今年のお買い物を振り返る「2025年ベストバイ」。ラスト19人目は、サカナクションの山口一郎さんです。今年は新曲「怪獣」をリリースし、自身最速でストリーミング再生数2億回を突破するなど大ヒットを記録。半年におよぶ全国ホールツアー「SAKANAQUARIUM 2025 “怪獣”」が成功を収めました。その裏側のリアルなドキュメンタリーを、自身のYouTubeチャンネルを通じて配信し続けています。病気と向き合いながら新しい自分になるため、新しい習慣を続けているという山口一郎さんの、今年買って良かったモノ8点。
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目次
COMOLIの靴 - FOOTWORKSのチロリアンシューズ / GUIDIの別注ブーツ
山口一郎(以下、山口):今回のベストバイ企画、魚豊さんも出ているんですね。
FASHIONSNAP(以下、F):はい、今年初登場でした! 一郎さんは、サカナクションが主題歌を担当したTVアニメ「チ。 ―地球の運動について―」(原作・魚豊)の関連番組で対談をしていましたよね。
山口:その時に魚豊さん、確か「ジュンヤ ワタナベ マン(JUNYA WATANABE MAN)」のヴィンテージを着ていたんですよ。また会いたいな。

F:ファッションの趣味も合いそうです。では早速、一郎さんの今年のベストバイを教えてください。

山口:「コモリ(COMOLI)」の靴です。 僕はいつも青山周辺に行くとルーティンがあって、サカイ、アクネ、ギャルソン、トーガ、コモリのお店に行き、たまにロエベやジャイルの方まで歩いて巡るんです。それで今年、コモリに立ち寄った時にパンツを試着していたら、靴も気になって。履いてみたら、めちゃくちゃ良かったんですよね。



F:こちらは「フットワークス(FOOTWORKS)」とコラボレーションしたチロリアンシューズ。フットワークスはインソールの専門店なので、履き心地は間違いなさそうです。


山口:コモリの服はよく着ているけど靴を試すのは初めてで、軽くて本当に歩きやすくてびっくり。太いパンツに合いますよね。
F:スエードの質感も、とても綺麗です。
山口:そう、こういう靴を持っていなかったので新鮮。一回履いて、すぐにもう一足手に入れたくらい気に入りました。コモリって今、お店に行列ができるくらい人気だし、良いものはすぐに無くなっちゃうから。
F:前回のベストバイ企画でも話していた「新しい自分」への道が続いていますね。もう一足は、コモリが別注した「グイディ(GUIDI)」のバックジップブーツ。



山口:僕、靴によっては履き口に裾が引っかかっちゃって。だけど、ブーツだとそうならないかなと思ったんです。あとこのバックジップ。こうやって後ろのジップを上げる動作ってやったことがなくて。気分が新しい。


F:トゥの丸みとゴツめのラバーソールが良いバランスですね。
山口:ボリュームがあるけどレザーが柔らかくて、軽くて履きやすいです。あと最近よく見ますけど、このソールのロゴ。これがついているだけで、ちょっと欲しくなる(笑)。
F:ああ、ビブラム(Vibram)ソールですね。イタリアの歴史あるメーカーなので安心感があります。ちなみに履いている靴下は、2020年のベストバイだった「コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)」ですか?
山口:はい。ギャルソンの靴下は自分の定番になっています。あとは今日、履いてきたのは「メゾン マルジェラ(Maison Margiela)」の靴で、これも今年のもの。中に着ているモックネックのニットと、パンツはコモリ。コモリはお店の雰囲気も良いんですよ。ナチュラルな接客も嬉しいです。


F:買い物しやすいんですね。でも、いつもどういう格好で青山を歩いているんですか?
山口:このまんまですよ。何も隠したりしないので。
LEMAIRE「ソフトゲームバッグ」


山口:片山さん(=インテリアデザイナー 片山正通)と買い物をたまにしていて、「ルメール(LEMAIRE)のお店がいいよ」と連れていってもらったんです。
F:古民家を改装して作られた「LEMAIRE EBISU」ですね。

