今年のお買い物を振り返る「2025年ベストバイ」。4人目は、小説「ここは退屈迎えに来て」や「あのこは貴族」などで知られる小説家の山内マリコさん。エッセイで綴られる独自の視点や、ファッション、カルチャー、着物などへの深い造詣でも多くの読者を魅了しています。現代社会を生きる女性たちの心情や友情、連帯などをリアルに描き出す作風が多くの人々の支持を集める一方、実は「買い物とわたし お伊勢丹より愛をこめて」と題したエッセイを出版するほどの“お買い物好き”な一面も。
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安くてかわいいものが好きだった20代、上質な本物志向に目覚めた30代を経て、40代を迎えた山内さんがたどり着いたという新たなステージや価値観が反映された、今年買って良かったモノ7点とは?
目次
有松絞りの浴衣・博多帯・下駄

FASHIONSNAP(以下、F):エッセイ「きもの再入門」も出されるなど着物好きで知られる山内さんですが、この反物は浴衣に仕立てる前のものでしょうか?
山内マリコ(以下、山内):そうです。着物は洋服と違って、形は全て同じなんです。既に縫い上がった状態で売っている品もあるのですが、本来はこういう反物で買って、仕立てに出して、自分の身体にぴったりのサイズで縫ってもらうもので。形が同じな分、柄や織り、手触りといった生地に惚れて買う感じです。生地の魅力しか選びどころがないので(笑)。
F:「生地しか選びどころがない」というのは着物ならではですね。これらはどちらで購入されたんですか?
山内:反物は、今年の夏に名古屋の「有松地区」という、絞りが有名な産地に足を運んで買った、有松絞りのものです。帯と下駄は百貨店の呉服売り場で買ったもの。なににでも合いそうな博多帯と、焼杉(やきすぎ)の下駄です。下駄は、大人っぽいものが欲しくて何年も探していたところ、今年ようやく見つけて手に入れました。



F:着物は産地に直接行って買われたりもしているんですね。
山内:ついに行きはじめてしまいました。人って30代になると、素材や品質の違いがだんだんわかってきて、いいものが欲しくなりますよね。“本物”に目覚めはじめるというか。噂には聞いていたのですが、40代以降の中年クラスとなると、さらに一歩進んで、産地に行きだすんですね(笑)。私、着物はずっと祖母や母からのもらい物が中心で、お金をかけないようにしていたのですが、45歳になると「お金をかけない」なんて渋いこと言ってるのが虚しくなってきて……。30代より余裕ができた分、「ちゃんと新しい着物を買ってもいい、なんなら産地まで行って思い出も作ろう!」と思うようになりました。
F:ワンランク上のステージに足を踏み入れてしまったんですね(笑)。それには何か具体的なきっかけがあったのでしょうか?

山内:着物の産地に行った最初は、会津若松ですね。会津木綿が欲しくなり、織元さんの工場兼ショップを訪ねました。もちろんオンラインショップでも買えますし、東京には良いお店がたくさんあるので、着物に限らず日本中の名産品や良いものを買うことができます。逆に言うと、あまりにも簡単に買え過ぎてしまって、気がついたら収納がぱんぱん。コロナ禍以降、国内旅行が楽しくなってきたのもあって、「旅先で買う」というお楽しみを取っておかなくちゃと、セーブするようになりました。
特に着物は新しいものを買うことで、着物産業を応援することにも繋がるんじゃないかと思って。買う人がいなくなったら作る人もいなくなってしまう。だから、「もう40代になったし、これからは意識的にちゃんと身銭を切って、着物業界を支える気概で買わなきゃ」と思うようになってきた結果がこれです(笑)。

F:「応援」の意味での買い物でもあると。実際に産地に行って買うようになってみて、何か心境に変化はありましたか?
山内:「これはあの場所でこうやって買った」という背景も含めて、より愛着が湧くなと感じています。百貨店で買った物はどうしても“買い物の思い出”になってしまうのですが、有松絞りの浴衣は、歩いた街並みやその日の気持ちも一緒に思い出すことができる。だから、より持っていて嬉しいものになりましたね。
F:この反物は絞り染めならではの凹凸のある風合いが素敵ですが、山内さんのお気に入りポイントは?
山内:肌触りの良さですね。空気を含んでふわふわしていて、本当に肌当たりが優しい。昔はデザインのかわいさ重視で着心地は二の次だったのですが、中年の体はストレスにめちゃくちゃ弱いので(笑)、ちょっとでも着心地が悪いと着なくなってしまうんです。お店の方が、何度も洗うとどんどん着心地が良くなるとおっしゃっていたので、ガシガシ着ようと思います。買ったのが8月だったので今年はもう間に合わなかったのですが、これから仕立てに出して、来年の初夏にはデビューさせる予定です。
島根県 湯町窯・出西窯の焼き物

