デジタルネイティブブランドのインキュベーションカンパニーとして躍進する3rd株式会社。「好奇心を仕組みにする」をビジョンに掲げ、“好き”“やりたい”“ワクワクする”をブランドという形にしてきた。現在はファッションブランドのみならず、ライフスタイル・伝統工芸・フードブランドなど、多彩なジャンルの自社ブランドを展開している。そんな3rdを代表するアパレルブランドのMD(マーチャンダイザー)として活躍するのが森さんと松本さんだ。アパレル業界に精通するお二人に、3rdのカルチャーやユニークさ、3rdだからこそできるチャレンジについて語っていただいた。
ADVERTISING
森 洋一郎さん/3rd株式会社 Lumier MD(写真:左)
大学卒業後、名古屋に本社を置くアパレル企業でキャリアをスタート。販売員、店長、エリアマネージャー、バイイング、生産管理など幅広く経験。その後札幌のアパレル企業へ転職し、小売り部門で活躍。Lumierの前身となるインフルエンサーブランドを立ち上げたのち、独立し、3rdへジョイン。Lumierの立ち上げから関わり、コーディネートのセット販売という手法を確立。
松本 裕平さん/3rd株式会社 ESICA/Frene MD(写真:右)
学生時代にアルバイトでアパレル店員に。大学を中退し店長に昇進。その後森さんと同じアパレル企業へ入社。卸・問屋事業で10年のキャリアを築く。自分のブランドを持ちたいという夢を叶えるため、3rdへジョイン。ESICA/FreneのMDとして、サプライヤー(商品供給企業)との密な関係構築に尽力。
インフルエンサーブランドの草創期にブランドを立ち上げ、3rd代表川村さんと出会う
― お二人がこれまでどのようなキャリアを歩んでこられたのかをお伺いできますか。
森洋一郎さん(以下、敬称略):大学卒業後、名古屋のアパレル企業に入社し、販売員、店長、エリアマネージャーを経て、本社へ異動。そこで初めてバイイングや生産に関わる仕事を経験して、20代後半で転職。移住先の札幌のアパレル企業で11年働いていました。
9年目くらいの時、販売員だった金澤楓さんがインスタグラムのフォロワーをたくさん抱えていることを知り、インフルエンサーブランドを立ち上げたいと社内で企画を提案。金澤楓さんをブランドディレクターとして、2人でブランドを立ち上げました。
ただ当時の会社はリアル店舗が中心。EC事業をやっておらず、社内にオンラインブランドを立ち上げるノウハウを持つ人もいませんでした。インフルエンサー軸のブランド運営は自分たちの力だけでは難しいと感じていたタイミングで、知人から3rdの代表である川村さんを紹介してもらったのです。それがちょうど7年前。コンサル的な形で3rdに入ってもらい、約2年間Lumierの前身ともいえるブランドを運営しました。
松本裕平さん(以下、敬称略):私は大学在学中からアルバイトしていたメンズのアパレル販売がとても楽しく、大学を中退してそのまま店長になりました。その会社を3年で辞め、転職した先が森さんがいた札幌のアパレル企業。現在は小売りがメインなのですが、元々は卸から始まった会社です。森さんは小売り担当、私は卸売り担当でした。そこで勤務した10年間、ずっと卸・問屋業の仕事をしていました。3rdにジョインするきっかけとなったのは、私が退職する1年前に森さんが独立したことです。
新しい価値観が受け入れられないもどかしさ。デジタルとアパレルの掛け算で新たなブランドづくりへ
― 札幌のアパレル企業でお二人は出会われたのですね。森さんが独立されたのは、どんな思いがあったのでしょうか。
森:Lumierの前身ブランドを立ち上げた時は、インフルエンサーブランドが乱立する前で、成功パターンまでは見えてはいなかったものの、未来予測は描いていたんです。ただEC事業の実績がない会社だけに、アパレルが培ってきた昔ながらの成功事例が正解と捉えられてしまう。新しい価値観を取り入れるのが難しかったのでしょうね。「こうやれば絶対に伸びるのに」というアイデアがあっても、施策として打つことができない状況がとてももどかしく、自分が思うようにやるには独立するしかないと考えました。そんな私を全面的にバックアップし、「信じているから自由にやってください」と言ってくれたのが3rdの川村さんです。
川村さんはデジタルに強く、私たちはアパレルに強い。それぞれの得意分野の掛け算が非常にうまくハマったんですよ。川村さんとの出会いは、ブランドにとっても私の人生にとってもまさにターニングポイント。自分が独立した時点で前職のブランドはクローズし、ゼロから新たなブランドを作り直しました。
― 松本さんは10年間ずっと卸の仕事をされていたわけですが、その間デジタルでの事業を意識されたことはあったのですか?