山口:そこでこの、ソフトゲームバッグに出合いました。前回のベストバイに挙げた「ポールハーデン シューメーカーズ(Paul Harnden Shoemakers)」を今年もよく着ていて、合う靴とバッグを探していたんですよね。意外とこのバッグがしっくりときて。
F:ナイロンキャンバス地がソフトな質感で、ユニセックスで持てそうです。

山口:ルメールだとクロワッサンバッグが人気かと思うんですけど、それとはまた少し違う感じですよね。サイズは3種類あって、片山さんはS、僕はMとLを買いました。その後、田中監督(=映像ディレクター田中裕介)にLをプレゼントして、自分はこのMをずっと使っています。肩に掛けるとフィットするし、何にでも合うんですよ。
F:収納力もありそう。いつも中には何を入れていますか?
山口:最近だと、これとか。


F:山口一郎YouTubeチャンネルのグッズのあぶらとり紙ですね(笑)。
山口:あとこのポーチはサカナクションのツアーグッズで、プルーム・オーラ2本とスティックが偶然にもシンデレラフィット。それと、マルジェラの財布とモバイルバッテリーくらいかな。



F:だいぶ余裕で入りますね。
山口:たまに遠出する時のバッグだと、最近のお気に入りはこのマルジェラです。




F:フランス語の「SAC(=バッグの意)」を掛けた名前の「5AC」。ジョン・ガリアーノ(John Galliano)が手掛けたバッグですね。オリーブグリーンの色味が渋い。
山口:ヴィンテージ加工のレザーだそうです。もし傷がついても味になっていくと思う。パソコンや配信機材も入る大きさだし、自立するからスーツケースの上にもポンと乗せられますね。実は最初、スエードのバッグを求めてマルジェラのお店に行ったんですが、たまたま入荷していたこっちに惹かれちゃって。


F:タイミングと出合いですね。今年のマルジェラの秋冬シーズンは時間の痕跡や経年変化がコンセプトだったので、一郎さんのモノ選びの「10年経っても好きなもの」という考え方ともリンクします。
山口:一生使える、長く使えるものをずっと選んできている中で、これは自分の中で新しさもあったんですよ。いつもリュックとかショルダーバッグばかりだったから、こうやってバッグのトップハンドルを手に持つ持ち方をしたことがなくて。どうかな、似合うかな。

F:ちょうど今日着ているマルジェラのジャケットとマッチしています。そういったニュアンスのある色合いの服も着るんですね。
山口:僕はずっと黒が多かったから、最近は違う色を試したりとか、新しい感覚をちょっとずつ取り入れてるんですよね。今までと違うことを拒絶するんじゃなくて、受け入れていくっていうことをやり始めています。
kegで出合った服 - プロポジション/カリムハジャブ/シェヴィダレンク/ヴィンテージマルジェラ







F:これらの服も、これまでの一郎さんのスタイルとはまた違った雰囲気です。今回の取材場所としてもお借りしている恵比寿の「ケグ(keg)」で購入したものとのこと。
山口:kegは、オーナーの渡邉くん(=渡邉圭介)が同じ北海道の小樽出身で、同い年。自分はバンドをやって小樽から東京に出てきて、渡邉くんは東京に出てきてマルジェラの店長になって。知り合ったのは数年前なんですけど、もしかしたら昔どこかですれ違っていたかもしれない。僕が辛い時に支えてもらったり、お世話になっているから、渡邉くんが独立するという時に、何か協力できることがあれば、という話をしていました。その流れで、お店の名前は小樽の「樽=keg」はどう? ってノリで話していたら、渡邉くんが真に受けて(笑)。
keg 渡邉:30秒で店名が決まりました(笑)。ここに飾っているアート作品も、一郎くんが所有しているマルタン・マルジェラ制作のものです。

山口:ここで僕は、知らなかったファッションの世界を渡邉くんに教えてもらいました。まずこの「プロポジション(proposition)」は、ヴィンテージを解体して再構築するというベルリンのブランド。このブルゾンはイギリス軍の1960年代のパラシュートの生地をパッチワークしているそう。