F:続いては島根県の焼き物とのことですが、それぞれどういったものでしょうか?
山内:オレンジ色の方が「湯町(ゆまち)窯」、白い方が「出西(しゅっさい)窯」の器です。島根の松江にある湯町窯は、英国人陶芸家のバーナード・リーチ(Bernard Leach)さんが西洋の装飾技法である「スリップウェア」を伝えたという、民藝運動において結構重要な窯元の一つらしくて。私は、前からずっと湯町窯に行ってみたくてグーグルマップに星をつけていたんですが、今年初めて島根旅行が叶って、ようやく行くことができました。
F:着物だけではなく、器も産地に直接行って買われているんですね。
山内:はい(笑)。30代半ばくらいから、こういう焼き物系の器がどんどん好きになって、すでに食器棚はぎちぎちの状態です。湯町窯のものは、たまたま都内のお店でマグカップを1つだけ買ったことがあったのですが、夫と揃えて使えるようにもう一つ買い足そうと思い、せっかくだったらそれを旅行の目的にして、産地に行って、そこで買った方が楽しいんじゃないかと思って。大きなリュックを背負って窯元を訪ねながら、「ああ、私もついに窯元まで行くような大人になったか」としみじみしました(笑)。器は本当に沼ですね。

F:それぞれの器はどんなところが気に入っていますか?
山内:湯町窯の器は、とにかく釉薬の色がかわいくて素朴なところが好きです。出西窯の方は、規格が揃っているシュッとしたデザインなのですが、端正ながらもドシっとした佇まいがいいなと。2つの窯は車で30分くらいの距離でエリア的にも近かったのですが、こんなにもテイストや個性が違うんだなと思いました。
F:普段、この器たちはどんなふうに使われていますか?
山内:湯町窯の方は、カレー専用皿ですね。出西窯の方はパスタを食べるのによく使っています。

F:食器棚に入り切らないくらいたくさん器をお持ちということですが、器を買う際の決め手は?
山内:なにを盛り付けるか、具体的に思い浮かべてから買うようにしています。見ると一番欲しくなるのはフラットな平皿なんですが、「目玉焼きくらいしかのらないから、あんまり持っててもしょうがないぞ」と思って踏みとどまっています。
F:今後、別の窯元に行かれる予定は?
山内:今のところ予定はないのですが、九州に星がいっぱいついています(笑)。もしまた窯元へ行ったとしても、買う量は「せっかくここまで来たのにそれだけ?」くらいに留めておこうと、肝に銘じています。
Sea New York セットアップ

F:3点目は、「シー ニューヨーク(Sea New York)」のブラウスとスカートのセットアップです。デザイナーデュオが手掛けるニューヨーク発のブランドですが、どのように出合われたのでしょうか?
山内:ブランド自体との出合いは、たぶん表参道にあるセレクトショップ「エイチ ビューティー&ユース(H BEAUTY&YOUTH)」だったと思います。あまりブランドを意識せずに、デザインがかわいいと思って買ったトップスが、たまたま2着ともシー ニューヨークのもので。後から「このブランド、もしかして好みかも」と気づいて。それからは、ブランドの本国の公式サイトで直接買うようになりました。
シー ニューヨークは、オンラインストアがすごく充実していて新商品が入るたびにメールが届くので、その度に見に行っては「かわいいな」と思いつつ、今すごく円安なので、目玉が飛び出るくらいお高くて……(笑)。毎回レートと戦いながら少しずつ買い集めて、今7着くらい持っていますね。

F:先程「40代に入って産地に直接買いに行くようになった」とおっしゃっていましたが、一方でオンラインでもお買い物されるんですね。
山内:洋服はネットで漁ることが増えましたね。こういう「ちょっと変」くらいの派手な服が好きなのですが、ここ数年はとくに、ショップには変わった服が置かれなくなってしまって、お店に行ってもおもしろい服が見つからないことが多いんです。オンラインで探した方が好みのものが見つかるので、仕方なくシフトした感じです。
F:このセットアップもオンラインで買われたのでしょうか?