松本:デジタルという言葉自体、知ったのは数年前です(笑)。それくらいアナログな世界にいたのです。メーカーさんと卸先のお客さまの間に入って、うまく取り次ぐといったスキルは培いましたが、ただ、このまま卸・問屋の道で行くのかと自問自答した時、いや違うなと。森さんの姿からもそう感じていました。問屋というのは人様のブランドをお客さまに卸す仕事です。以前から自分のブランドを持ちたいという思いはずっと持っていて、自分のブランドを卸したいと思っていた。そうしたら身近なところに見本になる先輩がいたのです。
森:独立する前も独立後も、ほぼ毎日のように連絡を取り合い、コミュニケーションしていましたよね。
松本:それで私から「自分もやる」と森さんに声を掛けて。すると森さんが「バイタリティーのあるおもしろいやつがいるから、一度会って話をきいてやってほしい」と川村さんとの面談機会を作ってくれたのです。「自分はこういうブランドをやりたいんです」と軽く説明すると、川村さんは「やりましょう!」と即答。驚きましたが、すぐに準備を始め、ESICAを立ち上げました。会社にも「辞めます」と話はしていたのですが、責任者という立場だったこともあって1年間は会社に残り、副業としてESICAを事業化しました。もちろん会社の許可を得てのことです。
見ている世界観の違いに大きな衝撃。議論と試行錯誤を重ね、独自のスタイルを確立
― 川村さんの印象はいかがでしたか?
森:私と川村さんでは、見ている世界観が違うと思いました。私たちはずっとアパレルの世界にいたため、接点のある人たちも基本的にはみんな同じ世界観です。でも川村さんは全然違います。特に最初の頃は。でもメチャクチャ刺激的で、メチャクチャおもしろかった。この数年間で話したことのない、出会ったことのない人で、自分が求めているのはこれだなと。川村さんから得られるものは、今の自分がやりたいことに活かせるに違いないと確かな手応えを感じたのです。
松本:インパクトは大きかったです。私たちが見ていた世界って狭すぎるんだなと。だからもっと入り込みたいと思いました。使っている脳みそが全然違うし、そっちの脳みそにしていかなければといういい刺激を受けたからこそ、一緒にやっていきたいと思いましたね。
― お二人のブランドは、どのように成長していったのですか?
森:Lumierが立ち上がったばかりの時は成功パターンが何も見えず、とても大変でした。とにかく侃侃諤諤議論を重ね、デジタルマーケティングチームと商品企画を担うMDチーム、撮影等が複合的に絡んで生み出すコンテンツの生産体制が密に連携することで、日々PDCAサイクルを回し続けてこれたことが、成長した要因のひとつではないかと考えています。さらにそのチーム体制と各チームのノウハウを横展開していきました。
松本:私はそこに乗っからせてもらいました。ESICAがオープンしてから今の規模になってきたのは私の力ではなく、チームのメンバー一人ひとり、みんなの力のおかげ。私の仕事は“売れる商品”“当たる商品”を発掘することで、マーケティングや広告などに関しては知識も経験もありません。チームでやったからこそ、いろんなピースがハマっていったという形で成長していきました。
森:3rdは私が言いたいことを言える環境を提供してくれました。川村さんを筆頭に、ボードメンバーとも対等にフランクに意見交換できるし、私を信じてハンドリングを任せてくれた。その信頼に応え、結果を出して、想像以上の利益でお返したい。川村さんには、そう思わせる凄さがあります。
松本:ブランドは立ち上げるだけでなく、存続させることが重要なのであり、それが大変なところでもあります。同じことをやっていても伸びません。常にチャレンジしていかなければ存続は難しいのです。
揺るぎないチームへの信頼と、新しい価値の創出に挑戦し続けるパイオニア精神
― ブランドづくり、ブランドを成長させるためには、どのようなことが重要かお伺いできますか。
松本:ブランドにとって大事なものは、まずは商品です。ですから商品を提供してくれるメーカーさんや工場の方々とのお付き合いを私はいちばん大事にしています。商品提供者とは、幅広く、深く、そして密な関係を築き、「こういうものを作りたい」「次はこういう施策をやりたい」とやり取りする毎日で、それが私の最大の仕事。商品がないと何も始まりませんから。あとはチームのメンバーに任せます。
