森美術館が、現代美術家・森万里子の大規模個展「森万里子:燦燦」を開催する。会期は2026年10月31日から2027年3月28日まで。国内で同氏の個展が開かれるのは、2002年の「森万里子 ピュアランド」展以来24年ぶりとなる。初期の写真作品から、日本初披露の大型インスタレーション、AIを活用した最新作まで約40点が並ぶ。
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森万里子は1990年代半ば、自身のパフォーマンスに基づく写真・映像作品「サイボーグ」シリーズでデビュー。最先端のCGを駆使したSF的な世界観で注目を浴びると、次第により壮大な死生論や宇宙論へ関心を広げ、仏教的世界を連想させるインタラクティブな大規模インスタレーションへと発展させた。2000年代に入ると、アニミズムや古代文化、素粒子論、宇宙物理学といった広範なテーマを探求。時空を超越したあらゆる生命の繋がりを提唱する概念「ワンネス(Oneness)」を掲げ、世界中の学者や科学者との研究・協力に基づく最新テクノロジーを駆使した作品で、その概念を具現化してきた。2010年には、6大陸すべてに作品を恒久設置することを目指す「ファウ(Faou)」公益財団を設立。2011年には宮古島に、2016年にはリオデジャネイロに、それぞれ自然と一体化するような作品を設置している。

展覧会の目玉となるのは、2003年の初公開以降世界中を巡回し、今回初めて日本で展示する代表作「Wave UFO」。巨大なUFOの中に配した勾玉型ポッドに鑑賞者が3人1組で入り、それぞれの脳波を映像に変換して頭上に投影するという、脳波バイオフィードバックを用いた大型のインスタレーションだ。法隆寺の夢殿から着想した大型作品「ドリーム・テンプル」を発表した際に、仏教的モチーフを理由に他宗教の信者に敬遠された経験から、「信仰に関わらず誰でも入れる普遍的な形」としてUFOを選んだという。自身と他者の脳波が一体化するという映像体験は、森が長年提唱するワンネスを最も鮮やかに具現化したものと言える。



「ミラクル」
会場は、緩やかな時系列に沿った4つのパートで構成。「1. スター誕生」は、同名の写真作品をはじめ、森自身がポストヒューマン風の衣装で登場する作品が揃う。日本のアニメ文化やそこで消費される女性像を批判的に表現した最初期の作品に続き、仏教の図像をもとに神格化された自身を描いた「エソテリック・コスモス」シリーズなど、スピリチュアリティへの関心が垣間見える作品群を披露。「2. つながる世界」では前述のWave UFOのほか、いくつかのインスタレーション作品を展示。「リンク」は、古代・現代・未来の3つの時間軸をそれぞれ象徴するロケーションで撮影した映像を、円形の構造体の内側に投影することで、生と死の循環を意味する「輪廻転生」を具現化している。

「お社」

「フラットストーン」
「3. 太古の記憶」では、新石器時代のケルト文化や縄文文化に傾倒していった2004年以降の作品を用意。ニュートリノ観測施設「スーパーカミオカンデ」から届くリアルタイムのデータによって発光するオブジェ「トムナフーリ」や、縄文時代の敷石住居などから着想を得た「フラットストーン」などが揃う。2025年にニューヨークで発表したインスタレーション「お社」は、几帳のヴェールに囲われた真っ白な空間に熊本の押戸石などをモチーフにした立体物を設置。オブジェは特殊なコーティングにより内側から発光するように外光を反射し、練り香水の香りや送風機による風など五感に訴える空間演出が特徴だ。

「すべては輝き」

「ピースクリスタル」
「4. 自然とひとつに」は、森の最新の取り組みであるファウ公益財団の活動を紹介。同展に合わせて製作した新作の映像作品「すべては輝き」は、宮古島とリオデジャネイロに設置した恒久設置作品に加え、同氏が宮古島に建てたアトリエから見える海景などを映し出す。同作は、AI企業 アンソロピック(Anthropic)の技術協力のもと、生成AIを駆使して制作しており、常に最新の科学技術を作品に取り入れてきた森の現在地を示す意欲作だ。また、このパートでは2024年にヴェネツィアで発表した立体作品「ピースクリスタル」も披露。エチオピアでの恒久設置を計画している作品で、人類の平均身長とされる167.5センチメートルのクリスタルガラスの内部に、森の父が開発した太陽光採光システム「ひまわり」を搭載している。

また、メインパートの合間には、アーティストのこれまでの活躍や制作背景を紹介する展示スペースも用意。モデルとしても活動していた初期の写真や、これまでの展覧会の展示風景、掲載された出版物など豊富な資料が揃う。また、ドローイングやスケッチ、リサーチノート、個人的に収集する古物のコレクションなど、森の思考プロセスや着想源を辿る展示物も多数登場する。
森は同展の開催について「都会のランドスケープを背景に作品を楽しめる、このロケーションでなくてはあり得なかった展覧会。特に、世界中を旅してきたWave UFOを日本で初披露できることは、本当に奇跡的だと思う」とコメント。「森美術館での個展は長年の夢だった。誰かに頬をつねってもらって、これが夢でないことを確かめたいくらい」と語った通り、同館の創立者 森稔の姪にあたる森万里子にとって、この展覧会は悲願だったという。その上で、「生成AIを活用した作品など、今のタイミングでなければご覧いただけなかった作品も多くある。その意味では、今がベストタイミングだったのだと確信している」と公開を前に自信を覗かせた。
最終更新日:
■森万里子展
会場:森美術館
所在地:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
会期:2026年10月31日(土)〜2027年3月28日(日)
営業時間:10:00〜22:00
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