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“手を動かしたい”編み物初心者の心掴む体験設計、韓国発毛糸ブランド「SEVY」が上陸

橋本知佳子

 繊維多角化専門商社 田村駒グループのツクリエが、韓国発の毛糸ブランド「セビー(SEVY)」の日本国内における独占販売権を取得し、9月10日11時にツクリエのオンラインストアで取り扱いを開始する。国内での発売に先駆け、8月26日から9月1日まで、伊勢丹新宿店6階催事場で開催している手芸イベント「ISETAN SHUGEI 2026」で商品の先行販売を実施。イベントのために来日したセビーのキム・チャンギル企画室長に、ブランドの歩みと人気の理由、日本市場における展望を聞いた。

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キム・チャンギル企画室長

大手糸メーカー傘下の生産力&クリエイター協業の企画力

 セビーは2016年に誕生。親会社は1980年創業のニードルポイントやクロスステッチといった刺繍糸を得意とする韓国の糸メーカー 和林産業社で、同社が1995年に立ち上げた毛糸専門子会社 フィリップ繊維が運営している。

 強みは、自社工業による安定したスピーディな商品供給と、専属を含む60人以上のクリエイターと共に企画する糸とレシピの幅広さ。クリエイターからの意見を反映したトレンド性の高い新作毛糸を年間約300種類発表しており、協業クリエイターたちが提案する編み物のレシピ動画は1000本を超える。クリエイターのニーズを反映し、糸割れを軽減する初心者にも編みやすい糸を幅広く揃え、数玉から編める小物のキットも販売。初心者が編み物を始めやすく、挫折せずに作品を完成させるまでをサポートする姿勢が幅広い編み物ファンから支持されている。

 ソウル・聖水洞(ソンスドン)に2025年にオープンした7階建のフラッグシップストア兼ニッティングラウンジ「セビーハウス(SEVY HAUS)は、商品だけでなくカフェや本、音楽と共に編み物に没頭できる空間を用意。糸の販売だけでなく、作品を作り上げるまでの「体験としての編み物」を提供しており、日本の編み物愛好家の間でも「韓国旅行で訪れたいスポット」としてSNSで度々紹介されているという。韓国には他にも「バヌルストーリー(Banul Story)」といった編み物ファンから人気の高い老舗毛糸メーカーがあるが、セビーの国内独占販売権を取得した理由についてツクリエの担当者は、「度々韓国を視察する中で、セビーの店舗が飛び抜けて作品見本の数が多かった。訪れるたびに新しいデザインの見本が展示されており、提案力が素晴らしいブランドだと感じた」と太鼓判を押す。

SEVY HAUSの店内の様子

Image by: 田村駒

トレンドから文化へ 編み物市場の現在地

 そもそも、なぜ韓国と日本では近年若年層を中心に「編み物ブーム」が継続し、各手芸店が毛糸の売り上げを伸ばしているのか。きっかけは、コロナ禍の中で在宅期間にできる趣味として注目を集めはじめ、自作の編み物をSNSで発信する人が増加したこと。「デジタルコンテンツプラットフォームを通じて、確実に多数の若年層が編み物文化に流入した手応えがありました」とキム企画室長は話す。その後、決定的な火付け役となったのは、LE SSERAFIMの宮脇咲良が2023年11月に自身のインスタグラムに投稿した手編みのニット帽で、周辺のK-POPタレントにも編み物が波及。それ以降も宮脇は自身の編み物の制作風景を度々発信し話題を集めている。こうした影響から、現在のセビーの客層は20〜30代が中心だという。

 編み物は、従来は冬に楽しむものというイメージが強かったが、近年は夏場にも楽しむ手芸ファンが増えており、トレンドは一過性のものではなく通年の文化として定着しつつある。その理由についてキム企画室長は「現在の30代以下は、大量生産やデジタル化が当たり前の時代に生まれ育ち、その環境に疲れを感じているのではないでしょうか。自分の手で何かを作って、作り上げた物を見て達成感を感じるという行為そのものに惹かれているのではないかと思います」とコメント。ブランドが支持される一因として、従来の器用な手芸ファン以外の「とにかく自分の手を動かしたい」というニーズに、セビーが提案する初心者向けの糸や、高度なテクニックがなくても高いクオリティの作品が仕上がるレシピがフィットしているのではないかと同氏は分析する。実際に、トレンドの初動時期である2023年ごろにセビー最初の大ヒット商品になったのは、太くて素早く編み上げることができる「ブリックヤーン」だった。

「ブリックヤーン」とその作例。

日本の伸び代は「初心者」向けコンテンツ 実店舗も視野に

 ツクリエの日本国内における独占販売権取得に伴い、日本上陸を果たしたセビー。日本公式インスタグラムを開設すると、日本のファンからたくさんの喜びの声が寄せられた。先行販売を行っている伊勢丹新宿店でのイベント初日には、朝からセビーのブースをめがけて駆けつけるファンの姿も見られるなど反響が大きい、とツクリエの担当者は話す。今後の日本戦略についてキム企画室長は「日本の編み物文化は深く、歴史も長いですが、初心者に積極的にアプローチをしているブランドはまだ少ないと思います。私たちが得意とする、“編みやすい糸”、“簡単なのにトレンド感のあるデザインのレシピ”、“初心者にもわかりやすいチュートリアル動画”といった初心者のためのコンテンツ発信を通して、ブランドの世界観を広めていきたいです」と語った。なお、ツクリエは現状ポートフォリオ内に毛糸ブランドを持たないため、セビーの獲得はポートフォリオ拡張の意味合いも持つ。今後は都内にSEVY HAUSのような編み物を「体験」として提案できる実店舗の出店を視野に、国内でのシェア拡大を目指すという。

Image by: 田村駒

◾️「ISETAN SHUGEI 2026」での販売アイテム

 伊勢丹新宿店で開催している「ISETAN SHUGEI 2026」では、韓国本店で人気が高い毛糸15種を販売。カラー展開を含めると、SKU数は約150にのぼる。糸には、その糸に適したアイテムの日本語説明レシピと編み図、動画が見られるQRコードが付いたオリジナルカードが付属する。また、韓国本店で人気のセビーのオリジナルデザインレシピ8点を収録したレシピブックも販売するほか、レシピブックに掲載した作品のキットも登場。キットは、セビーのロゴ入りトートバッグ付きで、キット購入者にはレシピブックを1冊配布している。このほか、店頭にはセビーを代表する糸「ロミオ」を使用したミニジェリーバッグのバッグチャームがつくれるカプセルトイも用意する。 

宮脇の投稿がきっかけとなった編み物トレンドを紹介(2024年1月掲載)

リボンモチーフの手編みのニット帽やバッグが人気、「リボン×ハンドメイド」にトレンドの兆し

FASHION

最終更新日:

◾️ISETAN SHUGEI 2026
期間:2026年8月26日(水)~9月1日(火)
会場:伊勢丹 新宿店 本館6階 催物場(セビーはパーツエリア内「craf」ブースで販売)
営業時間:10:00~20:00(最終日は18:00終了)
入場料: 無料
公式サイト

◾️ツクリエ:公式オンラインストア「craf」

文・橋本知佳子

Chikako Hashimoto

FASHIONSNAP 編集記者

東京都出身。映画「下妻物語」、雑誌「装苑」「Zipper」の影響でファッションやものづくりに関心を持ち、武蔵野美術大学でテキスタイルを専攻。大手印刷会社の企画職を経て、2023年に株式会社レコオーランドに入社。ファッション小物・アクセサリー、繊維企業を中心に取材。

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