これは上下「カリムハジャブ(KarimHadjab)」。もともとは1950年代の白のワークジャケットで、死海の泥で染めたものだと教えてもらいました。ロゴが手書きだったり、人の手を感じるというか。


コートは「シェヴィダレンク(Chez VIDALENC)」で、フランスのブランド。デザイナーが全て一着ずつ作っているそうで、これはデットストックのハリスツイードかな。

keg 渡邉:こういうブランドは自分がずっと好きで、でも取り扱うには新規の店だと難しいんです。例えばこのシェヴィダレンクも取引できないと断られて、でもフランスのアトリエまで行って3時間粘って交渉して・・・話すとすごく長くなるんですけど(笑)。
山口:自分ではなかなか見つけられないモノに出合えるっていいですよね。これってたとえば、学校帰りにゲームオタクの友達の家に行って新しいゲームの話で盛り上がるみたいな、知らなかったものを知る楽しさがある。

kegオーナー 渡邉圭介
F:一点物だったり手が込んでいて、どれも唯一無二の味があります。
山口:あとこのkegで、マルジェラのヴィンテージを2ラック分くらい買い取らせてもらいました。このハの字ライダース(5-ZIP レザージャケット)のブラックは、マルタンがメンズを立ち上げた1999年春夏の初代のものだそう。




F:ものすごいレアじゃないですか。状態も抜群。



山口:今は作れなかったり貴重なものが多くて、次の時代に残していかなければいけないという気持ちで引き取りました。いつか何かの形で役に立てたらと思っているんですよね。

Cartierの時計「サントス ドゥ カルティエ」


F:一昨年のベストバイ企画で、「元に戻るのではなく新しい自分になりたい」という想いとともに、変化のひとつとしてアクセサリーを取り入れているというお話を聞きました。
山口:「新しい習慣」という自分の中でのテーマも、それに続くものです。時計もそうで、アップルウォッチに代わって今年よくつけたのが、このサントス。


F:サントス ドゥ カルティエ、「カルティエ(Cartier)」の歴史ある名品ですね。手に入れたきっかけは?
山口:片山さんがこの時計をしていて、アートディレクターの平林奈緒美さんに薦めてもらったと話していたんです。見ていていいなと思って、「僕も真似してもいいですか」って。実際につけてみたらどんなスタイルにも合うし、可愛くて気に入っています。

F:スクエアのスティール製ケースに、針とリューズのブルーが効いていますね。
山口:これを使い続けて、そしてサカナクションの初期から担当してくれているマネージャーが今後もっと出世した時に、プレゼントしようとも考えているんです。モノを選ぶ時、半分は自分のため、もう半分は「誰かのためにもなればいいな」と思っていて。なので今年、「エムエム6 メゾン マルジェラ(MM6 Maison Margiela)」と「タイメックス(TIMEX)」のコラボ時計も手に入れたんですが、それはまだ箱を開けずにとっておいてあります。
F:特に時計は、「時を刻む」という意味でも素敵な贈り物になりそう。右手に着けているのは、一昨年のベストバイだったマルジェラのナンバリングリングですね。シルバーがサントスとも合っています。

山口:細い方のリングは、小森くん(=GENERATIONS from EXILE TRIBE 小森隼)が誕生日にプレゼントしてくれたもの。でも僕、歌詞を書いているとご飯を食べなかったりもするから、体重が落ちて少しゆるくなってきたかも。指って痩せるんだなって(笑)。
F:それもきっと、自身の変化のひとつですね。
EYEVAN 7285「363」



山口:アイウェアも、手元に増えたら人に譲っていて、結構使えるものだからみんな喜んでくれるんです。自分がずっと好きなのが「アイヴァン 7285(EYEVAN 7285)」で、今掛けているのは、年明けくらいに手に入れたもの。サングラスだとこれしか掛けていないくらい、新しい定番になっています。


F:モデルは「363」のブラック。シェイプが工芸品のように美しいですね。選んだ決め手は?
山口:自分の顔に合うアイウェアって、結構限られているんですよ。僕は髪型が小学生の頃からほぼ変わっていないんですけど、フレームのところに髪が掛かっても印象が変わりすぎないもの。その中でも普通すぎない、どこかちょっと違和感があるもの。アイヴァン 7285のこのモデルは、テンプルがストレートで、前面がフラットな感じも好き。あと僕は、セルフレームでもズレにくいように、ノーズパッドが付いているものを選びますね。