山内:そうですね。これは、オンラインストアにウエスタンブーツと合わせたルックが載っていたのを見て、すごくかわいいなと思って購入しました。ブラウザで見ていたときは、もっと繊細なオーガンジーをイメージしていたのですが、届いてみたら思いっきりケミカルで硬めなメッシュ素材で、「うわーやっちまった!」と凹んだりもしつつ(笑)。
F:ネットショッピングあるあるですね(笑)。そして、山内さんはティアードのデザインがお好きなんですね。
山内:持っているスカートは、ほぼティアードスカートですね。ワンピースは好きですが、スカートは苦しいのでちょっと苦手で、キャミワンピースの上からトップスを重ねて、スカートのように見せることが多いです。例外的に、ティアードスカートはなんか好きなんですよね。
このセットアップも、最初はワンピースかと思ったんです。セパレートでそろえると割高なのですごく悩んだのですが、上下それぞれ着回しもできるし、ティアードスカートの誘惑には勝てず。私は少しデコラティブなものが好きなので、こういった目にうるさいデザインのものがどんどん集まってしまって(笑)。


F:ファッションスタイルやデザインの好みは、以前から一貫されているのでしょうか?
山内:30代半ばごろまでは「ちゃんとした大人に見られたい」という気持ちが強かったので、“どこに出しても恥ずかしくない”ような、綺麗できちんとした格好をするように心掛けていたんです。だけど、内面がカチッとしていないのに服だけカチッとしたものを着ているのは、すごく居心地が悪くて。着ていてしっくりくるような服を選んで、内面と外面をマッチングさせた方がいいなとだんだん気づきました。
だから最近は、「この年齢だからこういうものを着なきゃ」みたいなことはあまり考えないようにして、自分がときめいたり「これ着たい」と思うものだけを買って、のびのびと着るようにしています。そうやってときめきに従った結果、フリフリや花柄が多くなりました(笑)。
F:一緒にお持ちいただいた花柄のワンピースも素敵ですね。


山内:この2024年秋冬コレクションのワンピースは、今年買ったものではなく“今年輝いたもの”です。6月のロンドン旅行で着たら、街ですれ違う人や店員さん、警備員の人などに、行く先々で「I love your dress!」と話しかけられるという出来事が1日でトータル5回くらいあって、凄かったんです(笑)。
F:それは嬉しいしテンションが上がりますね。
山内:まさかこんなに褒められるとは思っていなくて。海外では、「そのシャツいいね」みたいなことをすれ違いざまに言うらしいとはよく聞いていたのですが、ここまでとは。めちゃくちゃ褒められたので喜びが爆増しして、思い出すたびにほくほくして、手放せない一着になりました。
F:山内さんが思うシー ニューヨークの魅力とは?
山内:シー ニューヨークは、デザインがちょっとヴィンテージっぽいところが素敵ですね。新作なんだけど懐かしい、みたいな。私、本当は「ボーホーシック*」と呼ばれるような、フォークロア調のファッションが好きなのですが、ガチなフォークロアを着るには大人になり過ぎてしまったので(笑)。シー ニューヨークのヴィンテージ感やフォークロア感はさじ加減が絶妙で、イベント登壇用の衣装にもなるし、ギリギリ街にも着て行ける。ちょっとロマンティックなムードがあるところも好きです。
*ボーホーシック:「ボヘミアン」とニューヨークの「ソーホー」を掛け合わせた造語。民族調のファッションに都会的な要素を組み合わせたスタイルを指す。
ロンドンの文房具店 Choosing Keepingのノート

