ソウルのランドマーク「東大門デザインプラザ(DDP)」は来年3月に誕生から10年を迎える。非線形的な独特なデザインの建築物は夜にはライトアップによって、ソウルの中心部に幻想の世界を浮かびあがらせる。韓流のデザイン・トレンド発信地であるこの「DDP」の素顔はどのようなものなのだろうか。
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ソウル地下鉄「東大門歴史文化公園(DDP)」駅。1番出口を上がって行くと、「DDP」のオウルリム(調和)広場へとつながる。広場を囲むのは、非線形のアートデザインが特徴の銀色の建物。突如出現する近未来的な空間が異彩を放っている。
東大門市場といえば24時間眠らないファッションの街として、また、洋服からアクセサリー、化粧品までなんでも揃うショッピングスポットとして日本でも有名だ。グルメ市場として知られる広蔵市場や演劇の聖地として知られる大学路にも近く、ショッピング・グルメ・アートのすべてが楽しめる場所として古くから親しまれてきた。
そんな東大門の運動場跡地に2014年3月、「東大門DDP」が誕生し、新たなランドマークとして存在感を高めている。
建物の設計はイラク出身の建築家で「曲線の女王」と呼ばれたザハ・ハディッド氏(1950~2016)が担当した。2020年東京五輪の会場デザインに絡んで話題になった人物でもある。3次元の立体設計技法を駆使して設計されたという。
延べ8万5320平方メートルに及ぶ広大な敷地は▽大型催物場「アートホール」▽韓国デザイン・トレンド発信地「ミュージアム」▽デザインビジネス拠点「デザインラボ」▽食事・買い物エリア「デザインマーケット」で構成される。
メディアラボの2階に上がると、韓国のグループ「防弾少年団(BTS)」関連の展示が目に飛び込んできた。「BTS」がアメリカの第63回グラミー賞(2021年)の授賞式でノミネート曲「Dynamite」のパフォーマンスで着用した衣装で、8月31日からこの場所に展示されている。中央の黒のスーツはリーダーRM、右側の白のスーツはボーカルのV、鮮やかなオレンジ色はメンバー最年長で入隊中のJINが着用していた。衣装をみるだけで、ミュージックビデオでパフォーマンスを繰り広げていた彼らの姿が目に浮かぶようだ。
次に目を引いたのが、韓国のデザイナーが手がけた雑貨類を販売しているアートショップだ。食器やインテリア小物、文具やおもちゃなどが独特のセンスでセレクトされ、見て回るだけでも楽しい。韓国の最新トレンドを知るのにも役立ちそうだ。
実は、このアートセンターでは9月5日から「ファッションウィーク」のイベントが開催されている。今年は韓国で今、最もホットな女性グループ「NewJeans(ニュージーンズ)」がオープニングを飾り、注目を集めた。
「NewJeans」といえば、2000年代の流行を取り入れた「Y2K」スタイルのファッションで有名だ。「NewJeansルック」とも呼ばれ、MZ世代(1980年代~2000年代初旬の生まれ)トレンドとして位置づけられる。クロップTシャツ、ワイドパンツなどは、流行に敏感な韓国の若者にとって外せないアイテムとなっている。
イベント会場の入り口に立ってみた。
タレントやインフルエンサー狙いか、カメラマンやギャラリーの姿が目立つ。筆者が訪れた時(8日昼)は、ちょうどソウルコレクションの「VEAgAN TIgER」のファッションショーが開催されるところだった。「VEAgAN TIgER」は毛皮など動物由来の素材を使用しないことを掲げる韓国初のビーガンファッションブランドだという。動物保護や環境問題に関心が高く、価値消費世代といわれる韓国のMZ世代に人気のようだ。
ファッションショーの会場周辺には、スタイリッシュなファッション関係者やモデルらしき若者の姿も目立つ。流行のウェスタンスタイルのジーンズやクロップド丈のトップス、ホットパンツなどを着こなした女性たちが闊歩し、あちこちでプロのカメラマンがオシャレな訪問客をスナップ撮影している。そんなヒップな若者が集まる中に、広場ではごく普通の韓国アジュンマ(おばさん)やアジョッシ(おじさん)がくつろいでいる。最先端と飾らない日常の風景がごく自然に溶け合っているのが、ソウルの今なのかも知れない。
筆者のソウル訪問は3年ぶりだ。
新型コロナウイルスのパンデミック以降、ソウルはデジタル化が一層進み便利になっていた。
昔ながらの横丁が再開発で商業施設やマンションに変わってしまったところも多い。それでも街を歩けば昔どこかしらに昔ながらの韓国の佇まいが感じられ、ほっとする。
変わる韓国と変わらない韓国、どちらの魅力も捨て難い。そう考えると、なぜかまた行きたくなってくる。秋は漢江で夜景をみながら、チメク(チキンとビール)を楽しむのも良さそうだ。
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