F:ライトブルーのガラスレンズも綺麗。サングラス以外だと、どんなアイウェアを掛けていますか?
山口:アイヴァンと、その他は「アヤメ(ayame)」と「マイキータ(MYKITA)」が多いかな。サカナクションのライブで「ミュージック」を演奏する時に掛けている、あれもマイキータです。
F:ラップトップスタイルの時の、サイバーなサングラスですね!
山口:あと最近は、度入りのメガネも掛けますね。ずっと目は良かったんだけど。僕は歌詞を書くときにパソコンを使っていて、たぶん「怪獣」のせいで目が悪くなったのかな。
F:「怪獣」の歌詞、79パターン書いたそうですね。
山口:車の運転もするので、度入りはアイヴァンと、あと「グローブスペックス(GLOBE SPECS)」で手に入れたものを使っています。それとこの「ジンズ(JINS)」。北海道でライブした時に、近しいスタッフが買っていて、良かったから真似しました。釣りに行く時とかはコレ。

猿田彦神社 火打ち石


F:火打ち石って黒くてゴツゴツしているイメージでしたが、これは水晶のように綺麗。
山口:猿田彦神社のものなんですけど通常は置いてないらしく、社務所で「ありますか?」と聞くと出してくれるんですよ。サカナクションの会員向けのコンテンツでメンバーがそれぞれ行きたい場所に行くという企画があって、僕は今年2月に初めて伊勢神宮に行ったんです。その時に同行してくれたフォトグラファーの方が、近くにこれがあるよと教えてくれて。


F:猿田彦神社は、みちひらきと芸能の神様で知られていますね。どういう時に使っているんですか?
山口:ライブ会場で、ステージに出る直前に。メンバーと背中を叩き合ってステージに上がるというサカナクションのルーティンあるんですけど、その習慣にこの火打ち石を加えました。こんな感じで、カチカチ打ち合ってます。

F:しっかり火花が散りますね! 調べてみたら、お浄めや災難除けに良いとのこと。
山口:参拝後の怪獣ツアー(=全国17都市を回ったホールツアー「SAKANAQUARIUM 2025 “怪獣”」)では必ず使っていました。巾着袋も可愛いでしょ。
F:ですね。まだご病気を抱えながらとのことですが、ツアーが成功して本当によかったです。
山口:参拝したのが「怪獣」リリース日(2月20日)の少し前で、その後ありがたいことに、たくさんの人に曲を聴いてもらうことができた。なので夏にまた伊勢に行って、お礼参りをしてきました。
陶芸家 吉田直嗣の抹茶碗


F:こちらは陶芸家の吉田直嗣さんの器。たくさんありますね。
山口:最初は加藤浩次さんに教えてもらったんです。加藤さんは本当に博識で、普段それを隠しているんだけど。吉田さんは白磁で有名な黒田泰蔵さんのお弟子さんで、白と黒の器などを作られていてコーヒーカップなど持っていたんですが、こういった特殊な抹茶碗は、原宿で開催されていた個展で初めて見たんですよね。

F:ユナイテッドアローズ本店内の「順理庵」で開催されていた展覧会ですね。どこに惹かれましたか?
山口:陶芸家の方って、自分のスタイルを曲げないイメージがあったので、こういったある種エキセントリックなことをやられるんだと思って驚いて。吉田さん自身も焼いた時にどういう柄が出るかわからないと仰っていて、自然の作用に任せて作られたものだそうなんです。自分が作っている音楽も歪さだったり、偶然性に委ねる瞬間もあるから、そういったチャレンジをしている人なんだって勝手に共感してしまって。こういったものが、自分のインスピレーションや冒険することの助けにもなっていると思います。
F:これらは実際に使っていますか?
山口:日常的に使っていますね。お茶を飲んだり、お菓子を入れたり。加藤さんと一緒に、吉田さんの工房にもおじゃましたんですが、欠けたものがあったり、割れていても金継ぎで修復して使われていたんです。長く使えるんだなと思いました。
F:加藤さんとのラジオ番組(STVラジオ「加藤さんと山口くん」)で、その工房で人生初のろくろに挑戦した様子を放送していましたね。実際どうでしたか?