F:ノートを以前から集めていらっしゃるとのことですが、そもそものきっかけは?
山内:昔は、執筆のアイデアなどを書いたりするためのノートを同じメーカーで揃えていたんです。最初は、「クレールフォンテーヌ(Clairefontaine)」というフランスの老舗メーカーのノートが好きで、そのあと「モレスキン(MOLESKINE)」に浮気して、どちらも何十冊と使っていました。収納時に規格が揃っていた方がいいという理由から、当時は同じ形で表紙のデザインが違うものを買い揃えていたのですが、あるとき「同じものばっかり買ってるのはもう飽きた!これからはかわいいと思ったノートを買うんだ!」と思って(笑)。
その結果、今は旅先での主な買い物も文房具になっています。元々、文房具全般が好きなんですが、なかでもノート類やメモパッドなどの紙モノが好きで。なので、見たことのないノートや知らないメーカーのノートが売っているのを見ると、「用途は決まってないけど、とりあえず買っちゃおう」という感じで買っています。

F:今回お持ちいただいたものはどれもすごく個性豊かですね。どこで買われたのでしょうか?
山内:すべて、今年の6月に初めてイギリスに旅行したときにロンドンで手に入れたものです。コヴェントガーデンにある「チュージング キーピング(Choosing Keeping)」という文房具屋さんで買ったものが多いです。オリジナルのノートもたくさんあって、特にヴィンテージの紙を表紙に使っているハードカバーのシリーズがヤバかったです(笑)。高かったしかさばるので、1冊しか買えず残念……。薄いミニノートも、箔押しのロゴや、角丸のデザイン、小口に色がついているところなど、洋モノならではのこだわりに喜びを感じて、ついつい買ってしまいました。小花柄の布表紙のものは、老舗百貨店の「リバティ(LIBERTY)」で買った、リバティ生地を使ったオリジナル。あとはロンドン自然史博物館(The Natural History Museum)やナショナル・ギャラリー(The National Gallery)のミュージアムショップで買いました。






「チュージング キーピング」で購入したノート
F:ノート選びの基準やポイントはありますか?
山内:ずっと「罫線あり派」だったのですが、現在は「無地派」にたどり着きました。あとは表紙がしっかりしていること。ペラペラだと使い切るまで保たないので。無地でハードカバーで「こんなノート見たことない!」というものを見つけたら、わりと何も考えずに買っています(笑)。買うだけ買って保管して、時々取り出して愛でる、という感じですね。
F:ノートは、普段どんなふうに使っているのでしょうか?
山内:メインは小説のアイデア帳として、登場人物のイメージ写真や、参考になる記事を貼り付けたり、思い浮かんだことはなんでも書くようにしています。長編じゃなくても、調べ物が多い短編小説のときも、新しいノートをおろしています。あと最近は、趣味で世界史と日本史の学び直しをしているので、学生気分でノートをとってますね。メモしながら本を読む「読書ノート」、感想を書き留めておく「映画ノート」や「舞台ノート」もあります。歌舞伎をもっとちゃんと観たいなと思って、観に行った演目のチケットや場面写真を貼ったり、時代背景を書き込む「歌舞伎ノート」も作っていて。興味があるもの一つひとつに対してノートを作るようにしています。

F:デジタルなメモではなく、すべて紙のノートに記録されているんですね。
山内:デジタルの方がかさばらないし、検索もできるから便利だとは思うのですが、ノートは私にとって唯一の“嗜好品”でもあるので、ただの楽しみですね。コレクションと実用品の中間のような存在です。自分の中で「ノートに関しては買いたいものはいくらでも買っていい」ということにしています。
F:確かに、金額的にもコレクションしやすいですもんね。
山内:そうなんです。「1万円でこんなにかわいい物が買えるなんて夢みたい!」という感じで、文房具は幸福度が高いんですよね。海外旅行でもいちばん楽しみなのは文房具屋さん巡りでしたが、ロンドンのお洒落な文房具屋さんは、「LIFE」や「MDノート」といった日本の製品に売り場面積を割いていたりするので、観光客としては「もっと自国のものに力を入れてよ」と思ってしまいました(笑)。


F:デザインとして、特にお好きなテイストや国はありますか?
山内:基本はアメリカとヨーロッパ全般ですね。今の40〜50代以降の人は西洋への憧れで育っていると思うのですが、私も洋モノの外国製品にいまだに弱くて。ただ、最近の韓国の文房具はめちゃくちゃかわいいので、去年行った韓国でも文房具屋さんを巡っていました。もちろん日本のメーカーのものもたくさん使っていますが、いちばん萌えるのは「こんなの見たことない!」っていう、外国の匂いのするノートですね。
F:ちなみに、今ご自宅には何冊くらいのノートをお持ちなんでしょうか?
山内:使用済みのノートがダンボール3〜4箱くらいあって、そろそろ捨てることも考えなくちゃと思っています。未使用のノートは2箱分くらい。「かわいいと思ったやつはなんでも買っていい」としたら、どんどん増えて収拾がつかなくなってしまって(笑)。それでも買うのをやめられない嗜好品ですね。
UNIQLO ブラトップ&ショートパンツ

