エスティ ローダー カンパニーズ(ESTĒE LAUDER COMPANIES、以下ELC)は、2026年度上半期(2025年7~12月)決算でオーガニックベースの売上成長に回帰した。日本市場においても、「M·A·C コスメティックス(M·A·C Cosmetics)」や、「ル ラボ(LE LABO)」「ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON)」などのフレグランスが売り上げを牽引し、好調に推移する。さらに日本で企画・製造する商品にも力を入れるなど、新たな戦略を打ち出すELCジャパンのジェームズ・アクィリナ(James Aquilina)職務執行者社長に、今後の展開と未来図を聞いた。
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◾️ジェームズ・アクィリナ(James Aquilina)
エスティ ローダー カンバニーズ ジャパン 職務執行者社長。エスティ ローダー カンパニーズのトラベルリテール部門でキャリアをスタート。さまざまなブランド、カテゴリーで、アメリカ大陸、ヨーロッパ、アジアパシフィック、中東、アフリカを含む地域で活動。「M・A・C」のインターナショナル&グローバル コマーシャル担当GMや「トム フォード ビューティ(TOM FORD BEAUTY)」のインターナショナル担当GMなどを経て、2022年から現職。
エスティ ローダー カンパニーズ ジャパンとは?
高品質のスキンケア、メイクアップ、フレグランス、ヘアケア製品を世界約150の国と地域で販売するエスティ ローダー カンパニーズの日本法人。日本はELCの海外拠点の中でも長い歴史があり、日本での「エスティ ローダー」1号店は、1968年の東京日本橋高島屋本店オープンにまで遡る。現在、12のブランドを展開し、従業員数は2000人以上、1000以上の店舗と販路を持つ。千葉県柏市に柏ディストリビューションセンターを構え、茨城県下妻市にアジア太平洋地域および世界に向けた製品の製造、供給、技術革新を支えるサクラ・マニュファクチャリング・キャンパスを開設している。
目次
日本発の製品が成長に貢献、アジアパシフィック地域でも発売
⎯⎯ ELCのグローバル上期決算はオーガニックベースの売上成長に回帰しています。そうした中で、ELCジャパンの成長はいかがでしたか?
ELCジャパンも堅調です。2025年1〜12月の12カ月を通じて、プレステージ市場でシェアを伸ばし、マーケットを上回るペースで継続的に成長しています。
⎯⎯ その成長を牽引している戦略は?
グローバル戦略「Beauty Reimagined」に基づき、日本では消費者中心を軸に成長戦略を推進しています。
1つ目のフォーカスはコンシューマーカバレッジの拡大です。「お客さまがブランドとつながりたい場所に、私たちがいる」という考え方です。お客さまの嗜好が多様化する中、どのようにつながりたいか、どこでつながりたいかはさまざまで、ユニークな体験を求める方もいらっしゃいます。そういったお客さまが求める場所に、私達がいることに注力しています。例えば百貨店から、バラエティ、セミセルフショップ、ECサイトと販路も多岐に渡り、タッチポイントがある、ということです。
2つ目はイノベーションの加速です。我々はお客さまとつながるためのイノベーションを革新的に進め、お客さまのニーズに沿った新製品の数を増やしていていますが、さらにお客さまが求める時期に発売することに注力しています。
そして3つ目ですが、お客さまへ向けた投資の強化です。広告やSNSにおけるインプレッションの増加はもちろん、イベントの実施、サービスツールやデバイスの強化があげられます。これらに注力する事で、私達は2026年もマーケットよりも早いスピードでさらに成長を遂げていくつもりです。
⎯⎯マーケットより早いスピードでの成長やシェアの獲得について、もう少し具体的に教えてください。
具体的な数字は公開していませんが、過去12ヵ月において、我々が成し遂げてきた強み、そしてどの分野において成長できたのかはお話しできます。
まず我々にはブランドポートフォリオの多様性という強みがあることです。プレステージのスキンケアからメイクアップ、フレグランス、またエントリー プレステージに提案するブランドまで、日本では12ブランドを展開しています。
◆ELCジャパンが展開するブランド
・アヴェダ(AVEDA):ヘアケアブランド
・ボビイ ブラウン コスメティックス(BOBBI BROWN COSMETICS):メイクアップブランド
・クリニーク(CLINIQUE):スキンケアブランド
・ドクタージャルト(Dr.Jart+):スキンケアブランド
・エスティ ローダー(ESTĒE LAUDER):スキンケアブランド
・ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON):フレグランスブランド
・ラボ シリーズ(Lab Series):メンズスキンケアブランド
・ラ・メール(LA MER):スキンケアブランド
・ル ラボ(LE LABO):フレグランスブランド
・M·A·C コスメティックス(M·A·C Cosmetics):メイクアップブランド
・オーディナリー(The Ordinary):スキンケアブランド
・トム フォード ビューティ(TOM FORD BEAUTY):メイクアップ・フレグランスブランド
成長のエンジンはフレグランス
その中で、大きな成長エンジンがフレグランスで、ジョー マローン ロンドンとル ラボが売り上げを牽引しています。そして、マーケットシェアの獲得に貢献したのが2024年9月に誕生した「エスティ ローダー(ESTĒE LAUDER)」の「アクア チャージ」です。日本で開発・生産された本製品は、エスティ ローダー ブランドの80年の歴史と、勇心酒造の170年以上の発酵に関する研究開発による賜物です。
そもそもは、エスティ ローダーへの入り口として、若年層に向けて発信しましたが、発売から1年半が経過し、保湿を求める全世代の方に支持されています。ライスパワー™︎ No.11αにより肌の内側からうるおいを高めることで、肌本来の健やかさと、年齢を重ねても美しさを保ち続けたいというニーズにお応えする製品であると考えています。この独自のコラボレーションは、日本市場での成長に貢献しただけでなく、アジアパシフィック地域の他市場へ拡大されました。

