職をやめて20年経った今でも、当時繋がったお客様からお褒めの言葉をいただいたりもしている。それはお客様と直に関わる仕事に就いていなければ経験できなかったことだと思っています。
だからこそ、販売職の方にはもっと自信を持って仕事をしていただきたいです。それに、限られた空間で毎日同じようなモノを売ることってすごく難しい。ブランドの世界観や商品はすでに出来上がっているものなので、最後の決め手は「この人から買いたい」と思わせる人間力が大切。販売職は自分の人間力を磨ける職業なんです。店は自分の舞台だと思って、思いっきり魅力的な方になってほしいなって思っています。それは絶対に別のキャリアになったとしても活きてくるものですから。
撮影:Takuma Funaba
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