森:私がチームと共有しているのは、Lumierは走り続けるべきだということ。常にアップデートし、自分たちが新しい価値を生み出して、広げていくのだというパイオニア精神です。新しい仕掛けをし、新しい価値を生み出すことに挑戦し続けるということです。何かをやろうとすると、批判も含め賛否両論あるものですが、答えはお客さまが示してくれると私は考えています。一見非常識に思える施策でも、まずはトライして、その結果をきちんと受け止め、改善し、活かしていく。それをずっと続けています。
私たちは洋服を販売していますが、洋服屋ではないのだと。エンターテインメントをお客さまにどう届けるかという“劇場型ブランド”のマインドでやっています。このブランドならおもしろいことをやってくるんじゃないかという期待値をお客さまに持っていただき、その期待値を超えるようなエンターテインメントを洋服という商品を通して届けることで、私たちのブランドを楽しんでいただく。この考え方がチーム内に浸透しているので、若いメンバーがどんどんアイデアを出してくれるし、やってみようというアクションにつながっています。
誰もがスピード感をもってチャレンジできる環境。メンバー一人ひとりが経営者目線をもって仕事を楽しんでいる
― D2Cブランド、インフルエンサーブランドの草創期からチャレンジをしてきたお二人から見た3rdという会社のよさ、他にはないユニークなところはどこだと思いますか。
松本:誰もがチャレンジしやすい環境を整えてくれている会社です。一般的な会社の場合、入社するとまずは誰かのサポート的な仕事からスタートし、徐々にステップアップしていくというのがよくある流れだと思います。でも3rdは非常にスピード感があり、すぐにそれぞれの役割を任せてくれます。私個人としては、私を含め3rdに関われる人は“運がいい人”だと思っています。「失敗しても死ぬわけじゃないんだから、恐れずやろうよ」と、新しいチャレンジに対してウェルカムな器がありますからね。
森:不思議なくらい、川村さんのマインドに近い人間が必然的に集まってきていますね。Lumierチームにも20代の若いメンバーもいるのですが、入社1年半程度のキャリアのスタッフたちですら、毎月数百万、数千万単位の広告予算を握って仕事をしています。本当に能動的に動くメンバーばかりで、みんな経営者目線を持っています。このメンバーなら達成できないものはないんじゃないかと思わせてくれるし、一緒に目指すところまで行きたい、行けるよねと思えるんですよ。みんな仕事をゲーム感覚で楽しんでいます。自分が若かった頃はこんなこと考えていなかったよなと驚かされます。本当におもしろい会社です。
― 今後3rdで挑戦していきたいことは何ですか。
松本:ESICAもFreneももっと認知されるブランドになりたいということは大前提として、私を含め、メーカーさん、お客さま、チームのみんな、森さんなど、私に関わる全ての人が幸せになれるようなことをやっていきたいです。頑張れば売り上げが伸び、発注・生産も増えていく。それがみんなの幸せにつながっていくだろうし、私に関わってよかったと思ってもらえたらうれしいですね。
森:Lumierではカメラ撮影から全て私が担当しており、ここまでずっとプレイヤーとして走り続けてきました。ただ今後の規模拡大を考えた時、私のブレーンになってくれる人材が必要になってきます。後継者の育成、あるいはチームメンバーが自分でブランドを立ち上げられるよう、私の知識・経験を社内で共有できるような体制を整えていけたらと思っています。またLumierのビジネススタイルは、ファッションだけでなく異業種でも展開できる可能性はあると思っているので、今これをやれば世の中にハマるのではないかというものが出てきた時にすぐ動けるように、自分の身も整えていきたいですね。
文:カソウスキ
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【NESTBOWL】の過去記事
RANKING TOP 10
アクセスランキング
sacai Men's 2025 SS & Women's 2025 Spring Collection