「ジョー マローン ロンドン」の人気の香り「イングリッシュ ペアー & フリージア」

「エスティ ローダー」が日本の勇心酒造とタッグを組んだ「アクア チャージ」
⎯⎯一方で、大人世代に向けた「ラ・メール(LA MER)」でも、昨年10月にリップ製品を発売するなどで、若年層の取り込みにも成功しています。
ラ・メールは3つの成長が見えています。1つ目は「ザ・リップ トリートメント」を通して、新しいお客さまにブランドを体験していただけたこと。2つ目はオンラインでトライアルサイズ製品を購入したお客さまが、対面でのサービスを求めて百貨店のカウンターに来てくださっていること。3つ目はラ・メールのフルトリートメントを体験できるホテルでのスパイベントを実施し、既存のお客さまに新たな価値を提供できたことです。
⎯⎯メイクアップカテゴリーも話題の製品が多く、施策も注目が集まりました。
そうですね、メイクアップカテゴリーでは、主にM・A・Cが牽引し、中でも「パウダーキス」のリニューアルの成功が大きく貢献しました。なぜM・A・Cが成功したのか? イノベーティブな商品を、日本のお客さまのトレンドや使い方に合わせて落とし込み、価値を伝え切れたことが成功要因だと考えています。このように、フレグランス、スキンケア、メイクアップという多様なポートフォリオによって成長できることは弊社の大きな強みだと感じていますし、その中心にいるのは常にお客さまだと感じています。

日本の顧客はより深い体験、つながりを求めている
⎯⎯フレグランス市場は競争が激化しています。今後、その中でどう戦っていきますか?
日本はもともと競争が激しいマーケットです。おっしゃるように、日本でのフレグランス市場の進化は目を見張るものがあります。新しいブランドが次々と登場していますが、今、お客さまはフレグランスの専門性や知識、クオリティー、クラフツマンシップにこだわりを持ち、新たな体験に重きをおいていらっしゃいます。それに応えるために、我々はサービスエクスペリエンスに投資していきます。ジョー マローン ロンドンは2024年5月に原宿の「ハラカド」にグローバル旗艦店をオープン。香りのインスピレーションとなる英国の海岸や天気を体感できるサウンドを演出するなどで世界観を発信しています。またル ラボは1879年に建造された京都の町家を1年かけて改装した店舗をオープンしました。美しいヴィーガンカフェも併設して京都のカルチャーにも触れる場所となり、お客さまに楽しんで頂いています。
⎯⎯香水と食事を一緒に楽しむ発想は、少し前までは考えられませんでした。新しい文化を作られていますね。
私達が目指しているのは、さらなるエクスペリエンス、エンターテイメント、エンゲージメントです。日本のお客さまは、より深い体験、ブランドとより深いつながりを求めていらっしゃいます。我々はこの声に応え、投資することで、差別化にもなると考えています。
⎯⎯では、販路として大きく成長するEコマース戦略はいかがでしょうか?
ECサイトは外部パートナーとの取り組みを強化しています。楽天では、メールやLINEなどのSNSで贈り物ができる「ソーシャルギフト」機能を使って、フレグランスカテゴリーのギフト需要を伸ばしていますし、また、「アマゾン(AMAZON)」のAmazon.co.jp Luxury Beautyでの取り扱いを拡充していきます。アマゾンでは2025年初めに「オーディナリー(THE ORDINARY)」や「ラボ シリーズ(LAB SERIES)」、「ドクタージャルト(Dr.Jart +)」を発売し、12月には「クリニーク(CLINIQUE)」をローンチしました。そして今年中にはエスティ ローダーとボビイ ブラウンが加わります。
⎯⎯オンラインとオフラインをつなぐOMOも重要になっていますね。
連動自体は当たり前になったからこそ、差別化が問われます。例えば我々は、昨年8月にオーディナリーの日本上陸1周年記念イベントとして、「コンビニエンスストア」をコンセプトとしたポップアップイベントを下北沢で開催しました。使いやすく、成分が良く、アクセスもしやすい⎯⎯、その価値は日本のコンビニと親和性が高い。おにぎりや弁当に見立てたパッケージの商品を販売するなどして、オフラインのアクティベーションとオンラインの成功をシンクロさせる形で、ブランドのフィロソフィーをあらためて伝えられたと思います。