山口:すごく難しかったです(笑)。音楽は目に見えなくて手で触れることができないものだけど、実際に自分の手を使って目に見えるものを作ることも、本当に難しいんだなと体感できました。でも、楽しかった。その時に吉田さんが話していたことで、個展を開くのが趣味なんだそうで。それって僕らからすると、ライブみたいなものじゃないですか。それを愛してるという部分も、すごく共感したんです。
F:どの器も個性がありますね。この中でお気に入りは?
山口:僕はこの、青が入った抹茶碗かな。土鍋も欲しかったんだよなあ。白磁の器だと手に取りやすい価格のものから幅広く作られているので、皆さんにも使ってみてほしいです。


cado ふとん乾燥機「FOEHN PRO」

山口:これも本当におすすめなんですよ。「カドー(cado)」の布団乾燥機。
F:カドーの製品だと過去に、2021年のベストバイとしてモバイルディフューザーを紹介してもらいました。布団乾燥機ってもっと大きいイメージでしたが、すごくコンパクトなんですね。
山口:カドーは家で、空気清浄機、除湿機、サーキュレーターなどを使っていて、加湿器も欠かせないですね。空気をデザインするというコンセプトの会社ですけど、デザインだけじゃなくて機能性もすごく良くて。その中で、今年の僕の「新しい習慣」になったのが、布団乾燥機なんです。朝起きて、ベッドから出たらこれにスイッチを入れて、布団の中に入れておく。最初に使っていたものからバージョンアップしたものが出たので、これは2台目です。もう、ふっかふか。


F:睡眠の質は大事ですからね。ちなみに、そういった生活を豊かにするものとして、家具やインテリアなども新調しましたか?
山口:家具などは新しく手に入れるというよりも、あるものを修復したり、残していくためのことをやってきたかな。あとは、まだ完成していないんですが、自分だけの家具を作るということをやり始めています。
F:オーダーメイドのようなものですかね。
山口:モノって、大抵がたくさんの人に売るために作られるじゃないですか。でも、売るためではなく自分のためだけに作りたいと思ったんです。僕らの音楽も、たくさんの人に聴いてもらうために作るという以前に、自分たちが好きなものをとことん作るということを大事にしていて。それはビジネス的に成功することではないかもしれないけれど、この歳になって好きなものを作れなかったら楽しめないから。だから服も、来年は買わないかな。
F:え!?
山口:今年はたぶん、一生で一番たくさんの服を手に入れたんです。古いものとか、自分の資料用としてのものも含めて。そういうものがだいぶ蓄積されたから、今後は買うというよりも、自分しか着ない服を作りたいなと思っています。渡邉くんと、青山くん(=青山翔太郎・NF / Hyōgu)と一緒に。きっと勉強にもなると思う。
F:NF(サカナクション 山口一郎が主宰するプロジェクト)のオリジナルで制作しているニットやパーカなど、グッズのクオリティも上がってきていますよね。
山口:最近は本当に海外ブランドの価格が上がっているから、自分たちで制作してみると色々とわかってくることもあります。そういえば昔、タモリさんにお会いした時にすごく良いスーツを着ていたから「それはどこのですか」って聞いたら、「作ったんだよ」と仰られて。タグのロゴが「フェラガモ(FERRAGAMO)」っぽかったんですけど、「よく見ろよ」と言われて読んでみたら、ちょっともじった名前になってた(笑)。タモリさんっぽいなと思って、強烈に覚えていて。
F:なるほど(笑)。では来年のベストバイは、またガラッと変わるかもしれないですね。
今年を振り返って
F:今年も新鮮なベストバイのラインナップでしたね。「新しい習慣」という一郎さんのテーマも反映されていました。
山口:これまで毎年、何かしらギャルソンがベストバイとして入っていたんですけど、今年は何がベストかを純粋に考えた時に、入らなかったんですよね。でもずっと好きで着続けているので、改めてギャルソンは自分の定番になったんだと確認できたんです。特に今年は、それまで当たり前だったり、自分に合っているものだけじゃなくて、新しいものを選ぶことで自分でも変化を実感できたかなと思います。