Image by: 山内マリコ
F:続いては「ユニクロ(UNIQLO)」のブラトップ&ショートパンツですね。少し意外なチョイスだと感じましたが、なぜこれを今年のベストバイに選ばれたのでしょうか?
山内:この夏は、ひたすらユニクロのブラトップとショートパンツを着て過ごしていました。これも6月のロンドン旅行がきっかけなのですが、滞在中に気温が急上昇して、現地の人や世界中からの旅行者たちがものすごい軽装になっていくのを見て、自分の服装コードに疑問を感じまして。日本ではみんな、ちゃんとした格好で外に出るんですよね。気候変動で日本も亜熱帯化して気温が40度を超えているのに、着るものは変わっていなくて。生地も厚めだし露出も控え目なんです、外が灼熱でも。露出を「はしたない」と恥じる感覚が根強いし、「若くて細くないと肌を見せちゃダメ」という思い込みも強くて。私もショートパンツなんて、29歳くらいで封印していました。

だけどロンドンで、人々が軽装で快適に過ごしている姿を見て、「私は誰に遠慮して、クソ暑いのにこんなに体を覆う服を着ていたんだろう」と思って。それで、気候に合った服を着たらいいじゃんと開き直って、この夏はブラトップとショートパンツ姿で過ごしていました。冷房対策でメンズのシャツを羽織ることもありましたが、とにかく暑かったので「もうどんなに二の腕が太かろうが出してやる!」という攻めの気持ちで。日本のギャルっ気のない40代女性でここまで露出してるのは私くらいだな、と思いながら歩いていました(笑)。
F:確かに、日本だとどうしても「きちんとしなきゃいけない」という無言の圧みたいなものがありますよね。
山内:そうなんです。海外旅行に行くと、出身国によって服装コードが違うのをひしひし感じるなか、日本のコードが断トツでカチッとしていたんですよね。普段の日本の服装コードでロンドンの街を歩くと、不自然なくらい。ロンドンでのインスパイアを経て、今年の夏は人目を気にせず、気温に合わせて快適な格好をしていました。実際、ショートパンツを穿いていると涼しいし気分も良いんですよ。とはいえ、1年経ったらまた日本のコードに戻っちゃうかもしれませんが……(笑)。

Image by: 山内マリコ
F:ユニクロにはよく行かれるんですか?
山内:便利なのでついつい行ってしまいますね。ユニクロが扱っている「コントワー・デ・コトニエ(COMPTOIR DES COTONNERS)」を買うこともあります。ただ、私の中ではユニクロは“下着屋さん”という位置づけで、服というよりはインナー系を買うことが多いです。最近も「プリンセス タム・タム(PRINCESSE tam tam)」とのコラボインナーを買いました。
F:お買い物エッセイでも、「30代は専ら体の土台づくりでお世話になっている」と書かれていましたよね。
山内:そのスタンスは今も変わっていません。エッセイに書いていた、「ユニクロは買うときは楽しいけど、着るときはあんまり楽しくない」という感想は今もそうで、外着は買っても着なくなるので、あまり手を出さないです。でも、ブラトップとショートパンツは豊富にカラー展開されていて、こういう格好に挑戦したいと思ったときに身近で手頃だったので買ってみたら、すごく良くて。ショートパンツは色違いで3色買い揃えました。