⎯⎯新客から長年の上顧客まで、すべてに対応できたということですね。
まさにその通りです。アマゾンなど新しいチャネルに販路を広げることも、高度なサービスを求めていらっしゃるお客さまにラグジュアリースパを体験していただくことも、「Beauty Reimagined」の戦略に沿ったアクティベーションなのです。

2026年はさらにイノベーションを拡大
⎯⎯7月からスタートしている2026年度も前期が終了しました。下期は、どのような仕掛けを考えていますか?
2026年の展望は、とてもエキサイティングです。2025年同様に、「Beauty Reimagined」にフォーカスした戦略に基づき、日本におけるイノベーションを加速します。
例えばクリニークが、1本で10の美肌スイッチにアプローチするナイアシンアミド配合の薬用美容導入液「イーブン ベター アクティブ ブースター セラム」を発売しました。これは、日本人のお客さまのために研究・開発した製品で、日本のサクラ・マニュファクチュアリング・キャンパスで生産し、日本限定で販売しています。
そして、3月6日には、エスティ ローダーを代表するベスト&ロングセラーファンデーション「ダブル ウェア ステイ イン プレイス メークアップ N」をリニューアル発売。多様なスキントーンに対応する全70色(グローバル展開)から日本の消費者のために12色を厳選しています。このように、日本のお客さまに向けてのイノベーションの拡大、エクスクルーシブな製品のローンチには引き続き力を入れていきます。
⎯⎯イノベーションには、人材育成も大きなカギとなります。
そう思います。私はELCに入社して20年経ちますが、バラエティに富んだ体験をさせてもらい、すごく幸運だと思っています。日本には、多くのブランドをはじめ多彩なファンクション、製造・技術の拠点であるサクラ・マニュファクチュアリング・キャンパスもあり、さまざまなプラットフォームを社員に提供でき、こういった多様な経験が、長期的に見るとキャリアの成功につながります。そして、多様な体験は、垂直だけでなく、水平、あるいは斜め上の形でのキャリア形成になりますし、日本の複雑なビューティマーケットの中で、キャリアを築くナビゲーションにもなっていくでしょう。これからもイノベーションを起こすために、多様な人材から成る会社でありたい思っています。
⎯⎯最後に、ELCとして、長期に渡り乳がんに対する意識を高める啓発活動も続けていらっしゃいます。こういった活動も社員、人材のモチベーション形成に大きな期待を与えていますね。
ミセス エヴリン H.ローダーがスタートした乳がんキャンペーンは、ピンクリボンをシンボルに1992年から取り組んでいます。乳がんは本人や家族、チームメンバーだけでなく、大きなコミュニティに直接影響を与えることだと思っているからです。集められた寄付金は、米国乳がん基金®(BCRF)を通じて乳がん撲滅のための医療プロジェクトに活用され、日本でも、国内最大の乳がん研究団体であるJBCRG(Japan Breast Cancer Research Group)への寄付を通じて乳がん研究をサポートしています。近年では、乳がんに罹患してから妊娠・出産を希望する方の研究・サポートにも資金援助し、成果をあげています。東京タワー、東京スカイツリー、京都の清水寺などのランドマークをピンクにライトアップして認知度を上げる取り組みも行っています。社員の参加も含めて、チームワークや意識に良い影響があると感じています。これからも続けていく活動です。
text: Yoshie Kawahara | photography: Katsutoshi Morimoto, interviewer: Akiko Fukuzaki(FASHIONSNAP)
最終更新日:
◾️エスティ ローダー カンパニーズ:公式サイト
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