F:1年前の本企画の取材時は未完成だった「怪獣」が、全国ライブツアーの前日に完成し、YouTubeでの生歌唱とリリース、ツアー最終公演で10曲無料配信、そして「怪獣」が記録的なヒットという、たくさんのドラマがありました。
山口:病気になる前のように歌詞が書けなくて辛い時に、その頃まだマルジェラで働いていた渡邉くんがいるお店に行って、ただ一緒に話をしたことも支えになりました。この1年を通じて、戦っていたのは自分だけだと思っていたのが、周りにいた人たちも戦っていたんだなって、改めて感じたんです。メンバーもスタッフも苦しかったんだなあと、みんなの表情がだんだん明るく変わっていくのを見て気づきました。
F:苦しい経験があったからこその楽曲が多くの人に届いたのなら、無駄ではなかったですね。
山口:ただ自分のため、それだけだったんです。自分から音楽っていうものがなくなったら本当に生きていけないと思ったし、それがなくなりそうになりながら、もがく中で、病気と争うんじゃなくて肩を組んでやっていくしかないという考えになっていって。そうやって自分のために頑張ったことが、本当に苦しい人たちの支えに少しでもなれたのであれば、もがいた甲斐があったなと思えます。なんでも本気じゃないと、バレちゃいますしね。本気で生きて、新しい自分になったことを、次は音楽を通して実感してもらうことがひとつの目標です。
F:本企画を通しても、唯一無二という孤高の精神が感じられました。
山口:道なき道を作るって、薮を漕いでいかなきゃいけないじゃないですか。その時は辛いし周りに誰もいなくて孤独だけど、誰かが続いてくれたら孤独じゃなくなる。自分もやっぱり戦っている人が好きで、自分の道を進もうとしている人が好きだから、そういう人たちと2026年も楽しくやっていけたらいいなと思っています。応援してくださっている方にも、音楽でお返しをしていきたい。ただ次の新曲は、本当に変な曲かもしれないけどね。みんなたぶん、驚くと思います(笑)。
F:(笑)楽しみにしています!
特別動画企画「MUST BUY 私の仕事の必需品」
今年は1年のお買い物を振り返ってもらう「ベストバイ」の特別編として、さまざまな業界の第一線で活躍するプロに「仕事に欠かせない必需品=MUST BUY」を紹介してもらう動画シリーズ「MUST BUY 私の仕事の必需品」を公開!一郎さんのライブ配信に“見切れ”ているインテリアや、楽曲制作に欠かせないアイテムと合わせて3点をピックアップしてもらいました。
■山口一郎
1980年北海道生まれ。5人組バンド「サカナクション」として2005年に活動を開始し、2007年にメジャーデビュー。ほとんどの楽曲の作詞作曲を手掛ける。2015年に「NF」をスタートさせ、カルチャーをミックスした多様なプロジェクトを展開。コロナ禍の2020年から2021年にかけて画期的なオンラインライブを実現し、全国アリーナツアー「SAKANAQUARIUM アダプト TOUR」を開催した。2023年に単独で全国を巡るツアー「懐かしい月は新しい月"蜃気楼"」、そして2024年には2年ぶりのサカナクション完全復活ツアー「SAKANAQUARIUM 2024 "turn"」を開催。2025年2月にTVアニメ「チ。 ―地球の運動について―」の主題歌となった「怪獣」をリリースし、全国ホールツアー「SAKANAQUARIUM 2025 “怪獣”」は全公演が即日ソールドアウト。2026年1月スタートのドラマ「こちら予備自衛英雄補?!」の主題歌として新曲「いらない」の発表を予定。病気を公表しながらも、自身が主宰する「NF」や「yamaichi(YI)」などを通じて多方面で活動の場を広げている。
サカナクション公式サイト
山口一郎YouYubeチャンネル
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