Image by: 山内マリコ
MIMI BERRY × Steven Alan ショルダーバッグ

F:こちらはロンドン発のバッグブランド「ミミベリー(MIMI BERRY)」と「スティーブン アラン(Steven Alan)」がコラボレーションしたショルダーバッグです。どういったきっかけで購入されたのでしょうか?
山内:スティーブン アランのお店に行ったときに、棚にぽんと置いてあるのを見て「おや、かわいいのでは?」と思って買ってみたら、ものすごく使い勝手が良くて。このバッグを合わせるとどんなコーディネートもいい感じに見えるので、今年はずっと使っていました。かなり使い込んで少し黒ずんできてしまったので、もう一つ買おうと思ったのですが、残念ながら既に完売していました。
F:今日もこのバッグを使われているくらい、本当に日々愛用されているんですね。今年いつ頃買われたんですか?
山内:春先だったと思います。6月のロンドン旅行にも持って行きました。スリ対策のため、チャックが閉まる別のバッグも持って行ったのですが、実際に行ってみたら「言うほど治安悪くないな」と気づいて。途中からはずっとこのバッグを斜めがけして使っていました。ものの出し入れもしやすくて、最低限の荷物がしっかり入る、ちょうどいいサイズ感で使いやすいです。


F:ちなみに、これ以外だと普段はどんなバッグを愛用されていますか?
山内:よく使うのは「グッチ(GUCCI)」のショルダーバッグと、A4の書類も入る「セリーヌ(CELINE)」のバケツ型バッグ、「エルベシャプリエ(Hervé Chapelier)」のリュックサック。色は全部黒ですね。年に1つのペースでブランド物のバッグが欲しくなる周期が来て、少しずつ買い集めていましたが、昨今はあまりにも価格が高くなりすぎてしまったので、「もういいです」という気持ちになって。ブランドバッグの上限は20万円台までにしようと決めています。それ以上高いものは買わないです。
F:元々は、ラグジュアリーブランドのバッグも結構買われていたんですね。
山内:30代の頃は「ちゃんとした人間に見られたい」という思いもあったので、ブランドバッグが欲しかったんですよね。初対面の仕事相手と会う日など、ちょっと舐められそうなときに「硬くて重たそうなブランドバッグを持って行って威圧する」みたいな感じで使ったりして(笑)。今はそういう必要もないですし、ぱっと見どこの何かわからないようなノーブランドのものでもいいという考えに落ち着きました。

F:40代になった今は、イメージよりも質と価格が見合ったものを求めるようになったということでしょうか?
山内:そうですね。30代の頃の方がブランドに憧れがありましたし、背伸びしてました。「欲しい!」っていう気持ちも強かった。若いと、素敵なものを買っただけで天にも昇りそうな心地になったけど、最近はそこまで強烈な物欲がなくて、ちょっと枯れてきてるのを感じています(笑)。ただ、ハイブランドのバッグはちゃんと長持ちするので、お金を出す価値はあるんですよね。
BIZOUX × 山内マリコ 「源氏物語」着想のピアス

F:最後は、ジュエリーブランド「ビズー(BIZOUX)」と山内さんとのコラボによるジュエリーコレクションのピアスですね。「源氏物語」に登場する4人の女性がインスピレーション源になっているとか。
山内:これは、源氏物語の朧月夜から着想を得た、「月子」という女性のイメージで作られているジュエリーのスタンダードラインのものです。プレミアムラインのものと同じくらい、ストーンのキラキラした存在感があって、だけどデイリーに着けやすいという、“いいとこどり”なデザインがすごくかわいくて気に入っています。ブルーと黄色の配色もめちゃくちゃ好みです。


F:山内さんは、今回のコラボで源氏物語から着想を得た短編小説を書かれたんですよね。
山内:はい。4つの短編小説は、デザイン画がある状態で書いたものと、まだない状態で書いたものがあるんです。月子の場合は、プレミアムラインのジュエリーのデザイン画が先に完成したので、それを見てイメージを膨らませて執筆しました。すごく大ぶりなピアスだったので、そういうピアスを自分のシグネチャーアイテムとして着けている女性をイメージしています。私も大きなピアスが好きなので、本当はプレミアムラインのものがドンピシャで好みなのですが、100万円超えの価格なので流石に手が出ませんでした(笑)。
F:普段、ジュエリーはどんなものを身に着けることが多いですか?
山内:ピアスとネックレスですね。ネックレスはいつも同じ、すごく小さい一粒ダイヤのものを着けています。ピアスはシンプル系と、ゴテゴテした大きめなものを持っていて、洋服に合わせて選んでいます。そんなにこだわりはないつもりだったのですが、たまにピアスを着け忘れて家を出ると、そわそわしてしまって。無意識のうちに、お守りのような“自分を増強してくれるもの”として身に着けていたんだなと、着け忘れたときに気づきました。

F:エッセイなどを拝読していると、山内さんはファインジュエリーよりもコスチュームジュエリーがお好きな印象があります。
山内:その通りです!私が「欲しい」と思うデザインにもし本物の宝石が使われていたら、莫大な金額になってしまうので、どうしてもコスチュームジュエリーになってしまいますね。これまで、ジュエリーにはあまりお金をかけていなくて。このビズーのピアスは、たぶん持っているピアスの中で一番高価だと思います(笑)。
今回ビズーさんとのコラボの過程で、カラーストーンへのこだわりを聞いたり、キュンとくるような愛らしいデザインを見せていただいたりして、ジュエリーの魅力がわかりはじめてしまって(笑)。「ここに手を出し始めたらすごくお金がかかるぞ、私には着物もあるんだからな!」と自分に言い聞かせています。
今年を振り返って
F:2025年のお買い物を振り返ってみていかがでしたか?
山内:旅行と買い物の悪魔合体が始まった年、でしたね。「産地に行って買う」という新しい扉を開けてしまい、喜びと同時に「自制心を忘れないようにしなければ」という気持ちがせめぎ合っています。着物はアラサーの頃にハマって、一度それで散財してしまったので、新しく買うことから逃げていたんです。だけど、年齢を重ねて考えも変わりました。浴衣は着物の中では安い方ですが、それでも伝統工芸士の方が手掛けたものだと、16万円くらいするんですよ。「う、高い」という気持ちと、「私が買わなくてどうする!」という気持ちの板挟みの中、生きています。

F:以前、ただモノを消費して捨てるだけではない「不要になったもので軽めの善行ができる試み」について書かれていたのが印象的でした。最近は“消費と処分”にどのように向き合われていますか?
山内:できるだけ有効に処分したいという思いは変わってないです。仕事柄、資料として本がどんどん増えていくので、定期的に処分する必要があって。ただ売るのではなく、古本でいろんな団体に寄付できるところに出しています。前回は能登の震災に遭った子どもたちを支援する団体に寄付しました。あとは、すぐに溜まってしまうショッパーなどの紙袋を、まとめて地元の「ディアンドデパートメント(D&DEPARTMENT)」へ送っています。紙袋をリサイクルして使ってくれるのでありがたいです。
F:引き続き、処分の方法としての「寄付」を続けていらっしゃるんですね。ちなみに、お仕事面では今年はどのような1年でしたか?
山内:今年は共著の年でしたね。上野千鶴子さんと藤井聡子さんとの「地方女子たちの選択」や、団地団の仲間たちとの新書「世界は団地でできている 映画のなかの集合住宅70年史」、10月末には着物好きの方との対談連載を書籍化した「きもの、どう着てる? 私の『スタイル』探訪記」も発売されました。文芸誌の「すばる」で長編小説の連載も始まって執筆に追われているのですが、単行本化にはもう少し時間がかかります。なので、ビズーさんとのコラボで書いた短編小説が、今年唯一出た新刊の小説と言えますね(笑)。
F:最後に、来年の抱負を教えてください。
山内:来年は長編小説の新刊を出す年なので、それに向かって頑張っていきたいです。そして、30代までは趣味そっちのけで仕事ばかりしていたのですが、40代になってようやく趣味に時間を割けるようになってきたので、趣味をもっと深めたいなと思っていて。着物や旅行、舞台鑑賞、歌舞伎ももっとしっかり味わいたいし、日本史や世界史の勉強もしたいし……と最近はどんどん深めたいものが広がっていって、好奇心が爆発しています。だから、来年は仕事もしつつ、自分の好きなこともちゃんとやっていきたいですね。趣味、趣味、仕事、趣味、趣味みたいな感じで(笑)。

■山内マリコ
1980年富山県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。2008年「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞し、2012年「ここは退屈迎えに来て」で小説家デビュー。同作と「アズミ・ハルコは行方不明」「あのこは貴族」が映画化されている。地方と女性 を主なテーマに、「一心同体だった」「マリリン・ トールド・ミー」「逃亡するガール」などを上梓。「きもの再入門」などエッセイも執筆。近刊は上野千鶴子との共著「地方女子たちの選択」。
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